「PlayStation Vita」ファーストインプレッション

-有機ELの高画質。音質良好。「剥がす」新体験操作


PlayStation Vita

 17日に、遂に発売された「PlayStation Vita」(PCH-1000シリーズ/以下Vita)。その製品版を購入したので、AV機能をメインにファーストインプレッションをお届けしたい。

 既報の通り、ラインナップは無線LANモデルと、3G+無線LAN両対応モデルの2種類。価格は無線LANモデルは24,980円、3Gと無線LAN両対応のモデルは29,980円となっている。

 なお、各アプリの詳細やゲームソフトの情報などは、僚誌GAME Watchを参照して欲しい。また、バージョンアップしたtorneとの連携機能は後日、別に紹介する予定だ。



■開封から起動まで

 ケースは青を基調としたデザインで、かなりコンパクト。購入したのは3Gモデルで、ヨドバシカメラの通販で購入したが、ケースの他にプリペイドプランの契約事務手数料用の伝票処理カードも付属していた。

青を基調としたケースプリペイドプランの契約事務手数料用の伝票処理カード8GBのメモリーカードも購入した
電源を2秒間長押しすると、画面に赤い電源ボタンが現れ、そこから電源を完全にOFFできる

 ケースを開けると「ようこそ、プレイステーションの世界へ」という文字が目に入る。付属品はスタートガイドとACアダプタなど。ACアダプタはVita接続用の専用端子を備えているが、その反対側がUSBになっており、充電以外にもPCやPS3とのUSB接続ケーブルとして使用できる。充電中は、左下にあるPSボタンが赤く光る。所要時間は約2時間40分。バッテリの持続時間はゲームで約3~5時間、動画で約5時間、音楽再生で約9時間。

 なお、PCとUSB接続で充電もできるが、Vitaがスタンバイモード(起動していて画面が暗くなっている状態)では充電できない。電源ボタンを2秒間長押しし、画面に赤い電源ボタンが現れ、そこから電源を完全にOFFにした状態でUSBにつなぐと充電できる。電源ボタンは天面に用意。使用中に一度ハングアップしたが、電源ボタンを20秒間長押しすると強制的に電源OFFにする事も可能だ。


ケースを開けたところ同梱品の一覧付属の充電・USB接続用ケーブル
ACアダプタ部分。先ほどの充電・USB接続用ケーブルと組み合わせて使用する左がPSP用のACアダプタ。Vita用アダプタの方が若干小さい
充電中は左下のPSボタンが赤く光る向かって左側のボタン類向かって右側のボタン類。アクションボタンの上にあるのが内側のデジカメ。スピーカーはアナログスティックの脇にある

 ディスプレイは5型で、アスペクト比は16:9。有機ELを使っており、解像度960×544ドット。静電容量方式のマルチタッチスクリーン仕様だ。

 なお、背面にもマルチタッチパッド(静電容量方式)を搭載しているのが最大の特徴。ディスプレイの裏を触るような感覚で操作する事も可能で、「ゲームプレイに触る・つかむ・なぞる・押し出す・引っ張るといった立体的な感覚を取り込むアイデアだ。

背面にもマルチタッチパッドを備えているホールド時にゆびをかける部分天面。Vitaカードスロットや電源ンボタン、ボリュームボタンなどを備えている
背面にあるデジタルカメラ下部。Vita用のコネクタやイヤフォン出力を装備上からPSP-1000、PSP-2000とVita

 外形寸法は約182×83.5×18.6mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約279g。プレイステーション・ポータブル(PSP)と比較すると一回り大きく感じる。大画面が中央にあり、その左右にコントロール用ボタンを備えるという配置は、PSPと同じ。大きく異なるのは左右に2本のアナログスティックを搭載した事。スピーカーはアナログスティックの脇に備えている。

 ほかにも、左側には方向キー、右側にはアクションボタンを装備。PSボタンは左下、LRボタンも上部側面に備えている。STARTボタン、SELECTボタンは右側下部に、ボリュームコントロールは上側側面だ。下部には充電やUSB接続を行なうための専用コネクタと、イヤフォン出力を備えている。

Vitaの上にPSP-2000を重ねたところ上からPSP-1000、PSP-2000、Vita
iPhone 4Sとのサイズ比較

 


 

■メモリーカードの詳細

 事前情報で若干イメージがつかみにくかったのは、メモリーカードの仕様だ。まず、本体下部の側面に「メモリーカードスロット」と名付けられたもの、上部の側面に「PlayStation Vitaカードスロット」と名付けられたもの、2つのスロットがある。

上部にあるVitaカードスロット(右側)下部にあるメモリーカードスロットメモリーカードをmicroSDカードと比較

 

Vita用ゲームソフトと、Vitaカード
 メモリーカードスロットはその名の通り、専用のメモリーカードを挿入するもので、このカードは“内蔵メモリ”のように使用する。例えば、音楽や映像を保存したり、ダウンロード購入したゲームやビデオの保存にも使用する。なお、このVita専用メモリーカードを抜き差しする場合は、Vitaの再起動が必要となる。

 

 一方、PlayStation Vitaカードは、ゲームを収録して販売されるカードだ。つまり、Vitaカードを差し替えて複数のゲームを遊ぶ事もできるし、挿入したメモリーカードに複数のゲームを保存し、それを切り替えて遊ぶといった使い方もできるわけだ。

 なお、ゲームが入っているVitaカードは、書き込みも可能なため、ゲームのセーブデータをVitaカードに保存する事ができる。ゲームによっては、Vitaカードだけでなく、メモリーカードにも保存が可能。ただし、Vitaカードに保存したセーブデータを、メモリーカードにコピーする事はできないそうだ。

 わかりにくい原因は、片方が“メモリーカード”という、汎用的な名前になっていることで、Vitaカードもメモリーカードの一種であるため、混同しがちなせいだろう。Vitaカードはそのままで、メモリーカードにも、何か別の名前をつけて欲しいところだ。

3G対応モデルは、側面にSIMカードスロットを備えている

 


 

■起動までと基本的な使い方

 初回起動時は、ディスプレイの右上に、剥がれかかったシールのような表示が現れる。これを指先で剥がすように操作すると、初期設定の画面がスタートする。この「剥がす」操作が基本操作の1つであり、それを自然な流れでユーザーに理解させる仕組みだ。

 ホーム画面には各機能のアイコンが並び、アイコンが多い場合はホーム画面自体が下方向に拡張されていき、指でスクロールしながら切り替え、目的の機能を選択する。

初回起動時。剥がしてくださいと言わんばかりの画面を剥がすと、初期設定がスタート初期設定が終わると、簡単な使い方紹介動画が流れる発売日である17日に、新ファームウェアが公開された。バージョンは1.5

 例えばビデオ再生アプリを起動すると、「LiveArea」と呼ばれる画面が現れ、PSN(PlayStation Network)で配信されているコンテンツなどのオススメ情報が、バナーのように表示される。動画を再生したい時は、中央にあるフィルムのようなアイコンを押す。動画や音楽、ゲームソフトなど、各ジャンルの最新情報が、機能の前に提示されるという流れだ。

 音楽再生やゲームプレイの途中にPSボタンを押すと、「LiveArea」画面に戻る。もう一度押すと、他の「LiveArea」が横に並んだようなメニューに切り替わる。これはタスクメニューであり、ここから、起動している他のアプリへと切り替えられる。この画面でPSボタンをもう一度押すと、ホームメニューに戻る。ホームメニューでもう一度PSボタンを押すと、再度タスクメニューに切り替わるという流れ。

ホームメニュー画面。各機能がアイコンで並ぶビデオアプリの「LiveArea」画面。右上から剥がすと、「LiveArea」が終了となるタスクメニュー画面。起動しているアプリが横に並び、ここからアプリを切り替えられる

 例えば音楽を再生している状態でPSボタンを押し、Webブラウザを選択すれば、ネットサーフィンをしながらBGM的に音楽を楽しむ事ができる。停止したい場合はPSボタンを押してタスクメニューを表示し、そこから音楽アプリを選んで停止する。

 なお、各アプリの「LiveArea」画面では、初回起動時にように右上に剥がれかけたシールのような部分がある。これを剥がすと、そのアプリが終了された事を意味する。終了されたアプリは、タスクメニューには出てこない。

Webブラウザ画面。2本指を使ってズームする事も可能だ。なお、現時点でFlashには対応していない

 PSNにアクセスすると、ゲームやビデオなどのコンテンツに加え、「アプリケーション」というコーナーが用意されており、ここから様々なアプリがダウンロードできる。発売日である17日現在は、Twitter用クライアントである「LiveTweet for PlayStation Vita」と、ニコニコ動画視聴用アプリ「ニコニコ」などが用意されていた。

 ゲームと同様に、アプリをダウンロードすると自動的にインストールされ、ホーム画面にアイコンとして追加される。「LiveTweet for PlayStation Vita」はVitaのマルチタスク機能と相性が良く、ゲームの途中にツイートする事も可能。

 「ニコニコ」は現在のところニコニコ動画の視聴のみの対応だが、将来的には動画投稿や生配信機能も追加される予定。ニコニコ動画の再生は、コメントのスクロールが滑らかで使い勝手は良好。だが、一部Vitaで再生できない動画もあった。

 

ホーム画面。様々なアプリのアイコンが並んでいるPSNのアプリコーナーから追加アプリをダウンロードできるアプリをインストールしたところ。下部に2つ、ニコニコと「LiveTweet for PlayStation Vita」が追加されている
ニコニコ動画用アプリ「ニコニコ」「LiveTweet for PlayStation Vita」

 


■音楽/動画再生機能を使ってみる

 PSNで購入するコンテンツとは別に、ユーザーが持っている音楽・動画ファイルを転送するためには、PCやPS3を用意する必要がある。現時点で、Vita用メモリーカードを読み込めるPC用カードリーダなどは発売されていないため、VitaとPC or PS3を接続する形となる。

 ケーブルは、付属のUSBケーブルを使用。PCの場合は公式サイトから「コンテンツ管理アシスタント for PlayStation」というソフトをダウンロード&インストールしておく必要がある。通常のUSBストレージとしては利用できないので注意が必要だ。

 

 コンテンツ管理アシスタント for PlayStationはタスクバーに常駐するタイプのソフトで、Vita側からアクセスできる動画、映像、静止画、アプリ用のフォルダをこのソフトで指定しておく。対応OSはWindows XP/Vista/7で、Macについては「そう遠くない将来に対応する」とのこと。

連携用のPCソフト「コンテンツ管理アシスタント for PlayStation」をインストールすると、タスクバーに常駐する「コンテンツ管理アシスタント for PlayStation」上で、Vitaからアクセスしたいコンテンツフォルダを指定する

 次に、Vita側で「コンテンツ管理アシスタント」というアプリを起動。「PCからVitaへ転送」を選び、転送したいファイルの種類を選ぶと、音楽ならば「ミュージック」、動画ならば「ビデオ」と、該当するアプリが起動。そのアプリを通じてPCにアクセスする。Vitaから見えるのは、PCの「コンテンツ管理アシスタント for PlayStation」で指定したフォルダのみで、このフォルダ内にあるフィルから、転送したいものを選択する。なお、PC内ファイルを転送せず、直接再生はできない。

 なお、動きを見ているとわかるが、動画と音楽に関して、コンテンツ転送は「コンテンツ管理アシスタント」にアクセスせずにも行なえる。それぞれのアプリを起動して使っている際に、PCとUSB接続していると、「アーティスト」や「アルバム」といった選択欄にパソコンのアイコンも現れ、そこからPCにアクセスする事ができる。

Vita側で「コンテンツ管理アシスタント」というアプリを起動したところ。転送したい方向を選ぶPC内のファイルにアクセスし、Vitaにコピーしたいものを選択する

 対応動画はMPEG-4 Simple Profile Level3(AAC)、H.264/MPEG-4 AVC Baseline/Main/High Profile Level3.1(AAC)。対応する最大解像度は、Vitaのユーザーズガイドによると、MPEG-4 Simple Profileが320×240ドット、MPEG-4 AVCが720pだという。試しにソニー製の双眼鏡型ビデオカメラ「DEV-3」や、パナソニックのデジタル一眼「DMC-G3」、ソニーのレンズ交換式ビデオカメラ「NEX-VG20」、3D撮影対応ビデオカメラ「HDR-TD10」などで撮影したフルHD AVCHD動画ファイルは再生できない。拡張子が「m2ts」のファイルを「mp4」などに変更しても同じだ。

 フルHDを諦め、コンパクトデジタルカメラの「DSC-HX5V」で撮影したMP4ファイル(AVCHDではない)でテストしたところ、1080モード(12Mbps/1,440×1,080ドット/30p)や、720モード(6Mbps/1,280×720ドット/30p)のファイルは、Vitaにコピーする段階で「非対応のファイル」としてコピーできず、VGAモード(3Mbps/640×480ドット/30p)のファイルのみ、転送・再生できた。

 音楽ファイルの対応はMP3、MP4 (MPEG-4 AAC)、WAVE (Linear PCM)。iTunesでリッピングしたApple Losslessのm4aや、iTunesで購入したDRM付きのm4pファイル、FLACファイルの拡張子をmp3などに変更して転送してみたが、いずれも再生はできない。また、WAVでも、24bit/96kHzのファイルも転送したが、こちらも再生はできなかった。

 MP3ファイルなどを再生し、音質をチェックしてみたが、ヘッドフォン出力は思いのほか音が良い。雑味が無くクリアで、分解能も高く、低域の描写にも馬力がある。DAC、アンプ共に音楽プレーヤーとして十分な実力のものが搭載されているようだ。

動画再生中の画面音楽ファイルを選択しているところ。m4aファイルなどは再生できない

 内蔵スピーカーの音質は、サイズからして低域は出ないが、中高域はクリアで明瞭。スピーカーはアナログスティックの脇に備えているが、左右の距離が十分離れている事もあり、ステレオ感も良い。広がりのある音が楽しめる。また、指でボタンを操作しているとスピーカーの上を塞いでしまうのが気になるが、指とスピーカーが密着しているわけではないので、片方から音が聞こえなくなるような事はなく、それほど気にせず聴いていられる。

 


 

■有機ELの画質

 Vita最大の特徴はやはり、5型、解像度960×544ドットの大画面有機ELだろう。動画や静止画を表示してみると、黒に締まりがあり、筐体フレームのブラックとほぼ同じ程度まで沈み込んでいる。コントラストが良く、解像度以上に精細感のある表示が楽しめる。5型という画面サイズも従来のポータブルゲーム機やスマートフォンと比べても大きく、ビューワーとしての魅力は非常に高い。

黒に締まりがあり、コントラストも高い有機ELの画質

 こうなると、背面と前面に備えたカメラの性能にも期待するが、静止画は最大でも640×480ドット。何枚かテスト撮影してみたが、ラチチュードが狭く、容易く白トビしてしまう。暗所撮影時のノイズも多く、大昔の携帯電話のデジカメ機能といったイメージだ。なお、Vitaの仕様に「120fps@320x240(QVGA), 60fps@640x480(VGA)」と、動画撮影に関する情報も書かれているが、標準で搭載されている「フォト」アプリに動画撮影機能は無い。いずれ動画撮影機能が追加されたり、別アプリとして提供される事にも期待したい。

作例。白飛びが気になる解像感もいまひとつだ
明暗の差が少ないと、それなりの画質になる暗所ではノイズが多い

(2011年 12月 17日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]