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第584回:周辺機器充実、生まれ変わったソニー「Xperia Tablet S」
~nasneとの組み合わせが便利すぎなAV Tablet~
■Sony Tablet → Xperia Tablet
画面サイズはそのままで、薄く軽量化した「Xperia Tablet S」 |
昨年秋に登場したソニーのAndroidタブレットは、「Sony Tablet」というストレートなネーミングで、9.4型のSシリーズ、折りたたみ型のPシリーズという2タイプであった。
ただシリーズとは言っても、実際にはSシリーズはメモリ容量や3Gの有り無しの違いはあるものの、基本的には1モデル。Pシリーズも、後に3G無しモデルが登場したが、こちらも1モデルと言っていいだろう。
それからほぼ1年、ソニーのタブレットは、同社スマートフォンのブランド名を冠して再展開することになった。今後は「Xperia Tablet」というシリーズに変わる。
新ブランドとしての第一弾は、従来のSシリーズのコンセプトを踏襲した「Xperia Tablet S」。価格は全てオープンプライスで、店頭予想価格は16GB(SGPT121JP/S)が4万円前後、32GB(SGPT122JP/S)が48,000円前後、64GB(SGPT123JP/S)が56,000円前後となっている。ネットの最安値では、そこから4,000円程度下がっているところもあるようだ。なお、Pシリーズは併売され、名前が「Xperia Tablet」のPシリーズになる。
他社タブレットと大きく違うのは、最初から純正アクセサリが山盛り揃っていることだ。目的と価格に応じて、松竹梅いろんなものが揃っている。一般的なタブレットとしての能力はよそへお任せするとして、今回は「Xperia Tablet S」のAV機器的な特徴と、その使い勝手を検証してみたい。
■薄型、軽量化しながら持続時間増
折り返し部分が短くなり、その段差を周辺機器固定に利用する |
まず本体だが、初期Sシリーズは本を折り返したようなデザインが特徴的であったものの、厚みが結構気になったものだ。今回のXperia Tablet Sは、本を折り返したようなデザインコンセプトは踏襲しつつ、折り返し部分を極端に短くした。さらに、折り返した部分の段差をフック代わりにして様々な周辺機器を固定するというアイデアで作られている。
特に厚みでは、従来モデルが最厚部で20.6mmあったものが、今回は11.85mmと、およそ半分ぐらいになった。薄くてビックリするというほどではないが、他社製品と比較しても遜色ないというところだ。最薄部は8.8mmになっている。
重量も初期型の598gから570gと軽量化も果たしつつ、バッテリは5,000mAhから6,000mAhへ増加。内部の省電力化もあり、Webブラウジングによる持続時間も、従来の5時間から倍の10時間以上に延びているという。
プロセッサはNVIDIA Tegra3 CortexA9 Quad Core Processor 1.4GHzで、L2キャッシュは1MB。OSはもちろんAndroid4.0である。
BRAVIAで実績のあるオプティコントラストパネル採用 |
ディスプレイは9.4型で、解像度は1,280×800ドット。いわゆるRetina Display的な高解像度パネルではないが、ソニーがブラビアで採用しているオプティコントラストパネルとなっている。これは液晶パネルと表面の保護ガラスの間に透明な樹脂を充填することで、反射を押さえつつ暗部の黒浮きを押さえるという技術だ。
またタッチパネル表面の摩擦もかなり抑えてあり、スクロール時に指が貼り付いてキュッと止まる感じがない。ガラス表面の感触はかなり良好だ。
さらに今回は、防滴仕様になっている。ただし底部のマルチコネクタと横のSDカードスロット部分は、むき出しのままでは防水機構はないので、しっかりキャップをすればの話である。イヤホンジャックはそのままでも防水仕様になっているという。
底面のマルチコネクタは防滴キャップが付属 | SDカードスロットはぴったり閉じれば防滴に | 反対側は電源とボリュームボタン |
これはお風呂で使うというよりは、台所で水仕事しながら使いたいというニーズが多かったということである。実は「クックパッド」というレシピ共有サービスのアプリが、IT主婦の間でキラーコンテンツになりつつあるのだ。これを見るために、料理中の濡れた手でいじって平気というのは、大変便利なのである。
底部にあるスピーカーはステレオ仕様で、音質の改善点が多数ある。これはあとでゆっくり見ていこう。
ボディトップには、見てもわからないが、赤外線ポートもある。これは以前からある、リモコンアプリを使ってAV機器を操作するというソリューションのために付けられているものだ。
底面のスピーカーはステレオに | 背面にあるXPERIAのロゴ |
■大幅に改善された音声
タブレット本体の音声再生機能は、これまであまり注目されてこなかった分野である。ほとんどの用途としては、音声再生を伴わないWebブラウジングか、音を聴くならイヤホン使うだろ、という割り切りがあった。
だが案外タブレットでは、YouTubeなどの動画を再生する機会も多い。ブログのエントリー内に参考の動画が貼られていることも少なくないし、HuluやVideo Unlimitedなどオンラインの動画配信サービスも充実してきている。
AppleはAirPlayを使って、ワイヤレスで外部スピーカーを鳴らすというソリューションを提供しており、これはこれで便利なのだが、有料の音楽・動画配信サービスアプリでは対応しないものが多い。おそらくDRMの関係でAirPlayに出せないのだろう。
そういう事情も考えてか、ソニーでは本体のスピーカーの音質を上げるという方向でアプローチしてきた。従来モデルは側面に音の出口があったのだが、今回は左右の底面にスピーカーを配置した。両手で持ったときに、スピーカーを塞がない位置に持ってきた、ということである。
出力は2Wの高音圧タイプに変更、周波数特性では、従来の1,000Hz~10kHzから750Hz~16kHzと、上下にワイドレンジ化。アンプもS-Masterを搭載するなど、ハードウェア的な素性も良くなっている。もちろんこれだけでは十分な音響特性は望めないので、各種デジタルプロセス機能を搭載して、不足分をカバーする。
スピーカーの特性を補正する「ClearPhase」と、ダイナミックレンジを調整する「xLOUD」は以前から搭載されているが、今回はさらにフロントサラウンドのシアター商品で搭載されている、バーチャルサラウンド技術の「S-Force フロントサラウンド3D」、楽曲のボリュームレベルを合わせる「ダイナミックノーマライザー」も搭載した。
なお、これらの音声技術の一部は「ClearAudio+」というチェックボックスに集約されており、ここで一度にON/OFFできる。ダイナミックノーマライザーは、独立した機能になっている。ダイナミックノーマライザーは、独立した機能になっている。
またClearAudio+を使わない場合は、ClearBASSとグラフィックスイコライザが使えるようになる。個人的には、EQでなんとかするよりも、ClearAudio+を使った方が、音の抜けがよく、広がりもある聞き取りやすい音になるように思う。動画の音声はこちらのほうが良好のようだ。
「ClearAudio+」のチエック一発で、複数の機能がON | ClearAudio+をOFFにすれば、CLEAR BASSとグラフィックスイコライザが使える |
音楽再生では、元々低音が出ないこともあって、本体再生音で評価することはできない。そこで、別売の専用スピーカー「SGPSP1」が発売される。タブレットを取り付けると、充電もしつつ音楽再生も可能で、スピーカー再生に特化した専用のGUIが立ち上がる。
クレードル兼用ドックスピーカー「SGPSP1」 | タブレットのスタンド部の下にボタン類が |
音質は低域も十分に出ており、音楽再生も十分なバランスで聴くことができる。ただどうしても左右のスピーカーが離れてないので、ステレオセパレーションは狭めになる。このスピーカー利用時には「ClearAudio+」をはじめとする音質補正効果はすべてキャンセルされるようだが、まだ最終仕様ではないので、このあたりは変わるかもしれない。
このままタブレットをスピーカーに接続すると…… | このようなスピーカー利用専用GUIが起動する | 音楽再生中の画面 |
■nasneとの組み合わせが便利すぎ
さてソニー製品の特徴と言えば、やはりテレビ関係に強いというところである。実は筆者宅でもビッグウェーブに乗ろうと思って、8月末にnasneを購入したのだが、うちには連携できるものがPlayStation3しかなく、意外にショボイ事になっていた。いやこれまでtorneも使っていたので基本はわかっているのだが、なにか連携できるモバイル機器がないと全然面白くないのである。
そこで今回のXperia Tablet Sを自宅のnasneと連携させてみた。使用アプリは、動画関係の機能を集めたオリジナルの「ムービー」というアプリである。
nasneとの連携がみどころ | 連携の中心は「ムービー」アプリ |
Devicesでは、繋がっているDLNAサーバが全部見える |
ここのDevicesというところをタップすると、ネットワーク内のDLNAで繋がったデバイスが見える。ここでnasneを選ぶだけで、もう中身が見える。複雑な認証作業などはまったくない。これが本来のホームネットワークの姿である。
「ジャンル」などから見たい番組を選んでタップすると、およそ5秒ほどで再生が始まる。レスポンスはnasne側で相当チューニングされているというが、さすが自社製品同士の連携である。スライドバーを操作しての再生ポイントジャンプも、1秒とかからず再生が再開する。
ジャンルや日付から番組を探せる | 番組はタイトル表示のみ |
放送中の番組もストリーミング可能 |
nasne側は3倍モードで録画しているが、それとは別にnasne内にモバイル用のトランスコーダがあり、それが録画時にモバイル用のファイルも作成している。モバイル機器にストリーミング配信する時も、そのモバイル用ファイルが使われ、Xperia Tabletで見る場合は720×480ドットで配信されている。しかし、画質的にはまず普通に視聴して不満のないレベルだ。
さらに生放送も視聴できる。「ライブチューナ」というフォルダ内に地上デジタル、BSデジタル、100度CSというフォルダがあり、それぞれの中に現在放送中の番組がファイルとして見えるという構造だ。シンプルではあるが、録画番組の操作感と同じなので、迷うことはないだろう。
番組の長押しでダウンロードも可能 |
また、このアプリで番組の持ち出しも可能になる。録画番組リストに表示される番組を長押しすると、サブメニューが出てくる。ダウンロードを選べばその番組だけ、複数ダウンロードを選択すると、チェックボタン表示が出てくるので、複数の番組を選択してダウンロードを行なう。
これまでソニー製品の間では、レコーダとPSPの連携などで番組持ち出しを実現してきたが、USB接続が必要であった。だがこの連携では、ワイヤレスで番組持ち出しができるのがポイントだ。
1時間番組では1GB弱のファイルサイズになるが、筆者宅のネットワーク環境で転送にかかった時間は、約6分30秒であった。おでかけ直前のバタバタしているときには間に合わないが、朝ご飯前に転送開始すれば、2本ぐらいは転送できるのではないか。
AVCHDは映画扱い? |
この「ムービー」アプリ、動画ファイル再生にも使えるのだが、ビデオカメラで撮影したAVCHDでは、映像は再生できるが音が出ない。どうも「ムービー」ではメモリーカードからの動画を「映画」ジャンルとして認識しているようで、Gracenoteに映画情報を参照してエラーするという、変なことが起こる。
写真と動画を再生するアプリ「アルバム」でも、「Playムービー」でも音がでないのは、動画再生処理を全部「ムービー」アプリに投げているからだろう。他のアプリである「MX動画プレーヤー」をインストールしたところ、ちゃんと音が出た。純正アプリのカメラ動画対応の遅れは、ちょっと残念だ。
なお、以前から録画番組再生アプリとして配布されている「RECOPLA」も、同じように使える。結局これも動画再生部分は「ムービー」に投げているので、レスポンスなども同じである。
一方本体にもカメラが搭載されており、写真と動画撮影ができる。前モデルでは、リアカメラが511万画素、フロントカメラが30万画素であったが、今回はリアカメラが800万画素、フロントカメラが100画素と大幅にアップしている。
今回静止画は申し訳程度にしか撮影していないが、実は日中の明るい場所では、輝度を最大にしても画面が全然見えないので、フォーカスが全然わからなかった。ただあまり近接では撮影できないようで、最短で50cmぐらいしか寄れないものと思われる。
【動画サンプル】 sample.mp4(24.6MB) |
カメラの画素数は上がったが、動画は相変わらず破綻が見られる |
編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい |
静止画撮影時の画角は公開されていないが、同様の画角でデジカメと比較すると、おそらく35mm換算で35mm程度ではないかと思われる。
動画に関しては、初期モデルではGOP単位ごとにエンコードが破綻するという状況だったが、今回も多少改善されてはいるものの、やはりGOP単位での破綻が見られる。動画に関しては、あまり期待できないと考えていいだろう。
■充実のアクセサリ
Xperia Tablet Sは、メモリ容量違いはあるものの、基本1モデルしか存在しないのだが、アクセサリが大量に出ている。専用カバーなどはまあお馴染みとして、カバー兼用のキーボード「SGPSK1」(オープン/実売1万円前後)も出ている。
専用カバー。レザー風の「SGPCV3」(実売8,000円前後)はブラック、ホワイト。ファブリックの「SGPCV4」(実売5,000円前後)はピンク、グリーン、ブルー、レッド、グレー | カバー兼用キーボードも投入 |
ボタンはタッチセンサー式 |
これは底部のマルチコネクタ経由で接続するタイプのキーボードで、キーが物理スイッチではなく、すべてタッチセンサーになっている。キーの位置は手触りでわかるようになっており、ガラス面をタイプするよりも、指のポジションがわかりやすくなっている。
本体との固定パーツの裏側に小さなスイッチがあり、カバーを展開してタイピングポジションにするとキーボードがONになる仕掛けだ。畳んだ状態で変な文字が入力される心配はない。
いくつか文章を入力してみたが、レスポンスは悪くない。ただ一般的なキーボードよりもキーの幅が狭いので、若干窮屈な感じがする。TabやCaps Lockなどのキーはもう少し小さく左に寄せて、文字キーを普通のキーボードと同じ幅にしたほうがよかったのではないかと思われる。
専用クレードルとしては、「SGPDS2」(オープン/実売4,000円前後)と言うモデルが発売される。これはタブレットを置くだけで充電やファイル転送が可能になるタイプだ。本体底部のマルチコネクタのままでは置くだけというわけにはいかないので、クレードル付属のコネクションキャップを取り付ける。キャップは端子が表出しているので、いちいち端子の差し込みを確認するまでもなく、接触するだけでいい、というわけだ。
専用クレードル「SGPDS2」(右)と、コネクションキャップ(左) | 「SGPDS2」に設置したところ |
単に起こしておくだけのスタンドとしては、「SGPDS4」(オープン/実売2,000円前後)がある。これは立てて使えば、タブレットを書見台スタイルに、横に寝かしてその上にタブレットを置けば、床置きやテーブル置きでイイ具合の角度でタブレットを固定できる。
ユニークな形の固定スタンド | 横倒しにしてその上にタブレットを置くと、床置き/テーブル置き用スタイルに |
意外に多機能なドッキングスタンド「SGPDS3」 |
本体を活用しながら充電もしたいということであれば、ドッキングスタンド「SGPDS3」(オープン/実売1万円前後)がある。これはドックスピーカーのクレードル部分を取り出したような格好のものだが、機能は色々違う。
まず本体固定部分が左右どちらにでも90度曲がるので、タブレットを縦置きで使える。本機は電子書籍アプリ「Reader by Sony」が入っているので、これでの読書時には、書見台っぽい雰囲気になる。
また背面にはACアダプタ、USBホストコネクタ、HDMI出力が装備されており、充電しつつUSBキーボードを繋いで画面はテレビ出力、といったことができる。
通常は横向き | 左右に90度回転して縦向きにも | 裏側にはUSBとHDMI端子が |
HDMI出力以外にマルチポートも延長されるアダプタ「SGPHC1」 |
HDMI出力に関しては、専用のアダプタケーブル「SGPHC1」(オープン/実売3,980円前後)も別売で用意されている。HDMI出力だけでなく、マルチポートも延長されるので、本体付属のケーブルで充電しながらプレゼン、といったことも可能だ。
USBホストコネクタだけが欲しい場合は、これもアダプタケーブル「SGPUC3」(オープン/実売1,980円前後)もある。アクセサリが最初からこれだけ揃っていれば、殆ど困ることはないだろう。
■総論
Android Tabletは、どうしても価格からすると台湾メーカーに分があるように見える。一方Amazon Kindle Fire HDのように、膨大な電子書籍を背景に格安で攻めてくる派閥もある。国内メーカーとしては、価格面では太刀打ちできず、付加価値で存在感を示していくしかない。
その点でXperia Tablet Sは、なかなか健闘しているのではないだろうか。特にnasneとの連携で簡単にテレビ番組が扱えること、本体だけでそこそこ楽しめるスピーカーを搭載し、防滴仕様まで備えた。
Guest Mode利用時。指定したアプリしか見えない |
もう一つポイントは、利用に「Guest Mode」を備えたところだろう。これはマルチアカウントではないが、利用制限を加えたゲストユーザーをいくつか設定できるという機能だ。
家庭にタブレット端末がある場合、子どもにも知育目的や楽しみのために使わせたいと考える保護者もあるだろう。その時に、起動できるアプリを限定するプリセットとしてGuest Modeがあることは、実に有り難い。こういった細かい配慮ができるのも、日本のメーカーならではではないだろうか。
ただ、AV的な楽しみを享受するという方向には強いのだが、カメラ動画がいけてない、AVCHDの再生もそのままではちゃんとできないなど、映像クリエイティブ系に弱いのが残念だ。それはカメラでやってくれということのかもしれないが、Appleが強烈にiPadをクリエイティブ方向に伸ばしており、対抗するAndroid陣営としては、ソニーががんばるしかない。
やるべき事が多すぎて大変だとは思うが、タブレットをどっち向きのデバイスとして舵を取るのか、ポイントはそこだと思う。
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