西川善司の大画面☆マニア
第230回
OLED vs QLED? LGとサムスンがCES 2017でも激突! PCディスプレイもHDRへ
2017年1月13日 13:16
2017年のCESが閉幕した。今年は、例年に比べて大画面系のネタが豊作だった。テレビは日本勢の有機ELテレビの市場投入の話題が続いたし、魅力的なプロジェクタ新製品も予想より多かった。ただ、展示会場のブース来場者は今年も圧倒的にサムスンとLGが多かった。北米地域において、この2社の存在感は揺るぎないものにあるようだ。
サムスンはテレビ、PC向けディスプレイともに、日本市場では展開しておらず、LGは今も両分野において国内市場で健闘中……というコントラストはあるが、この2社は世界市場において激しい戦いを繰り広げている。CESは、この2社の激戦を垣間見られる機会なので、大画面ファンとしては、今年の動向も抑えておきたい。
この2社は北米地域で人気を集めているわけだが、これは「上手なマーケティング」によって裏支えられているところが大きい(と筆者は感じている)。北米地域の人には「分かりやすいキャッチーな新キーワード」が魂に響くらしく、サムスンとLGはその創出がうまいのだ。
今年のCESでは、サムスンとLGは、大画面テレビ製品において、幾つかの新キーワードを送り出した。
LGは216枚の有機ELパネルで18億ピクセルのアーチ。「有機ELのLG」
LGは、今年も大画面製品が大量であった。
大画面テレビでは、他社に先駆けて有機ELテレビを実用化しているし、「日本メーカーが今年出す有機ELテレビ」は、全てLG Displayの有機ELパネルを使っている。「有機ELはLG」というブランディングは業界内外で確かなものになりつつある。
今年のCESでも、LGは、そのあたりの地盤固めに余念がないブース展開を行なっていた。
まず、毎年、ド派手な演出で注目を集めているブース入り口のデモコーナー。今年は、その「LGの代名詞的デバイス」である55型の4K解像度の有機ELディスプレイを216枚(18×12)、アーチ状に配列させて全長約15mの「ビデオトンネル」を披露していた。
総ピクセル数は18億。数字だけでいったら中国の人口よりも多い(笑)。アーチ状配置なので、縦横解像度の概念で括れないが、あえて流行の「K」縛りで表すとすれば「70K×26K」解像度と言うことになる。来場者は、このビデオトンネルの中に入り、ここに映し出された山の景観、海中の景観、宇宙の景観を楽しむことが出来た。
内容的には「映像鑑賞というよりはイルミネーション体験」という印象が強かったが、有機ELは特に漆黒と明部の同居表現が美しいので、その優位性を誇示する目的は十分に果たせていたように思う。来場者……特に感情表現の大きい北米の人々からは、「Wow!」のため息がそこかしこで発せられていた。
LG担当者によれば、使われている有機ELパネルは最新世代パネルのものだが、テレビのそれではなく、デジタルサイネージ用のパネルを使用しているという。
そして展示に活用されていた1枚1枚の有機ELディスプレイは、アーチ構造を作るにあたって若干、湾曲させられているが、よく見ると、その湾曲方向が、湾曲型有機ELテレビの“逆”である。LGの有機EL湾曲型テレビはディスプレイの長尺方向に曲げられていたが、この展示の有機ELディスプレイは短尺方向に曲げられている。
担当者は「LGの有機ELパネルは曲げられるというアピールをするためのもの。このパネルをそのまま量産するという意思表示ではない」とのことである。
湾曲は終了? LG OLED TVの'17年モデルは全てフラットに。HDMI 2.1も先取り?
LGブースに入り、216枚の18億ピクセルのビデオトンネルを見終えると目に入って来たのは、LGプレスカンファレンスでも大々的に発表された「薄さ2.57mmの壁紙型有機ELテレビの「LG OLED TV Wシリーズ」の展示コーナーだった。
Wシリーズの「W」には壁紙(Wallpaper)や窓の景色(Window view)の意味が込められているというが、展示内容的には「Wallpaper」としてのアピールが中心となっていたと思う。
Wシリーズが「いかに薄いか」をアピールするために、77型の77W7、65型の65W7を板ガラスに入り付け、これを電動回転させるなどして横からも見られる展示を行なっていた。
表示映像は、「原色バキバキの純色系高彩度映像」「漆黒背景の前で高輝度オブジェクトが踊るハイコントラスト映像」が中心で「画質がどうこう」という語りはしづらいが、北米地域の人に「有機ELすげえ」感を煽るには十分過ぎる内容だったと思う。
なお、2017年は、「7」型番が付帯したモデル名となっており、有機ELテレビ製品としてはW7シリーズ(77型、65型)、G7シリーズ(77型、65型)、E7シリーズ(65型、55型)、C7シリーズ(65型、55型)、B7シリーズ(65型、55型)がラインナップされる。
このうちW7とG7が「LG SIGNATURE」というハイブランド扱いの製品になり、G7は薄型壁紙タイプではなく、そこそこの厚みを持った標準デザインを採用する。E7、C7、B7という順で下位モデルとなるが、音響性能やテレビ機能に差があるだけで、基本的な画質性能差はないという。価格は同画面サイズのB7とW7とで2倍の価格差があるのだとか(B7の方が安い)。LGは、有機ELテレビを松竹梅ラインナップさせることにより、これまた「LGの有機ELテレビの層の厚さ」を消費者にアピールしているのだ。
日本でのLG有機ELテレビの2017年モデルの投入は現在は未定だが、高確率で新モデルが投入されるとみられる。北米市場のようにW7、G7、E7、C7、B7の全シリーズが投入されるとは考えにくいが、ハイエンドのW7は、77型と65型のみの設定で、日本での引き合いが強い55型が設定されていないことが気にかかる。W7は、テレビの付属スピーカーとして世界初のDolby Atmos対応という魅力もあるので、導入して欲しいところだが果たして?
それと、取材を進めて1つ、興味深いことがわかった。
あれだけ「湾曲(Curved)推し」だったLGが、2017年モデルの有機ELテレビ製品ラインナップから湾曲モデルをなくしてしまったのだ。ちなみに液晶テレビでは湾曲のラインナップも残されている。
機能面の展示では「アップデートをすることで、様々なHDRフォーマットに順次対応していく」というアピールが行なわれていた。具体的にはUltra HD Blu-rayに採用されているHDR10はもちろん、Dolby Vision、Hybrid Log Gamma(HLG)、Advanced HDR by TechnicolorといったHDR形式に対応するとのことだ。
ブースでは、「HDMI 2.1に採用されたDynamic HDRにも先行対応していく」(ブースの担当者談)姿勢もアピールされ、こちらは「LGのActive HDR」という名称で対応時のイメージデモを披露していた。連載のHDMI 2.1編で紹介したHDMIブースのDynamic HDRのデモも、LG製のテレビによるものだったので、HDMI 2.1のDynamic HDR機能の実現にLGが貢献しているのかも知れない。
サムスン対LGの「マーケティングキーワード」対決は2017年仕様へ
今年のサムスンとLGの戦いで特に面白かったのは「液晶テレビの方」だ。
有機ELテレビに傾倒しているかのように見えるLGだが、液晶テレビにも力を入れ続けている。「有機ELテレビのほうが、液晶テレビよりまだまだ高価」「主力製品は依然と液晶」だから、という事情が大きいが、競合のサムスンが、昨年から液晶テレビ一本化戦略を取っていて、薄型テレビの市場全体のシェア合戦で対等な戦いを続けていくためには液晶で手を抜くわけにいかないのだ。
サムスンは、昨年、自社製液晶テレビの上位モデル(おもに4K:Ultra HD解像度製品)には量子ドット(Quantum Dot)技術(参考記事)を適用し、これらの製品に対して「SUHD TV」というブランドを与えた。
LGは、昨年の時点では「高画質×HDR対応の薄型テレビの本命は有機ELテレビにフォーカス」、液晶テレビ製品は「IPS液晶テレビの基礎性能だけで十分に戦える」というスタンスで、特段、液晶テレビ製品に「意識高い系キーワード」を与えていなかったのだが、「UHD TVより優れたSUHD TV」というサムスンのマーケティング戦略に押されたのか、2017年は戦略を変えてきたのだ。
LGのIPS液晶テレビ製品の2017年モデルは、上位機(おもに4K)に「NANO CELL」という新技術を投入。それらの技術が投入されたモデルは、「より優れた液晶テレビ」であることを表す「SUPER UHD TV」というブランドを与えることにしたのである。
サムスンが「SUHD TV」、LGが「SUPER UHD TV」。両方とも縮めた略称は「SUHD TV」となるわけで、消費者目線からは「同等クラス」に見える。
ところが、どっこい。そんな似通ったブランド名を競合に語られて黙っているサムスンでもないのだ。
なにか決定的な反撃はないものか、と思いついたのが「QLED TV」というわけである。
量子ドット(Quantum Dot)を採用したLEDバックライト液晶テレビなんだから、その頭文字「Q」を取って「QLED TV」というわけである。
思い返せば2010年、「我々のテレビはLCD TV(液晶テレビ)ではない、LED TV(LEDテレビ)だ!」というスローガンの下、「LED TV」という造語を創出した。正確には「液晶テレビのバックライトをCCFLから白色LEDに置き換えただけ」のものなのだが、サムスンはこの「LED TV」推しマーケティングを展開し、北米で「LED TV」というキーワードを定着させてしまった実績がある。
そんなサムスンが、2017年に送り出す「QLED TV」という字面には、2つの知略が見え隠れしている。
もちろん、表向きは「Quantum Dot採用のLED(LCD) TVだからQLED TV」なのだが、その公式ロゴはどうみてもアルファベットの「Q」というよりは「O」に棒を加えたような、それこそ遠目には「有機EL」を意味する「OLED」に見えなくもない。
また、アルファベットの「Q」は、「O」の次の次の文字ということもポイントだ。OLEDの「O」はOrganic(有機)、QLEDの「Q」はQuantum(量子)…。素人目にどちらの方に「近未来的な響きがあるか」と問えば、多くの人が後者といいそうである。「くだらない」ように見えて、消費者にとって、こういうキーワードこそ心にリーチしやすいのである。
以上、まとめると、こんな感じだ。
- 2016年:LGの上位4K薄型テレビは有機EL(OLED)モデルになることをアピール
- 2016年:サムスン、量子ドット技術適用4Kテレビに「SUHD TV」とブランディング
- 2017年:LG、NANO CELL技術適用4Kテレビに「SUPER UHD TV」とブランディング
- 2017年:サムスン、量子ドット技術適用4Kテレビを「QLED TV」にリブランディング
「LGの薄型テレビの上位機は有機ELテレビ(OLED TV)」「LGの薄型テレビの普及機はSUPER HD TV」という戦略に対し、「サムスンの薄型テレビの上位機はQLED TV」というキーワードをぶち込むことで「LGにある次世代テレビのOLED TVとかいうのはサムスンにはないの?」という一般消費者の問いに「サムスンにはOLED TVはないけど、対抗馬としてQLED TVがあります」と即答できる構図にしたことがポイントなのだ。
2017年は「サムスン対LGの薄型テレビ戦線」は、「OLED TV対QLED TV」という異種格闘技戦に展開しそうで、なんだか楽しげなのである。
LGのNANO CELL技術とは? サムスンの新量子ドット技術とは?
さて、オモシロ系の話題(?)はここまでとして、LGのNANO CELL技術とは何か……ということについてマジメに解説することにしよう。
また、サムスンは、今年SUHD TVからQLED TVへとリブランディングを敢行したが、サムスンは「ただブランド名を変えただけではない。昨年までの量子ドット素材から進化している」と説明しているので、そのあたりにも触れたいと思う。
まずは「LGのNANO CELL技術とは何なのか」という話題から。
さて、今回のCES会期中、LG関係者に取材を行うと異口同音に「我々のNANO CELLとサムスンのQuantum Dotは違う技術」と述べる。
では、実際にはどんな技術なのか。
結論から言うと、動作原理としては、Quantum Dotに近いもので、RGB(赤緑青)の純色波長の周辺波長の光を吸収し、その代わり純色光を鮮鋭化させる1nm級サイズの微粒子の光学特性を応用したものだそうである。
「サムスンのQuantum Dot(QD)と違う」とLGが力説するのには「サムスン方式QDは、液晶パネルの背面側にQDシートを貼り付けたり、あるいは白色LEDバックライトモジュールにQDシートを組み付ける実装になっている」のに対し、「LG方式のNANO CELLは、液晶パネルの上面全体(ユーザー側)にNANO CELLシートを貼り合わせている」というところに論拠があるらしい。簡単に言えば「その特殊NANOスケール粒子部材の適用箇所に違いがある」というわけだ。
筆者は「液晶分子にNANO CELL素材を入れているのではないのか」とLG関係者に確認すると「NANO CELLはシートになっていて、液晶パネルと張り合わされる」と言われてしまった。
では、「バックライト側ではなく、液晶パネル側に組み付けるメリットは何か」と聞くと「色再現性向上だけでなく視野角拡張の効果もある」との返答。
これに関しては、実際に、ブース内にデモコーナーが設けられており、たしかに見てみると、NANO CELL搭載機の方が、斜めから見たときでも微妙な色階調を表現できていた。
IPS液晶はもともと斜めから見たときの色変移が少ない特長があるが、NANO CELLを適用すると、これがさらに向上すると言うことなのだ。
一方のサムスンの量子ドット技術はどう進化したのか? 「SUHD TV」から「QLED TV」とリブランディングするまでに至った秘密についてサムスン関係者に取材を進めたところ、「シンプルに量子ドット素材をこれまでと異なる新素材に切り換えた」という返答であった。
2017年、QLED TVのブランド名切換のきっかけとなった新QD素材は、亜鉛、セレン、硫黄などを組み合わせた合金型量子ドットになる。そして、サムスンがいうには、この量子ドット素材を直径2nm、3nm、4nmと各々変えたものを利用する事で、それぞれ青、緑、赤の3原色光を増強できるようになったとのことだ。
LGとは違い、このQD素材をバックライトLED側に適用しているのがサムスン方式というわけである。
サムスンブースでも、従来液晶パネルとQLED TVとの表現可能色域の違いだけでなく、視野角の比較を行なっていた。
サムスンの液晶テレビは、暗部階調特性に優れるが視角度によって色調変化を起こしやすいVA型液晶パネルを採用しているが、視野角が広くなるというのはどういうことなのか。これは、新素材のQD素材によって光量が増し、色域も広がるので、相対的に従来製品よりも視野角が広がるということなのであった。ちなみに、2017年モデルのQLED TVは、色域について、DCI-P3色空間カバー率100%を謳っている。
たしかに、今期のサムスンのQLED TVの輝度は高い。エッジ型バックライト採用ながら、ピーク輝度が1,500nitもあるというのだから相当なものだ。
ちなみに、2017年モデルとなるQLED TVは、「Q」シリーズとして「Q8」と「Q9」の2モデルがラインナップされる。Q9が平面型、Q8は湾曲型モデルで、両方とも、薄さとデザイン性を重視したエッジ型バックライトモデルだ。
湾曲型の方が「Q8」で、画面サイズは55型、65型、75型がラインナップされる。こちらのピーク輝度は1,500nitになる。
上位モデルは平面型の「Q9」で、こちらは画面サイズが65型と88型が設定され、ピーク輝度は(市販されれば)民生機としては最高輝度スペックとなる2,000nitとなる。
この超高輝度性能は、当然、HDR(ハイダイナミックレンジ)表現に対応するためのもので、サムスンは、このQLED TVで実現される超ハイコントラストなHDR表現に対して「Q HDR」というブランド名を与えている。とにかく2017年は「Q」推しなのだ。
さて、LGの有機ELテレビが「壁紙テレビ」のキーワードを使って「画面に貼り付けられるテレビ」アピールを行なったわけだが、液晶のサムスンとしては、バックライト構造がある関係で、さすがに「壁紙」というキーワードを使っての対抗は難しかった。
しかし、「うちにはこれがあります」と答えられないのは癪だ…ということなのか、サムスンも、QLED TVのQシリーズに限っては、チューナ部を別体化し、なおかつ、取り付けブラケット無しで、壁に直付けする「No Gap Wall Mount」をアピールしてきたのであった。
これもLG対抗で、標準組み付けされているスタンドを外すと、専用の補強は必要になるが、張り出しなしで、ぴったりと壁に絵画のようにテレビのディスプレイ部を組み付けられるのだ。チューナ部との接続はどうするのかというと、一本の専用設計の光ケーブルで接続出来るという提案。とても細いケーブルで、しかも、標準5mケーブルに対して、15mケーブルもオプションで用意されるため、壁にも隠蔽して取り回すことも可能らしい。「薄さではLGに負けたが、壁に組み付けた時にはうちの方が美しく壁に取り付けられる」とアピールしたいわけだ。
そして、サムスンは、液晶パネルが有機ELパネルよりも歩留まりがよいこと、そして高解像度化にも長けていることをアピールするために、「QLED TVは8K化もらくらく!」と、いわんばかりに、98型と65型の8K(7,680×4,320ピクセル)QLED TV試作機も展示している。
2017年の北米薄型テレビ市場では、「LGのOLED TV & SUPER UHD TV」対「サムスンのQLED TV」の熾烈な戦いが幕を開けるはずである。はたしてどうなるのか……。
PC向けディスプレイに、ついに「HDR対応」ブームが到来か?
大画面ファンのもう一つの関心である、PC向けディスプレイの方に目を向けていきたいと思う。
昨年のPC向けディスプレイ製品においての大きな関心事は「AMD FreeSync対応だ」「NVIDIA G-SYNC対応だ」という可変フレームレート表示対応方式の「踏み絵」(どちらのGPUを選ぶのか)くらいのものだった。
残念ながら「4Kテレビに、HDR対応モデルが出てきてくれないかな」といったユーザーサイドの願望にはあまり応えてくれなかったように思う。
FreeSync対G-SYNCについては、サムスン、LGは大方、FreeSync派につき、ASUS、Acer、BENQなどの台湾系メーカーがFreeSync、G-SYNC両支援派となる……という図式に落ち着いた。だが本連載でも触れたように、HDMI 2.1が、FreeSync、G-Sync相当の機能をサポートしてしまうので、この「FreeSync対G-SYNC」はいずれ「オレもオマエも頑張ったな」的な「勝者・敗者無し」のフェードアウト的収束に向かうことだろう。
さて、問題は「HDR対応」である。筆者の取材によれば、サムスン、LGは、今年以降は多くのモデルで「HDR10」をサポートすると言うことである。
その第1段として、LGは、31.5型4K/3,840×2,160ピクセルのIPS液晶ディスプレイ「32UD99」を今回のCESで発表した。
32UD99は、上位モデルの位置付けで、DCI-P3色空間 95%カバー。HDMI 2.0対応HDMI端子×2、DisplayPort1.4対応端子×1、縦画面モード対応、5W+5Wのステレオスピーカー搭載というモデル。AMD FreeSyncにも対応する。画面はフラット型。なお、弟分モデルとしてHDR10対応機能だけを外した「32UD89」もラインナップされる。
サムスンの方は、PC向け液晶ディスプレイに量子ドット(QD)技術を適用したモデルを投入。ブースの担当者によれば「QD技術適用のPC向けディスプレイ製品群にはファームウェアのアップデートでHDR10への対応を実践する予定がある」とのこと。ただし、今回のCESでは実動デモはなかった。実際のところ、QD技術適用製品は輝度が高めなので、期待は持てそうである。
ちなみに、サムスンのQD技術適用製品で、ブースに実機展示があったのは、4K(3,840×2,160ピクセル)モデル「UH750」で、28型と31.5型とがラインナップされる。画面はフラット型。AMD FreeSync対応。
また、4KではなくQHD(2,560×1,440ピクセル)解像度の31.5型のQD技術的用モデル「CH711」もラインナップ。画面は1800Rの湾曲型で、アスペクト比21:9。AMD FreeSync対応。
いずれも、QD技術適用と言うことで、色再現性には優れており、sRGB色空間カバー率は125%を謳う。
LGの新製品も、サムスンの新製品もどちらも価格・発売時期は未定だ。
LG、サムスンのPC向けHDR対応ディスプレイは、エッジ型バックライトモデルが中心となりそうで、バックライト輝度の局所制御(エリア駆動)に対応できない。なので、HDR10対応といっても、これまで映像エンジンが独自に判断していた輝度分布や階調表現を、HDR10映像信号に従って行なう、いわば「簡易的HDR対応」となりそうだ。その分、インチ単価的にテレビよりは、買い求めやすくなるだろう。そして、これはHDRコンテンツの普及の加速化にも貢献するはずだ。
CESでは、台湾のASUSも直下型バックライトを採用した27型4K解像度のゲーミング液晶モニタ「ROG SWIFT PG27UQ」をNVIDIAブースで展示していた。
これは、最大リフレッシュレート144Hz、ピーク輝度1,000nit、DCI-P3色空間カバー率100%、G-SYNC対応が謳われている。
気になる直下型バックライトによるエリア駆動分割数は384ゾーン。これは、一般的なテレビ製品を優るとも劣らない分割数で、相当なハイスペックぶりである。価格は1,500ドル以上を想定しているとか。
実際に、その表示映像を見せてもらったが、4K/HDRテレビに肉迫するHDRコントラスト表現でかなりの迫力であった。
2017年は、テレビだけでなく、PCディスプレイにおいてもHDR対応製品が続々と出てきそう。楽しみである。