レビュー

“MK2世代”に進化、JBLサウンドバー「BAR 300MK2/500MK2」と最上位「1300MK」。3モデル聴き比べ

奥がBAR 1300MK2、手前がBAR 300MK2

JBLの新たなエントリー・サウンドバーとして、壁などにビーム状の音を反射させる独自技術を「MultiBeam 3.0」へと進化させた5chの「BAR 300MK2」(直販価格49,500円前後)と、同モデルにサブウーファーを追加した5.1ch「BAR 500MK2」(同77,000円前後)が登場する。

さらに、明日6月18日からはGREEN FUNDINGで、フラッグシップモデル「BAR 1300MK2」(一般販売価格228,800円前後)の先行販売もスタート。JBLサウンドバーの「MK2世代」への進化がスタートする。

製品説明会において、短時間ではあるが、新モデルBAR 300MK2、BAR 500MK2、そして最上位のBAR 1300MK2と、MK2世代3モデルを一気に試聴したので、そのファーストインプレッションをお届けする。

なお、BAR 300MK2、BAR 500MK2、BAR 1300MK2の詳細については、各記事を参照して欲しい。

「MK2世代」の進化ポイント

搭載するユニット数や、サブウーファーの有無など、細かな部分はモデル毎に異なるが、MK2世代に共通する大きな進化が「MultiBeam 3.0」の搭載だ。

MultiBeam 3.0

このMultiBeamは、サウンドをビーム状に放出し、壁などに反射させる事で、側面や背面からの音を再現する技術。実物のリアスピーカーなどを設置しなくても、ユーザーの正面に置いたサウンドバーだけで、よりリアルなサラウンド再生を可能とし、没入感を高める技術だ。

従来モデルでもMultiBeamは搭載していたが、 MK2世代ではこれが「3.0」に進化。従来の2.0では、モデルを問わず、同じアルゴリズムを使っていたため、放射するビームの“幅”がやや広めに放出される傾向があった。

3.0では、搭載するモデルごとに、スピーカードライバーの並べ方と配置を最適化し、モデリング・シミュレーションした結果も組み合わせる事で、ビーム同士の重なり合いが減り、より狭いビームを放出できるようになった。これにより、それぞれのチャンネルの音がより明瞭に感じられるようになっている。

MultiBeam 3.0で、背後空間がより広くなる

では、MultiBeam 3.0の効果を体験してみよう。

ワンバータイプのBAR 300MK2

まずは、ワンバータイプのBAR 300MK2を使い、、Atmosサウンドのデモで使われる「Leaf」を再生してみた。

CGで描かれた葉っぱが、木の枝から落ちるという短い動画なのだが、葉っぱが「フィンフィン」と回転しながら落ちる音が、向かって左方向に移動し、左側面、左奥、真後ろと背後に移動し、右側をまわってまた正面に戻る。チェックポイントは、葉っぱの音像が、ちゃんと背後にまわるか? 背後に行った時に距離感も描けているか? 音像の移動の軌跡がリスナーを中心に滑らかに円を描けているか? 途中で引っ込んだり出っ張ったりしないか? などだ。

BAR 300MK2をでこのLeafを聴くと、2つの点に驚かされる。1つは、側面から背面へと移動した時に、背面に移動した音像が“ちゃんと自分から遠く”描かれる事だ。前モデルのBAR 300では、「音が背後に行ったな」というのはわかるのだが、音像の位置が、もっと自分の後頭部に近かった。BAR 300MK2では、この後頭部方向の奥行きがグッと深くなっており、「背後にも広大な空間が広がっている」事をしっかり音で描けている。

BAR 300MK2ではユニット数が、BAR 300の6基(ウーファー×4、ツイーター×2)から、9基(ウーファー×5、ツイーター×4)と増加。本体の両サイドに搭載する、音のビームを放射するサラウンドスピーカーも、左右各1基から、BAR 300MK2では左右各2基、合計4基に増加している。

BAR 300MK2の内部

これにより、背後のより深い場所にもビームを反射しやすくなったそうで、その効果がLeafの音像定位の深さにも現れているのだろう。いずれにせよ、テレビの下に設置したワンバーのサウンドバーだけで、背後も含め、これだけ広大な音場を再現できるのはスゴイ。自分を包みこんでくれるサウンド自体にも密度がしっかりとあり、迫力も感じられる。テレビ内蔵のスピーカーからグレードアップすると、「サウンドバーだけでこんなに変わるのか」と驚くだろう。

「ゴジラ-1.0」で、機雷でゴジラの上陸を阻止しようとするシーンを再生。船体が軋む音や、ゴジラが浮上した時の「ザヴァー!!」と水しぶきが飛び散る音など、細かな音が非常に明瞭だ。

MK2世代では、声の明瞭度を高める事で、聞き取りやすくする「PURE VOICE」が「2.0」に進化音量の変化にも対応し、音量を絞っている時は明瞭度を強めるが、音量を上げている時は明瞭度を高めなくても聞き取りやすいため、明瞭度をアップさせる処理を弱めるようになった。

さらに、明瞭度を高める効果を、声以外にも拡げる「SMART DETAILS」も新たに搭載。細かな音をより聞き取りやすく補正してくれるようになった。これらの効果が、船体の軋みや、水しぶきの音を明瞭にし、臨場感を高めてくれたのだろう。

圧巻は、ゴジラが上陸するシーン。逃げ惑う人々の悲鳴や靴音など、大量に広がる細かな音も明瞭に描写してくれる。驚いたのは、ゴジラが電車に噛みつく前のシーン。ゴジラの地鳴りのような足音が響く中、それに埋もれず、乗客が広げていた新聞を畳む時の、微かな紙の音がしっかり聴き取れた。

なお、前モデルはバスレフポートが片側裏面に1つだけだったが、BAR 300MK2では左右に搭載するデュアルポートとなり、低域の再生能力がアップした。これは、ゴジラの足音や、放り投げられた電車が地面に突き刺さる轟音などで実感できる。ワンバータイプとしては、かなり豊富な低音がでるサウンドバーだ。

背面のバスレフポートがデュアルになった

なお、これらのシーンを、サブウーファーもセットになったBAR 500MK2で再生すると、低音の沈み込みの深さ、中低域の張り出しの強さなどが、一気にパワーアップする。

サブウーファーもセットになったBAR 500MK2

ワンバーのBAR 300MK2でも、ワイドレンジは再生はできていたが、サブウーファーを追加したBAR 500MK2の方が、地鳴りのような低音、ゴジラの咆哮の強烈な中低音などの迫力は段違いにパワフルになる。低音がパワフルになると、「これぞホームシアター」という印象になるので、予算とスペースが許すのであれば、BAR 500MK2を選んだほうが、やはり満足度は高くなるだろう。

BAR 500MK2のサブウーファー

圧巻のサラウンド、最上位BAR 1300MK2

BAR 1300MK2

BAR 300MK2とBAR 500MK2の完成度は非常に高く、「このサウンドバーで、十分ホームシアターは楽しめる」「上位モデルは不要なのでは?」と思うのだが、実際に最上位のBAR 1300MK2も聴いてみると、やはり数段次元の違うサラウンドが展開し、度肝を抜かれる。

BAR 1300MK2は、サウンドバー部に合計19基のスピーカーを装備。分離して背後に設置できるリアスピーカー部には、左右それぞれ4基ずつのユニットを搭載。サブウーファーには200cm径デュアルウーファーを搭載し、合計29基のスピーカーで11.1.4ch構成を実現している。

分離して背後に設置できるリアスピーカー

これだけのユニット数と、最適化したMultiBeam 3.0も搭載しているので、BAR 300MK2やBAR 500MK2と比べても、サラウンドの包囲感はBAR 1300MK2の方がさらに広く、また上下方向にも空間が拡張される。「部屋の中でスピーカーを鳴らしている」という感覚が無くなり、「映画の世界へ空間ごとワープ」したような聴こえ方になる。

背後にまわった音像は、より深く、そして音像の移動の軌跡も明瞭だ。圧巻なのは、背後にまわった音が、高域だけでなく、しっかりと中低域も厚みのある音として定位する事だ。これは、分離したリアスピーカーに搭載するユニットが増え、よりレンジの広い音を再生できるようになったためだろう。

分離したリアスピーカーに搭載するユニットが増え、よりレンジの広い音を再生できるようになった

余談だが、この分離したリアスピーカーは、縦置きして、単体のBluetoothスピーカーとして、そして2台をペアでステレオスピーカーとして使うこともできる。このリアスピーカー×2台でQobuzの配信音楽も聴いてみたが、ちゃんとレンジの広いBluetoothステレオスピーカーとして聴けてしまった。

リアスピーカーだけを、小さなBluetoothスピーカーとして使うこともできる。2台でステレオ再生も可能だ

再び、リアスピーカーを背後に設置し、Atmosのサラウンドで「竜とそばかすの姫」を再生。仮想空間で、ベルではなくすずとして歌うシーンを再生したが、どこまでも歌声が響き渡る空間の奥深さを、BAR 1300MK2はしっかりと表現する。まるで部屋の壁が消滅したかのようで、背後の広がりも深いため、宇宙空間で聴いているような感覚がスゴイ。

また、観客が合唱する歌声や、伴奏音楽の密度も、その広大な空間にしっかりと満ちており、例えば「広がるけど後ろのや横の音がスカスカだ」とか「前からの音だけが強い」ような事が無い。パワフルで均一な音に、全身が包まれる感覚が、クライマックスのライブをより感動的なものにしてくれた。

BAR 1300MK2で注目なのは、サウンドバー部分だけでなく、ワイヤレスサブウーファーだろう。コンパクトに作られているが、エンクロージャはなんと密閉型。つまり、より強力なユニットやアンプが必要になるが、200cm径デュアルウーファーを搭載し、最大600W×2、合計1,200Wパワーアンプを内蔵している。

そのおかげで、非常にキレのある、重くて鋭い低音で映画や音楽を下支えしてくれる。明瞭なサラウンドを再生するサウンドバー部分に負けない、ハイパフォーマンスなサブウーファーこそ、BAR 1300MK2のサウンドを底上げする“縁の下の力持ち”と言えるだろう。

BAR 1300MK2のワイヤレスサブウーファー
山崎健太郎