レビュー
実は“バッテリ非搭載”がミソ!? JMGO革新的プロジェクタ「PicoPlay+」を使う。まさかの縦型投写
2025年6月16日 08:00
個人的な話だが、オーディオで使っているスピーカーの背後にある壁が真っ白なので、映像を見る時は、これをスクリーン代わりにして、プロジェクターで投写している。使っているのは、JMGOのモバイルプロジェクター「PicoFlix」(89,980円)。小さくて、使わない時は仕舞っておけば邪魔にならない良い製品なのだが、私の使い方では、「バッテリー内蔵じゃなくても良いのでは?」と思う事が増えてきた。
PicoFlixには10,000mAhの大容量バッテリーが搭載されており、例えば、旅行先のホテルの天井に映画を投写したり、車中泊で車内に吊るしたシーツに投写するといった用途で便利なのだが、自分がインドアな人間である事を忘れていた。家で使ってばかりで、使う時はACアダプターを常に繋いでいるため、内蔵バッテリーが宝の持ち腐れ状態だったわけだ。
そんな折、JMGOの新プロジェクター「PicoPlay+」(95,260円)が発表された。特徴をザックリ説明すると、バッテリー非搭載で、PicoFlixよりもコンパクトなプロジェクターになっている。
その代わり、プロジェクターと別売で、20,000mAhのバッテリーと、そのバッテリーとドッキングできる三脚型のスタンドのセット(16,280円)も用意されている。また、プロジェクターは単品販売なのだが、6月24日まではキャンペーンとして、前述のバッテリースタンドがセットで、単品価格の95,260円から20% OFFの78,980円と、かなりリーズナブルになっている。
要するに、このセットを入手すると、バッテリーを使わず、プロジェクターのコンパクトさを最大限に発揮することもできるし、セットのバッテリー駆動で自由な場所で使うこともできる。これは気になる。
さらにこの「PicoPlay+」、三脚スタンドに工夫があり、なんとプロジェクター本体を縦向きにできる。世界初の“縦型投影”できるユニークな製品でもあり、SNSのショート動画を楽しみやすいプロジェクターとしても訴求されている。というか、そこが“最大のウリ”なのだが、個人的にはそこよりも“プロジェクター本体が小さい事”と“バッテリーが分離している事”に食いついてしまったわけだ。
というわけで、PicoPlay+を借りて、実際に家で使ってみた。
あれこれドッキングできるプロジェクター
PicoPlay+とバッテリースタンドのセットを開封すると、プロジェクター本体、伸縮するスタンド、スタンドと一体化できる20,000mAhのバッテリーが出てくる。
プロジェクター本体の重量は、シリーズ最軽量の740g。外形寸法は85×166mm(直径×長さ)の筒状だ。家で使っているPicoFlixが80×240mm(直径×長さ)、重量約1.3kgなので、PicoFlixよりもPicoPlay+の方が、“少し太いが、短くて軽い”。
前述の通り、プロジェクター本体にバッテリーは内蔵していないので、付属のACアダプターを介してUSB給電しながら使うか、付属の20,000mAhバッテリーから給電するか、もしくは手持ちのモバイルバッテリー(20V -3.25A 65W PD3.0)を使うことも可能だ。
付属の20,000mAhバッテリーを使う場合は、スタンドの上部にバッテリーを固定し、その上に三脚穴を備えたアダプターを取り付け、その上に重ねるようにプロジェクターを固定できる。バッテリーからプロジェクターに給電するための、短いUSB-Cケーブルも付属する。20,000mAhバッテリーを使うと、最長で4.5時間の使用が可能だ。
ユニークなのは、プロジェクターの固定に使っている三脚穴搭載のアダプターに、ヒンジを内蔵していること。これを使ってプロジェクターを縦にも固定でき、縦動画に最適な投写ができるようになっている。これは後ほど試してみよう。なお、上を向かせる事も可能だ。
PicoPlay+を投写してみる
さっそく使ってみよう。
三脚の脚を開き、その上にバッテリーを固定。アダプターを介してプロジェクターを設置する。
PicoFlixを使う時は、サイドテーブルやPCデスクなどに置いていたが、微妙な位置調整が難しかった。その点、PicoPlay+の三脚設置は細かな位置調整、高さ調整も自在なので、壁の理想的な場所に映像を投写したい時は、この固定方法が便利だ。
もちろん、PicoFlixと同様に、三脚を使わずに、プロジェクター本体だけを机などに設置する事も可能だ。その場合は、プロジェクター本体がPicoFlixのように回転するようになっており、設置した机よりも上に向けて投写したり、天井に投写する事もできる。
サッと取り出して、パッと設置する“手軽さ”を重視するのであればプロジェクター単品で使用。設置する場所や高さを微調整して、理想的な場所に投写したいのであれば三脚スタンドを使う……という使い分けになるだろう。
OSにGoogle TVを採用しているので、セットアップは楽だ。スマホの「Google Home」アプリとも連携し、Googleアカウントへのログインや、無線LANへのアクセスなども手軽にできる。プロジェクター付属のリモコンを使って、チマチマとIDやパスワードを入力しなくて済むのは便利だ。
あとは、YouTubeやNetflix、Amazon Prime Videoなどの動画配信サービスのアプリをダウンロードすれば、プロジェクターだけで映画などが楽しめる。本体にスピーカーも搭載しているので、本当にこのプロジェクターだけで、ホームシアターが完成する。
プロジェクターはDLP方式で、解像度はフルHD/1,920×1,080ドット。DLPチップは0.23インチ。輝度は450 ISOルーメン。HDR10にも対応している。PicoFlixもフルHDで明るさ450 ANSIルーメンなので、プロジェクターとしての仕様はかなり似ている。
JMGOのプロジェクターに共通する特徴だが、オートフォーカスや自動台形補正が非常に高速だ。少し斜めから投写しても、すぐにフォーカスと投写画面の台形補正を行なってくれる。本体を回転させながら投写し、映像を壁から天井へと移動させても、フォーカス/台形補正が反映されるため、使っていて快適だ。
450 ISOルーメンという明るさは、部屋の蛍光灯をフルに点灯させたり、窓から陽の光がたっぷり入る環境では、ちょっと見にくい。しかし、カーテンを半分くらい閉じたり、部屋の蛍光灯の明るさを少し落とせば、しっかり画面が見えるくらいの明るさだ。
カーテンを全部閉じて、蛍光灯をOFFにすれば、かなり鮮明な映像が楽しめる。初めて小型プロジェクターを使う人はきっと、「こんな小さなプロジェクターでも、明るい大画面が楽しめるんだ」と驚くだろう。
筆者も、スピーカーの間にある白壁に投写。「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」などを鑑賞したが、やはり宇宙を舞台にモビルスーツが戦うような作品は、暗くした部屋で、大画面で鑑賞すると臨場感がマシマシになる。解像度はフルHDなので、壁全体に表示する距離に設置すると、やや映像が甘くなるが、その場合は鑑賞する距離も壁から離れていくので、それほど気にならない。
YouTubeの動画で、旅のVlogなどを見るのも面白い。スマホで見ていると、観光地の様子やグルメなどを“情報”として得る感覚だが、プロジェクターの大画面で見ると、自分もその旅に行っているような感覚になる。
大画面テレビでも同じことは言えそうだが、プロジェクターの場合、本格的に鑑賞する時は部屋を暗くする事が多いため、それが映像への没入感をさらに高める事に繋がる。ちょっとした映像であっても、こんなに深く楽しめるのかという発見が、プロジェクターにはある。
内蔵スピーカーの音質は、筐体の付帯音もあまり感じず、クリアなので、映画やアニメのセリフも聞き取りやすい。ボリュームを上げても破綻しにくいのも立派だ。
ただ、サウンドの臨場感としてはポータブルスピーカーレベルであり、ズシンと沈むような低音とか、音場の広がりなどはあまり感じられない。大画面にマッチするサウンドも欲しい場合は、サウンドバーなどを組み合わせると良いだろう。
HDMI ARCにも対応しているので、サウンドバーなどとはHDMIケーブル1本で接続できる。また、再生音をBluetoothで送信する事も可能なので、別のBluetoothスピーカーから音を出す事も可能だ。
筆者の場合は、オーディオコンポのネットワークプレーヤーがBluetooth受信に対応していたので、PicoPlay+のサウンドをワイヤレスでネットワークプレーヤーに送信し、そこから2chアンプを介して、フロア型スピーカーを鳴らしたところ、2chのワイヤレス接続であっても、かなりクオリティの高いサウンドが楽しめた。
Bluetooth接続の場合、レースや格闘ゲームをプレイするのであれば、音の遅延も気になるのかもしれないが、Netflixの映画やYouTube動画などを楽しむ分に遅延はあまり気にならなかった。
なお、プロジェクターに内蔵するスピーカーだけを、Bluetoothスピーカーとして使う機能も備えている。本体を縦にすると、自動的にBluetoothスピーカーモードに移行する設定にもできる。BluetoothコーデックはSBCとAACをサポートする。
プロジェクターとして使わない時は、Bluetoothスピーカーとして使うのであれば、使用頻度が増える。そうなると、PicoPlay+の価格に対する感じ方も変わってくるかもしれない。
縦動画の表示も試してみる
PicoPlay+は、スマホの画面をミラーリングし、投写する機能も備えている。それをより活用できるのが、冒頭に書いた“縦型投影”機能だ。
アダプターのヒンジを使い、プロジェクターを縦向きにクイッと曲げる。JMGOのアプリを使い、実際にスマホからPicoPlay+へミラーリングを開始すると、プロジェクターの映像が縦型表示になる。
先ほどまでの横型表示でも、SNSやYouTubeの縦動画を表示することはできる。しかし、左右に大きな余白が出来るため、フルHD解像度を活かした表示にはならない。縦型表示では、余白があまり出来ず、フルHDを活かして縦動画が鑑賞できるわけだ。
実際に使うまでは、「SNSの縦動画をプロジェクターで鑑賞する機会ってあるのかな?」と思っていたが、一人で鑑賞するというよりは、友達を読んでスポーツ観戦するとか、映画を見る時などに、余った時間で縦動画を次々と見て盛り上がるという使い方がマッチするかもしれない。
というのも、1人で映画やアニメなどを横型表示で鑑賞したあと、「観たい作品が無くなったなぁ」という時に、「縦動画にしてみるか」と思う事が多かったためだ。スマホでも、Webブラウザで検索や調べ物をした後で、なんとなくSNSを起動して縦動画を眺める……なんてパターンがあるが、それと同じ流れが、プロジェクターでも起こるわけだ。
また、縦動画とは関係がないが、専用アプリを使って、写真や好みの画像などを壁に投影できる「コンパニオンモード」を備えており、プロジェクターを使って、窓を作るような使い方もできる。
ネオンサインのような文字を壁に投写する事もでき、パーティーの装飾に使うのも面白いだろう。
さらに、万華鏡のような移り変わる色の映像を表示する事も可能で、付属の「オーロラフィルター」をレンズ前にはめ込むと、天井や壁にオーロラのような光を映し出す事もできる。音楽を再生しながら、ゆらめくオーロラを眺めて癒やされたり、お家デートで雰囲気を盛り上げるというのもアリだろう。
ちなみに、プロジェクターの側面にLEDの「ムードライト」も備えている。色味や、表示パターンは本体の設定や、アプリからカスタマイズできる。昔のホームシアター用プロジェクターは、光漏れを出さないように作られたものだが、PicoPlay+はライトで空間を演出する機能を備えており、従来のプロジェクターの概念を超えた発想で作られているのがわかる。
例えば、海のキレイな映像を投写しながら、ムードライトも青に光らせたり、eスポーツ大会の映像を大画面で観ながら、ムードライトをグリーンにしたりと、アイデア次第で楽しめる機能になるだろう。もちろん、ライトをOFFにする事も可能だ。
プロジェクターのイメージを打破する
PicoFlixと使い比べて、それぞれの利点が見えてきた。
PicoPlay+は、PicoFlixよりもコンパクトで軽量であるため、旅行などに持っていくのは便利だ。ACアダプターか、対応するモバイルバッテリーも持参する必要はあるが、最近では、スマホの充電用などでモバイルバッテリーを持ち歩く人も多いと思われるので、それを兼用すれば、荷物を減らしたい時にPicoPlay+は便利だろう。
一方で、モバイルバッテリーやACアダプターを接続する手間が無く、本体だけあればすぐに映像を投写できるPicoFlixが便利だと感じる事も多い。車やバイクでの旅行など、重量をあまり気にしなくて済む場合は、PicoFlixの方がシンプルで良いだろう。
PicoPlay+には“バッテリー非搭載のシンプルな小型プロジェクター”という特徴に加え、“縦型投写で縦動画を楽しむ”ことや、“オーロラ風の演出でリラックスする”など、プロジェクターの新たな利用方法を提案する、かなり“攻めた”製品という一面もある。
“映画やアニメを楽しむ時だけ使うもの”という従来のプロジェクターのイメージを打破し、より気軽に、映像鑑賞以外にも使って欲しいというメーカー側のメッセージも感じる。確かに、小型プロジェクターはもっと自由でいいのかもしれない、そう思わせてくれる意欲作だ。