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なぜこの作品? Amazonプライム・ビデオのオリジナル戦略を聞く

 5月31日、Amazonは映像配信サービス「Amazonプライム・ビデオ」のオリジナルコンテンツ強化について発表した。グローバルで制作する40のオリジナル作品のうち、20作品を日本で制作するなど、かなり日本市場にこだわった展開になっている。

 オリジナルコンテンツのジャンルもバラバラで、人気漫画原作のオリジナルドラマ「はぴまり~Happy Marrage!?~」や「ベイビーステップ」、天正少年使節をモチーフにした「MAGI 天正少年使節と世界帝国」、松本人志の「HITOSHI MATSUMOT presents ドキュメンタル」、「内村さま~ず」などのバラエティ、日本文化を追求する「PRIME JAPAN」、「Invisible TOKYO」などのドキュメンタリー、そして「仮面ライダーアマゾンズ」、「ウルトラマンオーブ スピンオフ作品」など12作品。

 なぜ、Amazonは、プライム・ビデオのオリジナル戦略を強化するのか、そして、この12作品を選んだ理由はなんだろうか? Amazonでプライム・ビデオのコンテンツ戦略を担当するAmazonスタジオ代表 プライム・ビデオ コンテンツ グローバル統括のロイ・プライス氏と、Amazonプライム・ビデオ&Amazonスタジオ コンテンツ事業本部長 アジア・パシフィック リージョナルヘッドのジェームズ・ファレル氏、アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長に聞いた(以下敬称略)。

左からジェームズ・ファレル氏、ロイ・プライス氏、ジャスパー・チャン氏

プライス:会見でも話しましたが、オリジナルの作品、映画やテレビショー、バラエティなどのユニークな作品を用意しました。オリジナル作品に関連するコンテンツも揃え、多くの人に楽しんでいてだけるようにしています。実際にプライム・ビデオ上の平均視聴時間は、通常作品(カタログ作品)より、オリジナル作品のほうが長くなっています

先行、独占配信作品が人気

チャン:(有料会員プログラムである)プライムの視点からいうと、お急ぎ便などのショッピングの特典に、エンターテインメントを加えることで、より多くの人に使っていただけるサービスになっています。数値は公表できませんが、プライム・ビデオの開始以来、日本でのプライム加入は強く伸びており、日本はプライム会員が最も伸びている国の一つです。

Amazonプライムの会員数は右肩上がり(縦軸の数値は不明)

 発表された12作品は、多彩なジャンルで幅広いユーザー層を狙っているように見える。一方で、ドラマや特撮、バラエティなど、ジャンルもターゲット層もバラバラで、コンテンツ選択にあまり一貫性がないようにも感じる。どんな狙いで、オリジナルコンテンツを選択しているのだろうか?

ファレル:アマゾンの膨大な顧客には、多くの年齢層がいて、それぞれに異なる嗜好をお持ちです。全員が満足する作品をお届けするのは難しい。ですが、一貫しているのは、ユニークであり素晴らしい作品であること。若い女性向け、あるいはキッズ向けなど、それぞれのユーザー層に適した作品を、と考えています。一つの作品で全員に満足していただくのではなく、様々なユニークな作品を用意し、プライム・ビデオを見れば好みの作品が見つかり、楽しめるようにしています。

 コンテンツ選択は、想定ターゲットありきのものだろうか。例えば、「仮面ライダー アマゾンズ」であれば30~50代男性、「はぴまり」は10~20代女性、といったようなターゲットごとの戦略などを持っているのだろうか?

仮面ライダーアマゾンズはシーズン2を制作へ

ファレル:仮面ライダー アマゾンズを見たい人は、キッズだけでなく、大人の男性も多いでしょう。また、家族で見るかもしれません。仮面ライダーのような人気シリーズであれば、アマゾンズをきっかけに、関連する作品や古い作品もあわせて見たいという方が非常に多い。はぴまり、を見る方も、作品そのものへの興味だけだけでなく、原作、出演者などから興味を持つかもしれません。ですから、単純なグループや属性だけでなく、興味のつながりを生み出せるように工夫しています。

 昨年秋の日本市場参入時には、Amazonの強みについて「日本最大のBD/DVD販売実績と、その膨大な顧客データ」と語っていた。オリジナルコンテンツを制作するのにあたり、そうしたデータはどのように活かされたのだろうか?

ファレル:具体的な例を挙げると「内村さま~ず」ですね。コメディアングループの作品ですが、DVDの記録的な売上を持っています。Amazonの多くのカスタマーが興味を持っていることは事は明らかでしたし、実際の視聴数にもあらわれています。

内村さま~ずは、'16年秋に海外配信

チャン:日本のカスタマーは、日本のコンテンツを好む傾向がとても強い。ですから、カスタマーにあわせたコンテンツの制作を強化しています。

ファレル:日本ならではの傾向としては、バラエティショウが好まれますね。先ほど話した「内村さま~ず」の例もそうですし。松本人志さん、石塚さん(酒と肴と石塚英彦)の作品を追加しているのも、そのためです。

 また、ドキュメンタリーの「RAKUEN 三好和義と巡る楽園の旅」、「PRIME JAPAN 日本のこころに出会う」、ドラマ「MAGI 天正少年使節と世界帝国」などは4K(UHD)画質で制作される。4K画質への取り組みはどう考えているのだろうか?

「RAKUEN 三好和義と巡る楽園の旅」は4K制作

ファレル:今回の、オリジナル作品で4Kを選んだ理由は、そちらのほうが“自然”だからです。例えば、トラベル(紀行)や料理などの作品は高画質のほうがより臨場感高く、魅力的ですよね。日本市場の4Kデバイスの普及率は世界一です。当然、4K対応は重要視しています。

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臼田勤哉