小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1231回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

“折りたたみスマホ”は本流になるか。Google「Pixel 11 Pro Fold」の可能性を探る

Google「Pixel 11 Pro Fold」Oliveモデル

全部入り折りたたみスマホ

ガラケー時代は折りたたみが普通だったわけだが、それはディスプレイが片面、テンキーが片面にあったため、お互いを保護するためには内側に折りたたむのが合理的だったからである。

一方全面がディスプレイのスマートフォン自体の折りたたみは、ディスプレイ自体が折りたためることが前提となる。ただ現状は方向性として2つあるようだ。一つは展開すると通常サイズになり、折りたたむと半分のサイズになる可搬性を重視した、モトローラ「razr」シリーズのようなタイプ。もう一つは、折りたたんだ状態が通常サイズで、展開すると2倍のサイズになる拡張性を重視したタイプだ。

モトローラ「razr」シリーズ
折りたたんだ状態が通常サイズで、展開すると2倍のサイズになる「Pixel 11 Pro Fold」

Androidのリファレンスモデル的な意味合いが強いGoogle Pixelシリーズでは、2023年に初代折りたたみスマホ「Pixel Fold」を投入した。展開すると2倍のサイズになる拡張型だ。翌年以降はメインのシリーズに合わせて「Pixel 9 Pro Fold」、「Pixel 10 Pro Fold」と進化し、今年は第4世代になる「Pixel 11 Pro Fold」が8月20日に発売される。ストレージ容量の異なる2モデルがあり、公式ストア価格で256GBモデルが279,900円、512GBモデルが299,900円となっている。

通常のスマートフォンよりもかなり高額商品となっている折りたたみスマホだが、広いディスプレイを使ったコンテンツ体験とはどういうものか、気になるところだ。今回は256GBモデルをお借りできたので、そのあたりを探ってみたい。

正常進化した設計

Pixel 11 Pro Foldは、OliveとObsidianの2色展開となっている。今回はOliveの方をお借りしている。

構造としては、折りたたんだ状態で背面に3カメラがあり、反対側にディスプレイがある。折りたたんだ状態ではちょっと分厚い6.5インチのスマートフォンだ。ちなみに同時発売のPixel 11と11 Proが6.3インチ、11 Pro XLが6.8インチなので、折りたたんだ状態はちょうど中間のサイズとなる。

左からPixel 11、11 Pro、11 Pro XL、11 Pro Fold

真ん中を開くと、8インチのOLEDディスプレイが展開する。この状態では、外側のディスプレイは消灯する。

開くとほぼ正方形の8インチディスプレイが展開
開くと裏側のディスプレイは消灯

中と外のディスプレイを比較してみる。

サイズ解像度最大輝度コントラスト比
外ディスプレイ6.5インチ1,080×2,342ドット2,000ニト2,000,000:1
内ディスプレイ8インチ2,076×2,152ドット2,000ニト1,500,000:1

前モデルの10 Pro Foldと比較するとボディサイズの違いは1mm以下だが、ヒンジが新設計となっており、耐久性向上と軽量化が図られている。

カメラは、背面の広角(メイン)と望遠はPixel 11と同スペックだが、超広角とインカメラは他の11シリーズとは異なる仕様となっている。なおディスプレイ側にあるインカメラは、Foldではディスプレイが2面あるので、インカメラと同スペックのものが2つ付いている。

カメラ名センサーサイズセンサー画素数画角絞り
広角カメラ1/1.56インチ48メガピクセル85度F1.7
超広角カメラ1/3.4インチ10.5メガピクセル127度F2.2
望遠カメラ1/3.2インチ10.8メガピクセル23度F3.1
前面カメラ非公開10メガピクセル87度F2.2
インナーカメラ非公開10メガピクセル87度F2.2
静止画画角:超広角カメラ(0.5倍)
静止画画角:広角カメラ (1倍)
静止画画角:望遠カメラ(5倍)
静止画画角:望遠カメラAIズーム(30倍)
動画画角:超広角カメラ(0.5倍)
動画画角:広角カメラ (1倍)
動画画角:望遠カメラ(5倍)
動画画角:望遠カメラAIズーム(20倍)

カメラ機能については11 Pro/11 Pro XLのほうがスペックアップしているので、次回詳しくテストする予定だ。

カメラ部は2列。左上の白いところが新搭載の 「HiLight」

背面カメラ部に追加されたのが「HiLight」だ。撮影用のLEDライトの周辺にカラーLEDを配置し、特定の人の着信やGeminiとの会話中などを色分けされた光で把握できる。この機能は11 Pro以上のモデルに搭載されている。

11シリーズ共通なのが、新プロセッサGoogle「Tensor G6」と、「Titan M3」セキュリティコプロセッサだ。Google Tensor G5との比較では、ウェブブラウジングを25%高速化し、アプリの起動速度を15%向上させるとしている。またオンデバイスAIタスクを最大3.5倍高速化しながら、エネルギー消費量を最大3.5分の1に抑制するとしている。

指紋センサーは、通常のPixelシリーズはディスプレイ上に搭載していたが、Foldでは側面の電源ボタンが指紋センサーを兼用している。また閉じた状態の背面、Gマークの部分がワイヤレス充電部になっており、Qi2.2対応で最大25Wの充電が可能になっている。

専用ケースを装着したところ
指紋センサーは画面上ではなく電源ボタン部にある

両面ディスプレイというゼイタク

まずカメラとディスプレイの関係を見てみよう。ディスプレイを左右に展開した状態では、カメラは縦構図となる。ボディがほぼ正方形になるので、今縦で撮影しているのか横で撮影しているのかわかりづらいところである。

動画モードで縦に構えたところ
写真モードで横に構えたところ

静止画では5倍カメラを最大30倍まで拡大できるが、AIによる補間を行なう「超解像ズームPro」は搭載しないため、画質はそれほど上がらない。

興味深いのは、外側ディスプレイを使えば背面メインカメラを使った自撮り撮影ができるところだ。「背面カメラセルフィー」では、背面カメラで撮影しながら、外側ディスプレイで構図を確認することができる。昨今のアクションカメラではカメラ側にディスプレイがついていて、自撮りモニターが可能だが、それと同じである。

外側ディスプレイは3通りの使い方ができる
撮影状況がモニターできるので、メインカメラを使ってセルフィー撮影が可能

「デュアルスクリーンでのプレビュー」では、外側と内側の両方のディスプレイでモニターできる。撮影者が別にいる場合は、撮影者も演者も、写っている状況がモニターできる。

「こっちを見て」機能は、小さいお子さんを撮影する際に便利な機能だ。外側ディスプレイでは興味を引きそうなキャラクターが、同じく興味を引く音を出しながらアニメーションする。子どもがそれを見ているうちに撮影するというわけだ。両面ディスプレイを使った撮影機能は、なかなか洗練されている。

子どもの撮影に便利な 「こっちを見て」機能

少し気になるのは、ディスプレイを展開した状態だと、カメラとしては持ちづらいところだ。内側全体がディスプレイになるので、端っこをつまむわけにもいかず、かといって片手で持てるほどには細くない。両手でL字型を作って挟むように持つという形にならざるを得ないが、しっかりホールドできている感じはないので、落下には注意したいところである。

次に音楽再生を試してみよう。本機の場合、スピーカーは左右のユニットに1つずつ、上下に付けられている。従ってステレオ再生を行う場合、スマートフォンを横に倒して聴くことになる。

底部のスピーカー
対角線位置の上部にもう一つスピーカーがある

音質は高域の明瞭感は高い一方、低音はほとんど出ない。音楽を本体スピーカーで聴くのは、イヤフォンやヘッドフォンがないなど、よほどのときぐらいと考えるべきだろう。オーディオ設定には空間オーディオもあるが、過去のモデルから現在まで、ONにしてもOFFにしてもそれほど変わらない。本体再生のオーディオバランスや、空間オーディオの表現力では、AppleのiPhoneシリーズのほうがうまくやっている印象だ。

空間オーディオはほとんど効果が聞き取れない

本体もそこそこのサイズなので、内部スペースには余裕があると思われるが、Googleは物理的なオーディオ設計とオーディオプロセッシングで他社に遅れを取っている。

マンガを読むには、広いディスプレイは有利である。マンガは今やデジタルでしか配信されないものも多いため、フォーマットはかなり多様化しているが、多くは紙の単行本サイズになっている。

本機を縦に持った場合は、画面全部で1ページを表示する。このため左右は少し余ることになる。一方画面を横倒しにすると、左右見開き表示となるが、今度は上下が余る。絵を大きく見たい場合、ストーリーを早く進めたい場合など、臨機応変に使えるのは魅力だ。

なお縦スクロールマンガの場合は、本機の縦横関係なく1コマが全画面に表示されるため、絵はかなり大きくなる。ただしスクロールしていくのはわりと大ぶりなアクションとなるので、縦スクロールマンガは表面の縦長ディスプレイで読んだほうが見やすい。

映像コンテンツも視聴してみた。スピーカーが上下に付いている関係で、動画再生は本機を横向きにするのがデフォルトになるが、画面サイズは縦でも横でも同じだ。画面中央には折りたたみに対応するためにディスプレイに少し凹みがある。横から見るとその部分は画像が歪むが、真正面から見ればほとんどわからない。

ディスプレイは両面ともHDR対応なので、HDRコンテンツも楽しめる。多くのコンテンツは16:9の横幅合わせになるので、内側ディスプレイではかなり上下が余る。外側ディスプレイで見ても、実質的な画面サイズはそれほど変わらない。外側ディスプレイのほうがややコントラスト比が高いので、意外に映像コンテンツは外側ディスプレイのほうが向いているように思う。

生産的な使い方にも対応

スマートフォンとはいえ、30万円近い商品である。娯楽のような消費的な使い方だけでなく、生産的な使い方をしたいというニーズもあるだろう。

8インチのAndroidタブレットはたくさんあるが、ほぼ正方形のものはまずない。その点では、アプリの見え方もこれまでとはちょっと違った体験ができる。

例えばテキスト入力に関しては、画面の下半分を使ったかなり大きなキーボードになる。物理的な凹凸があるわけではないのでタッチタイピングはできないが、テキスト入力はちゃんと5本指を使って入力できる。その場合はディスプレイをL字型に曲げて、キーボード面を水平にして入力することができる。

画面下半分を使った大型キーボード

ただ、入力効率はそれほど良くない。自分の指でキーボードが見えなくなってしまうので、ミスもそれなりに多くなる。高速な入力が必要なら、別途キーボードを繋いで、広いテキスト画面を有効に使うほうが理にかなっている。

キーボードは、左右分割状態にもできる。これは両手で本体を保持して、両親指でタイプする際に便利だ。これまでメールの返信にしても、スマートフォンで長文を打つのはしんどいという方は、このキーボードで解決するかもしれない。

左右分割タイプのキーボード

基本的には6.5インチクラスのスマートフォンを2つ並べたサイズなので、2画面に分割して2つのアプリを同時に使うというのも現実的だ。アプリアイコンを長押しして「分割」を選ぶと、画面の右側にアプリが立ち上がる。左に立ち上げたいアプリをタップすれば、2画面状態となる。例えばテキストエディタとブラウザとか、ブラウザとAIといった組み合わせで使用できるのは、タブレット並みの生産性が期待できる。

2画面分割して別々にアプリを配置する

またアプリをオーバーレイ状態にして、使わない時は右下に格納できる「バブル」機能も有用だ。アプリアイコンを長押しして「バブル」を選ぶと、アプリがフローティング状態で立ち上がる。縮小すれば画面の右下にアイコンで待機状態となる。ちょこっと使うメッセンジャーや音楽アプリなどをバブルとして立ち上げておけば、メインで使用中のアプリから離れることなく対応できる。こうした機能は広い画面だから生きる機能であり、従来の縦長スマホ画面では今一つ使い出がなかった機能だ。

アプリの上に別アプリをフローティングできるバブル機能

総論

折りたたみスマホは現時点ではかなり高価な買い物であるが、これじゃないと困るという人もいる。実は娘の高校時代の担任が体育の先生だったのだが、折りたたみスマホを愛用していた。ジャージのポケットに収納でき、グラウンドでクラスの男子全員(約15~20人)のデータを一覧するには、折りたたみスマホじゃないとできないのだそうである。

Pixel 11 Pro Foldは、展開しても折りたたみ状態でも普通に使えるということが売りになっている。文句なしのハイエンドモデルだ。一方で、表側のディスプレイはなくてもいいという人もいるのではないかと思う。要するに閉じた状態では使わないというわけだ。

それで価格が下がるのなら、購入を検討する人もいるだろう。あるいは廉価モデル並みにカメラは1つでいいという考え方もあるかもしれない。

実際、ほぼ正方形の大型ディスプレイは使い勝手がよく、これまでスマホでは画面サイズやアスペクト比の関係で諦めていたような、文章作成や動画編集などに使いたいというニーズはあるのではないだろうか。それなら格安タブレットを買えという話かもしれないが、最新スマホの強力なプロセッサによる処理や、タッチ決済などスマホ的なフル機能搭載には魅力がある。

折りたたみディスプレイは製品化数世代を経て、かなり耐久性も上がってきたと聞く。現在はそれよりもメモリーの高騰で価格が釣り上がっている感があるが、それが解決すれば、折りたたみスマホはもっと身近な商品となりうるポテンシャルを秘めている。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。