【新製品レビュー】

夏本番、東芝のバッテリ内蔵TV「19P2」を使う

-夜間に賢く充電。緊急時はワンセグTVに


バッテリ内蔵液晶テレビ「REGZA 19P2」

 夏本番を迎え、予断を許さない状況が続いている電力使用状況。高まる節電意識を受け、AV機器も例に漏れず、省エネ・節電を特徴としたテレビやAVアンプなどが多数登場している。その中でも思い切った機能を搭載し、AV誌だけでなく、一般誌やテレビなどでも幅広く紹介されているのが東芝のバッテリ内蔵液晶テレビ「REGZA 19P2」だ。7月上旬から、実売5万円前後で発売が開始されている。

 もともと東芝は、ASEAN市場などの電力網が不安定な地域に向け、不定期の停電に対応したテレビとして、バッテリを内蔵した「PowerTV PC1」を発売している。このテレビが、電力需要が逼迫している日本市場でも役立つと判断。日本市場向けに仕様を整えたのが「19P2」となる。これにより、夏の時期を逃さず発売できたというわけだ。




■バッテリ内蔵でピークシフト

 最大の特徴はバッテリを内蔵した事。以前から薄型テレビでは、各社が消費電力の低さを競っているが、「19P2」はバッテリを内蔵する事で、電力需要が増加する昼間にバッテリを使い、電力需要が比較的少なくなる夜間に充電する事で、「電力を消費する時間帯をずらす」、いわゆる「ピークシフト」を実現した点が新しい。

素材はプラスチック。表面は光沢のある仕上げ。触ると質感はイマイチだが、見た目の高級感はあるスタンド部分も光沢がある

 製品にはバッテリパックが1つ同梱されており、背面に装着する。電源ケーブルをコンセントに接続すると、自動的に充電開始。充電されていれば、電源ケーブルをコンセントから抜いた状態でも、変わらずテレビが視聴できる。アンテナケーブルしか接続されていないテレビが映像を表示している姿は不思議だ。

背面。下部にバッテリを搭載しているバッテリを取り外したところ。容量は6,600mAh
バッテリをACアダプタとサイズ比較

 バッテリの充電はテレビの電源がOFFの時に行なわれ、約5時間の充電で、約3時間のバッテリ駆動が可能。さらに、リモコンの「節電」ボタンを押すと、画面の輝度を抑え、消費電力を約18%削減。バッテリ駆動時間を約4時間まで伸ばす事ができる。

写真ではわかりにくいが、本体前面の電源表示が、充電がスタートするとオレンジに、終了すると赤く光る

 リモコンの「ピークシフト」ボタンを押すと、コンセントを抜かずに、バッテリ使用に切り換えられる。コンセント接続時は画面の右下に一瞬コンセントのマーク、バッテリになると電池マークが表示され、画面中央に「バッテリーに切り換わりました。」と表示される。

 切り換えは一瞬で、バッテリになるとわずかに輝度が下がるが、画面を凝視していないと気が付かないほどの差しかない。バッテリ時に制限される機能なども無いため、コンセント接続時との違和感をほとんど感じずに使用できるだろう。

付属のリモコン。右上にピークシフトボタンを備えているコンセントに接続すると、画面右下にコンセントマークが一瞬表示されるバッテリ駆動に切り替えたところ。画面にメッセージとバッテリのアイコンが表示される

 バッテリの充電は、テレビがコンセントに接続され、電源がOFFになった待機状態で行なわれる。もちろん昼間でも充電されるが、これをよりスマートに行なう「夜間充電」モードも用意されている。設定メニューから同機能をONにすると、夜の10時から朝の9時まで間(テレビの電源が切れて待機状態の時)にだけ、自動で充電するようになる。電力需要の比較的少ない夜間に賢く充電できるというわけだ。

 常時バッテリを装着していると劣化が気になるところだが、装着していなければピークシフト機能は使えないし、停電など、いざという時にも真価を発揮できないため、常時装着が基本になるだろう。バッテリ単品での販売も8月上旬から実施予定(型番:SD-PBP120JD/実売7,000円前後)となっている。テレビ全体の消費電力は30W。待機時の消費電力は0.4W。年間消費電力量は33kWh/年となっている。

3つの固定方法を全て実施したところ
 外形寸法は45.4×20.4×34.2cm(幅×奥行き×高さ)、重量は5kg。筐体にハンドルなどは付いていないが、簡単に持ち運べる重さなので、書斎と寝室など、場所を変えての使用にも対応できそうだ。

 設置時には強力な転倒防止機能も使える。付属の木ネジで接地面に直接固定する方法や、バンドをつけてスタンド背面に木ネジで固定する方法、ひもとフックを使い、壁や柱に固定する事もできる。これらを組み合わせるとより効果的だ。




■テレビの基本機能は網羅

 テレビとしてのスペックは標準的。19型のパネルはTN方式で、解像度は1,366×768ドット。バックライトはLED。コントラスト比は1,000:1。チューナは地上デジタルのみ1基だ。2W×2chのスピーカーも内蔵し、リモコンも付属する。

 電源ONから出画までは約14秒、チャンネル切り換えは約2秒で、いずれも若干遅め。入力端子はHDMI(1080 60p/24p)入力×1、D4×1、コンポジット×1、アナログ音声×2。ヘッドフォン出力を装備している。

 EPGも備えており、番組表文字の拡大・縮小が可能。画面を静止させるメモ機能も用意。オンタイマー、オフタイマー、無操作電源自動OFF、外部入力無信号OFFなども備えている。

EPG画面番組情報表示も可能

 特徴的なのは、ワンセグの受信にも対応している事。停電などを想定したもので、小型のワンセグアンテナも付属している。「停電でもバッテリがあるから、地デジは観られるのでは?」と思われるかもしれないが、例えば地デジアンテナからの信号をブースターで増幅して利用している家の場合、停電するとブースターの電源も落ちてしまうため、テレビ自体はバッテリで動いているが、信号が得られず、地デジが映らないという状況も起こりうる。その際は、フルセグより受信しやすいワンセグを使うというわけだ。

 ワンセグへの切り換えはリモコンで可能。フルセグとワンセグの切り換え時間は4秒。表示モードは100%(画面いっぱい)、50%、25%の3モードを用意。19型はテレビとしては小型だが、ワンセグを全画面するとブロックノイズやフレームレートの低さなど、アラが目立つ。だが、離れてニュースなどを鑑賞する分には問題なく、いざという時の情報収集に役立つだろう。

右側面。本体に操作ボタンを備えるほか、アンテナ入力、AV入力を備えている左側面。イヤフォン出力やHDMI入力などを用意。USBはサービス専用でユーザーは使えない付属のワンセグ用アンテナ

 気になったのはアンテナ入力が1系統しか無い事。チューナは地デジ1基のみなので、通常なら十分だが、このモデルの場合、ワンセグが活躍するのは停電時となる。その際、アンテナ入力が1系統しかないため、ワンセグがそのまま映らなければ、一旦接続されているアンテナケーブルを抜き、ワンセグ用アンテナに付け替えなければならない。普段であればなんでもない作業だが、夜の停電下では懐中電灯片手にワンセグアンテナを探し、取り付ける必要がある。2系統の入力を備えるか、いっそのことワンセグアンテナはロッドアンテナなどで内蔵しても良かったのではないだろうか。



■まとめ

 バッテリとワンセグ受信に対応した事で、大規模な停電が発生しても情報が収集できる安心感はこのテレビならではのものだ。また、非常時のみ活躍するのではなく、夜間充電モードを使う事で、日常的にピークシフトに貢献できるスマートさを実感できるのも魅力と言えるだろう。

 一方で、テレビとしての基本スペックは網羅しているが、USB HDDを接続しての録画や、ネットワーク対応、、USBメモリやSDカードの読み込み機能など、トレンドの機能は備えていない。「19P2」は7月29日現在、ネットの通販サイトなどを見るとおよそ4万円台で販売されているが、例えば東芝の19型でUSB HDD録画やDLNAに対応した「19RE2」や「19RS2」も同様に4万円台で販売されている所が多い。どちらの機能を重視するかが肝になるが、既に録画環境が別に存在し、寝室や書斎などでパーソナルに使う2台目、3台目のテレビが欲しい場合、安心感を選ぶというのもアリだ。

 また、今後はより大型のテレビにもバッテリ内蔵が広がっていく可能性もあり、その流れはテレビだけに留まらないかもしれない。今後のAV機器の方向性を占うモデルとも言えるだろう。


(2011年 7月 29日)

[AV Watch編集部山崎健太郎 ]