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「本当にスピーカーからの音なのか」DALI RUBICON愛用者が10年ぶり後継機「RUBIKORE 2」を聴く
- 提供:
- ディーアンドエムホールディングス
2024年11月26日 08:00
「RUBIKORE」シリーズの登場で、DALIファンはソワソワ
デンマークのスピーカーメーカー、DALI。インテリア工芸品のような美しい外観、音楽性の高いサウンド、そして価格レンジの広い豊富なラインナップが、多くのファンに支持されているブランドだ。かくいう筆者もDALIファンの1人。上京して数年目の2005年に「Royal Tower」を導入。それ以来、2013年にブックシェルフ型の「MENTOR 2」、2019年に「RUBICON 2」と、DALIのスピーカーを使い続けている。
DALIスピーカーの魅力とは何か。
まず、DALIといえば、「美音」というのが昔からの定評である。Royal Towerが販売されていた当初、HELICONなどのスピーカーがDALIのサウンドカラーを象徴しており、芳醇な中音域、とろけるような質感、弦楽器や女性ボーカルが艶っぽい、といった美音と呼ぶにふさわしい唯一無二の魅力があった。現在でも、方向性は多少変わっているにせよ、DALIの美音は健在だ。
外観は美しくセンスも良い。北欧のインテリア工芸の技術に支えられた造りの良さと、生活に馴染むデザインは、エントリークラスにまで貫かれており、上級機に至ってはさながら高級家具のようだ。
そして、個人的に最近思っているのが、常に時代の移り変わりを捉えたサウンド変革を成し遂げつつも、最も重要な音楽性、DALIが言うところの“Musical Emotion(音楽の豊かな感情)”を失わないフィロソフィーの徹底だ。
そんな筆者が自宅の防音スタジオで使っているのが、RUBICON 2。DALIのミドルハイエンドにあたるブックシェルフスピーカーだ。何の不満もなく使ってきたのだが、今年の10月、10年ぶりの後継機「RUBIKORE」シリーズが発売されたことをきっかけに、心がソワソワしっぱなし。
RUBIKOREの、特にブックシェルフ型「RUBIKORE 2」(1台264,000円/ペア販売)の音質がどう変わったのか気になって仕方ない。もし、その進化が納得のいくものであれば、買い換えを検討したいくらいに。
そんなところに、RUBIKORE 2を試す機会に恵まれたのは暁光であった。本稿ではRUBICONからの進化点と、そのサウンドの特徴を中心に深掘りしていきたい。
なお、RUBIKORE 2をもし購入しても、今使っているRUBICON 2はリビングのシステムに使うつもりなので、手放す気はない。お父さんのお古の家電が息子に流れるように、使用環境がスライドするだけだ。
KOREの技術を取り入れた最新世代のRUBICON
DALI(Danish Audiophile Loudspeaker Industries)は1983年ピーター・リンドルフによりデンマークに設立された。長年、“音楽を楽しむためのスピーカー作り”を掲げ、エントリーからハイエンドまで等しく、美しく洗練されたデザインと性能にこだわっている。
特徴としては、周波数特性だけでなく、位相特性にも着目していること。ドライバー、ネットワーク回路、キャビネット、それらがマッチングを図れるように一体となって開発。低損失(LOW-LOSS)テクノロジーと合わせて、フラットなインピーダンス特性を実現。アンプにやさしく、急激な落ち込みのないサウンドステージを保つ。
広いスイートスポットもDALIの特徴だ。ドライバーとクロスオーバーは、広く均一な音の広がりを生み出すよう設計されている。リボンツイーターを備えた機種は、一般的な“内振り設置”を非推奨としているほどだ。
その最新モデルであるRUBIKOREは、2022年に発売された超高級スピーカー「KORE」の技術と工学原理を受け継いだ新シリーズだ。
KOREは、温かみがあって心地よいDALIの音を基調としながらも、ディテールや空間表現、トランジェントといった要素も高いレベルで併せ持った究極のスピーカーだった。しかし、1台8,250,000円と、誰もが導入できる製品とは言い難い超ハイエンドクラス。RUBIKOREは、それを現実的な価格帯のスピーカーに落とし込んできた。
名前からも分かるとおり、RUBICONシリーズの後継製品。2014年に発売したRUBICONからちょうど10年、満を持しての新登場となった。
名称について、筆者は思うところがある。RUBICONの後継として「RUBIKORE」のモデル名の中に、RUBICONの「RUBI」を残している。まったく新しい名前にしなかったのは、“KOREの技術を取り入れた最新世代のRUBICON”という意味かもしれない。外観デザインをおおむね引き継いだことから、自然なネーミングではあるものの、RUBICONへの思い入れは現在も大きいと見ている。
ちなみに、RUBICONの2年前に発表されたEPICONは、初めてDALIがSMC搭載ドライバーユニットを内作した製品。RUBICONの開発にあたっては、「今後の新製品すべてのSMCドライバーを内作していく」ことを決めたという。コストが掛かりリスクも大きいユニット内作。しかも、購入しやすい価格も維持しなければならない。まさに「ルビコン川を渡る」思いで踏み込んだ大きな決断だった。ゆえにRUBICONという名前になったという。
そして、さらなる躍進への印ともなったRUBICONは、KOREの技術を取り入れて新たなRUBIKOREへと進化した。
注目のRUBIKORE 2
ラインナップは、フロア型2モデル(RUBIKORE 8/6)、ブックシェルフ1モデル、壁掛け可能な薄型1モデル(RUBIKORE ONWALL)、センタースピーカー1モデル(RUBIKORE CINEMA)で、合計5モデル。
RUBIKORE 2の価格は、1台264,000円とRUBICON 2より値上がりしているが、新技術の導入やバイワイヤ対応など変更点もあるので、単純に掛かるコストが増えているとも考えられる。
カラバリは、ハイグロス・ブラック、ハイグロス・ホワイト、ナチュラル・ウォルナット、ハイグロス・マルーンの4種類。ホワイトのみ受注生産だ。
RUBIKORE 2は、フロア型の2モデルと比べて、ドライバーやネットワークの構成が異なる。ミッドレンジ/ウーファーの数が違う他、リボンツイーターは省略された。
また、ネットワーク回路に使われているコイルは、新技術の「SMC-KOREクロスオーバー・インダクター」をフロア型で採用しており、コイル間でのクロストークを軽減、電流歪みも約12dB抑えた。
一方、DALI KOREのために厳選されたムンドルフ製フィルムキャパシターを使用して、クロスオーバー回路の性能を高めた点は全モデル共通だ。
では、具体的にRUBIKORE 2の概要をみていこう。ドライバーは、165mmのSMCウッドファイバーコーン・バス/ミッドレンジ・ドライバーと、DALI独自の超低損失軽量29mmドームツイーターを搭載。どんなに小さなリスニングスペースでも、卓越した広拡散性、低損失サウンドを実現するという。
デンマークの生産工場で手作業によって組み立てられるRUBIKOREは、近隣の数多くの部品サプライヤーや技術を活用しており、“根っからのデンマーク製”をアピール。19mmMDFエンクロージャー・パネルや、25mm厚MDFフロント・バッフルで構成されたキャビネットは、内部補強により共振と音の色付けを排除した。
周波数特性(±3dB)は50Hz~26kHz。公称インピーダンスは4Ω。クロスオーバー周波数は2,800Hz。スピーカーターミナルは、新たにバイワイヤリング/バイアンプに対応した。
外形寸法と重量(グリル含む)は、195×335×350mm(幅×奥行き×高さ)、9.5kg。グリル、ポリッシングクロス(グロス仕上げのみ)、底面に貼るラバーフットが付属する。
スピーカーを外箱から取り出してみる。ペア販売であるが、箱は1台ずつ独立していた。L/Rの区別は、シリアル末尾のLとRの文字で見分けられる。
底面には、スタンドと固定するための金属のネジ穴が4つ露出していた。今のところ、このネジ穴に対応する専用スタンドの国内取り扱いはない。RUBICON 2の時にネジ穴は存在しなかったので、外観的にはちょっと残念だ。なお、スタンド等へのポン置きにおいては、一切の支障は無い。
ウッドファイバーコーンは、Clarity Coneテクノロジーによる凹凸が写真で見るよりカッコいい。音のための工夫が結果としてデザイン性も高めていると思う。
シルクドームツイーター近傍のプレートは、BMC樹脂からオールアルミのダイキャストプレートに変更されており、RUBICON で存在した乱反射防止の刻みはなくなっている。
背面を見ると、バイワイヤ対応のターミナルが感動を誘う。というのも、前に使っていたMENTOR 2がバイワイヤだったので、RUBICON 2でシングル接続になったことを残念に思っていたのだ。
カラーは、ハイグロス・マルーンを試用した。筆者が愛用していたRoyal Towerのピアノブラックも光沢加工だったが、DALIのグロス仕上げのクオリティはとても高く、所有する満足感を高めてくれるだろう。表面がマットなナチュラル・ウォルナットもあるので汚れが気になる方も安心だ。
抱えて防音スタジオに運んだが、ちょっと重い。重量は、バイワイヤ対応、およびミッド/バスレンジのダブルマグネット化によって、RUBICON 2より1.5kg重くなっている。
これは本当にスピーカーからの音なのか
筆者のシステムは、NASがSoundgenicの初期型SSDモデルに、ネットワークトランスポートは「DST-Lacerta」、USB-DACは「NEO iDSD」、プリメインアンプに「L-505uXII」を使っている。最近は、DST-LacertaとSoundgenicを接続するネットワークスイッチにサイレントエンジェルの「N8」を導入した。オーディオ系の試聴はすべてこのシステムで行なっている。
RUBICON 2からケーブルを外して、RUBIKORE 2をセッティング。既存のケーブルはバナナプラグ経由で接続しており、中低域のターミナルに結線した。高域側は、保管していた同じケーブルのSPC-REFERENCE-TripleCの芯線を剥いてアンプとターミナルに直接接続とした。DALIのスピーカーターミナルは、MENTOR 2の頃から繋ぎやすくて助かっている。作りもしっかりしていて、緩めやすく締めやすい。
ケーブルを結線したら、L-505uXIIのスイッチをA+Bに合わせてバイアンプ駆動対応に変更。さっそく音楽を試聴した。
しょっぱなから、DALIが得意とするワイド・ディスパーションをチェックしてみる。ホール録音の音源などを再生して、自身の身体を左右にチェアごと移動。スイートスポットがRUBICON 2と同等以上かを確認した。ちなみに、筆者の防音室は6畳弱で、左右のスピーカーの距離は1.7mほどと、長方形の部屋の短辺を使って設置している。
本来のスイートスポットから左右にずれても、RUBICON 2と比較してほぼ印象は変わらない。ホール録音の楽曲を流しながら移動すると、ホールでの席移動に似た感覚が味わえる。スイートスポットが狭いスピーカーでは、音場再現性どころか、ステレオ感も破綻してしまうこともあるが、そこはDALI。スイートスポットは伝統に則り、広く取られている。
添付のマニュアルを翻訳しながら読むと、RUBIKORE 2は内振りを推奨していなかった。RUBICON 2では、リボンツイーターを装備していないことから内振りでもOKのようなことが書かれていたので、さらに拡散性能が上がったのだろう。筆者の狭い部屋では、違いがよく分からなかったが。
次にバス/ミッドレンジ ドライバーの進化点についてチェックする。変更点は、強力なダブル(反転)マグネットの採用と、クラリティ・コーン ダイアフラムの導入だ。
まずマグネットだが、従来はSMCポールピースを囲むマグネットの一段構成だった。RUBIKOREでは背面にさらにもう一段マグネットを追加したことで、磁束を集中。低損失に繋がったという。
茶色のウッドファイバーコーンは、2002年にEUPHONIAの発売を機に開発された同社の代名詞。微粒子パルプに木繊維(ウッドファイバー)を混ぜた独自のもので、軽く剛性に優れ、振動板として安定して動作する素材だ。これでコーンの共振や歪みを抑えることができる。
ここにKORE譲りの5点の凹凸幾何学構造を新たに取り入れることで、表面上の分割共振を散らし、中高域のリニアなレスポンスも果たした。
また、ダイアフラムに制振材をハケで表面に塗布する際、凹凸によって制振材が厚く溜まる部分と薄い部分が生まれる。この塗りムラも、分割共振の影響を低減する効果があるそうだ。
凸凹構造であっても、重量は1グラムも増やすことなく共振を減衰させており、結果低損失に寄与している。これがクラリティ・コーン ダイアフラムという訳だ。
RUBIKORE 2のウッドファイバーコーンの改善ポイントを踏まえて、純度や鮮度感といった要素がRUBICON 2とどのように変わったかを聴く。ハイレートのPCM音源や、DSDなどを中心に再生した。
Beagle Kickの384kHz/ネイティブ32bit整数録音の「SUPER GENOME」。制作側の立場である自分ですら、非常にたくさんシンセの音が入っていた事に気付く。中高域の歪み感がRUBICON 2より改善されたことで、その分、ディテールの描写が繊細に。従来、モニターヘッドフォンでしか体験できなかったような精密なサックスやコーラスの音が、スピーカーでも聴けるのは驚いた。音像を汚す不純物がなく、ひたすらにピュアだ。
768kHz/32bit整数フォーマットによる「結城アイラ/うた」を試聴。雑誌付録でのみ販売された貴重な一発録音だ。ボーカルの今そこで歌っている感が格段にアップ。中高域の歪みが激減したことで、ディテールや強弱の情報が忠実に鳴っているのだろう。
グランドピアノに掛かったリバーブは、これまで聴いたことのないほどクリーンに生まれ変わった。一時の淀みやエラーもなく、正確に鳴らしてるようなイメージ。それでいて、さりげない温かみや、ピアノやボーカルの有機的な質感もあって、音楽を聴く気持ちよさに浸っていられた。
Little Donutsのスタジオ・セッション「HAPPY TALK SESSION @ TAGO STUDIO」をDSD 11.2MHzで。これはたまげた。空気感なんて表現では足りない。スタジオの空間が目の前に現れた。TAGOスタジオの大きなメインブースに、椅子を置かせてもらって、目の前で演奏を聴いている感覚だ。
トランジェントの高さも影響していると思われるが、あまりにもフレッシュ。トランペットとサックスの微妙な定位のズレもスピーカーでここまで精密に体験できるのかとしばし呆気にとられる。
Beagle Kickのジャズカルテット「Rememberance」は、5.6MHzのDSD。ホールトーンの透明度は向上し、ピアノのリバーブはどこまでもクリーン。ミックスの時、やや強めだった高音を修正してもらったドラムの金物系も聴きどころだ。
RUBIKORE 2で筆者が唯一気になったのは、数kHz付近のハイが明るい点だったのだが、この楽曲でも若干ブライトな音ではある。ただ、それは何度聴いても雑味や付帯音ではない。高域も含めてひたすらにピュアで、むしろ細かすぎる録り音に驚いたくらいだった。
続いて、低損失シルクドームツイーターによる進化をチェックする。
ツイーターの開発にあたっては、DALIらしい温かみのあるサウンドを本質としながら、ディテールの再現のため、高いトランジェントを追求したという。
そのために、新しい試みとして、通常ボイスコイルのセンター化や放熱効果のために使用される磁性流体をあえて使わない手法を採った。結果、高域はよりオープンでリアル、かつ楽に再生されるようになったそうだ。
RUBICON 2との音質差は、トランジェントや中高域が奏でるトラックのリアリティをチェック。主に電子音楽系や、音場表現が重要となるコンサート音源を中心に試聴した。
『小林さんちのメイドラゴンS』からOP主題歌カバーとなる「愛のシュプリーム! (スーパーちょろゴンず ver.)」ハイレゾ版。原曲は生バンドにストリングス、ブラスと豪華な生演奏によるバックオケが魅力だが、声優陣によるカバーでは、シンセによるピコピコポップなアレンジ。
キャスト陣によるボーカルは、5人もいる中で1人1人個別の音声として、ヘッドフォン並の解像感で聴けたのにまず感動。各シンセトラックの分離は驚異的だ。
左右のコーラスはRUBICON 2でも十分な緻密さだったが、重ねた音声の数まで伝わりそうなほど超解像。ポップチューンならではの、軽快なリズムトラックやシンセのピコピコ音がトランジェントよく、スピード感を持って耳に迫る。これは本当にスピーカーからの音なのかと圧倒された。歪み感のない高域は、キラキラしたサウンドを引き立て、目が覚めるような明るさであった。
ホール録音のオーケストラ音源を何曲か掛けてみる。ゲームやアニメのオケアレンジを作品違いでいくつか聴いてみると、アルバムごとのミックスの違いが分かりやすいことに気付く。
ゲーム/アニメ系は、クラシックに比べると、オンマイクの音をミックスでも目立たせる傾向があると感じていて、その程度の違いがRUBICON 2より伝わってくる。例えば、ミックスにおいて天吊りやワンポイントステレオマイクの割合の大小、個別のオンマイクの強調度合いなどだ。
さらに、海外の録音盤では、響きの質感が壁の材質の影響を受けている様子が実にリアルだ。非常に純度が高く、音場もクリーンで見通しがよい故に、埋もれていたソースごとの違いに“それほど集中して聴かなくても”気付かされた。
最後にチェックする新機能は、コンティニュアス・フレアポート・テクノロジーだ。背面に備えたバスレフポートは、RUBICON 2だと真っ直ぐな筒で、表側の出口だけが広がっている。RUBIKORE 2では、中央が狭く、両端が大きく膨らんだ構造に変わった。
これによって、空気が圧縮されてから解放されるため、渦の発生を抑え、気流ノイズを低減できるという。パイプオルガンのような、パイプを空気が通ることで共振する現象を最小限に抑える効果もあるとのこと。
ローが深く、かつ量感もあるソースにおいて、低域がどう変わるかチェック。
鬼太鼓座より「鼕々(とうとう)」。1インチ2chのアナログマスターから192kHz/24bitでトラックダウンしたタイトル。大太鼓の胴鳴りは、これまで地響きっぽく聴こえていたのが、鼓面を叩いた音と胴鳴りの音がそれぞれ聴き分けられたことに感動。低音の残響が濁ることなく、クリアなおかげで、ステージの演奏を客席で聴いているようなリアリティ。三味線のスピード感は、キレがよく緊張感もアップした。
池頼広のThe Sound of TIGER & BUNNYより「TIGER & BUNNY」。曲序盤、Lch側に入ってくる大太鼓のような音。かなり低い帯域まで入っていて、エネルギーも膨大なソースなのだが、RUBICON 2ではやや曇り気味で、もう少しフォーカスを鋭く描いてほしかった。
RUBIKORE 2にすると、曇りが綺麗さっぱり消えて、ソース本来のクリアで迫力のある重低音が楽しめた。肉厚な音でゴリゴリに弾いているベースが現れるシーンでは、音像が無駄に広がらずタイトでクールにキマっている。
ゲームや映画でもサウンドもチェック
筆者の防音スタジオでは、音楽を試聴するほかに、映画やゲームも日頃から楽しんでいる。AVアンプの「RX-A6A」のRCAプリアウトからL-505uXIIにフロント2chだけを送るシステムだ。
まず、2chステレオで制作されたゲーム「英雄伝説 界の軌跡」をプレイ。これまでRUBICON 2で楽しんでいて、何一つ不満はなかったのに、RUBIKORE 2に入れ替えると、BGMやSEの明瞭さ、良好なトランジェントに耳を奪われる。
わざと注意して意識を向けなくても、環境音や街の声、戦闘中のボイスが、それぞれの音量の大小を問わず、スッと耳に入ってくる。フィールドを歩いているとNPCのボイスが聴こえるのだが、ディテールは緻密に、トランジェントは正確になったことで、芝居の感情が豊かになったように聴こえるからすごい。音のいいヘッドフォンで聴いたとき、推しの演技がよりカラフルに聴こえるアレに似ている。
Blu-ray版「シン・ゴジラ」は、センター・フロント・サブウーファーの3.1chサウンドで制作されている。筆者のシアターはセンターを置いていないので、サブウーファーのDALI SUBE-9Nと合わせて2.1chで試聴した。AVアンプ側の設定はピュアダイレクトでストレートな音をチェックしている。
おいおい、ちょっと待ってくれ。あらゆる映画を見返したい。小さい効果音や、かすかな環境音が“それが何の音か”も含めて、はっきりと聴こえてくる。
序盤、防災対策で集まる役人たちが押している台車の音や、官僚が話しているヒソヒソ会話まで、ディテールが明瞭で他の音に埋もれない。最初の不審船で隊員が調査に踏み込むシーン、カメラ内蔵マイクの近くで喋っている声と、すぐ傍の隊員が喋る声のマイクへの収音のされ方が違うのが聴き取れて大興奮した。
「よくよく聴いてみたら分かった」とかではない点を強調したい。RUBICON 2と比較はしているけれど、違いがどこにあるかは聴いてみるまで分からないからだ。ダイナミックレンジが広い映画ソースでこそ、RUBIKORE 2の低歪み・低損失な性能が活きるのは間違いなさそうだ。
台詞、劇伴、効果音、環境音、フォーリーに至るまで、解像度の高さと、分離の良さで、シーンへの没入度が格段に上がる。台詞に至っては、緊張でこわばった声や少し張ったときの声といった、俳優の繊細な芝居をフレッシュに変質なく鳴らしていて、感情表現がよりダイナミックに伝わってくる。情報量が多いと、より映画の世界に引っ張られて、チェックの止めどころを見失いそうだった。
ここで勘違いしてほしくないのは、“音が聴こえすぎる=モニター的なサウンド”とも言えないという点。無色透明ではなく、適度な温かみやオーガニックな質感が確かにあるのだ。ゴジラが街を破壊し尽くして、いったん海に帰るシーン。シン・ゴジラでも印象的なBGM「Early morning from Tokyo (short)」が流れる。これがまた何とも美音なのだ。ムーディーなスローテンポのジャズで緊張がほぐれていく。
ガールズ&パンツァー最終章の第4話、リニアPCMのステレオ音声を選んで聴いてみたところ、セリフもSEも効果音も鮮明に聴こえるのだが、分析的な音ではない。全体としてまとまりがあり、調和しているのが分かる。結果、作品の世界観を損なわない。
進化しても“DALIらしさ”は健在
音楽・映画と日常的にRUBIKORE 2を使ってみて分かったのは、どれだけトランジェントや解像感が上がり、低歪み・低損失になっても、DALIらしいオーガニックな質感や温かみは今も根付いているということだった。音を細かく聴くことはできる、けれども分析的なサウンドに振り切ったスピーカーでもない。どこまでいっても「Musical Emotion」を大事にするDALIの哲学に改めて脱帽である。
ブックシェルフスピーカーの刷新を考えている方、何よりも音楽性を重視したいなら、RUBIKORE 2は選択肢としてお勧めだ。今さらの言及で恐縮だが、帯域バランスはナチュラルである。最初、高域の明るさが気になったが、スピーカーケーブルを剥いたばかりで音が固かったのもあったのだろう。しばらく鳴らしていくと、すぐに慣れた。
どんな音楽を再生しても、癖の少ないバランスで、本来の音を鳴らす。同時に音楽性豊かな、聴いていて楽しいサウンドを成し遂げたDALIの新しいハイエンド。ちなみに筆者が試用機を返却するとき、今年1、寂しかったのは言うまでもない。