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B&W、ゼロから再設計した“ワイヤレスヘッドフォンのリファレンス”「Px8 S2」
2025年9月24日 16:30
ディーアンドエムホールディングスは、Bowers&Wilkinsの新たな最上位ヘッドフォン「Px8 S2」を9月25日に発売する。価格はオープンで、市場想定価格は129,800円前後。カラーはOnyx Black、Warm Stoneの2色。
Px7 S3世代の最新技術を投入しつつ、ゼロから完全に再設計された最上位ヘッドフォン。「ワイヤレスヘッドフォンのリファレンス」として開発され、製品にとって重要なものを再構築する事で、Px8を超える、最高のものが完成したという。
40mm径のカーボンコーン・ドライブユニットを搭載しており、振動板の素材はPx8と同じだが、最大96kHz/24bitのハイレゾ信号の解像度を限界まで引き出すように最適化した新しいユニットに進化している。
振動板を見比べると、振動板とエッジの接合部分がPx8 S2の方がかなり狭くなっている。ユニットにとってエッジは、正確に振動板を振幅させるための支えとして必要なものではあるが、動きを阻害する必要悪でもあるため、理想的には無い方が良い。Px8 S2では、従来より精巧なエッジの開発した事で、振動板とエッジとの接着面を狭くできている。
さらにユニット全体の取り付け部分に注目すると、Px8は接着剤での固定だったが、Px8 S2ではネジ止めとなり、より強固にマウントできるようになった。スプリングコンタクト設計も投入されている。
最上位モデルの特徴である、24bit DSP、DAC、アンプを個別に搭載するという要素は踏襲。チップセットに内包されたDACやアンプを使うのではなく、より追求したものを個別に搭載する事で、サウンドクオリティを高めている。
前モデルPx8と比較し、イヤーカップ部分がスリムになった。Px7 S3で高く評価された新しい薄型のハウジングを、Px8 S2にも採用したもので、ヘッドフォン単体としてのフォルムの美しさ、装着した際のシルエットの美しさ、そして快適な装着感はPx7 S3とPx8 S2を同時に開発していたからこそ実現できたという。
角度をつけたアングルド・ドライブユニットは、薄型になってもPx8と同様の15.4度を保持。リスナーの少し前に位置するサウンドステージの優れたイメージングとフォーカス感を実現している。
スリムになったシルエットは、人間工学に基づいて繰り返しテストして決定。「これまでで最も考え抜かれた快適なオーバーイヤーヘッドフォンのデザイン」だという。
肌に触れるすべての面に上質なナッパレザーを使用。アルミニウムのアーム部分は、ケーブルのディテールが露出したデザインになっている。なお、このデザインは、かつての「P7」のアームデザインにインスパイアされたもの。
アクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)用に、左右各4箇所、合計8個のマイク位置を最適化して搭載。独自ANCアルゴリズムにより、騒がしい環境でも、不要なノイズの侵入をシャットアウト。同時に、音楽の鮮度とダイナミクス、エネルギーは保持。従来のモデルに比べ、中低域のキャンセル性能を大幅に向上させているが、ANCの副作用としての音質への悪影響は従来同様最小限に抑えたという。
ハンガー、アームの見直しにより密閉度が向上しており、これもANC性能の向上に寄与している。
通話用マイクは左右2カ所、計4つのマイクを使用。ビームフォーミング技術と次世代の音声処理アルゴリズムによって、クリアな通話品質を実現したという。
Bluetoothのコーデックは、SBC、AAC、aptX HD、aptX Classic、aptX Lossless、aptX Adaptive(96kHz/24bit)。LC3やAuracastにもアップデートで対応予定。USBケーブルでの有線接続にも対応。その場合は、96kHz/24bitまでのデータを再生できる。
さらに、Bowers&Wilkins独自の空間オーディオ技術も、今後のアップデートで追加する予定。
「Bowers&Wilkins Music」アプリを使い、設定や操作方法のカスタマイズが可能。音楽サービスのダイレクト・ストリーミングにも対応する。また、カスタマイズ可能な5バンドイコライザーも用意。今後のアップデートで、最大10個のプリセット保存機能も追加する。
2時間の充電で30時間の使用が可能、15分の充電で7時間使用できる急速充電にも対応する。
音を聴いてみる
発表会において、短時間ではあるが試聴できたので、ファーストインプレッションをお届けする。
音を聴く前に、手にして感じるのは「薄くなった」という事だ。Px7 S3が登場した時に、大幅に薄くなったイヤーカップに驚いたが、Px8 S2もそれとほぼ同じ薄さになった。
Px8はラグジュアリーなデザインが特徴的だが、薄型化した事で、そこにスタイリッシュさも加わった印象。装着した時のフォルムもスリムになるため、この進化は歓迎したい。
また、イヤーカップの周囲の部分など、指が触れる部分にしっとりとした質感のナッパレザーが使われているため、触れるたびに高級なものに触っているという心地よさがある。アーム部分から、内部のケーブルが見えるのもおしゃれだ。
気になるのはPx8から、音がどう変わったかという部分だ。
まず、イヤーカップがスリムになった弊害はあるかを聴き比べてみたが、音の広がりへの影響はまったく感じられない。というか、Px8 S2の方がSN比が良く、よりクリアな音になり、音の余韻が広がる様子が遠くまで見通せるようになっているため、ハウジングが薄くなったのPx8 S2の方が空間が広くなったように聴こえる。
前モデルPx8最大の特徴は、カーボンコーン・ドライブユニットを採用した、色付けの少ない、ナチュラルなサウンドだったが、同じ振動板素材を使っているPx8 S2でも、同じように人の声の自然さ、アコースティックギターの木の響きのリアルさなどを実感できる。
では、音も同じなのかというと、そうではない。Px8 S2はそのナチュラルさに、スピード感が加わり、とにかくトランジェントが大幅に良くなっている。
「ダイアナ・クラール/月とてもなく」で聴き比べると、ボーカルの口の開閉するかすかな音や、歌い出す直前に「スッ」と吸い込むブレスなどの微細な音が、Px8 S2の方が鋭く、ハッキリ聴こえてドキッとする。
「米津玄師/KICK BACK」のような激しい楽曲でも、Px8 S2の方が、ベースがソリッドで、ドラムにも疾走感がある。かといって、エッジを無理やり立たせた、誇張された音ではなく、あくまでナチュラルさは維持されている。“しなやかさとハイスピードの両立”がPx8 S2の特徴と言えそうだ。
こうした部分が鮮烈であるため、一聴すると腰高な印象を受けるが、じっくり聴くと、ハイスピードな重低音もしっかり出ており、全体のバランスも良好。ゆったりとした曲も、激しい曲も、どちらも楽しめる万能なハイエンドモデルに進化した印象だ。