「青の6号」BDに採用されたキュー・テックの新アップコン

-革新画質と低コスト両立。SDアニメBD化に貢献


青の6号 BD-BOX
※ジャケットとは異なります
(c)1998小澤さとる/バンダイビジュアル・EMIミュージックジャパン

8月27日発売

標準価格:10,290円

 バンダイビジュアルから8月27日に発売される、アニメ「青の6号」のBlu-ray Disc BOX。OVA初のフルデジタル制作の作品としてアニメファンに知られており、第1巻が発売されたのは約12年前の1998年。当時では異例と言っていい3DCGと2Dアニメの融合に果敢にチャレンジした、非常に先進的な作品で、黎明期のDVDにおけるハイクオリティソフトだ。

 そんな「青の6号」が8月27日にBD-BOX化される。BD化となると、その映像クオリティに期待が集まるところだが、今回のBD-BOX化にあたっては、キュー・テックの新しい映像アップコンバート技術が使われているという。技術的にも注目度の高いBDソフトと言えそうだ。

 今回、まさにBD制作が進められているキュー・テックに赴き、その詳細な内容と、発売より一足先にDVDとBDの比較視聴で、そのクオリティも体験した。さらに、前田真宏監督にもBD-BOX化にあたっての想いなどを聞いた。


■ BD化の経緯

編集部:まず、画質を見る前に、バンダイビジュアルの事業本部 第1事業部 アニメチームの杉山潔プロデューサーにBD化の経緯についてお伺いします。

杉山氏(以下敬称略):一昨年、『戦闘妖精雪風』というSD制作の作品を、アップコンバートしてBD-BOX化しました。映像的に綺麗だという評価を頂いたのですが、実はあれは相当コストがかかっているんです。会社の中での『雪風』という作品の位置付けや、BD化した時に売れる見込みの数などから、“ここまでコストをかけてBD化しても良い”と判断できたのでBD化が実現しましたが、ある意味『雪風』だからできる処理でした。

編集部:やはりBD化の際には、『コスト回収できるか否か』が大きな判断ポイントになりますか?

バンダイビジュアルの杉山潔プロデューサー
杉山:そうですね。また、『雪風』は5本のシリーズだからできたという面もあります。あれが1クールや2クール作品でしたら、作業時間やコストの面で見合わなくなってしまいます。しかし、『雪風』だけでなく、ここ10年あまりに作られたSD制作のデジタルアニメを、Blu-rayの時代にどうソフト化するかという問題は残り、各社が頭を悩ませていたところなんです。

 BDの大容量を活かして1枚に沢山の話数を入れるとか、色々な案はあると思うのですが、我々としてはやはりBDなので、"まずは高画質で収録するべきだろう”と考えています。しかし、アップコンバートにはコストの問題がある。そんな折、今年に入ってキュー・テックさんの方から新しいアップコンの技術を開発したという連絡があったのです。見せていただいたところ、クオリティが素晴らしく、しかもリーズナブルでした。

編集部:それを『青の6号』で使おうという流れになったんですね。

杉山:ええ。この技術を使ってBD化するのに、相応しい作品は何か? を考えた時に浮かんだのは、当時大ヒットした『青の6号』でした。密度の高い、情報量の多い作品でBD化に相応しいですし、デジタルアニメの初期に作られた作品を、新しい技術でBD化してみたいと考えたのです。


 

■ キュー・テックの新アップコン技術

  キュー・テックでは、実際に作業を担当されている編集部 第2映像グループ エディターの岡田和憲氏と、ポストプロダクション営業部 第1営業グループの菅原慎一マネージャーのに作業内容を聞いた。

キュー・テックで作業中の映像を観せていただきながらお話を伺った
 基本的な情報として、『青の6号』はデジタル制作のアニメではあるが、制作はSD解像度で行なわれている。DVD制作時に作られたマスターは、SD解像度の映像をデジタルβカムに収録したもので、これをマスターとして今回のBDも制作されている。

 通常のBDソフトでは、この映像をアップコンバート用のシステムを使ってフルHDに変換するのだが、キュー・テックは新たに『高画質HDリマスタリングアップコン』というシステムを開発。従来のアップコンバートと一線を画する、ハイクオリティな変換を実現したという。

 どのようなシステムか気になるところだが、菅原氏によれば作業に入る前に、キュー・テックではまず、その作品がビデオ制作のものか、フィルムの作品か、など、10項目以上にわたって画像を“診断”するという。それも、長年培ってきたノウハウを用いて、SD画像(60i)を全コマ入念にチェックするとのこと。

 その結果をもとに、シーンやタイトルごとに適したパラメーターや、時には装置を換えつつ、様々な手法でアップコンバートを実施。単にアップコンバート機に通しただけとは次元の違う、非常に高画質な映像を生み出すというのだ。

 先程“システム”という紹介をしたが、つまりこの処理には、1つの決まった装置を使うのではなく、マスターの映像に合わせて、その都度エンジニアが細かい設定や装置を使い分け、アップコンバート処理をしていくという“作業フロー”を総称したものとも言える。

編集部:実際にどのような機器を使っているのですか?

菅原:使用している機材の詳細は申し上げられないのですが、最大のポイントは、現場で実際に作業をしているエンジニア達のノウハウを活かした事です。このシステムを開発したのは、10年以上アニメエディターとして最前線で編集してきたエンジニア達で、彼らのノウハウの結晶と言えるものです。それを駆使し、手間をかけて処理することで、従来のアップコンバートから大幅にクオリティが上がっています。そのため、システムの名前に“リマスタリング”という言葉をあえて加えています。

編集部:具体的なイメージとしては、シーンや適用するフィルタなどの処理ごとに、設定や機械を変えつつ、最適な結果が出るようにするという事なのでしょうか?

岡田:そうですね。臨機応変に、この処理はこの機械というように処理していきます。


■ 実際に画質をチェック

 ここで、キュー・テックが従来使っていたアップコンバートシステムを使って処理したものと、新しいシステムで処理したものの比較画像を紹介する。いずれも違いがわかりやすい部分を選び、アップコンバート後のフルサイズ(1,920×1,080ドット)の映像から、実サイズを切り抜いて掲載している。

 違いは一目瞭然だ。まず驚くのが、映像全体が“クッキリ”している事だ。一般的なアップコンバートでは、輪郭線やディテールが曖昧になるため、全体をすりガラスを通して見たようなボヤがちだ。

 しかし、新システムでは輪郭線が明瞭で、キャラクターのまつ毛の描写までクッキリしているのに驚かされる。輪郭付近にノイズが出る事もなく、海中での激しいアクションシーンでも気泡の輪郭にざわつきがない。動画でこれを観ていると、もともとHD解像度で作られた作品かと錯覚してしまう。

 DVDの映像と比べると、発色も鮮やかになっている。潜水艦内の薄暗いシーンでも、ライトに照らされた服の部分の色がDVDよりも鮮やかで、情報量が多く、階調も豊富。これも一目見て“クッキリしている”と感じる理由の1つだろう。

 また、海底の描写や、潜水艇の底部など、DVDではつぶれがちだった暗部の情報量は圧倒的にBDの方が多く、よくわからなかった海底基地のディテールや、潜水艦表面のテクスチャなどが鮮明になり、全体的に立体感が増したと感じる。

 【 従来のアップコン 】【 QTECの高画質アップコン 】
シーン1
シーン1
抜き出し
キャラクター(紀之真弓)の目の部分で比較。ボヤケた印象が無くなり
輪郭がクッキリ。まつげの1本1本もよくみえる。しかし、輪郭が過度
にシャープすぎない
(C)1998小澤さとる/バンダイビジュアル・EMIミュージックジャパン
ーン2
シーン2
抜き出し
艦内のシーン。顎や頬の部分の輪郭線が従来のアップコンでは
階段状のギザギザになっているが、新技術では滑らかかつシャープだ
(C)1998小澤さとる/バンダイビジュアル・EMIミュージックジャパン
シーン3
シーン3
抜き出し
魚雷発射シーン。気泡のディテールも明瞭になっている
(C)1998小澤さとる/バンダイビジュアル・EMIミュージックジャパン
シーン4
シーン4
抜き出し
こちらも魚雷の気泡。1つ1つのディテールがクリアだ
(C)1998小澤さとる/バンダイビジュアル・EMIミュージックジャパン
シーン5
シーン5
抜き出し
グランパスを上から見たところ。形状がクッキリ見えるだけでなく
質感も新システムの方がよくわかる
(C)1998小澤さとる/バンダイビジュアル・EMIミュージックジャパン
シーン6
シーン6
抜き出し
海底に沈んだビルと電線。いずれもシャープさが大違いだ。また、
ディテールが明瞭になった事で個々の重なりが強調され、より奥行を
感じさせる映像になっている
(C)1998小澤さとる/バンダイビジュアル・EMIミュージックジャパン
シーン7
シーン7
抜き出し
速水の腕時計。こちらも違いは一目瞭然だ。従来のアップコンは
輪郭が不明瞭で、二重になっているように見える部分もある
(C)1998小澤さとる/バンダイビジュアル・EMIミュージックジャパン

編集部:輪郭線が非常にシャープなのが印象的なのですが、お話いただける範囲で、どのような原理なのか教えていただけますか?

キュー・テックの編集部 第2映像グループのエディターである岡田和憲氏
岡田:映像信号の場合、例えばカメラで撮影した時は光の3原色のRGBですが、それから色差信号になり、コンポジットになりと、どんどん情報量が減っていきますよね。それを逆に遡るようなイメージで、色々と考えながら処理をしています。

 ただ、こうした処理がポンとできる機材は存在しないので、先程も申し上げた通り、色々なものを組み合わせつつ、完成に近づけていきます。作品ごとに一応は通し処理用の設定を作ってはいるのですが、狙いとズレた部分に関して、カットごとにトーンを変え、処理をしなおして……というのを繰り返しています。

編集部:全4話の作品ですが、基本の処理設定は共通なのですか?

岡田:いえ、それが違うのです。デジタル制作の初期の作品なので、その進歩が反映されて、話数を重ねるごとに映像の質感が違うのです。ですので各話のテイストを活かしつつ、処理をしています。


編集部:『青の6号』という作品だからこそ、難しいポイントなどはありますか?

岡田:潜水艦の艦内で、アラートなどで画面が真っ赤になるシーンがあるのですが、色信号は輝度信号の半分しか情報が無いので、そのままアプコンすると線がガタガタになって、見られたものではない映像になってしまうのです。それを滑らかに見えるような処理をかけています。また、色の境目も階段状になりがちな部分なのですが、それをそのまま拡大するとガタガタが大きくなってしまう。それをいかに見えないようにしていくのかが大変な所です。その成果がキャラクター線のエッジなどにも出ていると思います。

編集部:色の階調はいかがですか?

岡田:潜水艦や海の底のシーンが多いので、薄暗い場面が多く、階調割れも出やすいですね。海の中の光や、潜水艦の表面などで、バンディングが出てしまうシーンもありますので、そういうシーンはその都度丁寧に直しています。ただ、あまりかけすぎると階調が消えてしまって海の中に見えなくなってしまったりするので、バランスも重要です。

 また、こうしたバンド処理は、必要な部分のみにかけています。一般的には全体にかけてしまう処理をする方が多いのですが、我々は出ているところにかけることで、他の部分に影響が出ないようにしています。

編集部:しかし、ここまで手間をかけた処理となると、価格の面ではコストがより高くなってしまうようにも思えるのですが……。

菅原:今回比較用にお見せした『一般的なアプコン』は従来我々が使っていたものですが、これも一世代前の最高画質だと考えています。それも、一般の処理よりもさらに手間暇をかけて作っていました。手間をかけるという事は、今回の新しい技術でも変わらないのですが、その“かけるベクトル”が変化したとご理解ください。以前のアプコンは、1話作るのに1人がつきっきりで作業しなければなりませんでしたが、新技術ではそれを分担する事で効率化が可能になった所が、コスト面に寄与しています。


■ 現在に通じるデジタルアニメを切り開いた作品

編集部:前田真宏監督は、BD化されるというお話を聞いた時に、どう感じられましたか?

前田真宏監督
前田監督:『あー、出るんだなぁ!』と思いました(笑)。ただ、本当にデジタルアニメの初期に作られたものなので、技術的な面で正直に言ってアラが目立つ部分もあります。それをBD化で情報量を上げるとどうなるんだろう? という不安も少しありました。けれど、コンテンツそのものには自信を持っていますので、BD化をキッカケに、新しいお客さんに観てもらえるというのが一番嬉しいですね。

編集部:3DCGと2Dアニメの融合や、デジタルエフェクト、5.1chサラウンドなど、当時としては革新的な事ずくめだと思うのですが。

前田:今まで皆、2Dのトラディショナルなアニメを作ってきたので、第1話を作っていた社内の空気としては『本当にこれ、できるの?』、『コレとコレをぶつけて、まとまるの?』、『でも何とかやっていこうよ!』という感じでしたね。デジタルアニメを切り開いたとも言われるのですが、ある意味“無理矢理切り開いた”感じもあるんです(笑)。

 ですので、話数を重ねる中でノウハウも蓄積され、『こういう時には、このパラメータを使うんだな』、『こういうフィルタの処理は、こうかけるんだな』というのがわかってきました。4話を観ると『随分練れてきたな』と思いますよ。先程、各話で映像の質感が違うというお話がありましたが、撮影方法も話数が進むとまるで違っていますからね。

 潜水艦のポリゴンなどもそうですが、爆発のエフェクトも回を追うごとに随分変化しています。エフェクトだけでなく、そこにトラディショナルな技法で作画も加えてみて、どのように変化するのかも試行錯誤しました。そんな歴史を振り返るように、観てもらうのも面白いと思います。


編集部:今回の技術でアプコンされた映像をご覧になって、いかがですか?

前田:非常に素晴らしいです。先程『不安もある』と言いましたが、不安が払拭されると同時に、クローズアップされるような感じでした(笑)。個人的に、あまり神経質に画質を見る方ではないのですが、それでも凄く色の濃度が上がり、コントラストがクッキリしたと感じますね。

 また、撮影はアフターエフェクト上で行なっているのですが、完成した映像は、様々なレイヤーが重なって出来ているんです。アプコンした映像で観ると、そのレイヤーのマスクの切れ目が見えてしまっている部分もあって『あ!! バレてる!!』と(笑)。もともとは会社にあったブラウン管のマスモニ(マスターモニター)でチェックしていたので、コントラストが上がり、カリッとした映像になると、見えなかった部分が見えてしまう。それをいま直しているところです。

編集部:プコン作業に同席して、実際に作業をご覧になっていかがですか?

前田:作業がとても職人的と言いますか、クラフト的で感動しました。実は『青の6号』を作っていた当時、CGを使っているという事で“あたたかみが無い”とか言われた事があるんです。それに対して『CGだって人間がひとつひとつ、手で作っている手仕事には何も変わりはないじゃないか!』という反発を感じていて、試行錯誤をしていたんです。今回のアプコンもそれと同じで、ハードが1台ポンとあって終わる話ではなく、まさに手作りという感じ。最終的には“人間パワーで生み出されたBD”というのを言っておきたいですね。

編集部:CGと2Dアニメの融合という意味では、今のアニメ制作に繋がる、ノウハウのカタマリと言えそうな作品ですよね。


前田:各社も暗中模索だった時代に、タブーをタブーとせず、『エイヤ!』と作り上げた作品ですね。無謀な力業とも言えるのですが、今振り返ると、その力業をやった意味があったと思います。

杉山:当時はCGとの違和感を強調された事もあったのですが、コンテンツの本質である『お話に注目してよ』という気持ちもありましたね。

編集部:今のデジタル制作のアニメに慣れた目で観ると、あまり違和感は感じないです。

杉山:今の時代だからこそ、今回のBDでフラットに観ていただきたいという気持ちはあります。何より熱い作品で、絵からもそうだし、作品全体からも、“新しいものを作りたい”という熱意が伝わってきます。それが今回のBD化で改めて感じた事ですね。最近このようなハードなアニメが少ないので、まだ観た事がない人には、面白い新作アニメが出てきたという気分で楽しんで欲しいです。

編集部:新しい技術へのチャレンジという意味では、監督は最近の3D立体映像などはどう感じてらっしゃいますか?

前田:そうですね。最近はシアターや大画面テレビから、小さな携帯電話まで、様々なデバイスで映像が楽しめるのでハードの進化にどう合わせるのか、伝えたい事をハードを使ってどう伝えていくかはよく考えます。青の6号では5.1chサラウンドにも苦労して、映像と音の場所の関係とか、カットが早いと意味がわかなくなるなど、難しい事もありました。3D映像もそれと同ように、どうしたら効果的に活用出来るかは常日頃考えていますね。

杉山:向こうから魚雷が来るとか、潜水艦が何かの影から出てくるとかいうシーンが多いので、青の6号も3D化すると面白いかもしれませんね(笑)

編集部:最後に、BD化にあたり、ここを見て欲しいというポイントはありますか?

前田:この作品は、自分にとっての出発点と言えるもので、思いの丈がギュウギュウに入っています。今振り返ると過去の自分に対して『お前しゃべりすぎだろ』とか、『今のは音を張るところじゃないだろ』とか、いろいろ思う事もありますが、それも含めて当時の”熱さ”や“わだかまり”なんだと思います。古い作品ですが悪いものではないので、騙されたと思って(笑)、観てやってください。4話構成ですが、1本の2時間映画のつもりで作っていますので、BD-BOXでまとめて、ガッと観ていただければ幸いです。

杉山:「もの凄くこだわって、描きたいもの、訴えたい事を真面目に作った作品です。メッセージがヒシヒシと伝わって来ます。最近はこういう作品が少ないように思いますので、まずは観ていただいて、骨太の、噛みごたえのある作品を若い人にも楽しんでもらいたいです。そして、こういう作品も面白いよね、という流れになっていけば、より嬉しいですね。



■ 腰を据えて観たい作品

 インタビューの中で杉山プロデューサーは、青の6号だけに限らず、従来よりも低コストで、よりクオリティの高いアプコンが可能になるキュー・テックの新技術は「ここ10年、15年に作られたデジタルアニメにとっての福音。BD化時代に、どうするべきか、悩んでいた資産(作品)にとって、ある種、画期的なもの」と語っている。

 アニメファンとしては、過去の名作達を全部BDのクオリティで鑑賞したいと思うのが本音だ。しかし、全てのタイトルが満足できるほど売れるという保証が無い以上、制作コストがかかりすぎるとビジネスとして成立しなくなってしまう。逆にコストをかけずに低画質のものを発売したら、DVDのアップコンバート再生と大差が無く、BDで発売する意義がなくなってしまう。キュー・テックの新技術は、この構図を断ち切る可能性を秘めた、制作側にとっても、そしてアニメファンにとっても歓迎すべきものと言えそうだ。

 今回、アップコンバートで生まれ変わった青の6号を一部鑑賞し、今観てもまったく色褪せないハイクオリティな映像に感激した。主なバトルフィールドが海の中で、魚雷が飛び交う“スピード”と“静けさ”が同居したスリル溢れるアクションは、潜水艦アニメならではの魅力であり、最新アニメでもあまり見かけないオリジナリティに溢れている。また、最後の最後まで明かされない天才科学者ゾーンダイクという存在の不気味さや、彼が作り出した純粋だからこそ危うい“新しい種族”など、作品世界の"深さ”もまた、この作品の特徴と言えるだろう。

 さらに、全編に漂うハードボイルドな雰囲気も作品を語る上では外せない。郷田ほづみ、有本欽隆、鈴置洋孝、若松武史、石塚運昇など、渋い声優陣によって展開する男同士のプライドをかけたぶつかり合い、信頼関係、不思議な共感などが、硬派な作品を支える土台となっている。BD化を機に、昔からのファンは新鮮な気持ちで、新しいファンは未体験の新作として、いずれも“腰を据えて”ジックリ楽しみたいBD-BOXに仕上がりそうだ。


(2010年 6月 11日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]