小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第616回:まだまだ進化するDIGA、「DMR-BZT750」

“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第616回:まだまだ進化するDIGA、「DMR-BZT750」

充実のおまかせ録画。ネット連動ニュースも

役割が変わるレコーダ

 レコーダの役割も、時代とともに少しずつ変わってきている。その昔は光メディアに残すことが第一の命題であったものだが、自動録画の進化に伴って、次第にアルゴリズムを使って、“番組との出会い”をサジェスチョンしてくれるようになった。さらにネットから何らかのデータを引いてきて、ランキングや注目番組を教えてくれたり、スマートテレビ的な機能を提供するものも登場した。

 いい絵で、いい音でという基本は変わらないが、テレビというディスプレイを使う楽しみを、最大限引き出してくれるマシンに変化してきたと言える。ある意味ホームネットワークにおける“ガラケー”相当の位置に君臨し続けているという見方もできるように思う。

 さて、常に進化を続けるパナソニックDIGAだが、今回の新モデルもなかなか凄い。この春モデルとして、上位のDMR-BZT750、ミドルレンジのDMR-BWT650/BWT550、エントリーのDMR-BRT250の4モデルが発売された。今回は上位モデルのDMR-BZT750(以下BZT750)をお借りしている。なお、春モデルの他に、プレミアムモデルの「BZT9300」や、全録の「BXT3000」なども引き続きラインナップされている。

型番HDDチューナ数無線LAN店頭予想価格
DMR-BZT7502TB3108,000円前後
DMR-BWT6501TB275,000円前後
DMR-BWT550500GB-65,000円前後
DMR-BRT250500GB1-55,000円前後

 DIGAではこれまで、上位モデルとして900番台、800番台をリリースしてきたが、下位モデルが次第に機能アップしてきて、今回は700番台でもかなりのことができるようになっている。BZT750は3チューナ/2TB HDD搭載モデルだが、通販サイトでは6万円台になっているところもあり、これだけの機能を背負ってこの値段かと驚愕する。

 また、これは次回にレポートする予定だが、別売のDTCP+対応動画転送アダプタ「DY-RS10-W」(5月下旬発売/実売価格15,000円)を追加することで、外出先でのスマートフォンからの録画番組視聴に対応するのも注目ポイントだ。

 まだまだ進化を続ける最新のDIGAを、さっそく試してみよう。

賛否わかれるデザインの一新

シルバーを基調としたデザインに大幅変更

 さっそくデザインから見ていこう。従来のDIGAはブラックボディが半ば定番となっていたが、今回の新モデルは、BRT250を除いてすべて新デザインとなった。

 全体的にシルバーを基調として、フロントパネルのドライブベゼルと透過部分のみが黒のアクリルとなっている。前面の扉は黒い部分の下のところだけが開くようになり、開閉部が狭くなった。前面にはUSBとSDカード、B-CASカードスロットのみとシンプルで、電源とイジェクトボタンは天面にあるという作りは、従来通りだ。

フロントパネル開閉部はかなり細い
前面にはUSB端子とSDカードスロット
かなり薄いボディ

 デザインの力も多少あるだろうが、ボディの薄さが際立つ作りだ。高さは44mmで、旧モデルBZT730の59mmから1cm以上薄くなっている。一昔前ならBlu-rayプレーヤーで通るサイズ感だ。

 ただ、全体的にシルバーになったことで、高級感はやや減退したと言えるだろう。なぜならば、黒であればパーツの継ぎ目のラインが見えないが、明るいシルバーだと細かい継ぎ目ラインが見えてしまうからである。一方価格面では、店頭予想価格で旧モデルより2万円ほど安い設定となっている。

BDドライブは左側

 内蔵HDDは2TBで、トリプルチューナ仕様だ。画像処理エンジンは、BZT830の時に一新された新ユニフィエをそのまま搭載し、3エンコーダ・デコーダ仕様となっている。

 背面に回ってみよう。よくまあこの高さにこんなに入れたなと感じさせるレイアウトで、チューナ端子は天板の折り返し部分を削ってようやく入っている。

端子類は若干少ない背面
かなりギリギリまで高さを削った苦労が伺える

 アナログAV入力は1系統で、i.LINK端子も装備。HDMI出力×1、光デジタル音声出力×1、USBは2.0×2、3.0×1。BZT730まではアナログ出力があったので、auの「Remote TV」といった機器が利用できたが、本機ではついにデジタル出力のみとなった。

十字キー採用のリモコン

 リモコンも見てみよう。ハイエンドモデルではタッチパネルの搭載もあったのだが、本機は700シリーズということで通常の十字キーとなっている。もっとも最近はアプリを使ってスマホでコントロールという方向性も出てきているので、リモコンの高度化はひとまず置いておくということなのかもしれない。

 今回わかりやすすぎて逆に見つけにくい位置にあるのが、電源ボタンの横にある「おもいで」ボタンだ。これはレコーダに取り込んだ写真などのパーソナルコンテンツを、スライドショーで表示する機能だ。

効果的なメタデータの利用

 ではさっそく中身のほうを見ていこう。スタートメニューの中で充実したと一目でわかるのが、ニュース関連の機能だ。「ニュース録画設定」で録画機能を「入」にしておくと、指定したチャンネルのニュース番組を自動的に録画してくれる。「最新ニュース」機能は、全録モデルである「DMR-BXT3000」にも搭載されていたが、本機では自動録画機能を用いてニュースを集める機能へと進化させた。

ニュース機能を大きくフィーチャーしたスタートメニュー
ニュース録画設定。*マークの付いたチャンネルが、メタデータと連動できる

 この機能で録画するニュースは、画質モードが7倍に固定される。また録画後48時間経つと、自動的に消去される。20分未満の番組は録画されないので、スポット的なニュースや天気予報などは録画されない。

 「最新ニュース」を選ぶと、すぐに一番新しいニュースの再生が始まる。この時、すでに3つのエンコーダ/デコーダが録画で使用されていた場合は、どれか1つがDR録画に切り替わって録画を続行、空いたデコーダでニュースの再生が始まる。すぐニュースが見たいというニーズを、うまく内部で処理している。

 だが、ニュース番組ならなんでもいいのか、どんな話題だかわからないが、全てアタマから見るのか、という不満もあることだろう。これを解決するのが、「ニューストピックス」だ。これはパナソニックのWebサービス「MeMORA(ミモーラ)」と連動して、ニューストピックスを文字情報として表示してくれる機能である。ここで見たいトピックスを選択すると、録画されたニュースの、そのトピックスの位置にジャンプする。

 ミモーラと連動しているので、「ニューストピックス」の利用にはミモーラへの登録(無料)が必要だ。なお、今回テストしてみたのだが、このニューストピックス機能はうまく動作しなかった。

 また、ミモーラは月額315円のプレミアム会員になると、番組内のシーン一覧をテキストで表示し、そこにジャンプする「シーン一覧&一発再生」機能も利用できる。確かに便利な機能だが、番組メタデータの利用を無料化しているメーカーもある。

【お詫びと訂正】
 記事初出時、「ニューストピックス」の利用には、ミモーラのプレミアム会員(有料)になる必要があると記載しておりましたが誤りでした。無料の登録のみで利用できます。お詫びして訂正させていただきます(2013年5月29日)。

 検索機能は、以前から「検索」ボタンで表示される検索窓を使う機能があった。また前モデルより「かんたんおまかせ録画」機能を搭載している。この検索スタイルでは、ジャンルを細かく区切りながら一括で予約録画が可能だ。いろんなジャンルを予約登録しておくと、かなり予約がダブるわけだが、そこはチューナ数が多いマシンのほうが得である。

ほぼ選ぶだけの検索機能
充実のかんたんおまかせ録画

 試しにゴールデンのバラエティ、ファミリー向けアニメ、海外ドラマ、お笑い・コメディの4つのサブジャンルを予約登録してみたが、四六時中休みなしに3チューナが録画しているような状態になる。何事もほどほどがいいようだ。

 今回新しく搭載された機能に、「マイメニュー」がある。スタートボタンを押して表示されるメニューの他に、カラーボタンを使って4ページのオリジナルメニューが作れるという機能だ。

 例えばファミリーで使う場合、それぞれがよく使う機能や自分専用のおまかせ録画を設定できる。おまかせ録画の設定は、人名、フリーワード、かんたんおまかせ録画の3つから選択できる。人名はすでにEPGから取得しているデータを元に選択するだけなので、らくちんだ。

カスタムでメニューが作れる「マイメニュー」
自分専用のおまかせ録画の設定が可能

 ついでに言えば、「お部屋ジャンプリンク」も同時に2箇所配信できるようになったので、本体視聴も合わせれば3人で別々の番組を見るという事もできるようになった。家族全員がこれらの機能を使いこなすとは、どんだけITリテラシー高い一家なんだという気もするが、中学生ぐらいだったらやり方さえ教えておけば、あとは結構自分で試しながら覚えていくのかもしれない。

充実の連携機能

 レコーダの買い換え、また買い増しの際に便利な機能も搭載された。他のDIGAで録画した番組をまとめて本機にダビングする、「番組お引っ越しダビング」だ。

他のDIGAから一括ダビングが可能な「番組お引っ越しダビング」

 あいにくDIGAが他にないので実際にテストすることはできないが、旧DIGAに録画されている番組を、ネットワーク経由でダビングすることができる。一度の作業でダビングできるのは99番組までで、それ以上ある場合はもう一度残りをまとめてダビングする事になる。

 実際のダビングは、電源が「切」で、かつ予約録画が設定されていない時間帯に行なわれる。ダビング元の機器で番組を残すかどうかの設定もできる。ただしダビング回数は持ち越されず、本機にダビングされたものはコピーワンスとなるので、オリジナル録画を消す場合は慎重に考える必要がある。元々コピーワンスの番組は、ムーブとなる。

 番組お引っ越しダビング対応モデルはBZT9300やBZT830など、だいたい1世代前のモデルぐらいからと考えていいだろう。1世代といってもまだ半年前なので、今すぐダビングの必要が出るとは思えないが、今後この機能の搭載が続けば、いつか役に立つ時が来るかもしれない。

 写真や動画などのパーソナルコンテンツは、以前ならSDカード経由かUSB接続が必要だったが、本機では無線LANで取り込みが可能になっている。ただし対応するデジカメとビデオカメラは同社の一部のモデルに限られる。

 最近はカメラも無線LANを搭載してスマートフォンに転送できるモデルが増えているが、レコーダに転送できるのはあまりない機能だ。もっともカメラとレコーダを1社で作っているのは、国内メーカーではパナソニックとソニーしかないので、両社独自のアドバンテージと言えるだろう。

 スマートフォンの場合は、「DIGA Contents Link」というアプリのインストールで転送可能だ。対応DIGAとの紐付けは、同じホームネットワーク上にあるDIGAを検索させるだけなので、簡単である。

iPhone版DIGA Contents Link
写真を選択して送信するだけのかんたん操作

 今回はiPhone 5でテストしてみたが、転送はアプリ内の「DIGAへ送る」をタップしたのち、アルバム内のカメラロールやフォトストリームの写真を選択して送信ボタンを押すだけだ。ただしDIGAが録画中の時は、転送できない。従って自動録画設定しまくりだと、ほとんど動作可能時間がなくなってしまうという難点がある。

 一方「DIGAを見る」ボタンでは、DIGA内に保存された動画をスマートフォン側に転送できる。ただし番組は転送できず、ビデオカメラなどで撮影した動画に限られる。なお番組の持ち出しに関しては、前述の通り、別途DTCP+に対応したアダプタ「DY-RS10-W」の発売が開始されている。これはこれで面白そうなので、次の機会にテストしてみたい。

 本機に転送した写真は、リモコンの「おもいで」ボタンを押すことでスライドショーとして再生される。スライドショーにピックアップされる写真は、今日の日付からみて前後2週間だそうである。年は対象にならないので、今年から去年一昨年などの、だいたい今頃の写真がスライドショーの対象となるというわけだ。近い日付の写真がない場合は、最新日付の写真が対象となる。

スライドショーの動作変更も可能

 スライドショーの設定としては、表示効果やBGMが選択可能だ。DIGAに楽曲を転送しておけば、それをベースにスライドショーを作る事もできる。従来から写真を自動でショートムービー風に編集してくれる「おまかせクリップ」という機能が存在したが、「おもいで」機能はそれをもっと簡単に、違った切り口で実現する機能だと言える。

総論

 前モデルで性能的にはもう十分という印象だったが、この春の新モデルはさらに機能を追加しつつ価格も下がっており、買いやすいモデルに仕上がっている。ただ、この春モデルからアナログ出力がなくなっているので、何か周辺機器を利用したいと思っている人は注意が必要だ。

 上位モデルのBZT750は、新ユニフィエ搭載で、レート変換ダビングが従来モデルから3.5倍高速化しており、ダビングを重視する人にもお勧めできる。

 ミドルレンジのBWT650/BWT550もダブルチューナでHDD容量が少ない以外はほぼ同じ機能ながら、2万円程度安いため、こちらも狙い目だ。ただし増設HDD用のUSBは2.0止まりなので、外部HDDにダブル録画はできない。

 ミモーラを使った番組メタデータの利用は、世代を重ねるうちに可能性がはっきり目に見える形になってきている。ニューストピックスなどはまさにその一例だろう。今後は録画番組の見方も変わってくるという可能性を垣間見ることができる。

 自動録画機能が充実し、簡単な操作で見たい番組を一網打尽的に録画できるのも素晴らしいが、逆に常時録画しているような状態になって他の動作ができなくなるケースも出てくる。新しいマイメニューなどは家族でレコーダを共有する前提なのだろうが、自動録画が多すぎて身動き取れなくなるという不満も出てくるかもしれない。

 レコーダはもう、番組表を見ながら録画予約とかしていくようなものではなくなったのだなぁという事実を、改めて実感した次第である。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。