第452回:Ustreamやニコ生に便利な「TRI-CAPTURE」

~約8千円で「SONAR X1 LE」付属の「DUO-CAPTURE」も ~


「TRI-CAPTURE」

 Rolandによる春の新製品発表会が、2月8日に行なわれた。筆者自身は怪我で入院してしまって出席できなかったが、オーディオインターフェイス、MIDIインターフェイス、シンセサイザキーボード、エレクトリックドラムなど多数の新商品がお披露目された。


Roland、春の新製品発表会の模様

 資料を見る限り、個人的には「V-Drum」の新製品やV-DrumとTwitterを連携させるドラム練習ソフトの「V-Drums Friend Jam」、またループ演奏を重ねていく「ループ・ステーション」の第3世代製品である「RC-30」と「RC-3」などに興味を持ったが、やはりなんといっても注目は低価格のオーディオインターフェイス、「TRI-CAPTURE(トライ・キャプチャー)」と、「DUO-CAPTURE(デュオ・キャプチャー)」だ。

「V-Drum」の新製品V-DrumとTwitterを連携させるドラム練習ソフト「V-Drums Friend Jam」「ループ・ステーション」の第3世代製品「RC-30」
TRI-CAPTUREDUO-CAPTURE

 今回、この2機種をRolandから借りることができたので、さっそくどんな製品なのかを試してみた。



■Ustreamやニコニコ生放送ユーザーの声を反映した「TRI-CAPTURE」

 今回発表されたオーディオインターフェイスは、3系統の入力を備えた「TRI-CAPTURE(型番UA-33)」と2系統の「DUO-CAPTURE(型番UA-11)」の2種類。DUO-CAPTUREは3月末発売予定で、価格はオープンプライス(実売7,980円前後)。それに対し、TRI-CAPTUREの発売はまだちょっと先の4月下旬の予定。こちらもオープン価格で、実売は15,000円前後になる見込みだ。

現行の「UA-4FX」

 製品名から見て、秋に登場した「OCTA-CAPTURE」の下位版にも見えるが、実際には大きく性格の異なる製品で、TRI-CAPTUREは現行の「UA-4FX」の後継、DUO-CAPTUREは「UA-1G」の後継になる。

 UA-4FX自体はもう5年以上も前の製品ではあるが、特定の用途で昨年ごろから爆発的に売れている人気商品となっている。それは、Ustreamやニコニコ生放送などのインターネット放送を行なうためで、半ば定番アイテムのようにもなっており、こうした放送を行なう人がこぞって購入している。

 実際に放送を見ていても、UA-4FXを見かけることが多く、Ustreamの解説書などでも取り上げられているケースが多い。

 数あるオーディオインターフェイスの中で、UA-4FXがこうしたシーンで使われている背景には、いくつかの理由がある。まず2万円弱と価格が手ごろで、軽くて持ち運びやすいこと。ACアダプタが不要でUSB電源供給だけで動くこと。

 さらに、ラインやマイク入力、ギター入力など多くの入力端子を備えているので、用途に応じて自在な接続が可能であること。ライン入力とマイク入力のレベル調整を別々に行なえること、またそのマイクがファンタム電源対応になっているから、高性能なコンデンサマイクを気軽に使えることや、オーディオレベルメーターを装備していることなどだ。

 UA-4FXには、そういった機能以外にも、真空管シミュレーション機能やマスタリング機能など、RolandのCOSMテクノロジーを用いた強力なエフェクト機能も搭載しており、MIDIインターフェイス機能も搭載しているのが大きなウリだが、Ustreamやニコニコ生放送の現場ではほとんど使われていないのが実態のようだ。また、いろいろな機能は搭載されているが、配線が複雑でわかりにくいという問題もあった。


PCゲームの実況中継やアプリケーションについて解説する場合の図

 例えば、PCゲームの実況中継やアプリケーションについて解説するという場合、右図のようにPCのオーディオ出力をUA-4FXに接続した上で、マイクをミックスしたり、場合によってはUA-4FXのヘッドホン出力をライン入力につなぐど、かなり妙な接続になり、難しいという声もあがっていたようだ。

 そうしたニーズに正面から応えるとともに、余分な機能をバッサリと切り捨てたというのがTRI-CAPTUREなのだ。


 



■各部をチェック

スイッチやツマミの配置が変更され、機能もシンプルに

 並べてみても大きさ的にはほぼ同じだが、黒いボディーでの端子やツマミ、スイッチなどの配置が大きく変更され、機能もグッとシンプルになっている。UA-4FX自体が前モデルノUA-3FXの改良モデルで機能追加して作られていただけに、入出力端子が前、左、後と分散し、スイッチ類も上面、左、下面といろいろな所に散らばっていた。

 そのため接続や操作がわかり難かったが、TRI-CAPTUREの端子はすべてリアに並べられた。またスイッチ類、ツマミ類はすべて上面のパネル上に揃っているため、操作はわかりやすくなっている。


TRI-CAPTUREの端子はすべてリアにスイッチ類、ツマミ類はすべて上面のパネル上に

 リアを見ると、端子は右からマイク入力(INPUT1)、ギター/フォン入力(INPUT2)、ステレオラインRCA入力=AUX(INPUT3)がある。そしてUSB、ステレオTRSフォン出力、ヘッドフォン出力となっている。MIDIやデジタル入出力などはバッサリと切り捨てられた分、シンプルになっている。

 注意点としては、3系統入力とはいえ、INPUT1とINPUT2はモノラルで、INPUT3はステレオであること。またPCとのやりとりでいえば、独立した3系統ではなく、3系統の入力をステレオにミックスした上での2IN/2OUTという構成であることだ。OCTA-CAPTUREなどのDTM用のオーディオインターフェイスとは異なり、同時に独立したチャンネルとしてレコーディングができるわけではない。

 次に上面のパネルのほうを見てみよう。左側に並ぶ3つがINPUT1~3のレベル調整だ。INPUT1においてはファンタム電源スイッチがあるので、ここでコンデンサマイクのオン/オフができる。またINPUT2にはHi-Zのオン/オフボタンがある。こちらはハイインピーダンス入力となるエレキギターやベースの場合オンにし、それ以外の場合はオフにする。INPUT1~3まで個別にレベル調整できるほか、それぞれにPEAKインジケータ、さらに信号が入ってきていることを示すSIGインジケータを装備しているのも便利なところだ。

 ここまでは機能上、UA-4FXと大きくは変わらないのだが、その右側にある「REC MODE」が、Ustreamやニコニコ生放送で放送したいユーザーにとっては非常に便利なポイントだ。これはボタンを押すごとに、「MIC/GUITAR」モード、「ALL INPUTS」モード、「LOOP BACK」モードの3つのモードに切り替わっていく。それぞれのモードによって信号の流れ=ブロックダイアグラムが切り替わるが、 以下の図を参考にして欲しい。

「MIC/GUITAR」モード「ALL INPUTS」モード「LOOP BACK」モード

 簡単に言えば、「MIC/GUITAR」モードはマイクとギターだけを入力するモードで、ごく一般的なオーディオインターフェイスとしての利用法。ステレオで録音する場合は左チャンネルがマイク、右チャンネルがギターとなるのが大きなポイントだ。

 「ALL INPUTS」モードはマイク、ギターに加え、INPUT3のAUX入力も含めてすべての入力が入るモード。この場合、INPUT3は左右のチャンネルがそのままステレオ分離されているが、マイクとギターはそれぞれセンター定位するので、BGMに解説を入れるような場合、扱いやすくなる。

 そして最大のポイントが「LOOP BACK」モードだ。UA-4FXにも「LOOP-BACK」というモードがあったが、それとは違うもの再定義されている。もともとUA-4FXの「LOOP-BACK」は、インターネットラジオなどPCの再生音をそのまま録音するために用意されたものだったが、TRI-CAPTUREの「LOOP BACK」モードはPCの再生音にマイクやギターなどを追加した上で、録音するものへと変わっている。まさに、生放送向けの機能といっていいだろう。

 先ほどのUA-4FXでの接続図では、音質が良いとはいえないPCのサウンド出力をUA-4FXに入力するという方法を用いていたが、「LOOP BACK」モードであれば、そうした配線・接続も不要で、TRI-CAPTUREの出力音を音質劣化させずにマイクなどの入力をミックスして、録音したり、Ustreamやニコニコ生放送の放送アプリケーションへ送り出すことができるわけだ。

 なお、REC MODEの右にある2つのボタンは上が出力を一時的に止めるミュートボタン、下がINPUT1~3をヘッドフォンにも出力するか否かを決めるINPUT MONITORだ。INPUT MONITORはオンでもオフでも、PCへの送り出しには影響を与えない。そして一番右がヘッドフォンのレベル調整およびレベルメーターとなっている。

 このように、S/PDIF入出力やCOSMによるエフェクト、またMIDI機能など、DTM用途向きな機能は削ぎ落とされたが、より使いやすく、かつ安くなったのがTRI-CAPTUREというわけだ。

 本来であれば、ここでRMAA PROを用いてオーディオ性能チェックをしたいところだが、今回お借りしたものはまだプロトタイプで、オーディオ部分のチューニングができていないとのこと。そのため、テストは見送るが、機会があったら紹介したい。



■DUO-CAPTURE

TRI-CAPTUREの下位モデルである「DUO-CAPTURE」(左)

 TRI-CAPTUREの下位モデルである「DUO-CAPTURE」は、TRI-CAPTUREとの大きく異なる性格の製品だ。

 前モデルといえるのがiPad用のオーディオインターフェイスとして、一躍脚光を浴びた「UA-1G」となる。ただ、以前にも紹介したとおり、iOS 4になった際、Camera Connection Kit経由で供給できる電力が低く抑えられてしまったため、電源供給なしにUA-1Gを駆動できなくなった。この点は残念ながらDUO-CAPTUREも同様で、iPad用に作ったデバイスというわけではないようだ。

 機能的にはUA-1Gをよりシンプルにしたものとなっており、RCAでのライン入出力やS/PDIF入出力が削られたり、入力または出力だけなら使えた24bit/96kHzモードも削除され、24bit/44.1kHzまたは24bit/48kHzのみのサポートとなっている。


DUO-CAPTUREの天面パネル前面の端子部分背面にはUSB入力などを備えている

 また、USBケーブルは本体からの直出しではなく、標準のUSBケーブルで接続する形に変わっている。そういう意味では、機能ダウンでしかないのだが、コストの面では大きなメリットが出ている。UA-1Gの現在の実売価格が12,000円前後とそれなりの価格であるのに対し、DUO-CAPTUREは8,000円前後になっている。ちょっとUSBオーディオのデバイスが必要というニーズであれば、気軽に購入でき、便利に使える設定になった。

 2モデル共に、Windows/Macで使えるわけだが、WindowsのDTMユーザーにとってはこれら製品には、大きなメリットが用意されている。いずれの製品にも「SONAR X1 LE」というDAWが同梱されている。両製品ともASIOドライバが用意されているので、すぐに使うことができるわけだ。

「SONAR X1 LE」
両製品ともASIOドライバが用意されている

 SONAR X1は以前の記事でも紹介したとおり、CakewalkのDAW、SONARシリーズの最新製品であり、従来のSONARから大きくユーザーインターフェイスを変えたというもの。製品的にはPRPDICER、STUDIO、ESSENTIALと3ラインナップがあり、一番安いESSENTIALの実売価格が19,800円程度となっていたが、その下にSONAR X1 LEが位置づけられた。

SONAR X1シリーズとLEのスペック比較

 見た目には上位のSONAR X1シリーズとそっくりのLE。スペックを比較しても、LEでもそこそこ充実した内容となっている。確かにトラック数に制限があったり、プラグインの数は少ないが、小規模にDTMをするなら十分過ぎる内容だ。この表を見ると×印が多いが、それは機能差の表だからであって、ここに出ていない機能のほとんどはLEにも備わっているから、かなり高性能、高機能なDAWと言えるだろう。

 もちろん、プラグインが物足りなければ、フリーウェアなどを追加できるから、心配はいらない。これからDTM、DAWにチャレンジしたいというというなら、うってつけではないだろうか。SONAR X1 LEを目当てにDUO-CAPTUREを購入するというのも、“アリ”だろう。



(2011年 2月 28日)

= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
 著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto

[Text by藤本健]