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「もうワイヤレスでいいかも」BTヘッドフォン1つの頂点、Bowers & Wilkins「Px8 S2」を聴く

便利なのでBluetoothヘッドフォンを移動中に使っているのだが、帰宅して有線ヘッドフォンを聴くと、その繊細な描写力や、軽量な振動板をしっかりしたアンプで鳴らしたときのトランジェントの良さ、パワフルでキレのある低音などに圧倒され、「やっぱり有線ヘッドフォンっていいよなぁ」と、惚れ直す。ワイヤレスの便利さは最高なのだが、じっくり音楽を楽しみたい時には有線で……という使い分けをしていた。

“していた”と過去形なのは、先日聴いたBluetoothヘッドフォンのせいだ。

とにかく音が良いので、外出先や電車の中でも“じっくり音楽を楽しむモード”に入れるのだが、家に帰って机の上に置いて、着替えてリラックスした後でも、再びこのヘッドフォンで続きを聴こうという気分になる。有線ヘッドフォンユーザーにとっては、かなりキケンな存在だ。

そのヘッドフォンは、9月25日に発売されたBowers & Wilkinsの最上位モデル「Px8 S2」。価格はオープンで、実売129,800円前後と、Bluetoothヘッドフォンとしては価格も別格だ。

Px8 S2

だが、ご存知の通り、有線ヘッドフォンの高級機は20万円、30万円、50万円といった価格も珍しくなく、ヘッドフォンアンプなどを組み合わせるとさらにお金がかかる。結論から先に言うと、Px8 S2音を聴くと「スマホとPx8 S2だけで、これだけ満足できる音が聴けるなら、かなりアリなのでは?」と思わせてくれる1台だ。

オーディオマニアだけ知っているB&W……は、過去の話

Bowers & Wilkins(B&W)と言えば、ビートルズでお馴染みのアビーロード・スタジオにモニタースピーカーとして採用された800 Series Diamondなど、高音質とデザイン性を兼ね備えたスピーカーメーカーとして、オーディオファンにはお馴染みだ。

だが、例えばボーズやソニー、アップルなどのブランドと比べると、まだ一般的な知名度は低い……のだが、最近はちょっと状況が変わってきているらしい。3万円以上のヘッドフォン市場のシェアを調べると、もちろん上位はソニーやボーズなのだが、B&Wも着実にシェアを伸ばしており、2025年7月には初めて3位を獲得したそうだ。

従来は、オーディオに詳しい男性に支持されてきたが、近年は若い女性ユーザーも増加。女性芸能人のInstagramでPx8を装着した写真が投稿されるなど、「デザインが良くて音も良い高級ヘッドフォン」として認知が広がっているようだ。

初代Px8

主力モデルとしては、今年の4月に発売された「Px7 S3」(68,200円)となるが、Px8はそれを超える孤高のハイエンドシリーズ。初代Px8も別格と言えるサウンドだったが、新モデルのPx8 S2がどう進化したのか。詳しく見ていこう。

今年の4月に発売された「Px7 S3」

振動板やDAC、アンプ個別搭載へのこだわり

Px8“S2”という名前だけ見ると、細部だけを変えたマイナーチェンジモデルっぽく見えるが、Px8 S2は全てをゼロから開発したモデルで、形状自体もPx8とは異なっている。

前モデルのPx8と比較した時に、特に進化している点と、踏襲している特徴は以下の4点だ。

  • エッジや固定方法が進化した新ドライバーユニット
  • Px7 S3で培った技術を用いて薄型化したイヤーカップ
  • 24bit DSP、DAC、アンプを個別に搭載
  • ハンガーアーム見直しも含めたノイズキャンセリング強化

まずはヘッドフォンの命とも言える、振動板を見てみよう。

下位モデルのPx7 S3は、振動板にバイオセルロースと樹脂を混ぜたものを使っているが、初代のPx8、そして新モデルのPx8 S2では40mm径のカーボンコーンを使っている。

左がPx7シリーズではバイオセルロースと樹脂を混ぜた振動板が使われているが、右のPx8シリーズではカーボンコーンを採用している。指で触れてみると、カーボンコーンの方が剛性が高いのがわかる

ご存知の通り、カーボンは軽量な素材なので、高速に振幅する振動板にうってつけ。しかも剛性が高いため、振幅している時に変形もしにくく、歪みを抑えられる。難点は高価なところだが、そこは最上位モデルとしてコストが投入されているわけだ。

このカーボンコーンを採用していることが、Px8が最上位モデルである証と言える。では、Px8とPx8 S2で、まったく同じユニットなのかというと、細部が進化している。

実際にユニットを並べてみるとわかるのだが、ユニットの口径は同じなのだが、振動板の外周にあるエッジの接着面が、Px8よりも、Px8 S2の方が、幅が狭くなっている。

左からPx8、Px8 S2の振動板。エッジの接着面に注目すると、Px8 S2の方が狭いのがわかる

エッジというのは、振動板が前後に振幅する際に、それが暴れてしまわないようにサポートする役目がある。必要なパーツではあるのだが、本来は自由に振幅したい振動板に、ブレーキをかけるような存在でもあるため、理想としては無い方が良い。いわば“必要悪”だ。

そこでB&Wは、このエッジ部分を改良し、より精巧なものを開発。振動板との接着面を狭くして、音への影響を抑えつつも、その役目を果たせるようにした。つまり、Px8 S2の振動板の方が、有効に活用できるカーボンコーンの面積がより広くなっているわけだ。

違いはこれだけではない。ユニット自体のまわりを見比べると、Px8 S2のユニットにはネジ穴があるのがわかる。これは、ヘッドフォン内部に固定するためのもので、Px8は接着剤で固定していたが、Px8 S2はネジ止め式に固定方法が変わった。より強固に、ガシッと固定できるようになったわけだ。細かな部分だが、これも音に効いてきそうだ。

このユニットを駆動するアンプや、Bluetooth伝送された音声を処理するDSP、デジタルデータをアナログに変換するDACも、Px8 S2は一味違う。

一般的なワイヤレスヘッドフォンは、これらのDSP、DAC、アンプが一体になったチップセットを採用している。開発工程を減らせたり、省スペースでも多機能を実現でき、製品の開発がしやすいメリットがある。

だが、Px8は24bitのDSP、DAC、アンプで、個別のものをあえて搭載している。チップセットで全てまかなってしまえば便利だが、それではオーディオメーカーとして理想の音を追求するには限度がある。そこで、DAC、アンプそれぞれで、「これぞ」というものをB&Wが選び、搭載しているわけだ。オーディオメーカーらしいこだわりだ。

薄さと高音質化を両立させる

次に注目するのが、イヤーカップ。Px8 S2は、Px8と比べ、大幅に“薄く”なっている。

B&Wは長年、デザイン性を高めるのはもちろんだが、装着感や密閉感をより高め、音質を向上させるために、イヤーカップを薄型化する技術を開発してきた。それが完成し、初めて投入されたのが、Px8 S2よりも前に登場した、下位モデルのPx7 S3だ。

下位モデルのPx7 S3

ヘッドフォンをスピーカーに例えるなら、イヤーカップはスピーカーの箱(エンクロージャー)に相当する。それが薄くなると、音質にとってはマイナスが増えそうだが、そこを技術で解決。Px7 S3のレビュー時にも書いたが、確かに薄くなったのに音が良くなった。その技術を、Px8 S2にも導入したわけだ。

実際に、Px8とPx8 S2のイヤーカップを並べてみると、かなり薄くなったのがわかる。薄くなると、カバンなどに収納した時に嵩張らないほか、装着した時のシルエットがシュッとカッコよくなるというメリットもある。

左からPx8とPx8 S2
Px8 S2の装着イメージ

先行して薄型化しているPx7 S3とも並べてみたが、薄さはほぼ同じ。Px7 S3と同じ技術が、Px8 S2にも導入された事がわかる。

左からPx7 S3とPx8 S2

なお、薄くなっても、ドライバーユニットを角度をつけて固定する技術は継承されており、薄型でもPx8と同様の15.4度を保持している。角度をつけることで、耳の穴に向けてまっすぐに音を放出するカタチとなり、サウンドステージやフォーカス感を高められるそうだ。

薄くなっても、ドライバーユニットを角度をつけて固定する技術は継承されている

Px7 S3も高級感のあるヘッドフォンなのだが、写真を撮影しながら触っていると、Px8 S2の高級感は別格だと感じる。イヤーカップのフェースプレートの部分がヘアライン加工されているほか、外周もより光を反射するようなカッティングが施されており、角度を変えるとフェースプレートのエッジやロゴにキラッと光が反射し、宝飾品のような美しさがある。

左からPx7 S3、Px8 S2

また、Px8 S2はフェースプレートの外側の筐体表面が質感の良いナッパレザーで覆われ、アーム部分もアルミダイキャストで出来ている(Px7 S3のアームは樹脂製)。しかも凝ったことに、アーム部分は、ケーブルのディテールが露出したデザインになっている。かつての「P7」のアームデザインにインスパイアされたものだそうだ。

オーディオのスピーカーとヘッドフォンの違いは、使う時に“必ず手で触れる事”だろう。Px8 S2は、使うたびにレザーの滑らかな質感や、イヤーカップの高級感が楽しめるので、音を聴く前から「良いモノをこれから使えるんだ」という喜びが得られる。簡単に言えば「気分がアガる」。些細なことかもしれないが、ポータブルオーディオにとっては重要なポイントだろう。

アーム部分はアルミダイキャスト製
左からPx8、Px8 S2。アーム部分は、ケーブルのディテールが露出したデザインになった
イヤーパッドやヘッドバンドなど、肌に触れる部分には全てナッパレザーで覆われている

なお、今回はOnyx Blackを使っているが、Warm Stoneというカラーもラインナップされる。今後のカラーバリエーションの増加にも期待したいところだ。

Warm Stone

音質に配慮しつつ、ANCも進化

屋外で使うことが多いBluetoothヘッドフォンには、やはりアクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)機能が欲しいところだが、Px8 S2も当然搭載している。ただ、このANCにもオーディオメーカーらしさが感じられる。

左右に各4箇所、合計8個のマイクを、位置を工夫して搭載。独自ANCアルゴリズムで不要なノイズの侵入をシャットアウトしている。新モデルでは、中低域のキャンセル性能を大幅に向上させたそうだ。

ただ、ANC性能をとにかく高めて“史上最強ノイキャンヘッドフォン”を目指そうという姿勢は、B&Wにはない。というのも、“外のノイズと逆相の音を作り出し、音楽と一緒に再生してノイズをキャンセルする”というANCは、強くし過ぎるとどうしても音質に悪影響が出る。オーディオメーカーとして、それは看過できない。

あくまで最優先は音質。音質への影響を最小限に抑える中で、ANCを強化する……というのが、B&Wのこだわりというわけだ。

実際に、屋外を歩いたり、電車の中でPx8 S2のANCを試してみた。

ANCが進化しているのは、一聴するとすぐわかる。電車の中でPx8とPx8 S2を比較してみたが、どちらのモデルも「グォオオ」という電車のボディが振動する音や風の音を大部分キャンセルしてくれ、かなり静かになる。

比べると、Px8 S2の方が、キャンセル効果がより強く、周波数レンジ的にもより広くなった。特に中低域で効果が大きく、Px8ではキャンセルできずに残ってしまう中域の一部も、Px8 S2ではキャンセルしてくれ、「ンーーッ」という電車のモーター音も、Px8 S2ではかなり小さくなる。高い音の騒音は少し残り、「シュー」という音は聴こえてしまうのだが、それも、音楽を再生するとほぼ気にならない。

純粋にANC性能だけで比較すると、他社の高級ヘッドフォンの方が勝っている部分もあるとは思う。だが、個人的には十分な性能を持っていると感じるし、もしこれ以上ANCを強めて音が悪くなるのであれば、「B&Wのヘッドフォンに“ANC最強”を求めていないからやめて」というのが正直なところだ。

それにしても、騒がしい電車内に静かな空間が出現し、ジャズやクラシックの小さな音の描写も聴き取れるというのは、ANC機能の最大のメリット。これは、有線ヘッドフォンでは得にくい魅力だ。

Bluetoothのコーデックは、SBC、AAC、aptX HD、aptX Classic、aptX Lossless、aptX Adaptive(96kHz/24bit)に対応し、将来的にLC3やAuracastにもアップデートで対応予定だそうだ。

また、USBケーブルでの有線接続にも対応しており、その場合は、96kHz/24bitまでのデータを再生できる。これも後で試してみよう。

機能面ではBowers & Wilkins独自の空間オーディオ技術も、今後のアップデートで追加するそうだ。

「Bowers & Wilkins Music」アプリも用意しており、設定や操作方法のカスタマイズもできる。このアプリから、対応する音楽サービスを呼び出して再生する事も可能だ。

また、カスタマイズ可能な5バンドイコライザーも用意しており、最大10個のプリセットが保存できるようになった。

バッテリーの持続時間は、2時間の充電で30時間。15分の充電で7時間使用できる急速充電にも対応しているので、出勤前にバッテリーが無くなっていても、朝食を食べているあいだに充電すれば、通勤・帰宅で使う時間は確保できるだろう。

音を聴いてみる

音を聴いてみよう。試聴時は主にaptX Losslessを使い、その際はPCにクリエイティブのBluetoothトランスミッターの「BT-W6」を接続して使用。屋外ではGoogleのスマホ「Pixel 10 Pro」を使用した。

まず気になるのは、Px8からイヤーカップが薄型化したが、音の広がりなどが犠牲になっていないのか?という部分。Qobuzから「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生しながら、Px8とPx8 S2を聴き比べたが、これがもうまったく違う。

Px8

そもそも、SN比がPx8 S2の方が良くなっており、音が出る前の静かな瞬間がより静かで、その静かな空間にズバッとハイスピードに音が立ち上がる。音の響きが広がっていく空間も、Px8 S2の方が深く、遠くまで見通せる。イヤーカップが薄くなったので、音場も狭くなるのではという心配は杞憂に終わり、むしろPx8 S2の方が音場が広く、開放的なサウンドになっている。

Px8 S2

音場も良くなっているが、サウンド自体も大幅に進化している。

Px8 S2では振動板のエッジの接着面が小さくなり、ドライバーの固定方法がネジ止めになったというのが大きな違いだが、振動板自体はPx8と同じカーボンコーンのままなので、「そんなに違いはないのでは?」と思っていたのだが、聴き比べると「ホントに同じ振動板なの!?」と首をかしげたくなるほど音が違う。じっくり聴くと違うというレベルではなく、おそらく誰でも、音が出た瞬間に違いがわかるほどの差だ。

この差を一言で表すなら“ハイスピード”だ。

「米津玄師/KICK BACK」で聴き比べると、疾走感のあるベースが、Px8 S2ではより鮮烈で、トランジェントが良い。ズバッと音が出て、スッとハイスピードに消える。キレ味も鋭く、うねるような低音の中でも、ベースの弦がブルッと震える細かな音が聴き取れる。低音が、しっかりと深く沈む重さがありつつ、スピード感もある。両立が難しい2つの要素を、両方ここまで高めたBluetoothヘッドフォンは聴いたことがない。

Px8 S2が素晴らしいのは、エッジを故意に強調した、キツイ音になっていない事だ。

サウンド自体は、従来のPx8と同様、Px8 S2でも色付けが少なく、余分な響きを抑えたナチュラルな音で、ダイアナ・クラールも米津玄師も、人の声が自然であり、生っぽい質感がしっかり描写できている。

Px8 S2はそのナチュラルさを維持したまま、よりハイスピードなサウンドに進化。歌い出す瞬間に口を開けたことがわかる「ンパッ」という、音にならないようなかすかな音、途中に「スッ」と息を吸い込む音まで、細かく聴き取れ、まるで口元に耳を寄せているようなリアリティがある。

KICK BACKはベースだけでなく、ギターやコーラス、SEが乱れ飛ぶような楽曲だが、それらの音像を、輪郭もシャープにキッチリ描き分けつつ、質感はナチュラルなので、耳が痛くない。ナチュラルとソリッドの両立、それがPx8 S2の到達した境地と言える。

初代Px8は、ワイドレンジでナチュラルなサウンドを実現しており、どんな曲でも楽しめるヘッドフォンだったが、どちらかというとアコースティックな楽曲にマッチしたモデルだった。

それに対して、Px8 S2は、ジャズやクラシックから、打ち込みバリバリのEDMからラップ、初音ミクまで“なんでもこい”の無敵状態。音の広がりも広大なので、サカナクションの「さよならエモーション」や「ユリイカ」を聴いていたら意識が宇宙に飛びそうだ。

情報量の多さ、トランジェントの良さは、振動板や固定方法の進化だけでは実現できないはず。Px8 S2が、DSP、DAC、アンプ個別に搭載し、鮮度の良さ、アンプの駆動力の高さにまでこだわった効果も、あってこそだろう。

Px7 S3とPx8 S2はどのくらい音が違う?

Px7 S3

下位モデルの最新機種であるPx7 S3は、振動板の素材こそカーボンではなくバイオセルロースだが、ユニットの固定方法はPx8 S2と同じネジ止めで、イヤーカップも薄型化するなど、Px8 S2と同じ技術を使っている。

そのため、「Px8 S2とPx7 S3を聴き比べたら、Px7 S3がかなり肉薄するのでは?」と考えた。だが、実際に聴き比べると、Px8 S2とPx7 S3には明らかな違いがある。

Px8 S2

「KICK BACK」で聴き比べたが、Px7 S3のサウンドはハイスピードで、トランジェントが良く、方向性としてはPx8 S2と似ているのだが、キレ味の鋭さ、全体のレンジ感の広さ、低域の分解能の高さなどで、“格の違い”を感じる。どちらもイヤーカップが最新のものに進化したが、振動板の素材や、アルミやレザーといった筐体各部に使われている素材の違い、DSPによるチューニングの違いが、音に出ているという印象だ。

また、「月とてもなく」を聴き比べると、Px7 S3の方が音がやや硬質で、ナチュラルさでもPx8 S2に軍配が上がる。実売価格が2倍近く違うので、当たり前なのかもしれないが、比較試聴を終えて、Px8 S2に「すみませんでした」と謝りたくなるほどの、格の違いを見せつけられた気分だ。

「もうワイヤレスでいいかも」と思わせる完成度

Px8 S2をしばらく聴いてから、Px8に戻ると、音のナチュラルさは同じだが、スピード感が弱くなるため、Px8が“まったりした音”に聴こえてしまう。Px8 S2のトランジェントの良いキレを一度聴いたら、もう元には戻れない。

そんなこともあり、Px8 S2を外出先で使ってから、家に帰ると、充電も兼ねてUSB-Cケーブルでパソコンと接続、家の中でもそのままPx8 S2で音楽や映画、YouTube動画などを楽しむという生活になっている。

USBでの有線接続時は96kHz/24bitまでのデータを再生でき、特にアコースティックな楽曲で、情報量の多さがわかりやすい。

USB-Cポートで充電や有線接続ができる
PCとPx8 S2をUSB-Cケーブルで接続しているところ
付属ケーブルで、ステレオミニのDAPなどとも接続可能だ

音が良いだけでなく、ラグジュアリー感のあるデザインも手伝って、“家の中でも使いたい”と思わせるワイヤレスヘッドフォンになっているのだろう。高価ではあるが、家の外でも中でも、活躍の場が広いヘッドフォンになるはずだ。

AV Watch読者であれば説明不要かもしれないが、高級な有線ヘッドフォンでは、平面駆動型のモデルが人気を集めている。ハイスピードで繊細な描写が持ち味だが、Px8 S2のカーボンコーンユニットも、そのトレンドと同じハイスピードさを備え、さらにナチュラルさも維持している。

このサウンドが、外部ヘッドフォンアンプも使わず、ANCを併用して屋外でも楽しめるというのは見事と言うほかない。音質の面で、Bluetoothヘッドフォンの1つの到達点と言っていいモデルであり、利便性の高さも考えると「もうワイヤレスでいいかも」と思わせてくれる完成度。Px8やPx7を聴いたことがある人はもちろんだが、B&Wのヘッドフォンって聴いたことがなかったという人も、1度は聴いてみてほしい。

山崎健太郎