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冬アニメで良かった曲は? 高木さん、CCさくら、ゆるキャンをハイレゾで聴く

 ハイレゾのアニメソングで直近のクールを振り返る本企画も4回目。2018年1月期のアニメは、昔を思い出して懐かしくなる作品がいくつもあった。そんな作品の主題歌の中から、筆者が選んだ高音質で魅力的な楽曲を紹介していこう。

 アニメを見ると自分の幼き少年時代を思い出すことはないだろうか? アニソンも同じことが言える。作品を思い起こすだけでなく、当時の甘塩っぱい思い出まで蘇ってくる。音楽の力は偉大だ。という訳で、1月クールでそんな昔懐かしさを刺激する高音質アニソンを紹介していこう。

からかい上手の高木さん OP「言わないけどね」(96kHz/24bit)

 ゲッサンにて連載中の同名コミックのTVアニメ。「あにめのめ」枠の第5弾作品となる。連載当時から高木さんのあまりの可愛さとからかいっぷりが話題だったが、アニメ化が発表されるとさらに期待がヒートアップした。

言わないけどね。(アニメ盤)/大原ゆい子

 音楽面では、エンディングで高木さん役の高橋李依が懐かしのJ-POPをカバーしているのが注目ポイント。高木さんはもちろん、からかいに翻弄される西方くんも意外と可愛いなと感じてしまう。自分の中学時代と重ねて、絶望したり、それでも2人を微笑ましく思ったり、意外にも癒やしを感じる作品だ。

 しみじみとしつつOP主題歌を聴いてみる。シンガーソングライター大原ゆい子の作品で、作詞作曲も彼女によるもの。ささやく様な声は、加工もナチュラルに少し細めの音になっている代わりに、情感や細かなニュアンスの付け方が忠実に聴ける印象。24bitの解像度は、そういった表現の幅をより忠実に再現するのに一役買っている。音数が多いバンドサウンドにあっても、ボーカルはオケに埋もれずクッキリとセンターに定位。キーボードとギターがサウンドに厚みを加えているが、音場は飽和することなくまとまりよく聴けた。左右に定位するアコギが胴鳴りも含めて聴き取れるのは素晴らしい。テレビ放送では気付かなかった音が聴けたとき、ハイレゾ版の醍醐味を再認識する。

言わないけどね。(アーティスト盤)/大原ゆい子

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・大原ゆい子/言わないけどね。(アニメ盤)
・大原ゆい子/言わないけどね。(アーティスト盤)

カードキャプターさくら クリアカード編 OP「CLEAR」(48kHz/24bit)

 一期/二期と同じくマッドハウスが制作し、主演声優陣は続投。本作のアニメ化が与えたインパクトは決して小さくはなかった。漫画の続編が16年ぶりに始まっただけでも驚きだったが、アニメが決まったとあって、さらに注目されている。

坂本真綾/CLEAR

 実は筆者は原作やアニメは未見であった。しかし、初心者が見てもスッと入っていける世界観設定や魅力的なキャラクター、特に当時の大人気声優がそのままキャラクターを演じきっていることに毎週圧倒されっぱなしだ。個人的な話だが、筆者が上京するきっかけとなる作品に出演された方もいて、声を聴けるだけで思わず手を合わせてしまう。

 坂本真綾、作詞・歌唱のOPをハイレゾで聴く。ボーカルに掛かるやや深めのコンプレッサーが、より口元が近い感じを強調し、息遣いの混じる声と相まって心地よく聴ける。大サビにかけて熱を帯びていくボーカルは温度感が生々しく気圧された。前方に押し出し気味に定位するバンドセクションと、包み込むようなストリングスが程よく分離。楽器のディテールは豊かで躍動感もある。ただ、ストリングスと生演奏のバンド、こういう編成の楽曲は96kHzセッションで聴きたいところ。筆者としてはアニソンはデフォルトで96kHz制作にしてほしいと願っている。

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・坂本真綾/CLEAR

ゆるキャン△ OP「SHINY DAYS」(96kHz/24bit)

 高校の野外活動サークルとその周りの人々がゆるやかに時にガッツリとアウトドアを楽しむガールズストーリー。アニメ制作はC-Station。

 登場キャラのやり取りはゆるくても、キャンプはしっかり描かれているだけに、視聴者の心を動かす確かな引力がある。筆者は父親がキャンプ好きだったのでよく山や川に連れて行ってもらった。夜中トイレに起きだした時、夏なのにひんやりと澄んだ河原の空気は今でも忘れられない。本作には、そんな現地の空気感が表現されているのが見事だと思う。

亜咲花/SHINY DAYS

 オープニング曲を歌うのは5pb.所属の亜咲花。地上波オンエア段階で既に音が良かったため、ワクワクしながらハイレゾ版を聴いた。案の定、さらに音が良い。亜咲花の巧みなボーカルはライブのように熱っぽく歌われており、その臨場感はハイレゾで聴いてこそだと思った。コーラスの解像度は高く、楽曲の欠かせない要素として存在感を増している。

 パーカッションはキャンプに踏み出すウキウキや大自然の魅力を表現していて、その生楽器の輪郭や空気感が格別だ。音場は深さと広がりがあり、96kHzならではの広い空間を生かし混濁のないよう適切に整理している。5pb.は、ゲーム音楽などでいち早くハイレゾに積極的だったレーベルであり、その蓄積したノウハウが楽曲にもにじみ出ているようだ。

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・亜咲花/SHINY DAYS

 今回の3曲以外にも、まだまだ魅力的なハイレゾアニソンは多数配信されている。最近はCDと同じタイミングの配信も珍しくなく、「からかい上手の高木さん」のEDに至ってはCDアルバム発売前にハイレゾの単曲配信が実現するという嬉しい展開もあった。ぜひ気になった楽曲は購入して、聴いてみて欲しい。圧縮音源やCDとはまた違った世界が開けることだろう。

 本企画を通じて、筆者はレーベルごとの音の傾向が前よりも見えてくるようになった。究極的には、ミキシングやマスタリングのスタッフ次第で音は変わってくるため、レーベルだけで音を画一化することは不適当なのだが、一定の傾向は感じている。積極的に音を加工するレーベルもあれば、音圧低めで生の質感重視のレーベルもある。どれが正解ということはなく、作品ごとの最適化の結果だと思って聴くと、作り手の意図に気付けるかも知れない。

 ぜひ読者の方もお気に入りの楽曲を見つけたら、スタッフやレーベルをチェックして欲しい。映画などと同じで、作品を“人”や“組織”で追うのは面白いし、興味深いと思う。なかなか実態が見えない音楽制作現場だが、実際に作っているのは人。歌唱や演奏だけでなく、多くの人のこだわりの結晶だ。せっかくのスタジオマスター、ハイレゾでじっくり味わい尽くそう。


    【使用機材】
  • NAS「RockDiskNext」(アイ・オー・データ機器)
  • ユニバーサルプレーヤー(ネットワーク再生)「BDP-103DJP」(OPPO Digital Japan)
  • AVアンプ「AVR-X6300H」(デノン)
  • スピーカー「MENTOR2」(DALI)

橋爪 徹

オーディオライター。ハイレゾ音楽制作ユニット、Beagle Kickのプロデュース担当。Webラジオなどの現場で音響エンジニアとして長年音作りに関わってきた経歴を持つ。聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。Beagle Kick公式サイト