録画番組視聴への新提案。パナソニック「ミモーラ」

-シーン検索機能が「番組」の概念を変える


ミモーラのトップページ

 AV機器とネットワークサービスの連携は、最近のテレビやレコーダの一大トレンドといえるが、そんな中パナソニックが、最新のブルーレイDIGA向けに開始したのが「ミモーラ(MeMORA)」だ。

 DIGA向けには従来から遠隔録画予約サービス「DiMORA(ディモーラ)」を展開していたが、これは主に外出先や室内でパソコンや携帯電話から録画予約するなど「録る」機能が中心となっていた。もちろん、「録り逃し」を防ぎ、新しい番組との出会いを手助けするという意味では「レコーダの本質」ともいえる重要な機能だ。

 一方で、2月14日からスタートした「MeMORA」は、「見る」ことに注力したサービスだ。ユーザーが録画した番組を細かく分類して、シーンごとに検索/再生したり、番組に関連するおすすめ情報などが確認できるようになる。番組だけでなく、CM単位で検索できるなどテレビ番組を楽しむための新しい提案といえる。

 ただし、こうしたデータの分類は外部の企業が人手をかけて作成していることや、サーバーのコストも発生するため、MeMORAは、月額315円の有料サービスとして展開される。これまでのDiMORAは無料であり、録画関連の基本機能は無料のまま使える。DiMORAの登録ワード検索/自動録画予約通知と、残容量通知、予約重複通知などの機能とMeMORAを利用する場合には有償になる。5月31日まではサービスお試し期間として、全サービスが無料で利用できる。



■ シーン検索機能が「番組」の概念を変える

DMR-BZT700

 MeMORAに対応するのは、2月発売の新ブルーレイDIGA(DMR-BZT900/800/700/600、BWT500/BRT300)。その他のDIGAでも「ブロードバンドレシーバー」機能に対応していれば、一部機能以外は利用できるので、MeMORAがどんなサービスか確認できる。同社のホームページで対応状況を案内している。

 IDは、DiMORAと同じくCLUB PanasonicのログインIDを利用し、Webブラウザからログイン。DIGA側の設定は、「ブロードバンドレシーバー」機能の「インターネット」の項目を有効にする必要がある。Webサイトでも設定方法を紹介しているので、DiMORAをすでに利用しているユーザーにとっては難しい点はないだろう。


ミモーラの基本機能。MYディーガヘッドラインでおすすめ番組を紹介

 基本的にはパソコンのWebブラウザでMeMORAにアクセスし、番組選択や検索を行なう形になる。さらに、3月10日付で、スマートフォンに最適化したWebページもオープンした。

 PCのブラウザからアクセスすると、MeMORAは、番組ごとの「シーン一覧」や「MYディーガヘッドライン」、「シーン登録ワード」などの機能が用意される。

 MYディーガヘッドラインは、録画した番組の中から[ニュース]、[エンタメ]、[スポーツ]、[音楽]などのジャンル別に「おすすめのシーン」を表示するものだ。録画した番組からおすすめのシーンを紹介してくれる。ここで[再生]ボタンを押すと、その番組の任意のシーンから番組の再生を開始してくれる。

 より細かく検索して、MeMORAの魅力を体験できるのがシーン一覧だ。録画番組からシーン一覧の検索/表示が可能となっている。

 MeMORAでは、録画した番組がシーンやCMごとに分類される。それらの番組ごとに絞り込んだり、任意のシーンを検索して、そのシーンの開始ポイントから再生可能。この分類がかなり細かくて面白い。たとえば、フジテレビの月9ドラマ「大切なことはすべて君が教えてくれた 第8話」の場合、36のシーンに分割されている。この場合は、オープニングや、本編、エンディング、予告などに加え、15秒/30秒のCMがそれぞれ分割されている。

 本編の場合は、「(本編3)<夏実が結婚をせずに子どもを産もうとしていることが公になり…>」といった具合に、概要を紹介。CMは、「CM NTTドコモ<応援学割>」、「CM トヨタ自動車<残価設定型プラン>」などと具体的に内容を明示してある。基本的にCMと本編がそれぞれ分割されているほか、CMは1本ごとに分割されている。

 30分のアニメ「魔法少女まどか☆マギカ 第9話」はオープニング、本編1/2/3、エンディング、次回予告とCMで合計27分割されていた。

 さらに細かく分割されるのは、情報番組だ。「出没!アド街ック天国 西武池袋線 東長崎」の場合は、86シーンに分割されていた。単に本編と各CMだけでなく、スタジオトークや、東長崎1位、2位、3位、4位など内容ごとにしっかりとシーンが判別できるようになっているのだ。

 こうして分割されたシーンから、見たいシーンを選び、シーンの右脇に表示される[再生]ボタンを押せば、DIGAの録画番組のシーンが再生できる。再生ボタンを押してから、約2秒でDIGAの画面が切り替わり、シーン再生が開始される。少しだけ待たされる感はあるものの、番組の構成/構造を無視して、いきなりシーンを呼び出せるというのは新鮮。「番組」という単位とは別のアプローチでコンテンツを楽しめるのが面白い。

 また、検索すると意外なCMも引っかかる。映像だけではないCMの楽しさも感じられる。

シーン検索マギカの番組シーン分割。横の[再生]ボタンで当該シーンを直接再生できるシーンの詳細情報を確認し、再生操作が可能

 ただし、MeMORA上の[再生]ボタンから、DIGAの再生開始を実行できるのは、最新のブルーレイDIGAだけだ。その他のDIGAでは再生位置の時間が表示されるものの、再生実行はできない。実質的にはここで再生できないと、MeMORAの楽しみ方はかなり制限されるので、現時点ではMeMORAは最新DIGAシリーズ向けのサービスと考えていいと思う。

 キーワード検索し、任意のシーンを選ぶだけで、番組の任意のシーン(とその続き)が再生できるというのは新鮮だ。単なる頭出しに使っても便利だが、特にCM分類の充実ぶりは目を見張るものがあるし、「この番組はこうした企業のCMで成り立っているんだな」などと確認できるのも面白い。なお、番組録画中でも、以前に録画した番組をMeMORAから再生することは可能だ。

 また、番組情報に連動した地図情報やショッピング情報なども提供される。飲食店のホームページ情報や、地図情報などが確認できる。地図情報はYahoo!地図を利用する。

関連情報がある場合は、ホームページやYahoo!地図情報を案内情報番組はシーン分割数が多いYahoo! 地図

 また、スマートフォンでも同様の操作が可能。「シーン一覧」や「MYディーガヘッドライン」などが利用できる。個人的には、シーン一覧は、スマートフォン版のほうが見やすいと感じた。

iPhone 3GSでアクセスしたスマートフォン版のトップページMYディーガヘッドラインシーン一覧やシーン検索が可能検索方法を選択
シーン一覧シーン検索結果シーン詳細検索条件

 一方、動作面でちょっと気になる点もある。一番迷ったのはDIGAの番組表やメニューを立ち上げている場合、MeMORAからの操作を受け付けないこと。他の番組再生中などはMeMORAからの再生操作が優先されるが、メニューなどのUIを表示している場合は、そちらの表示が優先されるようで、専用リモコンでメニューを閉じるなどの操作が必要となる。

 エラーメッセージでも「なぜ」操作できないかは明示されないので、経験的に理解するしかない。この点は少々不親切と感じた。

 録画モードも、DRモードやMPEG-4 AVC/H.264での録画番組は問題ないが、SD画質(XP/SP/LP/EP/FRモード)で録画した場合はMeMORAからの操作はできない。もう一点注意したい点は、部分削除や番組結合/分割などの編集を行なった番組をMeMORAから操作できないこと。編集をすれば当然、CM部分が無くなるなどで、番組全体の時間が変わってしまう。そのため、MeMORAのメタ情報の整合性が取れなくなるというのは理解はできるのだが、残しておきたい番組を、編集するか/MeMORAを使うのがいいのかを判断しなくてはいけないのは悩ましいところだ。なお、シーン情報の保存期間は放送後約6カ月としている。

 また、レスポンスは悪くないが、通常のリモコンより一瞬遅れる。そのため、例えばシーンを選んだ後に再生ボタンを2回押してしまうと、一度再生を開始して、1秒ぐらい再生した後に、もう一度シーンの最初に戻って再生開始してしまうこともあった。慣れもあるとは思うが、今後のチューニングによるレスポンスの改善にも期待したい。

 とはいえ、とにかくメタデータの情報量が多いので、見ているだけでも、しばらくは楽しめる。なお、この番組関連情報のデータベースは、録画後にパートナー企業が人力で分類し、タグ付けなどを行なっているという。そのため、録画直後には付与されず、だいたい番組終了の2時間後ごろを目途に詳細データが利用可能になるという。パートナー企業は非公開。

 ゴールデンタイムの番組であれば、比較的早くメタデータが付与されているようだ。ただし、深夜番組などは翌朝にも反映されていないこともある。いずれにしろ1日以内にはメタデータの処理は完了しているようだ。

 なお、全番組に対応している放送局は首都圏のNHK総合と民放キー局で、その他の放送局は全国放送の番組にのみ対応する。CM情報に対応しているのは、首都圏の民放キー局のみとなる。首都圏のユーザーはフルにこの番組情報を活用できるが、そうでない地域の場合は活用できる局などが限られる。対応する局についてはWebサイトでも情報提供しているが、実際に使ってみなければわからない点もある。そのためパナソニックでは一定の試用期間を設け、居住地域でどの程度MeMORAが使えるかわかるようにする予定という。


■ テレビ視聴の感覚が変わる新サービス

 録画番組をタグで分類し、新しいシーンとの出会いを演出するというアプローチは、東芝の「RZタグラー/RZコマンダー」のタグリストシェアとも通じるものがある。MeMORAでは自分でタグを付ける機能はない(できない)が、自動的にシーン情報が用意され、タグの品質も一定という点で使いやすさの面では一定のアドバンテージがあるといえる。

 ただし、RZタグラーはBS放送など、地上波以外の放送波に対応しており、タグを作る人さえいれば対応番組の幅はより広がる。このあたり各社の考え方の異なる部分ではあるが、複数のメーカーがテレビ番組をより活用するための方法として、シーン分割/検索機能を取り込んでいるのは興味深いところだ。

 シーンやCMを検索というのは、現時点では少々マニアックな楽しみ方ともいえる。ただし、こうした使い方がある程度広がれば今までとは違った活用法も出てくるかもしれない。少しMeMORAに触れただけでも、「番組を見る」ではなく「シーンを探して見る」という感覚はいままでのテレビ視聴とは確実に違う経験と感じる。いくつかの制約もあるが、おそらく、次世代機などではこうした細かい問題が改善されると期待したい。DIGAユーザーは一度触れてみることをお勧めする。


(2011年 4月 1日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]