西田宗千佳のRandomTracking

第449回

Amazonの“指輪”登場、Echo新デバイスを体験。スマートグラス、イヤフォンなど多数

米Amazonは現地時間の9月25日、ワシントン州シアトルにある本社で、今年の年末以降に発売する新デバイスの発表会を行なった。

発表会場となった、Amazon本社隣にある同社設備のThe Spheres

多数のデバイスが発表されているが、まずは現地からハンズオンイベントの様子をお伝えしたい。なお、Amazonのデバイス事業に関する新方針などについては、別途解説記事の掲載を予定している。

「Echo」デバイスとしてスマートグラスとスマートリングが登場

今回Amazonが発表したものの中でもサプライズとなったのは、メガネ型Echoデバイスの「Echo Frames」と、指輪型のEchoデバイスである「Echo Loop」だろう。

メガネ型のEchoデバイスである「Echo Frames」。メガネの下のものは付属ケース
指輪型のEchoデバイス「Echo Loop」

どちらも、Amazonが「Day 1 Editions」と呼ぶ製品で、マス向けに販売する段階ではなく、オンラインで登録した人に少量ずつ、招待の形で販売するものだ。これまでにも、Echoを最初に販売した時などに採られた方法だが、狙いは「顧客から使い方などについて学んだ上で商品を磨き上げる」ことにある。後日、ソフトウエアやサービスの完成度を高めてから一般販売、という形になる。現状、日本は販売地域に入っていない。

まずFramesの話から行こう。メガネというとAR機器、スマートグラスというイメージが強いだろうが、Echo Framesは「声に特化したEchoデバイス」だ。映像を表示する機能はなく、メガネの内側には、インジケーターとしての小さなLEDがあるだけだ。人とのインタラクションは、マイクからのAlexaコマンドと、ツルの部分に仕込まれたスピーカーから聞こえる音声による。

Echo Frames。見た目的にはツルが太いクラシックなメガネ。レンズ部には電源などの動作を確認するLEDがあるが、ディスプレイの類いは内蔵されていない

FramesはスマートフォンとBluetoothで連携して動作する。動作対象は「今のところAndroidのみ。iOSへの対応もしたいと考えているが、まずはAndroidから」(Amazon説明員)という形だ。

使い方はシンプル。スマートスピーカーやスマホ上の音声アシスタントを使う時と同じように、「Alexa、」と語りかけて命令を送ればいい。スピーカーから小さな音で自分の耳にだけAlexaの応答が聞こえる。映像に関する機能を組み込まなかった理由は「どこでも視界を邪魔されず、シンプルな操作に集中した」(Amazon説明員)ためだ。通知もAlexaの声で聞こえてくる。

ディスプレイなどの複雑な仕組みがないためか、Framesはとても軽い。本体重量は31gとされており、一般的なメガネよりちょっと重い程度。ディスプレイ搭載のスマートグラスは100gを超えるものが多いので、かなり使い勝手は異なる。

バッテリー動作時間は「一日」と、大まかにしか示されていない。だが、日中はつけっぱなしで使えることを想定しているそうだ。充電は付属の専用ケーブルを使うが、電源はUSBから得られる。

下部には充電のための専用ケーブルをつなぐコネクターが見える

実はアメリカでは、すでにボーズ(BOSE)が似たコンセプトの、音声伝達に特化したスマートグラス「Bose Frames」を発売しており、Echo Framesも似たコンセプトといえる。ただ、ボーズはAlexaのような音声アシスタント技術を持っていないので、音楽を含めた「音のAR」をコンセプトにしている。それに対してEcho Framesは、音声に特化したスピーカーを搭載していて、音楽を流すことは想定していない。一方、Alexaという強い音声アシスタントを持っているだけに、Alexaありきの製品になっている。

価格は179.99ドル。

もっとも小さなEchoデバイスは「指輪」だった

もうひとつの「Day1 Editions」デバイスである「Echo Loop」は、Amazonいわく「もっとも小さなEchoデバイス」というコンセプトの製品だ。

Echo Loop。ちょっとごつい指輪のように見えるが、これがEchoデバイスである

指輪型のデバイスだが、ここにマイクとスピーカーが入っている。ボタンがあって、「Alexa」のコマンドワードを言う代わりに、ボタンを押しながらAlexaに命令を与える。反応はスピーカーから聞こえるので、リングを耳にあてるようにして聞く。内部に振動デバイスがあって、通知などはその振動で知ることができる。Alexaが持つあらゆる機能を、スマホを持つことなく小さな機器で使う、というのがコンセプトだ。

発表会で示された、Echo Loopの内部構造

こちらもスマホとBluetoothで連携して動作するという意味では、Echo Framesと同じ。あちらはメガネでAlexaを持ち歩いたのに対し、こちらは指輪で持ち歩く、という違いといっていい。

価格は129.99ドル。こちらも「Day1 Editions」扱いなので、招待者のみへの販売。日本での扱いは未定だ。

Amazonの「完全ワイヤレスノイズキャンセル」イヤフォン、Echo Budsは「ボーズとのコラボ製品」だった!

同様に、日本での扱いは未定ながら、注目の新製品を紹介する。

「Echo Buds」は、Echoブランドの完全ワイヤレスイヤフォン。いわゆるAirPods対抗製品だが、AirPodsと違うのは、Alexaが前提となっていて密接に連携していること、そして、ノイズキャンセル機能が搭載されていることだ。

完全ワイヤレスイヤフォンの「Echo Buds」。価格は129.99ドルで、ノイズキャンセル機能を搭載している

サイズ的には、インイヤー型の完全ワイヤレスイヤフォンでは一般的なもの。ちょっと違うのは、サイドの部分がタッチパッドになっていて、ダブルタップするとノイズキャンセルが効くことだ。

イヤフォン本体。ちょっと大きめだが、ノイズキャンセル内蔵なら納得。表面はタッチパッドになっていて、2回タップするとノイズキャンセル機能が切り替わる
耳につけた様子。意外と目立たない

このノイズキャンセル機能は、なんとボーズとの提携によって実現されたもので、実質Amazon・ボーズダブルブランドでの完全ワイヤレスイヤフォンといえる。

短時間だが音質も確かめられたので、感想をお伝えしておこう。

率直にいって、音質は「まあまあ」といったところ。超高音質、という印象はなかったが、このクラスの製品としては十分なのではないだろうか。ノイズキャンセルの機器は良かった。デモ会場はかなりうるさい場所なのだが、ざわめきが消えて音楽に集中できた。さすが、ボーズとの連携による機能だ。ノイズキャンセルのオン・オフとはいうものの、「オフ」は単にノイズキャンセルを切るのではなく、「ノイズとして切るのではなく外音を取り込む」タイプの機能になっていた。

本体だけで5時間、収納するボックスとセットで最大20時間の再生が可能だ。ボックスの充電には、microUSB Type-B端子が使われている。

充電用のボックス。こちらを併用すると最大20時間動作。充電端子はmicroUSB Type-B

価格は129.99ドルで、アメリカでは10月30日から出荷される。日本での出荷予定は公表されていないが、ぜひ日本でも販売してほしい製品だ。

Dolby Atmos・360 Reality Audio対応「Echo Studio」は立体オーディオ入門に最適

オーディオビジュアル的には、各種Echoデバイスがモデルチェンジし、新規製品も追加された点が大きい。こちらは、日本でも販売され、すでに本日から予約が始まっている。

新Echo商品群。筒状のものが第三世代Echo、ひときわ大きなものがEcho Studio

一番の目玉は、Dolby Atmos対応のスマートスピーカーである「Echo Studio」(24,980円/税込)。内部に5つのスピーカーを内蔵し、Atmosの立体感のある音楽を1台で楽しめる。

発表会後のパーティーに顔を出したAmazonのジェフ・ベゾスCEOも、Echo Studioを「今回の新商品の中でも特に気に入っている。素晴らしいサウンドを楽しめる」と答えるほど気合いが入った製品だ。

Amazonのジェフ・ベゾスCEO
Echo Studio。隣の第三世代Echoと比べると大きさがわかりやすい

音楽だけでなく映画にも対応しており、Fire TVと連携し、Dolby Atomos対応作品やDolby Audio 5.1ch対応作品を楽しむこともできる。2台ペアリングしてステレオ定位を上げることも可能だ。

Echo Studioの内部
Echo Studio上部。音量やミュートなど少数のボタンが用意されている

試聴したが、低音などの迫力よりも空間定位の楽しさを優先したデバイス、という印象を受けた。音質はなかなかだ。

実はDolby Atomosだけでなく、ソニ−が開発中の「360 Reality Audio」にも対応する。360 Reality Audioについては今年のCESでのレポート記事を参照していただきたい。そんな事情もあり、「一番安い3Dオーディオ入門機」になる可能性が高い。

サイズ的には現在のEchoよりも2周り大きく、ライバル製品でいえばアップルの「HomePod」に近い。HomePodもAtomosに対応したりすると、非常に良いライバルになるのだが……。

Echoシリーズは一斉刷新

Echoも音楽サービスを重視し、音質が向上している。現在のEchoシリーズのデザインに合わせ、ファブリック調のデザインになった。価格は1万1,980円(税込)。

第三世代Echo

Echo DotにはLED時計がついた。「いやいや、Echo Showもあるでしょ」と思うが、こちらは価格が6,980円(税込)と安い。時計や外気温、タイマーなどをシンプルに見たいなら、安価な「Echo Dot with clock」でもいい。

Echo Dot with clock

もうひとつ、さらに安価で小さなEchoとして登場したのが「Echo Flex」だ。こちらは音楽を聴くという目的ではなく、「音声コマンドを気軽に使う」ことが目的。Echo Dotを壁際などに貼り付けている人も多いが、そういうことをもっと簡単に、安価に実現するデバイスだ。本体にコンセントが直付けされていて、そのまま差し込める。価格は2,980円(税込)。

Echo Flex。ナイトライトなどと組み合わせて廊下などのコンセントに挿して使う

キッチンや洗面所、廊下などにつけることを想定しており、USBコネクターも備えている。ここからスマホなども充電できるのだが、ナイトライトをつけることで「音声でナイトライトをコントロール」したり、振動センサーを組み合わせて「自宅内に生活の振動がある時間はセキュリティカメラをオフ」といった使い方もできる。

Echo Flex。ナイトライトなどと組み合わせて廊下などのコンセントに挿して使う

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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