樋口真嗣の地獄の怪光線

第41回

ついに劇場公開『新幹線大爆破』、再ミックスした映画用アトモスバージョンをご堪能あれ!

皆様お待たせしました
Netflix映画『新幹線大爆破』Netflixにて独占配信中

さて、そろそろ次の話を絡めつつ、と思いながらも自分がやっている仕事はありがたくも皆様の注目ありきで成立しているワケでございます。

今こんなのやってます、と少なからず期待に胸を膨らませていただきながらも、それを実際にお目にかかるタイミングといえばまだまだ全然先のことであり、あまり早く発表して、お客様の見たい気持ちに火をつけても、その勢いで見ようとして見れなかったら大いなる機会損失になっちゃうワケですよ。

まだ紙媒体――週刊や月刊ペースで発行されていた雑誌が情報源の中心だった時代は、それに載せてもらうために公開日にいちばん近い発売日に記事が間に合うように早めの発表――だいたい取材してもらってから発売まで3~4週間のレスポンスがあったから、公開の1カ月前に完成披露試写会とか完成報告記者会見とか個々の媒体の取材を受けたり、というのが当たり前。それに追随した電波媒体――テレビのワイドショーとかバラエティ番組の映画紹介コーナーがその様子を録画して翌日に流すんだけど、公開日ははるか1カ月後。

それでも露出するチャンスを逃してなるものかというガッツでねじ込んでるんでしょうなあ。それがいつしか情報源の中心は紙媒体から電波媒体に、そして今や電網媒体。試写を見に行っても情報解禁日のせつめいがかならずあります。

熱し易く冷め易い今日びのユーザー様からすれば紹介記事で煽られたらスグに見たい!って衝動に駆られるワケだし,見たくなったらスグに劇場のサイトで座席を予約。昔に比べたら情報の伝播速度も,情動の移ろいもどんどん速くなってきているのです。まさにスピード時代!

ということで、情報解禁日は公開日のわずか16日前の9月17日に解禁になりましたよ!

今日から2週間後の10月3日から『新幹線大爆破』劇場公開決定です!

Netflix映画『新幹線大爆破』
10月3日(金)よりイオンシネマ シアタス調布、イオンシネマ シアタス心斎橋にて2週間限定公開
Netflixにて独占配信中

東京地区は「イオンシネマ シアタス調布」、関西は「イオンシネマ シアタス心斎橋」で2週間限定で映画館で体験できます!

そもそも今年の3月に完成して、東宝スタジオの試写室――広さ188m2・高さ5.5m・座席数96という映画館のような空間でスタッフ・キャストの皆さんにお披露目をしたんですけど、見終わったみんなが口裏合わせたように「映画館で見たい」「どうして劇場公開しないんだ?」なんて声に、千々に乱れる我が心は今年の4月に書いてるし俺!

で、その願いが天に届いてやっとの事で実現です!

もちろん実現してるのはもっと前なんですけどね。最初に申したように早めに発表しても早すぎたら公開日までにもう忘れてるんですよみんな! そして多分俺も!

しかも今Netflixで配信しているのは“ドルビーアトモスホーム”という家庭用フォーマットで構築されたもので、それをアップコンバートして映画館にかけたりできないそうなので、当時まだアトモス対応工事中だった東宝スタジオ ポストプロダクションセンターではなく、昨年末にいち早く導入した角川大映スタジオの映画用アトモス(ドルビーアトモスシネマ)対応ステージで再度ミックス作業をしたのが4月の10、11日。

ミックスの仕上がりを確認する樋口監督

アトモスホーム用に組んだデータを流し込んで再度バランスを調整しながら、ついでに気になっていた犯人の脅迫電話に鷹揚な態度でガチャ切りされた首相補佐官佐々木に対する刑事たちの呪詛混じりのため息をちょっと減らしたり、東鷲宮最終地点での救出準備の無線指示と現場の誘導ホイッスルと音楽の出が同時にぶつかってたのでタイミングをずらしてたり、他にも色々俺にしかわからないレベルの調整を施したバージョンです。

ここに辿り着くまでの苦難の道のり、多くは語れませんので察してくださいネッ!

樋口真嗣

1965年生まれ、東京都出身。特技監督・映画監督。'84年「ゴジラ」で映画界入り。平成ガメラシリーズでは特技監督を務める。監督作品は「ローレライ」、「日本沈没」、「のぼうの城」、実写版「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」など。2016年公開の「シン・ゴジラ」では監督と特技監督を務め、第40回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。