トピック

真打ち登場!? テクニクス初の完全ワイヤレスを聴く。あなどれないパナソニック機もチェック

テクニクスおよびパナソニックから、ブランド初の完全ワイヤレスイヤフォンが登場した。テクニクスが1機種、パナソニックが2機種の計3モデル。いずれも、完全ワイヤレスイヤフォンというジャンルでは比較的後発となるタイミングだけあって、3製品それぞれに機能性もスタイルもしっかり吟味された、ファーストモデルとは思えない完成度の高さと、先進性を持ち合わせている。そこで今回は、それぞれ異なる特徴やユーザビリティ、そして音質を紹介していこう。

左からパナソニックの「RZ-S50W」、テクニクス「EAH-AZ70W」、パナソニック「RZ-S30W」

発売時期はいずれも4月中旬で、価格はオープンプライスだ。

左からテクニクス「EAH-AZ70W」、パナソニック「RZ-S50W」、「RZ-S30W」

「EAH-AZ70W」、接続性安定性の秘密は“コードレス電話!?”

まずはテクニクス製品から。音質面での強いこだわりを持つテクニクスブランドが作り上げたのは、アクティブノイズキャンセリング機能を持つ「EAH-AZ70W」だ。ノイズキャンセリングの効果はもちろん、接続安定性や装着感など機能性に関する部分から、完全ワイヤレスイヤフォンとしては希少ともいえる大型ユニット、10mm口径のダイナミック型ドライバーを搭載して音質を徹底追求するなど、全ての面において妥協のない製品作りを行なっているのが特徴だ。

テクニクス「EAH-AZ70W」

機能面で最も大切なポイントと言えるのが接続安定性だ。一般的な完全ワイヤレスイヤフォンが、スマートフォンと片側のイヤフォン本体が接続し、もう片側はイヤフォン本体同士で接続するのに対して、EAH-AZ70Wは左右ともに直接スマートフォンと接続する「左右独立受信方式」を採用。人体(頭)を間に挟むことで、どうしても不安定になりがちな接続性を巧みに解消している。

しかも、Qualcomm社製SoCに採用されている「TWS Plus」のような対応スマートフォンが限られた技術ではなく、Bluetoothに対応しているスマートフォンであれば利用できる点は嬉しい。

左が従来の接続方法であるリレー伝送方式、右が左右独立受信方式。頭を経由せず、左右のイヤフォンがそれぞれ同時に受信するため、安定した接続ができる。さらに、動画を視聴する際は、映像と音声のずれを抑えられるのも利点だ

さらに、この安定したワイヤレス接続の実現にあたっては、パナソニックのデジタルコードレス電話機を手掛ける技術メンバーが関わっているそうだ。また、ハウジングの外向きの部分に円形のタッチセンサーを備えているのだが、そのタッチセンサーをBluetoothアンテナとしても使う「タッチセンサーアンテナ」を新規開発。こうした工夫で、優秀な接続安定性を確保しているという。

テクニクスロゴがある、丸い部分が「タッチセンサーアンテナ」。タッチ操作ができ、アンテナとしても機能している
内部のイメージ

実際にどのくらいの接続安定性が確保されているのか。iPod touchとEAH-AZ70Wを接続して屋外でテストしてみたところ、見通しの良い場所であれば30m近く離れても音切れすることなく音楽再生が楽しめた。また、間に木造家屋やクルマを挟んだ場所も試してみたが、こちらも10m~15m離れることができた。

接続テストを行なった場所が住宅街のため、どちらかといえばノイズの少ない環境だったかもしれないが、それでもこの距離まで離れても大丈夫なのは素晴らしい。アピールに違わない、接続安定性の高さだ。

強力だが“自然な効き方”のアクティブノイズキャンセリング

もうひとつ、EAH-AZ70Wの特徴といえばやはりアクティブノイズキャンセリング機能だろう。AZ70Wでは、外側のマイクでノイズを集音する「フィードフォワード方式」と、イヤフォン内側のマイクで集音する「フィードバック方式」を組み合わせている。ここまでは他社製品でも見かけるものだが、大きな特徴は、フィードフォワードをデジタル処理、フィードバックをアナログで処理した、独自の「デュアルハイブリッドノイズキャンセリング」システムを採用している事だ。

デュアルハイブリッドノイズキャンセリングのイメージ図

デジタル処理とアナログ処理を組み合わせているのには、理由がある。フィードフォワードが担当する外の騒音をキャンセルするには、複雑なフィルタが必要になるため、小さな筐体のイヤフォンで実現するためにはデジタル処理の方が有利だが、フィードバックは、ノイズと音楽を足したものを処理するため、デジタル方式で行なうとかえって演算に時間がかかり、遅延として人間が知覚できてしまうという。

そのため、フィードバック側には遅延を抑えられるアナログ処理を選択。デジタルとアナログを組み合わせた、独自のノイズキャンセリング(NC)機能を生み出すことになったという。

こちらも効果を実際に試したが、騒音を強力にキャンセルしてくれながらも、とても自然な" NCの効き方"が好印象だ。楽曲を再生しながらをオン/オフしても、特に音の差や違和感を感じず、素直に音楽に集中できる。なかなか絶妙なセットアップといえる。

ちなみに、駅のアナウンスを聞きたいといった時には、周囲の音を取り込めるアンビエント(外音取り込み)機能も用意されている。こちらは(NC機能オフも含めて)、右側イヤフォン本体のタッチセンサーを、約2秒長押しすることで簡単に切り替え可能。

さらに、専用のiOS/Android OS用アプリ「Technics Audio Connect」も用意されていて、NCの効き具合、アンビエント機能オン時の周囲の音量取り込みバランスを好みに応じて調整もできる(何と100段階)。こういった細やかな心遣いは、実際の使用時には大いに重宝するので、大変ありがたい。

iOS/Android OS用アプリ「Technics Audio Connect」も用意。左に「AAC」と、現在のコーデックが表示されているのも便利だ

ちなみに、「Technics Audio Connect」アプリでは、NCやアンビエントレベル調整のほかにも、左右イヤフォンのバッテリー残量や接続コーデックの確認、音質のカスタマイズ、紛失したイヤフォンを探す機能なども備えていて、なかなか重宝する。

NCやアンビエントレベル調整が可能
サウンドモードの選択やイコライザーも備えている

そのほかにも、IPX4相当の防滴性能を備えていたり、ヘアライン仕上げで高級感のある充電ケース、S~XLまで4サイズのイヤーピースが同梱されるなど、デザインから付属品まで、細部にまで徹底した作り込みが窺える。装着方法は、耳穴に挿入して少し後ろに回すようにする。装着感も絶妙だ。

スマホと連携するとハンズフリー通話もできるが、この通話の品質にもこだわっている。通話用マイクには、ビームフォーミング技術を使っている。これは、ユーザーが話している声と、それ以外の騒音などを区別する事で、ノイズを低減させ、クリアな声を相手に届けるものだ。

マイク自体にもこだわりがあり、高性能なMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクを採用。ノイズキャンセリング用2つ、通話専用に1つと、片側3つ搭載している。また、マイクに風が当たると「ボボボ」と不快な風切音が入ってしまうが、それを防ぐために、マイクまでの空気の通り道を複雑化してマイクに直接風が当たりにくくするラビリンス構造も採用。屋外でもクリアな音声通話を実現している。

バッテリーの持続時間は、イヤフォン単体で約6.5時間(NC ON/AAC時)~約7.5時間(NC OFF/AAC時)。持ち運びしやすい小柄な専用ケースと組み合わせて、約19.5時間(NC ON/AAC時)~約22.5時間(NC OFF/AAC時)の使用が可能となっているので、日常使いで充分なスペックといえる。BluetoothコーデックはSBCに加えてAACにも対応。iPhoneなどiOSデバイスでも良質なサウンドを楽しむことができるようになっている。

ヘアライン仕上げで高級感のある充電ケース
充電端子はUSB Type-Cだ

完全ワイヤレスでは珍しい大口径ユニットのサウンドは!?

このように上級クラスの完全ワイヤレスイヤフォンとして充実した機能性を誇るAZ70Wだが、やはり、最も気になるのはそのサウンドだろう。

AZ70Wには、完全ワイヤレスイヤフォンとしては希有な10mm口径のダイナミック型ドライバーを採用。さらに、振動板にはPEEK素材を採用しつつグラフェンコートを施すことで強度をアップさせ、不要な振動を抑制している。

また、ドライバーの後ろには同ブランドの上級有線イヤフォン「EAH-TZ700」に採用している「アコースティックコントロールチャンバー」を搭載。ドライバー背面の空気の流れをコントロールすることで、大口径ドライバーの広帯域再生能力を引き出しつつ、低域から高域までバランスの良いサウンドを実現しているという。

はたして、実際のサウンドはいかがなものだろう。ひとことで言い表すならば、“アコースティックが得意なオールラウンダー”だろうか。中域の存在をしっかり主張しつつ、伸びやかだけど鋭すぎず、一切刺さることのない高域、充分な量感ともに絶妙なバランスで整えられていて、とても自然な音色の、上質なサウンドを楽しむことができる。

例えばピアノの音は、基音がしっかりと主張しつつも、倍音がしっかりと乗っていて伸びやかな音色に感じられる。細部の表現もしっかり拾い上げてくれるため、タッチや演奏ホールの広さなど、会場の様子も如実に伝わってくる。

女性ヴォーカルの歌声も魅力的だ。アデルの楽曲を聴くと、普段よりほんの少しハスキーな、それでいて声の揺れや息の強さなど、細かいニュアンス表現までしっかりと伝わってくる歌声を楽しませてくれる。ヴォーカルの立ち位置も変に前に出すぎることなく、演奏との一体感があって好ましい。

同じく男性ヴォーカルもほんのちょっとだけハスキーだが、その付帯音が声の存在感の強さに繋がっていて、リアルな歌声を楽しませてくれる。ことサウンドに関しては、一般的な完全ワイヤレスイヤフォンとは一線を画す、テクニクスブランドならではの良質なチューニングに仕立てられている。ノイズキャンセリング機能のオンオフに関係なく、自然なサウンドを楽しませてくれる点も好印象だ。

このように「EAH-AZ70W」は、接続性、ノイズキャンセリング機能、装着感などの機能面はもとより、サウンドに関しても強いこだわりが盛り込まれている、完成度の高い魅力的な製品といえよう。

パナソニックの2機種にも注目

続いて、パナソニックの2製品をそれぞれ紹介していこう。

パナソニック初の完全ワイヤレスイヤフォンとして同時リリースされた「RZ-S50W」と「RZ-S30W」。それぞれに異なったキャラクターを持つ製品となっている。

左から「RZ-S30W」、「RZ-S50W」
左が「RZ-S50W」、右が「RZ-S30W」

まず「RZ-S50W」は、アクティブノイズキャンセリング機能を搭載した上位モデルだ。しかも、イヤフォン本体の外側と内側それぞれにマイクを搭載し、外側「フィードフォワード」にはデジタル処理、内側「フィードバック」にはアナログ処理する独自のシステム「デュアルハイブリッドノイズキャンセリング」を採用している。

こちら、テクニクスブランドの「EAH-AZ70W」と同等の機能だが、実際に効果のほどを試してみたところ、目立ったり不快だったりする低域~中域のノイズをメインにしっかりキャンセルするイメージの、とても自然な効き具合が好印象だった。そのため、楽曲を再生しながらノイズキャンセリング機能をオン/オフしても音の差や違和感を感じないため、素直に音楽に集中することができる。

RZ-S50W

S50Wには、iOS/Android OS用スマートフォンアプリ「Panasonic Audio Connect」が用意されていて、こちらを利用することで、ノイズキャンセリングや外音取込みレベルを調整できる。左右イヤフォンのバッテリー残量や接続コーデックの確認、音質のカスタマイズ、紛失したイヤフォンを探すことなどができる。こちらも便利だ。なお、同様のアプリはS30Wでも利用でき、外音取込みのON/OFF、左右イヤフォンのバッテリー残量や接続コーデックの確認、音質のカスタマイズ、紛失したイヤフォンを探すことなどができる。

iOS/Android OS用スマートフォンアプリ「Panasonic Audio Connect」。左上に、現在のコーデックが表示される
NC機能も調整も可能だ

接続安定性にもこだわりが投入されていて、S50W/S30Wのどちらも、イヤフォン本体が左右独立してそれぞれスマートフォンに接続する「左右独立受信方式」を採用している。こちらも「EAH-AZ70W」と同等の機能で、人体(頭)を間に挟むことでどうしても不利になりがちな接続安定性を巧みに解消している。

iPod touchと接続して屋外でテストを行ってみたところ、EAH-AZ70Wと同じく、見通しの良い良環境であれば最長で30m近く離れても音切れすることがなかった。こと接続安定性に関しては、かなりの優秀さといえる。

また、AZ70Wと同様に、S50Wは通話の品質も高い。送話の音声とそれ以外の音を区別して、ノイズを低減させるビームフォーミング技術や、高性能なMEMSマイクを採用。マイクまでの空気の通り道を複雑化して、マイクに直接風が当たりにくくするラビリンス構造も採用している。

バッテリーの持続時間は、イヤフォン単体で約6.5時間(NC ON/AAC時)~約7.5時間(NC OFF/AAC時)。充電ケースとあわせて約19.5時間(NC ON/AAC時)~約22.5時間(NC OFF/AAC時)なので、充分以上のロングライフと言える。

コンパクトな充電ケース
充電用端子はUSB Type-Cだ

一方、BluetoothコーデックはSBCに加えてAACにも対応。iPhoneなどiOSデバイスでも良質なサウンドを楽しめる。

RZ-S50Wのサウンドをチェック!

このように、EAH-AZ70Wと同様の充実した機能性を持つRZ-S50Wだが、はたしてそのサウンドはいかがなものだろう。

一般的な完全ワイヤレスイヤフォンよりも大柄な、8mm口径のダイナミック型ドライバーを搭載するS50Wのサウンドは、ひとことで言うと“ニュートラルさとスピーディーさを巧みに両立させた現代的なサウンド”だ。SN感が良く、定位感も良好。左右に大きく広がるステージングを持ち合わせている。音のキレが良いため、ピアノの音がとてもピュアに感じられるし、ヴァイオリンなどのストリングス系も臨場感の高い演奏を楽しませてくれる。

RZ-S50W

ヴォーカルの表現も良い。女性ヴォーカルは、透明感のある伸び伸びとした歌声を聴かせてくれるし、男性の声も涼やかで朗々とした魅力的な歌声を楽しませてくれる。一方、ドラムやベースなどのリズムパートもパワフルでキレが良く、グルーブ感の伝わるノリの良いサウンドを楽しむことができる。Jポップやアニソン、ハードロックなど、現代曲とのマッチングが良いサウンドキャラクターといえる。

エントリーだが、あなどれない「RZ-S30W」

機能性の高さと良質なサウンドをバランスさせたS50Wに対して、RZ-S30Wはユーザビリティに重きを置いているのが特徴だ。

例えば、イヤフォン本体は、S50Wと共通する上品な印象のデザインを採用しつつも、かなり小柄なサイズに纏め上げられていて、女性でも無理なく装着できるよう配慮されている。

RZ-S30W

重さも片側約4gと、完全ワイヤレスイヤフォンとしては最軽量の部類に入る軽さを実現。そのおかげで、実際に装着してみるとかなりの軽快さを感じる。確かに、これだったら耳の小さな女性でも、負担の少ない、軽快な装着感を得られるだろう。なお、S30Wの付属イヤーピースも、女性の利用を想定して小さなXSサイズから付属している。

接続安定性については「左右独立受信方式」や「タッチセンサーアンテナ」など、S50Wと共通する性能を持つ。こちらも試してみたが、屋外の良環境では10m以上、15m近くまでは音切れすることなく音楽再生できた。まずまずの優秀さといえる。

RZ-S30W

IPX4相当の防滴性能やSBC/AACコーデックへの対応など、アクティブノイズキャンセリング以外の機能に関しては、ほぼS50Wに準じている。充電ケースのコンパクトさも同じだ。

逆に、ノイズキャンセリング機能がない分、バッテリー持続時間が長くなり、イヤフォン単体で約7.5時間(AAC時)、専用ケースからの充電を含めると約30時間(AAC時)使用できる。

充電ケースもコンパクト
こちらもUSB Type-Cを採用している

そんなS30Wサウンドは、中域を重視した、イージーリスニングにも向いた自然なサウンドキャラクターが特徴となっている。音場表現も、ヴォーカルをグッと前に出した、纏まりの良さで聴かせるタイプ。6mm口径のダイナミック型ドライバーが搭載されるため、8mm口径のS50Wに対して、抑揚表現のダイナミックさや音の広がり感などは劣るものの、鋭すぎない高域と自然な低域が組み合わさった、素直で聴き心地の良い演奏を楽しませてくれる。

Jポップからクラシックまで、不得意なジャンルはないが、特に良好だったのがヴォーカルものの洋楽&Jポップなどの現代曲。フォーカスの良い低音と明瞭度の高い中高域で、リズミカルな演奏をノリの良いサウンドで楽しませてくれた。

ブランド初登場ながら、高い完成度の3モデル

このように、テクニクス「EAH-AZ70W」と、パナソニック「RZ-S50W」、「RZ-S30W」は、各ブランド初の完全ワイヤレスイヤフォンとして、高い完成度を持ちつつ、同時に、それぞれに異なった機能性とサウンドを特徴とした製品に纏め上げられている。

単純にノイズキャンセリング機能の有無だけでなく、音質なども含めてユーザーや使用環境でベストな製品が異なってくるので、じっくり吟味して、できれば試聴をして、自分にとって理想の1台を選び出して欲しい。

左からテクニクス「EAH-AZ70W」、パナソニック「RZ-S50W」、「RZ-S30W」