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東京五輪に向け、三菱の大型LEDビジョン受注増。5面連動や4K/8Kなど進化

 三菱電機は2日、スポーツ施設や街頭などに使われている「オーロラビジョン」などのカラー大型表示装置に関する技術説明会を開催。2020年東京五輪でも需要拡大が見込まれる大型表示装置の、同社の強みなどについて、同社長崎製作所 施設システム部 映像情報システム計画課の麻生英樹氏が解説した。

三菱電機 長崎製作所 施設システム部 映像情報システム計画課の麻生英樹氏

LEDビジョンなど大型表示装置の特徴

 現在、スポーツ施設や街頭などで使われているカラー大型表示装置は、三菱電機が1980年に世界で初めて開発した製品。現在は表示デバイスとしてLEDとLCD(液晶)、DLP(主にリアプロジェクションなど)の方式が使われている。

 このうち、LEDは自発光による約1,500~6,000cd/m2という高輝度や、大型にした際に液晶/DLPとは異なりディスプレイのつなぎ目(目地)が無いのが特徴。一方、画素ピッチは液晶などより広いため、近づくとLEDの隙間が視認できるが、離れた場所から見るディスプレイの場合はつながって見えるため、スポーツ施設や競馬場などでも広く使われている。防水仕様にできるため屋外設置も可能。

LED、LCD、DLPの主な違い

 同社は全て長崎県の工場で一貫生産。国内では東京ドームや新宿駅前のアルタビジョンなど幅広く採用され、同社製で国内の最大サイズは、JRA東京競馬場の約600m2。屋内では東京駅丸の内中央口などにも設置されている。

新宿アルタビジョンは、大型街頭ビジョンで国内初のフルHDとして'14年にリニューアルされた('14年2月撮影)

 オーロラビジョンは海外では「Diamond Vision」として展開しており、'17年には「SOGO 香港 CVISION(シービジョン)」向けにテニスコート5面分を超える約1,376m2)のサイズを納入した。

SOGO 香港 CVISION

 LED以外も展開しており、液晶は成田空港などに納入、DLPはNHK放送センターや、警視庁交通管制センターなどで使われている。

大型ビジョン採用がメジャーリーグ優勝に貢献!?

 カラー大型表示装置の原点となった世界初の試作機は、まだ人の身長程度のサイズだった。その後、1980年に米メジャーリーグのドジャースタジアムが初号機を導入。サイズは7.2×10.8m(縦×横)で、レフトスクリーンに使われた。

世界で最初のカラー大型表示装置試作機

 当時、テレビの普及でスタジアムの観客動員数が減少していたが、このスクリーンによって球場でしか見られない映像を表示することで球場を盛り上げた。さらに、エレクトーンの音と連携した応援用アプリケーションなどスクリーンの活用提案も行ない、同年のドジャースワールドシリーズ優勝に貢献したという。オーロラビジョンを納入したチームが設置後数年内に優勝したことから「勝利を呼ぶスクリーン」とされ、導入も進んだとのこと。

1980年にドジャースタジアムが初号機を導入

 最初のカラー大型表示装置に使われていたのは、LEDではなく小型CRTだった。三菱電機は、ブラウン管工場の技術や、プラズマディスプレイの画像制御技術など同社の技術を結集。さらに、構造設計や信頼性、システムの取りまとめには船舶の技術も使われたという。

 なお、同社では現在展開していないが新しいデバイスとしては、自発光であり曲面などにも対応できるのが特徴の有機EL(OLED)がある。また、ソニーが「Crystal LED」として展開し、サムスンも1月のCESで試作機を披露した、高精細な「マイクロLED」などの技術も注目されている。

 現状ではコストなどが課題とされるものの、有機ELについて麻生氏は「集積化すれば大きな素子になり得るので、価格が下がる可能性はある」として動向はチェックしているという。なお、マイクロLEDは、単に画素密度が高いだけでなく製造工程も大きく異なるため、今の工場をそのまま活かして作ることはできない。

市場規模は'19年まで上昇、4K/8K対応も

 現在の大型ビジョンは、モジュールタイプのLEDを積み重ねて設置する据え置き型の「モジュールタイプ」がスポーツ施設や商業施設のビル壁面に採用。球場でボールなどが当たって一部が破損した場合も、その部分だけ交換すれば引き続き使えるのも利点。競馬/競艇場などには、「ブロックタイプ」が使われる。また、街中を走るトラックの荷台側面などに採用される「モバイルタイプ」や、コンサート会場などで一時的に設置される「モジュラータイプ」もある。

構造のバリエーション

 カラー大型表示装置の売上規模は、2017年度は130億円(前年度比6億円増)。'18年度は136億円、'19年度は155億円と、東京五輪に向けて堅調に増加すると予測。'19年度をピークに、140億円規模で推移すると見ている。現在のメーカー別シェアは三菱電機が1位で、30~35%を占める。現在も長崎での受注は増え続けており、今後の受注によっては生産ラインの拡大も検討するという。

 三菱電機は国内工場で一貫生産する信頼性の高さに加え、「多画面連動表示技術」も強みとしている。千葉ロッテマリーンズの本拠地「ZOZOマリンスタジアム」には、メインスクリーン1面、外野スタンドサブスクリーン2面、バックネット裏サブスクリーン2面で計5面のオーロラビジョンを'16年に納入。5画面を連動させることで、例えばボールの映像が各スクリーンを通ってメインスクリーンに激突するような、ユニークな演出を可能にしている。

 大型ビジョンの4K/8K化については、装置としては対応しているとのことで、3G-SDIのほか、12G-SDIもサポート。今後コンテンツの充実が必要となるが、「2019年のラグビーワールドカップや、2020年東京オリンピックに向けて準備はできている」としている。