小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第757回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

9,980円の潜水艦ドローンで水中撮影!? サブマリナーカメラを試す

空がダメなら水がある

 昨年12月より施行された新航空法により、人口集中地区内でドローンを飛ばす際には認可が必要になって以来、日本ではすーっとドローン熱が冷めていったことは間違いない。事業をやる人は認可を受ければいいだけの話なのだが、一般の人が気軽に飛ばせる状況ではなくなったのは確かだ。機体重量が200g以下のオモチャなら許可は必要ないのだが、世間の目が許さない空気感がある。

サブマリナーカメラ

 そんな中、バンダイ子会社のシー・シー・ピーが、水中で操作できる小型潜水艦カメラ「サブマリナーカメラ」を発売した。価格は9,980円。空を飛ばなければ航空法は関係ないので、だれでも楽しめるのがポイントだ。

 オモチャの世界では昔から、お風呂場で遊べる潜水艦的なものは沢山あった。筆者が子どもの頃は、防水仕様のマブチモーターを石けん箱のフタにくっつけて船として走らせるぐらいの事だったが、海をテーマにした子供向け作品が数多く作られるようになって以降、模型型の潜水艦が多数商品化された。英国からはサンダーバード4号やスティングレイ、日本ではマイティジャックのMJ号といったやつである。

 今回の商品は、そのような既存の作品をモチーフにしたものではなく、もう少し知育的な方向性が感じられるものとなっている。前面にカメラが付き、撮影もできる。さらにコントローラを使ってワイヤレスでの操縦もできる。子どもはもちろん、筆者のように操縦できる腕はあるのにすっかりやる気を無くしたドローンおじさんにとっても、面白い商品だ。

 水中を自由に駆け回れるドローンを、早速試してみよう。

中国製だが作りは悪くない

 まず本体だが、全長112mmで、サイズ的にもコントロールしやすい大きさだ。円柱形のボディに、各種機能が出っ張っているというスタイルである。重量は約90gで、水に沈めると浮かぶでもなく沈むでもなく、丁度バランスが取れるように調整されているようだ。重さが足りない時は、重りとしてのネジが付属しているので、それを底部にはめ込んでバランスを取る。

製品パッケージ
小型で円柱形のボディ

 ボディにはSUB-112というラベルがあるが、パッケージやマニュアルには特に記載はなく、製品型番というわけではなさそうだ。使用可能な温度は50度未満となっている。お風呂ぐらいの温度なら大丈夫だろう。

 前方にはカメラと2つのLEDライト、後方には2つのスクリューがあり、この左右の推進力のバランスで方向転換を行なう。底部には上昇、下降用のスクリューがある。

前面にはカメラとLEDライト
後ろには2基のスクリュー
底部には上昇・下降用のスクリュー

 デザイン的に本来はメインスクリューがありそうな部分は、フタになっており、ねじると中身を開けることができる。電源としては単三電池2本で、撮影用のメモリは本体に内蔵されており、交換はできない。USB端子があるので、そこから画像を吸い出すという仕組みだ。

後部のメインスクリューっぽいところは取り外せる

 上部には電源スイッチと、コントローラーの受光部がある。コントロールは電波ではなく、赤外線を使うのが特徴だ。なぜならば、電波は水中では急激に減衰するので、電波による制御ができないのである。

上部にはステータスLEDと、赤外線受光部がある

 以前業務用の水中撮影ドローンを見たことがあるが、コントロールは全て有線であった。もちろん、海中で使えば潮流で流される可能性もあるので、ワイヤードになっている理由もあるのだが、水中でのコントロールはワイヤードか光を使う以外にないんである。

 カメラは静止画が1,280×960の120万画素。動画は640×480の30万画素で、フレームレートは30fpsとなっている。今どきオモチャのドローンでも720pぐらいは撮れるようになっている事を考えると、カメラ性能は低い。内蔵メモリは256MBで、写真は約800枚、動画撮影時間は約5分となっている。

カメラの性能は昨今のオモチャドローンよりもやや低い

 コントローラの方も見てみよう。オモチャタイプのドローンとしてはよくあるタイプで、サイズ的にも操作しやすい。左レバーが上昇と下降、右レバーが前後左右のコントロールとなる。左右のズレを補正するトリムも付いているが、水中ではそれほどシビアな動きが要求されるわけでもないので、使う機会は少ないだろう。

付属のコントローラ
左手は上昇と下降
右手は前後左右
真ん中にはカメラ撮影用のボタンがある

 前方には2つの赤外線LEDがあり、操作可能距離はおよそ5mとなっている。元々室内用なので、屋外では使用できない。またコントローラは防水ではないので、お風呂の中で濡れた手でコントロールするのは避けた方がいいだろう。電源は単三電池4本だ。

赤外線によるコントロール可能範囲はおよそ5m

まずはお風呂でテスト

 うちでは金魚とドジョウを一緒の水槽に飼っているのだが、そちらの方はあとで試すとして、まずは広いところで運動性能をテストしてみたい。お風呂に水を張り、その中で潜水テストしてみた。

 水の中に投入すると、若干浮き上がり気味だったので、重りのネジを1つ足してバランスをとる。左レバーを下に降ろすと潜行だ。結構大きなスクリューが付いているので、すばやく潜行する。一方浮上は、潜行より多少時間がかかる。レバーのストロークも、潜行の方は十分な長さがあるが、浮上の方はストロークが短くなっている。

 前進や左右の操舵は、右レバーで行なう。水中なので全力でもそれほどスピードが出る感じではないが、左右の方向転換は、スクリューが片側だけ逆回転するので、かなり鋭角に曲がることができる。その場でのターンも可能だ。

まずはお風呂場でテスト

 レバーを離しても慣性があるので、ピタリと止まる感じでもない。レバーを下に降ろせば後退もできるので、逆ブレーキをかけながら操作すると細かいコントロールもできる。

 潜行時には影響がないが、浮上時にはスクリューの回転方向に対して反対方向に、本体が回転してしまう。これを補正するために左右の方向の操舵で補正しようとすると、今度は浮上用スクリューが停止してしまう。ラジコンのマルチチャンネルと違い、同時に1パラメータしか送れないようだ。

 本来は水槽で魚などを撮影するのが目的だろうが、操縦の楽しみという意味では、広い場所で使う方が楽しい。庭に池があって、鯉などを飼っているお宅であれば、相当楽しめるだろう。

続いて水槽にチャレンジ

ヒーター付近に集結するドジョーズの皆さん

 では続いてうちの水槽で撮影してみよう。動作エリアを確保するために、事前に水草など普段沈めてあるものはほぼ撤去した。モデルは3年前に縁日の金魚すくいでゲットした金魚の「きんちゃん」と、自治会運動会のドジョウつかみリレーでゲットした「ドジョーズ」の皆さんである。10匹ぐらい居るのでいちいち名前を付けてないし、見分けも付かないので、グループ名である。

メインは金魚のきんちゃん

 そろそろ水を替えないといけない時期で水が多少濁っているが、LEDライトを使うと光の輝線がはっきりわかるので、見た目にはかっこいい。魚たちは最初はかなり警戒していたものの、5分もすれば「そんなものか」と慣れてくる。動きが機敏ではないので、危険だとは思っていないようだ。

 撮影手法としても、あまりカメラを動かしすぎるとブレが大きくなるので、魚と一緒にゆっくり浮いていたほうがいいようだ。水槽もそれほど広くないので、追いかけて移動するとよりも、カメラアングルのために方向だけ微調整するという使い方で十分対応できる。ただ魚のボディアタックを受けると、機体が押しやられてしまうので、なかなか定位置で居続けることは結構難しい。

 実際に撮影された映像を見てみると、画角はそれほど広くない。アクションカムだと140度~170度ぐらいのワイドレンズなので、接近しても全体が写るが、そこまでの広さはないようだ。写真で魚影をセンターに持ってくるのは、かなり難しい。

撮影された静止画。写真はなかなかタイミングが難しい
もう少しレンズがワイドだと撮りやすい

 動画のほうはずっと撮ってるので、アングルに入りやすい。ただ、ライブビューで画角が確認できるわけではないので、ちゃんと写ってるかどうかは再生してみないとわからない。LEDライトも点けてみたが、昼間だとそれほど変わらないようだ。水槽の内側から魚を見る機会はなかなかないが、やはり水槽のガラスが鏡のように反射するので、映像的にはゴチャゴチャするのが難点だ。

潜水中の様子
サブマリナーカメラで撮影した映像
sample.mov(10MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 本製品には、魚の撮影用として、えさアームが付属している。先端のカプセル内にえさを入れて、機体の前方に取り付けることで、えさを食べに着た魚を撮影するというわけである。もうすでにすっかり馴染んでしまって今さらではあるが、えさを入れて試してみた。

付属のえさアーム
カメラ前方に取り付ける

 こういうものは理想と現実はなかなか違うものである。カプセル内のえさは、水中で自然にばらまかれるわけでもなく、機体を左右に揺すってもなかなかえさが出てこない。匂いはするのか、多少ドジョーズの皆さんも集まってきた感はあるが、期待したほどでもない感じだ。

 さらにこのえさアームを付けると全長が長くなるので、うちの水槽では方向転換ができなくなってしまった。試すならそこそこ大きな水槽じゃないと、アーム付きで撮影するのは難しいだろう。できれば水槽ではなく、池など広いところで試してみたいところだ。

総論

 “オモチャ”と言ってしまえばそれまでだが、作りもしっかりしているし、操作していて面白い。普段は金魚に対してコミュニケーションをとることは難しいわけだが、一緒に浮いたり沈んだりして遊べるという点では、なかなか楽しい。もっともあまりしつこくしすぎて、金魚にストレスを与えることがないよう配慮は必要だろう。

 カメラ性能としては、VGA程度の解像度しかないのは残念だ。さらにもう少し広角レンズの方が面白かっただろう。それよりもまず根本的な話として、普段水槽の外から見ている状況と水中とがそんなに違うかと言えば、うちの狭い水槽ではそんなに違わない、というのが正直なところだ。アクアリウムのように大がかりな水槽なら、魚目線の撮影としてもっと楽しめるかもしれない。

 ドローンのように空間を自在に飛び回る技術も面白いが、水中を自在に、というのはホビーではこれまであまりなかった分野だ。利用環境が若干限られるとは言え、これからの季節、水辺に行く機会も増えるだろう。流れの速い川などでは無理だが、親水公園のようなところなら十分楽しめるはずだ。

 この夏向けのオモチャとして覚えておくと、楽しい思い出が撮れるかもしれない。

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サブマリナーカメラ

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。