データで読み解く家電の今

ビデオカメラ市場は縮小傾向も、4Kや高倍率ズームに活路

販売実績を基にしたデータから、国内家電市場の実態を検証する(協力:GfK Japan)
ソニー「FDR-AX55」

 今回取り上げるのはビデオカメラ。スマートフォンの隆盛や、デジタルカメラの動画機能強化などにより、市場の縮小がささやかれている。一方で、アクションカメラのような新たなカテゴリも生まれつつある。ビデオカメラ市場の実態はどうなっているのだろうか?

 なお、今回は、ビデオカメラ(カムコーダ)、アクションカメラ、マルチメディアカメラを合計して、「ビデオカメラ」としており、注記なき場合はこれらの合計値を表している。

 家電量販店におけるビデオカメラの販売台数は2011年をピークに減少が続いている。'16年も台数前年比9%減となった。販売台数は過去5年間でほぼ半減している。

 GfK Japanの宮本 徹アナリストは、「内閣府調査によると一般世帯におけるビデオカメラの普及率は40%前半でここ10年変化がないと言われるが、デジタルカメラにおける動画機能向上やスマホの普及によってビデオカメラの使用機会が減少しているため、販売は縮小している」と分析している。

 一方で伸びているのは、GoProに代表されるアクションカメラ。小型で衝撃に強く臨場感のある映像を撮影できることから順調に拡大しており、'16年は台数前年比3割増となった。また、ビデオカメラ販売に占めるアクションカメラの台数構成比をみると、'12年にはほとんどなかったが、'16年は約2割に達している。

GoProの「HERO5 Black」(左)、「HERO5 Session」(右)

 ビデオカメラの売上台数は減少傾向にあるが、平均価格(税抜)は維持されている。'12年の42,000円に対し、'16年は43,600円だ。これを支えるのが4K対応や高倍率ズーム搭載モデルなどが伸長したことによる高付加価値化だ。

 ビデオカメラ(カムコーダ)では4K動画対応が進んでおり、4K対応モデルの販売数量構成比は'16年で20%。ラインナップの拡充により、'15年から10%拡大しているという。「4K動画対応モデルの販売構成比は、デジタルカメラではコンパクトカメラで5%、レンズ交換式カメラで8%に留まっており、4K動画対応についてはビデオカメラが先行していると言える」(Gfk Japan宮本アナリスト)。

パナソニックの4K&ワイプ撮り対応ビデオカメラ「HC-WX995M」

 加えて、ビデオカメラの大きなトレンドとなっているのが、「高倍率ズーム」。光学ズーム倍率40倍以上の数量構成比は48%と、前年から5%拡大している。「デジタルカメラではこの構成比は5%にとどまる。運動会、発表会のような撮影対象から離れた位置で撮影せざるを得ないシチュエーションではビデオカメラが圧倒的に優位」とする。

 '12年以降のデータを見ても、ズーム倍率20倍未満が大幅に減少し、40倍以上が年々増えていることが確認できる。

“iA90倍ズーム”のパナソニック「HC-V480MS」

 GfK Japan宮本アナリストは、「スマートフォンやデジタルカメラは動画撮影を行なう層の拡大に貢献したが、よりキレイで臨場感のある動画を撮影したい、と思ってもらえるような動機が発掘されると、ビデオカメラへのステップアップにつながる。最近は4K動画から高画質な静止画を切り出せたり、サブカメラを利用し撮影者の表情も撮影できるワイプ撮りができたりと従来の動画撮影+αで楽しめるモデルが増えており、性能の進化によってユーザーの表現の幅が広がっている」と分析している。

出典「全国有力家電量販店の販売実績集計/GfK Japan調べ」