西田宗千佳のRandomTracking
第449回
Amazonの“指輪”登場、Echo新デバイスを体験。スマートグラス、イヤフォンなど多数
2019年9月26日 14:13
米Amazonは現地時間の9月25日、ワシントン州シアトルにある本社で、今年の年末以降に発売する新デバイスの発表会を行なった。
多数のデバイスが発表されているが、まずは現地からハンズオンイベントの様子をお伝えしたい。なお、Amazonのデバイス事業に関する新方針などについては、別途解説記事の掲載を予定している。
「Echo」デバイスとしてスマートグラスとスマートリングが登場
今回Amazonが発表したものの中でもサプライズとなったのは、メガネ型Echoデバイスの「Echo Frames」と、指輪型のEchoデバイスである「Echo Loop」だろう。
どちらも、Amazonが「Day 1 Editions」と呼ぶ製品で、マス向けに販売する段階ではなく、オンラインで登録した人に少量ずつ、招待の形で販売するものだ。これまでにも、Echoを最初に販売した時などに採られた方法だが、狙いは「顧客から使い方などについて学んだ上で商品を磨き上げる」ことにある。後日、ソフトウエアやサービスの完成度を高めてから一般販売、という形になる。現状、日本は販売地域に入っていない。
まずFramesの話から行こう。メガネというとAR機器、スマートグラスというイメージが強いだろうが、Echo Framesは「声に特化したEchoデバイス」だ。映像を表示する機能はなく、メガネの内側には、インジケーターとしての小さなLEDがあるだけだ。人とのインタラクションは、マイクからのAlexaコマンドと、ツルの部分に仕込まれたスピーカーから聞こえる音声による。
FramesはスマートフォンとBluetoothで連携して動作する。動作対象は「今のところAndroidのみ。iOSへの対応もしたいと考えているが、まずはAndroidから」(Amazon説明員)という形だ。
使い方はシンプル。スマートスピーカーやスマホ上の音声アシスタントを使う時と同じように、「Alexa、」と語りかけて命令を送ればいい。スピーカーから小さな音で自分の耳にだけAlexaの応答が聞こえる。映像に関する機能を組み込まなかった理由は「どこでも視界を邪魔されず、シンプルな操作に集中した」(Amazon説明員)ためだ。通知もAlexaの声で聞こえてくる。
ディスプレイなどの複雑な仕組みがないためか、Framesはとても軽い。本体重量は31gとされており、一般的なメガネよりちょっと重い程度。ディスプレイ搭載のスマートグラスは100gを超えるものが多いので、かなり使い勝手は異なる。
バッテリー動作時間は「一日」と、大まかにしか示されていない。だが、日中はつけっぱなしで使えることを想定しているそうだ。充電は付属の専用ケーブルを使うが、電源はUSBから得られる。
実はアメリカでは、すでにボーズ(BOSE)が似たコンセプトの、音声伝達に特化したスマートグラス「Bose Frames」を発売しており、Echo Framesも似たコンセプトといえる。ただ、ボーズはAlexaのような音声アシスタント技術を持っていないので、音楽を含めた「音のAR」をコンセプトにしている。それに対してEcho Framesは、音声に特化したスピーカーを搭載していて、音楽を流すことは想定していない。一方、Alexaという強い音声アシスタントを持っているだけに、Alexaありきの製品になっている。
価格は179.99ドル。
もっとも小さなEchoデバイスは「指輪」だった
もうひとつの「Day1 Editions」デバイスである「Echo Loop」は、Amazonいわく「もっとも小さなEchoデバイス」というコンセプトの製品だ。
指輪型のデバイスだが、ここにマイクとスピーカーが入っている。ボタンがあって、「Alexa」のコマンドワードを言う代わりに、ボタンを押しながらAlexaに命令を与える。反応はスピーカーから聞こえるので、リングを耳にあてるようにして聞く。内部に振動デバイスがあって、通知などはその振動で知ることができる。Alexaが持つあらゆる機能を、スマホを持つことなく小さな機器で使う、というのがコンセプトだ。
こちらもスマホとBluetoothで連携して動作するという意味では、Echo Framesと同じ。あちらはメガネでAlexaを持ち歩いたのに対し、こちらは指輪で持ち歩く、という違いといっていい。
価格は129.99ドル。こちらも「Day1 Editions」扱いなので、招待者のみへの販売。日本での扱いは未定だ。
Amazonの「完全ワイヤレスノイズキャンセル」イヤフォン、Echo Budsは「ボーズとのコラボ製品」だった!
同様に、日本での扱いは未定ながら、注目の新製品を紹介する。
「Echo Buds」は、Echoブランドの完全ワイヤレスイヤフォン。いわゆるAirPods対抗製品だが、AirPodsと違うのは、Alexaが前提となっていて密接に連携していること、そして、ノイズキャンセル機能が搭載されていることだ。
サイズ的には、インイヤー型の完全ワイヤレスイヤフォンでは一般的なもの。ちょっと違うのは、サイドの部分がタッチパッドになっていて、ダブルタップするとノイズキャンセルが効くことだ。
このノイズキャンセル機能は、なんとボーズとの提携によって実現されたもので、実質Amazon・ボーズダブルブランドでの完全ワイヤレスイヤフォンといえる。
短時間だが音質も確かめられたので、感想をお伝えしておこう。
率直にいって、音質は「まあまあ」といったところ。超高音質、という印象はなかったが、このクラスの製品としては十分なのではないだろうか。ノイズキャンセルの機器は良かった。デモ会場はかなりうるさい場所なのだが、ざわめきが消えて音楽に集中できた。さすが、ボーズとの連携による機能だ。ノイズキャンセルのオン・オフとはいうものの、「オフ」は単にノイズキャンセルを切るのではなく、「ノイズとして切るのではなく外音を取り込む」タイプの機能になっていた。
本体だけで5時間、収納するボックスとセットで最大20時間の再生が可能だ。ボックスの充電には、microUSB Type-B端子が使われている。
価格は129.99ドルで、アメリカでは10月30日から出荷される。日本での出荷予定は公表されていないが、ぜひ日本でも販売してほしい製品だ。
Dolby Atmos・360 Reality Audio対応「Echo Studio」は立体オーディオ入門に最適
オーディオビジュアル的には、各種Echoデバイスがモデルチェンジし、新規製品も追加された点が大きい。こちらは、日本でも販売され、すでに本日から予約が始まっている。
一番の目玉は、Dolby Atmos対応のスマートスピーカーである「Echo Studio」(24,980円/税込)。内部に5つのスピーカーを内蔵し、Atmosの立体感のある音楽を1台で楽しめる。
発表会後のパーティーに顔を出したAmazonのジェフ・ベゾスCEOも、Echo Studioを「今回の新商品の中でも特に気に入っている。素晴らしいサウンドを楽しめる」と答えるほど気合いが入った製品だ。
音楽だけでなく映画にも対応しており、Fire TVと連携し、Dolby Atmos対応作品やDolby Audio 5.1ch対応作品を楽しむこともできる。2台ペアリングしてステレオ定位を上げることも可能だ。
試聴したが、低音などの迫力よりも空間定位の楽しさを優先したデバイス、という印象を受けた。音質はなかなかだ。
実はDolby Atmosだけでなく、ソニ−が開発中の「360 Reality Audio」にも対応する。360 Reality Audioについては今年のCESでのレポート記事を参照していただきたい。そんな事情もあり、「一番安い3Dオーディオ入門機」になる可能性が高い。
サイズ的には現在のEchoよりも2周り大きく、ライバル製品でいえばアップルの「HomePod」に近い。HomePodもAtmosに対応したりすると、非常に良いライバルになるのだが……。
Echoシリーズは一斉刷新
Echoも音楽サービスを重視し、音質が向上している。現在のEchoシリーズのデザインに合わせ、ファブリック調のデザインになった。価格は1万1,980円(税込)。
Echo DotにはLED時計がついた。「いやいや、Echo Showもあるでしょ」と思うが、こちらは価格が6,980円(税込)と安い。時計や外気温、タイマーなどをシンプルに見たいなら、安価な「Echo Dot with clock」でもいい。
もうひとつ、さらに安価で小さなEchoとして登場したのが「Echo Flex」だ。こちらは音楽を聴くという目的ではなく、「音声コマンドを気軽に使う」ことが目的。Echo Dotを壁際などに貼り付けている人も多いが、そういうことをもっと簡単に、安価に実現するデバイスだ。本体にコンセントが直付けされていて、そのまま差し込める。価格は2,980円(税込)。
キッチンや洗面所、廊下などにつけることを想定しており、USBコネクターも備えている。ここからスマホなども充電できるのだが、ナイトライトをつけることで「音声でナイトライトをコントロール」したり、振動センサーを組み合わせて「自宅内に生活の振動がある時間はセキュリティカメラをオフ」といった使い方もできる。