ボーズ、ノイズキャンセル能力高めた「QuietComfort15」

-直販39,900円。QC-2後継。NC用マイクを外側にも搭載


QC-15を手にするゼネラルマネージャーの栗山譲二氏

9月30日発売

直販価格:39,900円

 ボーズ株式会社は、ノイズキャンセリング(NC)ヘッドフォンの新モデル「QuietComfort15」(クワイアットコンフォート15)」(QC-15)を9月30日に発売する。直営店、および直販サイトのみでの販売となっており、直販価格は39,900円。

QuietComfort15

 ボーズのNCヘッドフォンは耳を覆うタイプの「QuietComfort2」(QC-2/直販41,790円)と、耳乗せ型でハウジングがコンパクトな「QuietComfort3」(QC-3/直販47,250円)をラインナップしていたが、「QuietComfort15」は「QuietComfort2」の後継モデルとなり、ハウジングのサイズは「QC-2」とほぼ同じ。価格が41,790円から39,900円と1,890円値下げされている。なお、「QC-2」は販売終了となる。

 「QC-15」の特徴は、ノイズキャンセリング能力を「QC-2」よりも高めたこと。「QC-2」はイヤーカップ内部に騒音を検出するマイクを内蔵していたが、「QC-15」ではハウジングの外側にもマイクを追加。ハウジングにマイク穴が新設されている。さらに、複数のマイクを用いるためのNCアルゴリズムや回路自体も改良。より精密に騒音を検出・分析するという。

 NC機能の詳細は非公開だが、ボーズ本社のプロダクトマーケティングマネージャー Denise Celuch氏によれば「マイクの設置位置だけを見ると、皆さんは(マイクをユニット側に配置する)フィードバック方式や(マイクを外側に配置する)フィードフォワード方式などを想像されると思いますが、QC-15ではNC回路が内側と外側それぞれのマイクと連動し、個別に機能し、内側と外側のコンビネーションで高いNC能力を実現しています。これは一般に知られている方式とは異なる、独自の方式」だという。さらに、NC機能が働く周波数帯域も、従来よりも広いレンジで作用するようになっている。

 イヤーパッドも新開発のものを使っており、装着感とパッシブノイズキャンセル能力(遮音性)も向上。人間工学に基づいた設計を採用している。 

ハウジング外側にマイク穴が新設された手前がQC-15、奥がQC-2左がQC-15、右がQC-2
左がQC-15、右がQC-2のイヤーパッド。肌触りが若干異なるQC-2のNC機能概念図QC-15の概念図。ハウジングの外側にもマイクを備えた

 音質の面では、独自の「アクティブ・イコライゼーション」により、電気的に音質を補正。楽器やボーカルを忠実に再生できるという。さらに、独自の「トライポート・テクノロジー」も採用し、ハウジングに設けた小さなポートでイヤーカップ内部の空気質量をコントロール。低域の再生能力を高めた。なお、従来モデルと同様にNC機能OFF時に音楽をスルー出力する事はできない。

 ステレオミニの入力ケーブルは片出しで、着脱可能。ヘッドフォン部だけで、NC機能のみを使用することもできる。電源は単4電池1本で、アルカリ電池では約35時間の使用が可能。重量は電池を含め、190gに抑えている。本体は折りたたみ可能で、新設計のキャリングケースや航空機用プラグアダプタが付属する。

ステレオミニの入力ケーブルは着脱可能入力プラグ部電源は単4電池1本を使用する


■ QC-2が一気にQC-15になった理由

 会場では飛行機の騒音を擬似的に流し、従来モデルのQC-2と、NC機能を聞き比べるデモを実施。「ゴォー」というジェットエンジンの爆音が、QC-15を装着した段階でかなり低減され、NC機能をONにすると中低域が綺麗に消え、胸が圧迫されるような音圧も感じなくなる。高域の「サーッ」という音がわずかに残る程度で、“うるさい”という印象がゼロになる。QC-2も良好なNC性能だが、QC-15と比べると高域だけでなく中高域も残ってしまい、「コォー」っと篭もった響きが耳についた。

 発表会では、'78年にボーズ博士が飛行機の中で、音楽が騒音にかき消される体験をし、飛行機の中でノイズキャンセリング技術の基本コンセプトと数学的根拠を導き出し、帰国後すぐに研究を開始したエピソードを紹介。そうして作られたNCヘッドフォンのプロトタイプが無給油世界一周を実現した「ボイジャー」のパイロットの耳を守った事や、米軍の航空機や軍用車用ヘルメットにも技術を供与した事など、30年に渡る同社のNC技術の歩みが説明された。

 民生向けの初号機「QuietComfort」は2000年(日本では2001年)に発売。翌年にiPodが登場する。広報宣伝マネージャーの富藤元一氏は「当時、ノイズキャンセルという概念が市場に無い中で発表した。それから10年弱で、世の中に数多くのNCヘッドフォンが登場し、新しいカテゴリが作られた」と語り、NC市場開拓者としての存在感をアピール。

 ゼネラルマネージャーの栗山譲二氏は、「飛行機の中だけでなく、9年のあいだに新幹線や通勤電車、バスなど、移動中のノイズから来るストレスを軽減してきた。そしてオフィスや家庭でもさらなる静寂が得られ、仮想的な個室を作りたいという多くのニーズの中で愛用されている」と、利用シーンの拡大を紹介した。

発表会場に飛行機の騒音を流し、QC-2とQC-15のNC性能を聞き比べるデモも行なわれた同社のNC技術の取り組みは、'78年からスタートしている右が飛行機やヘリコプターのパイロット用に発売されているAviation Headset X

左がボーズ本社プロダクトマーケティングマネージャー Denise Celuch氏
 ボーズ本社プロダクトマーケティングマネージャー Denise Celuch氏は、QC-15について「ボーズ史上最高の静寂を実現する、最高性能のヘッドフォン」と紹介。開発にあたっては「価格を上げることなく飛躍的にNC機能を向上させるのが難しかった」という。また、従来のQC-2からQC-15へと、型番が一気に上がった事については「アクティブ/パッシブノイズキャンセルの両面で、ただの向上ではなく、飛躍的な性能向上を遂げたため、その“飛躍”を表現するために“2”から“15”へ一気に上げた」という。

 また、他社のようにノイズキャンセル能力を%表示で示さない理由については「数値ではなく、皆さん自身の耳で、体験で、(NC機能の高さを)判断して欲しいと思っているからです」と説明。「今回のQC-15で、競争の激しいNC市場において、これまでのグローバルなリーダーシップを維持するだけでなく、一歩先に進んだ性能を実現したと思っている」と語り、新製品に対する自信を見せた。


(2009年 9月 30日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]