小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第946回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

どこでもTV+映像配信、防水プライベート・ビエラ最上位「UN-15TD10」を試す

最上位モデル、UN-15TD10

テレビ三昧を究極化するテレビ

チューナー部とモニター部を切り離し、どこでもテレビが見られるような製品は、黎明期には多くのメーカーがトライアル的な意味合いで参入したが、結果的にはパナソニックのプライベート・ビエラシリーズがほぼほぼ定番の位置を占める。このネットストリーミング時代にどうなのという声も聞かれるが、実は地味に人気のある商品である。

パナソニックも最初はDIGAにオプションでワイヤレスモニタをプラスするというところからスタートしたが、2014年からほぼほぼ今のコンセプトと変わらぬ「プライベート・ビエラ」初号機を投入し、現在に至っている。

この夏に投入されるプライベートビエラは、合計5タイプ。内訳としては、防水モデル3タイプ、スタンダードモデル2タイプとなる。防水モデルが、お風呂やキッチンで使うことを想定した商品だ。モデル名と特徴は以下の通り。

上記の表を見ていただければお分かりの通り、最上位モデルはダブルチューナーに内蔵HDD、BDドライブまで搭載と、なかなかゼイタクな仕様ながら、価格的には10万円を大きく割り込む。他のモデルで録画する際には、別途外付けHDDが必要になる。また15TD10、15N10、10N10に関しては、コントロールは完全にタッチパネルだけで完結しており、標準ではリモコンが付属しないのも特徴である。E10はタッチパネル非対応なのでリモコン付属だ。また、スタンダードな19インチモデルは、テレビのアンテナ線が引けない部屋でテレビを見るという、半常設で使うモデルとなっている。

これらスタンダードモデルは7月下旬発売、防水モデルは8月下旬発売となっている。今回はこの中でも、防水モデルの最上位機種、「UN-15TD10」をテストしてみたい。過去この連載でもプライベート・ビエラは何度も取り上げてはいるが、前回のレビューは3年前だ。その進化ぶりをチェックしていこう。

シンプルに徹した設計

まずは本体というか、デッキ部分から見ていこう。BDドライブまで搭載したダブルチューナー機ながら、サイズは1Uフルサイズまではなく、コンパクトにまとまっている。ボディはツヤありのアクリル製で、すぐに静電気でホコリを吸い寄せてしまうのは残念なところ。ボタン類はほとんどなく、電源とビエラリンク、BDドライブの開閉ボタンがあるのみだ。

薄型コンパクトな本体。すぐにホコリを引き寄せてしまうのは残念
ボタン類はシンプル

録画用HDDは500GBで、DRモードのほか、H.264による1.5倍~15倍での記録が可能。なおBDドライブは再生のみで、録画機能はない。

BDドライブまで内蔵

背面に回ってみよう。地デジとBS/CSアンテナ端子はそれぞれスルー出力がある。またHDMI端子もあり、別のテレビに接続することも可能だ。また外付けHDDで録画領域を増設することができる。

本質はテレビだがHDMI出力を持つ

ディスプレイも見ていこう。15インチというサイズは一般的なタブレットよりも大きく、手が届く程度の距離でテレビを見るには十分なサイズだ。液晶パネル面やエッジ部分はアクリルで覆われ、背面は樹脂。スタンド部は金属製である。厚みはタブレットよりはあるが重量は1.5kgと、見た目よりは軽量に感じる。

ニアフィールド視聴では十分なサイズ
背面のスタンドは斜め方向に2段階で固定可能
移動時の指がかりもある

ディスプレイの解像度は1,354×760とフルHDには満たないが、文字の表示も十分で、粗い感じは見られない。スピーカーは底部の左右二箇所にあり、下向きの穴から音が放出される。アクリルカバーの縁に沿って音が前面に出てくるという仕掛けだ。

バッテリーは背面のハンドルが固定されている部分にあるようだ。4時間の充電時間で、最長約3時間の動作が可能。常時点けておくテレビとしては心もとないが、専用スタンドに立てることで充電しながら視聴できる。ワンポイントで取り外して見るという形である。

底面の充電端子は独特の形状
角度調整にも追従する充電クレードル

防水機能としてはIPX6/IPX7相当で、入浴剤を入れたお風呂でも使用可能。ただし硫黄、塩分を含む入浴剤は使えないという。背面にはイヤホンとDC入力端子があるが、防水のフタが付いており、水回りで使用する際はここがしっかりロックされている必要がある。

右横にイヤホンと電源端子がある
起動時にはフタに関する注意書きが表示される

モニター表面が汚れた場合は、市販の食器用中性洗剤を薄めたもので洗うことができる。その際は硬いスポンジ等はNGで、基本は手洗いか柔らかい布を使う事が推奨されている。表面がアクリルなので、固いものだと傷が入る可能性があるという事だろう。

キッチンにポンと置いても馴染むデザイン

タッチだけで完結するUI

では早速実際に使ってみよう。本体部のモニター部は、直接Wi-Fiで接続するか、Wi-Fiルータを間に挟んで接続するかの2パターンがある。ネット機能も使いたい場合は、ネットに繋がっているWi-Fiルータを挟んで接続することになる。

画面をタッチすると、チャンネル変更用の12キーと音量調整ボタンが現れる。また画面を左右にフリックすると、チャンネルを1つずつ変える事ができる。また上から下にフリックすると、画質や音質、タイマーなどのメニューにアクセスできる。下から上にフリックすると、アプリや番組表、録画一覧などにアクセスできる。リモコンが付属しないが、チョイチョイとタッチするだけで全部の機能にアクセスできるため、不自由はない。むしろリモコンどこだっけと探す必要もないので、直感的だ。

画面タッチでコントロール画面が表示
画面を横にスワイプするとチャンネル切り換え
上から下にフリックするとモード調整やユーリティティにアクセスできる
下から上にフリックすると、機能切り替えボタンが出てくる

テレビ視聴では遅延はそれなりにあるようで、リアルタイムの放送よりもおよそ3秒程度遅れて表示される。チャンネルの切り換えは、だいたい3秒程度だ。Wi-Fiの受信状況は、受信レベルと映像伝送レベルの2つを数値で確認できる。両方30を下回ると、映像が途切れやすくなるという。

筆者宅でテストしてみたところ、Wi-Fiルータから一部屋離れた仕事部屋で受信レベル41、映像伝送レベル50であった。一方お風呂場まで持っていってトビラを閉めると、受信レベル30、映像伝送レベル37程度となる。ルーターまでの距離や各ドアの材質にもよると思うが、お風呂で見たい場合は途中のドアを開けておくなど、数値を見ながら色々試してみるといいだろう。

受信レベルが数値で追える

視聴中の番組は、チャンネルボタンのところにある録画ボタンですぐ録画に入る。追っかけ再生もできるので、シャンプーの間は止めておいてそこから再視聴、という使い方もできる。

番組表は、最大6チャンネルまでの一覧表示が可能。録画したい番組をタップして、予約を行なう。ダブルチューナーなので、録画予約中も裏番組をライブ視聴できる。録画番組は、録画一覧が表示されてそこから選ぶスタイルだ。

番組表は時間枠が大きくタッチしやすい
番組名をタッチすると予約画面に

テレビとして使用しない時は、時刻や天気予報を示す「置き時計機能」を備えている。また発売までかなりある試作機ということで、現状は時計と天気予報表示しかできないが、カレンダー表示も組み合わせた4パターンが使えるようである。

テレビを見ていないときは天気情報などを表示できる

加えてモニター部からエアコン操作も可能だ。ただし操作できるのは、パナソニック製で無線LAN搭載モデルに限られる。筆者宅のエアコンはパナソニック製だが、あいにく無線LANには対応していないので、テストすることはできなかった。

同社製対応エアコンがあれば、テレビから操作が可能

若干寂しいネットサービス

この夏モデルで本機だけの機能としては、Blu-rayやDVD再生機能がある。本体にディスクを突っ込んでおけば、いつでもテレビ側から再生可能だ。画面を1回タッチするとコントロールパネルが出てくるのは、テレビ視聴時と同じだ。なおこのドライブ、音楽CDは再生できなかった。ニーズは少ないとは思うが、普通のDIGAでは再生できるので、やはり本機はDIGA+モニターではなく、あくまでもビエラシリーズという事だろう。

ディスク再生も操作方法は同じ

ネットの動画サービスは、YouTube、hulu、dTV、U-NEXT、DAZN、Paraviの6つのみ。多くのテレビにはNetflix専用ボタンまで備えているものが大多数であるが、本機はNetflixには対応しないのが残念だ。加えてAmazon Prime Videoにも対応しない。タブレットと違い、あとから自分でアプリを追加することもできない。普段スマホやタブレットに慣れている身からすれば不自由さを感じるが、まあ相手はテレビなので仕方がない。

ネットサービスはプリセットされているサービスに限られる
よく使うサービスは2つまでプリセットできる

画面の画質モードは、スタンダード、ダイナミック、リビング、ナイト、ユーザーの5タイプから選択できる。通常はスタンダードかリビングで十分だろう。ユーザーモードでは、明るさ、色の濃さ、色合い、色温度が個別に調整できる。

音質モードは、スタンダード、ミュージック、快聴、お風呂の4タイプ。これらのモードは、イコライジングで周波数特性をいじるわけではない。ステレオセパレーションも含めたトータルのバランスで調整されているようで、変化はそれほど大きくない。人によっては、あんまり差がないと感じるかもしれない。

総論

筆者にとっては久々のプライベート・ビエラだが、価格が安い割にはコストダウンの影響を感じさせない、こなれた設計であると感じた。チャレンジングな部分は後退したが、それだけニーズも絞れてきたという事だろう。

レコーダなどに詳しい人であれば、自分で外付けHDDを取り付ければOKの下位モデルも魅力である。ただお風呂の中で使うのであれば、タッチパネル操作のほうが使いやすいので、本機かもう一つ下のUN-10N10/15N10が選択肢となるだろう。

ネットサービスについては、hulu派の人には十分だろうが、NetflixとAmazon Prime Videoに対応していないのが残念なところだ。こうしたサービスは、一度気になるシリーズを見始めると、お風呂の中でも続きが見たいと思うものである。できれば全方位が望ましいが、これはどちらかと言えば地上波がずっと見たいという人のための商品という事だろう。

個人的には、ジャニーズ出演番組が始まると娘がなかなかお風呂に入らないのだが、本機があるとこれを持ってさっさと風呂に入るのが大きな成果である。テレビがあるばっかりにお風呂が遅くなるという家庭にはぴったりだろう。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。