小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第799回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

借家でも“壁掛けテレビ”にしたい! 「ディアウォール」を活用したDIYで挑戦

憧れの壁掛けテレビ

 4Kテレビも、ハイエンドモデルは有機ELが目立つようになって来た。有機ELの画質的なメリットは色々あるが、形的なメリットも大きい。すなわちディスプレイ部を超薄型に作る事ができる点である。

 そこまで薄型化できると、必然的に壁掛けにしたくなるものだ。いや、有機ELでなくても、テレビを壁掛けにしたらどんなにステキだろうと思って居る方も多いだろう。筆者もそんな1人だった。

 筆者の場合、壁掛けにしたいと思っていてもできない理由は簡単だ。家が借家だからである。壁掛けにするためには、壁に穴を開けて金具をネジ留めしなければならない。強度が足りなければ、いったん壁を壊して補強するなどの工事も必要だろう。そんなことは、借家では夢のまた夢である。

 そんな中、ネットで“壁に穴を空けず、新たに柱を立てることで棚を作る”という記事を見かけた。柱を立てるとは物騒な話だが、実際には「つっぱり棒」のような原理で床と天井の間に挟み込むための治具があるらしい。なるほど、これなら壁に穴を開けずに壁掛けテレビが実現できそうだ。さっそく注文してみた。

まずは材料の準備

 最初に購入したのは、WAKAIというメーカーの「ディアウォール」という商品。上下セットで販売されており、ネットでは800円程度で購入できる。また一般のホームセンターでも扱っているが、価格はやや高めで、筆者の近所のホームセンターでは1,000円強で販売されていた。なお、これは柱の端に取り付けるもので、別途柱は購入する必要がある。

WAKAIの「ディアウォール」

 今回は柱を2本立てるので、2つ購入している。中身は、柱となる角材の上下にはめ込むための樹脂製のカップである。片方にはバネが仕込まれており、このバネの力で、柱を上下に突っ張るわけだ。底部には滑り止め素材が貼られている。

片方にバネが仕込まれている

 この「ディアウォール」、詳細は後述するが、メーカーのサイトでは「コンクリートの天井で実施した社内試験で、30kgのおもりを長期間吊り下げた試験で倒れなかった」とのことだが、様々な環境条件で耐荷重は異なるため、「安全を保障するものではなく、ご自身で確認しながらの設置をお願いします」とされている。今回のテレビ壁掛けはあくまで筆者の例として、自己責任でお願いしたい。また、ディアウォールには耐震用の突っ張り機能は無いので、耐震用を含む家具転倒防止器具としては使えない点もご留意いただきたい。

 さてディアウォールで使える柱は、「ツーバイフォー」と呼ばれる規格に適合するものだ。ツーバイフォーとは元々はアメリカ発祥の建築工法で、断面が2インチ×4インチの木材を使う。ホームセンターでは普通に売られている規格品だ。

使用するのはツーバイフォーの木材

 設置する場所の床から天井までの高さをあらかじめ測っておく。今回設置するダイニングの高さは2,400mmだったので、これより長めのものを買って、あとは切って細かく調整していく。

 ツーバイフォーの木材は長さも規格になっているようで、だいたいどこでも1,820mm、2,440mm、3,050mm、3,660mmとなっているようだ。今回は2,440mm×2本を購入した。価格はホームセンターによって、あるいは木材の材質によって多少変わるようだが、目安としては1本あたり600~800円程度である。意外に安い。

 安いのはいいのだが、2m40cmもある木材をそのままどうやって家まで運ぶのか、そこを考えておく必要がある。大して重くはないので、大人2人で行けば歩いて持って帰れないこともないが、それはホームセンターが徒歩圏内にある場合だけである。

 筆者が所有する自家用車はホンダ・フィットであるが、これは助手席から後部トランクまで、だいたい2,500mmぐらいある。したがって2,440mmの木材までだったら、自分の車で持って帰れる。一方でそれ以上長いものだと、一般の乗用車では難しくなる。一部のホームセンターでは、軽トラックを30分や1時間程度無料で貸してくれるところもあるので、事前に調べておくといいだろう。

 次はテレビの方だ。今回取り付けるテレビは、元々ダイニングに設置してあった、2007年発売の東芝REGZA「37Z3500」である。サイズは37型で、重量はおよそ23kg。脚部を外せば20kg程度だが、古い製品だけにかなり重い。2014年に4KのVIERA「TH-40AX700」を購入したのだが、こちらは40型で11kgしかない。同じ液晶テレビでも、10年で重量が約半分になった計算だ。

 これだけ古いテレビになると、すでに純正の取り付け金具を入手するのは難しい。筆者もこういう金具は純正のものしかないのだろうと思っていたのだが、探してみると、汎用品というのがあった。「テレビ 壁掛け」で検索してみると、テレビの壁掛け金具専門店がいくつも見つかる。今回は楽天内の「壁掛けショップ」というところが販売、定番とされているTVセッターチルト 1 Mサイズ (3,780円)を購入してみた。

柱を立てる

 金具が届いたのでさっそくテレビに付けてみた。対応機種一覧には機種が古すぎて載っていなかったのだが、所詮は背面に4箇所ねじ穴が空いているだけなので、問題なく取り付けできそうであった。

届いた金具が取り付けられることを確認
金具の上部がフック状になっている
フックを受け側の金具に引っ掛けることで壁掛けになる仕組み

 テレビの脚部の外し方は、ここ数年の物と昔のものとでは変わってきている。それというのも、昔は壁掛けにするなどというのはメーカーのサービス対応だったので、説明書に脚部の外し方が書いてなかったのである。

 ところが最近のテレビは、重量が軽量化したこともあり、梱包を薄型化するという狙いもあるのだろうか、脚部をユーザーが自分で取り付けるように変わってきている。従って説明書に脚部の取り付け方が書いてある。逆順にやっていけば、取り外しもできるわけだ。

 REGZA「37Z3500」の場合は前者で、説明書に脚部の取り付け、取り外し方が書いていなかった。すでに忘れてしまったが、届いた時からすでに脚部がついた状態だったのだろう。

 脚部の外し方をネットで検索してみたところ、価格コムの書き込みで、背面のネジ4箇所を外すという記載が見つかった。この通りネジを外してみたら、無事脚部を引き抜く事ができた。多くのテレビの脚部は、二股フォーク状の支持金具をテレビの底面から差し込み、背面からネジ留めする形になっているようだ。外し方で悩んだら、まずはそういう構造を頭でイメージするといいだろう。

 さて次はいよいよ柱の設置である。床から天井までは2,400mmだが、柱を2,400mmで切ってはいけない。ディアウォールが挟まるぶんがあるので、それも考慮に入れないとはまらなくなるわけだ。実際に現物で測定したところ、ディアウォールは上下で40mmほどのスペースが必要だということがわかった。そこで、柱は2,360mmで切断した。

 まずは仮に柱を立ててみる。ここでのポイントは、ディアウォールのバネがある方は柱の上の方に設置するということだ。下の方に設置すると、柱の自重や乗せたものの重みでバネが沈み、柱として突っ張れないので注意していただきたい。

 筆者宅は、天井が化粧板になっている。これは傷つけられないので、まず天井側のほうを先に設置位置にピッタリとセットし、床のほうを斜め位置から足で押し込みながら、はめ込んでいく。

下側を滑らせてはめ込む

 所詮は上下で挟まっているだけなので、強度を出すためにはきちんと垂直を測る必要がある。水準器はあったほうがいいだろう。2本の柱の幅は、テレビ取り付け金具の受け側の金具の幅で必然的に決まってくる。テレビの高さを想定しながら、慎重に取り付け位置を調整していく。もちろん受け側の金具の水平もきちんと測る必要がある。テレビが斜めにかしいでは、せっかくの壁掛けも台無しだ。

柱の垂直を測る
受け側の金具もきちんと水平を出しておく

いよいよテレビの設置

 テレビはまず金具の上のほうのフックを受け側の金具に引っ掛ける。そこからゆっくり降ろしていくと、下の方も位置が決まる。そして脱落防止のためのビスを下から止める。このビスを止めるには隙間があまりないので、長めのドライバーが必要になる。

上側のフックを引っ掛けたところ。重いので、2人以上で作業した方がいいだろう
底部の外れ止めビスを止めておく

 テレビを取り付けたら、テレビ自体の水平も測っておく。はめ込みは多少の遊びがあるので、受け側の金具が水平でも、テレビが傾いているという事もあり得る。

テレビ自体の水平も確認

 今回購入した金具は上下にチルト機能が付いているが、これには大きな意味があった。というのも、背面の配線を行なう際に、チルト機能を使ってテレビを上向きにしないと、手が入らないのだ。取り付け金具には薄型を謳うものもあるが、こういうものにはチルト機能がないので、テレビを設置してしまう前に背面の配線をすべて終わらせてからでないと、あとから繋ぐのは難しいだろう。

 冒頭でも書いたが、テレビのような重いものを乗せる際に気になるのは、ディアウォール自体の耐荷重についてだ。ネットでもいろいろ実用例を元に検証されているようだが、これ自体はただの柱であり、垂直方向に荷重を受けるだけなので、耐荷重という考え方ができない。

 もちろん、テレビは柱から前面に出ているので、重心位置は柱より前にあるわけだが、柱自体が前に倒れてくるかどうかという測定は、ディアウオールの天井接地面と天井の摩擦係数でしか測れないので、何らかの基準を出すのは難しいだろう。

 筆者宅の場合は、テレビを揺すったぐらいでは柱が外れるようなことはない程度の強度はあるが、基本的にはこうしたDIYは自分でリスクを負うものだ。大きな地震で倒れても、どこに文句を言えるわけでもないので、実施するなら皆さんもその覚悟で行なっていただきたい。

 さて、ついでにテレビ下にテレビ用のスピーカーを置きたかったので、棚を設置した。下だけ棚があってもバランスが悪かったので、上にもちょこっと何か置けるように少し短い棚を設置した。この棚受けは、棚が折り畳みできる機構が付いている。必要なくなったら畳むことができるわけだ。

ついでに棚も付けてみた

 実際に壁掛けにしてみると、壁からテレビ画面までは230mmあった。そこそこ出っ張ってはいるが、脚部がないので、トータルでは設置の奥行きは短くなったと言えるだろう。それよりも、これまで何も置きようがなかったただの壁に、テレビやその他の付属品が置けるようになったことで、部屋が広々と使えるようになった。

総論

 家庭内において壁面というのは、案外使い道がないものである。そこに家具が置けるのであれば、スペース的には有効に使えたことになるのだろうが、置く家具もないような場合は、本当にただの壁でしかなく、せいぜいカレンダーを貼ったりする程度しか活用できなかった。

 筆者宅では、テレビの利用時間が日に日に減っていっている。その代わりスマホやタブレットでのコンテンツ視聴が伸びているわけだが、その割にはテレビが、未だ膨大なスペースを占有していた。かといって、無くしてしまうほど割り切れるわけでもないのである。

 そうした中途半端な立ち位置となったテレビをデッドスペースに追い出すことで、部屋の用途がガラリと変わった。以前ならば、もっとテレビを活用するために壁掛けにしたものだろうが、テレビがサブスクリーンになるという新しい考え方の結果、壁掛けなのである。

 これまでテレビは出窓のところに乗せていたので、出窓が出窓としての機能を果たしていなかった。元々は採光のためにあるものなので、部屋も暗かった。テレビを壁掛けにしたことで出窓の方も出窓らしく使う事ができるようになった。

以前はテレビが「占拠」していた出窓

 こちらには眠っていたスピーカーとフルデジタルアンプを設置し、Chromecast Audioを光デジタルで接続して、いつでもワイヤレスで音楽が聴けるようにしてみた。ブックシェルフが余裕で置けるので、ダイニングが第2のリスニングルームに変わった。食事中にも、低音量ながらしっかりしたサウンドが楽しめるので、満足度は高い。

 壁掛けにすると片づくということがわかったので、今度は玄関にも柱を設置してみた。こちらは土間と上り框(あがりかまち/段差部に水平に渡した横木)にまたがって立てざるを得なかったので、2,440mmの柱では長さが足りない。

 そこで同じくディアウォール関連商品として売られている、ツーバイフォーのジョイントを使って木材を繋いでいる。これは前後からフタで挟み込むような形状をしているが、前後から柱をネジ留めして固定するという仕組みになっている。

玄関にも柱を設置して自転車を整理
途中で柱をジョイントしている

 木製の棚受けを買って来て、自転車を引っ掛けられるようにした。自転車はこれまで玄関の土間に立てかけているだけだったので、なにかあればハンドルが倒れてくるし、ゴチャゴチャして落ち着かない感じだったが、すっきり片付けることができた。

 皆さんの家にも、特に用途のない殺風景な壁はないだろうか。そこに柱を立てることで、新しいインテリアが楽しめるようになる。下に散らかっている物を棚に上げるだけで、ずいぶんと片付いた感じになるものだ。

 「家が狭い!」と感じる方は、ぜひ「柱の新設」にチャレンジして、スペースを有効活用していただきたい。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。