トピック

70代開発者の声も反映。東芝AUREXブランドのテレビ用スピーカーを聞いてみた

テレビ用ワイヤレススピーカー「TY-WSD20」

東芝エルイートレーディングは8月26日、発売中のテレビ用ワイヤレススピーカー「TY-WSD20」や浴室などで使える伝振動スピーカー「AX-FL10」など、オーディオ製品の商品説明・体験会をメディア向けに開催。テレビの音を聴きやすくするというTY-WSD20を実際に体験してきた。

2002年創立の東芝エルイートレーディングは、翌年に自社ブランドで、その翌年の'04年からはTOSHIBAブランドでオーディオ事業を展開。CDラジカセやCDプレーヤー、カセットプレーヤー、ラジオ、スピーカーなど、さまざまオーディオ製品を展開している。

また'16年には東芝のピュアオーディオブランド「Aurex」を26年ぶりに復活させ、ブランド50周年を迎えた'23年にはロゴマークの刷新や新たなブランドスローガン「心、躍る。」を掲げるなどリブランディングも実施。現在はハイレゾ対応のCDラジカセ「TY-AK21」などをAUREXブランドで販売している。

70代スタッフの意見も反映したテレビ用スピーカー

Bluetoothスピーカー市場は緩やかに下落しているものの、テレビ用ワイヤレススピーカーはこれからも伸長すると予測する

そんな東芝エルイートレーディングは、CDラジカセやCDラジオ、ポータブルCDプレーヤーなどで市場シェアトップを誇っているほか、テレビの音を聴きやすくするテレビ用スピーカーも展開中。年配者の中には「聴こえない」とテレビの音量を上げすぎるあまり、インターホンの音が聴こえないほどの大音量になっている人もいるという。そういった「テレビの聴こえ方」を改善する曲面スピーカーやネックスピーカーなども含めたテレビ用スピーカーは、市場全体の約22%を占めており、人口統計なども踏まえると今後も需要は高まる見込みだという。

「TY-WSD20」

同社では'16年にテレビの音声を手元で聴ける防水ワイヤレススピーカーとして「TY-WSD11」を発売。そして'24年6月には後継機となる「TY-WSD20」を発売している。実売価格は19,000円前後。

光デジタル入力を新たに搭載

新モデルでは筐体をさらに小型・軽量化にしたほか、音質切り替えモードを従来の「TVサウンド ノーマル/音声/音楽」から「声はっきりモード(切/小/大)」と使いやすく変更。そのほか光デジタル入力やイヤフォン出力に対応した。

テレビのサウンドを改善する製品としてはサウンドバーが思い浮かぶが、サウンドバーは低域から高域までを強化して臨場感を演出するものの、低域が強まってしまうと「ニュースなど、とにかく人の声を聴きやすくしたい」という年配者のニーズにはマッチしないという。

各ボタンやノブは操作しやすい大型タイプ

これに対し同社のTY-WSD20では、社内の70代技術者などからもフィードバックを受けて、音質をチューニング。低域や高域を抑えつつ、中域だけを盛り上げることで、人の声を聴きやすくするようなサウンドに仕上げている。また電源ノブや音量ノブ、声はっきりモードの切り替えスイッチも大型の物理ボタンで操作がしやすくなっている。

TY-WSD20ではテレビに接続する送信機(左)とスピーカーの充電器(右)が別になっている
スピーカー用充電器はUSB Type-Cで給電する

さらにTY-WSD20はテレビに接続する送信機と、スピーカー本体(受信機)用の充電器が別体になっているのも特徴。競合のA社、B社のものは送信機と充電器が一体となっているため、充電する際、スピーカー本体をテレビ近くの送信機兼充電器に戻す必要があるが、TY-WSD20では充電器をリビングの机の上など、より使いやすいところに設置できる。

そのほか、TY-WSD20のスピーカー出力は2W+2Wと、競合製品に比べてパワフルな点も強みだという。

実際にTY-WSD20を使って、「意外と声が聴き取りにくい」という国会中継を視聴してみると、「声はっきりモード」を切った状態でも議員の質疑応答がクリアに聴き取りやすい。さらにモードを「大」にすると、男性の声に含まれるこもったような低域部分や、耳に刺さるような高域部分は抑えられつつ、中域が盛り上がるため、よりはっきりと言葉を聴き取ることができた。

競合他社の製品とも聴き比べてみたが、「市場でもっとも人気」というA社の製品は低域部分も持ち上がってしまうため、人の声がモコモコとこもったような音質で声は聴き取りにくい印象。

B社の製品は人の声を際立たせるモードにするとモノラル再生に切り替わるため、国会中継やニュースなどでは違和感なくはっきり声を聴き取れるものの、音楽番組ではトークパートは聴きやすくても、演奏パートでは音の広がりやクリアさが物足りなく感じられ、パートごとにモードを切り替えたくなる。

それに対して、TY-WSD20はステレオ再生のまま人の声だけを聴き取りやすくしているため、演奏パートでも違和感なく楽しむことができた。

スピーカーには外部入力、イヤフォン端子を装備

「ユーザーニーズにあった、他社にない製品」として作り上げた伝振動スピーカー

壁などに設置して使う防水Bluetoothスピーカー「AX-FL10」

同じくスピーカー製品で、Aurexブランドとして展開しているのが浴室などで使える防水仕様のBluetoothスピーカー「AX-FL10」。実売価格は21,000円前後。

こちらは「ユーザーニーズにあった、他社にない製品を作ろう」と検討を始めた製品で、ユーザーアンケートの結果、40%の人が「お風呂で音楽やラジオを聴きたい」という回答が得られたとのこと。

防水仕様のBluetoothスピーカーではない独自性として採用したのが、出力4.5W+4.5Wの伝振動スピーカー。AX-FL10は背面が磁石になっており、浴室の壁や冷蔵庫など金属面に貼り付けて設置すると、その貼り付けた壁面が振動して音を広げる。

本体は薄型

設置した壁面自体が振動するため、上下左右への音の拡散が少なく、壁・天井の反射の影響も受けにくく、浴室のような反響の強い空間でも明瞭なサウンドを楽しめるという。音圧の減衰も少ないため、音量をあげなくても鮮明な音を楽しめるほか、マイクを内蔵しているため、Web会議などでも活用できる。

製品には金属面以外にも設置できるような貼り付け用のマグネットシート、Qi規格のワイヤレス充電器などが付属する。

設置場所も例えば車のボンネット、洗濯機など、金属面であれば貼り付けることができるほか、付属のシートを使えば金属面以外にも設置可能。貼り付ける材質によって音質も変化する。同社スタッフによれば「天井に貼り付けると音が降り注ぐような体験ができるのでオススメ」とのこと。

こちらも一般的な防水Bluetoothスピーカーとして同社製「AX-WSP100」と聴き比べてみると、AX-WSP100は音が本体から広がって聴こえるのに対し、AX-FL10では壁全体から音が広がってくるため、音に包まれるような感覚を味わうことができた。本体も薄型で持ち運びやすく、設置する壁の材質によって音質も変わるため設置場所を変えて音の違いを確かめてみる、といった楽しみ方もできそうだ。

酒井隆文