プレイバック2021
激安レコードクリーナー導入! おかげでレコード増殖した by 市川二朗
2021年12月22日 12:00
2021年はおうち時間が長かったこともあり、きわめて充実したインドア生活を堪能した。この1年でやったことは枚挙にいとまがないのだが、いま最もホットなマイブームについて、ご紹介したい。それは激安の「超音波レコードクリーナー」である。激安ではあるが、これがなかなか優れものなのだ。
激安の超音波レコードクリーナーを購入したのはつい先日で、ほぼ衝動買いに近かった。きっかけは、旧知の雑誌編集者とレコードについて話していたときのことだ。レコード好きのその編集者は最近、中古レコードの汚れに悩んでいるという。
編集者「どうも耳がデジタルに慣れちゃって。中古盤だとノイズが気になるんですよ」
にろう「そしたら、レコードクリーナーを買ってみたらどう? バカッ高いけどね」
編集者「あ、そいえば、Amazonで激安の超音波レコードクリーナーが売っているらしいんです」
旧知の間柄なので、僕が激安とか格安という言葉にめっぽう弱いことを完全に見透かしている。
激安、ねぇ……。そのときはそれほど気にならなかったのだが、翌朝急に思い立ってAmazonを検索してみたところ、3万円台で販売されていることがわかった。
案の定、それはちょっと怪しい感じのノンブランド品。激安、格安、ノンブランド。それだけで背中の下のあたりがムズムズしてくる。僕の中にはやはり悪い虫がいるようだ。
いや待て、落ち着け。ポチる前に少し冷静になって、ネットで詳しく調べてみることにした。
すると、「超音波レコードクリーナー」というものには、専用機として由緒正しいオーディオアクセサリーメーカーから発売されているモデル、そして汎用の超音波洗浄機とレコード用のブラケットを組み合わせただけのモデルがあることがわかった。
前述の激安レコードクリーナーが後者なのはいうまでもない。
オーディオアクセサリーメーカー製の機種は、レコードクリーニングに特化した専用の筐体を持ち、ブラケットは精密な構造で、洗浄液はレコード専用のものを使うようになっていて、機種によってはバキュームや乾燥機能がついている。要するにレコードクリーニングに最適化されたスペシャルマシーンなのである。価格は総じて高価であり、安いものでも20万円弱、高いものでは70万円するものもある。
3万円台というのは、メーカー製とは比べ物にならないくらい安い。さらにAmazonをよく調べたところ、セットではない単品の超音波洗浄機と、回転ブラケットを別々に買うほうがなぜか安いことも分かった。
そもそも超音波洗浄機は機械部品や宝飾品、腕時計など、精密な品物の洗浄に使われるものであって、別にレコード専用ではない。つまり、セットで買っても別々に買っても同じだと判断した。
しかし、安いとはいえ3万円だ。ドブに捨てる金額としては大きすぎる。う~ん、どうしよう……と、悩むこと15分。まんまとAmazonの策略にハマった僕は、翌日の午後、スマイルマークが書かれた大きな段ボールを受け取っていたのである。安物買いでは何度も痛い目を見ているのだが、ホントに懲りないおバカさんである。
奇妙な日本語のトリセツ。だがしかし、クリーニング効果は確実にある
レコードクリーナーとは、文字通りレコードの盤面をきれいにして、あのパチパチノイズを撃退するグッズである。
レコードの初期から様々な種類があって、最も原始的なベルベット生地を使った乾式から、薬液を使った湿式やブラシ式などは非常に多くの製品があった。そういったシンプルなレコードクリーナーはいまでも販売されているが、超音波洗浄式やバキューム式といった大掛かりな製品も別に新しいものではなく古くからある。もともとは業務用だったのだが、ここ10数年前から民生用に広まってきた感がある。
新品レコードの生産数が30年くらい前から漸減していて、マニアはそれまで以上に中古レコードを多く購入するようになったことで、より強力なレコードクリーナーの需要が高まったのだろう。それに、最近の中古レコードは以前よりも傷みや汚れが激しいものが多くなってきている。新品レコードがまだ普通に買える頃から、僕は中古レコードに手を染めていたので、中古レコードの劣化が着実に進んでいることがよくわかる。
衝動買いした超音波レコードクリーナーを早速試してみた。
洗浄タンクの容量は6リットルで、全体のサイズは思ったよりも小ぶりである。回転ブラケットはレコードを回すモーターを納めた本体とシリコンパッキンのついたアクリル円盤がセットになっていて、これまた思ったよりもしっかりしている。
奇妙な日本語で使い方が書かれた紙ペラが1枚同梱されているが、どうでもいいことと、説明されなくてもわかることばかり書いてある。どういった水を使うのか? 薬液が必要なのか?どれくらいの時間洗えばいいのか? 水温は何度が適正なのか? などなど肝心カナメのことが一切書いてない。
しかし、僕はこれぐらいでは動じない。ネット情報を拾いながら、あとは実際にやってみて加減を探る。それが楽しめなければ激安品を買う資格はない。
とにかくまずは洗ってみることにした。
まずはパチパチノイズで聴くに堪えない盤を洗ってみる。盤面はカビや手垢でひどく汚れている。水は浄水器を通した水道水を使い、水温は約20度で5分間洗った。
洗浄後、水切りをしてから盤面に残った水滴はワイピングクロス(メガネ拭き)で軽くふきとって、そのまま5分ほど乾かせば、水分が蒸発して演奏可能な状態になる。見た感じでは盤面に点々と付着していたカビや手垢はきれいに落ちている。
試聴してみたところ、パチパチノイズが明らかに減って鑑賞に堪えうる領域になった。まだ十分とはいえないが、クリーニング効果は確実にあることがわかった。
その後、手元にある古くて汚れたレコードを、水温と洗浄時間の条件を変えながら、30枚ほど洗ってみた。その結果、まずは水温40度で10分洗浄し、試聴してノイズが残っていたら、同条件で追加洗浄する、というやり方がよさそう、というところまでたどり着いた。
これまで中古レコードのクリーニングは、盤面に水で薄めたヤマトノリを塗って乾かしてはがす、という面倒なやりかたをしていた。この方法は効果は高いのだが、手間と時間がかかるのが玉にキズで、処理枚数はせいぜい1日10枚くらいだ。超音波レコードクリーナーはクリーニング効果はヤマトノリよりもやや劣るが処理時間が圧倒的に短いのがいい。最近はネットで中古レコードを一度に50枚くらい買うこともあるが、こいつで一気に洗ってしまえばよい。
こいつのせいで、僕のレコードコレクションはまだまだ増殖し続けるのであった。