西田宗千佳のRandomTracking

第550回

「Pixel Fold」と「Pixel Tablet」実機を触ってみた

米・マウンテンビューのGoogle I/O会場

米・マウンテンビューで開催中の「Google I/O 2023」に来ている。

基調講演はAIを中心に多くの施策が発表されたが、まず多くの人が気になるのは、「新しいPixel」かと思う。すでに日本でもリリースが出ているが、「Pixel 7a」「Pixel Fold」「Pixel Tablet」の3製品が公開された。

日本でもまだ情報が少ないPixel FoldとPixel Tabletについて、実機のハンズオンをお届けする。

Pixel Fold。色はObsidianとPorcelainから選ぶ
Pixel Tablet
Pixel 7a

Galaxyとは思想の違う「二つ折り」

すでに述べたように、発表されたハードウエア製品は3つ。

そのうちPixel 7aは、日本でも多くのレビューがすでに公開されているものと思う。

一方、Pixel FoldとPixel Tabletの実機はGoogle I/O会場でのお披露目となったので、実機をさわれたのは現地にいるプレスくらいではある。

というわけで、注目のFoldの方から行こう。

Pixel Fold

今回は比較のために、私物の「Galaxy Z Fold 4」も持ち込んでみた。

私物の「Galaxy Z Fold 4」と比較

カメラの画質や動作速度については、十分なテスト時間があったわけではないので言及を避けるが、十分なものであったように思う。開いた状態でリアカメラを使った「自撮り」をする場合には、UI含めPixelの方が使いやすかった。

最大の違いはやはり「縦横比」だ。

Pixel FoldはGalaxyに比べかなり幅が広くなっている。その結果、イメージが「本」や「ノート」の見開き感覚に近くなっている。

完全に開いてしまった場合、「縦長のタブレット」と「四角いタブレット」のような感触だ。

左がPixel、右がGalaxy

二つ折りの場合、“くの字”にして机の上に置く使い方もアピールされるのだが、この場合、Galaxyの縦横比だと明確に「狭い」感じがする。

奥がPixel、手前がGalaxy
裏からみるとこんな感じ

この違いは完全に設計思想によるものだ。

開いた状態でのスペック上の画面サイズは、どちらも「約7.6インチ」。だが、印象としてはPixelの方が広く感じる。「開いた時の見やすさ」を重視しているのだろう。2つ以上のアプリを左右に表示し、画面を広く使うなら、やはりPixelの選択の方が正しいように思える。今回はアプリを入れて試すことはできなかったが、電子書籍(特にコミック)はこちらの方が読みやすそうだ。

メールとWebブラウザを並べて表示したところ

一方でGalaxyは「折った状態では収納しやすく、持ちやすく」という点を重視している。

左から、iPhone 14 Pro Max・Galaxy Z Fold 4・Pixel Fold。折り畳んだ時の幅が全く違う

ちょっと慣れは必要だが、片手で開くこともできる。開いた時にもなんとか片手で持てる。だからペンにも対応していて、「片手で持って書き込む」使い方がしやすい。幅を狭くするには、画面のエッジも狭い方がいい。Galaxyはほぼエッジがないような状態だが、見比べてみると、Pixelはエッジが太い。

二つ折りスマホは高価なものなので、2機種持つ、というのはあまり現実的でない。そんな時に、「より電話的に使う」「ペンでの手書きを重視する」のか、それとも「本やノートのように見開きで使う」ことを重視するのか、というところで判断が分かれるように思う。

なお、ボディを開いた時の薄さでは、Pixel Foldが5.8mmで、Galaxy(6.3mm)より薄い。重量はGalaxyの方が軽い(263g。Pixelは283g)のだが、持ってみるとPixelの方が軽く感じられた。この辺は好みかもしれない。

「Pixel Foldは折り目が目立つ」という評もある。確かにGalaxyより少し目立つような感じもあるが、この辺は、画面が表示されていると意外と気にならないもの。むしろ気になるのは、前出の「エッジ」の太さだろうか。

Pixel Foldの開閉する様子

「ホームハブ」指向のPixel Tablet

ではPixel Tabletに移ろう。

タブレット単体として見た時、Pixel Tabletは意外と「話すところが少ない」製品だ。いかにも今のPixelのデザインテイストで作ったタブレットだなぁ、という感想しか持ちづらい。

Pixel Tablet

十分画面が美しく、持ちやすく、指紋センサーもあるという「優等生」なのだが、優等生ゆえにコメントがなくなる印象だった。

だが、スピーカーを兼ねたスタンドに設置すると話は変わる。「Nest Hubっぽい」といわれるが、まさにその通りで、「家の定位置にあってNest Hubのように使う」タブレットと考えるのが正解なのだろう。

スタンド
取り付けてみるとこんな感じ

あまり持ち出すことを想定していないこともあってか、WAN内蔵モデルはないし、結果としてGPSも搭載していない。でも、「家の中で使う」ならそれでいいのだ。

個人的にはケースに感心した。キックスタンド的に使える「輪っか」が後ろにあるのだが、つけたままスタンドにもくっつく。そのため、キッチンやリビングなどの「定位置以外」ではケースのリングで立てて、定位置であるスタンドではくっつけて充電しておく……という使い方ができる。

オプションのカバー。円形のリングがキックスタンド的な役割を果たすが、そのまま純正スタンドにつけて充電も可能。カバーは外す必要がない

この機構に魅力を感じるかどうかが、選択の分かれ目だ。

「Nest Hubっぽい」ということは逆にいうと、Nest Hubのように家電コントロールに使うと価値が出やすい、ということでもある。ホームネットワークをGoogle系で統一している、もしくはこれから構築する人には、良いチョイスと言えそうだ。

ホームコントロールには非常に向いている
西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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