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CESは「家電」から「テクノロジー」へ。VRや高音質配信など'16年のトレンドは?
(2016/1/13 09:00)
世界最大規模のコンシューマエレクトロニクス展示会「CES 2016」が米国ラスベガスで1月6日~9日(現地時間)に行なわれた。会場はLas Vegas Convention Center(LVCC)と、Westgate、Mandalay Bay Resort & Casino、The Venetian、Las Vegas Sands。
主催団体の名称は、昨年までのConsumer Electronics Association(CEA/全米家電協会)から、Consumer Technology Association(CTA/全米民生技術協会)に変わり、イベントの公式名も「CES」という略称のみになった。昨今の情勢を受けてセキュリティが厳しくなり、車輪の付いたトロリーバッグの持ち込みが禁止されたほか、入場時にバッグ内のチェックも行なわれていた。
団体の名称が従来の「Electronics」から「Technology」へと変わったように、対象とする範囲も徐々に広がっている。かつてパナソニックの津賀一宏社長('13年)や、ソニーの平井一夫社長兼CEO('14年)も登壇した開幕日の基調講演を務めたのが、今年はNetflixの共同創業者兼CEOであるリード・ヘイスティングス氏だったことも、“家電からテクノロジー全般へ”フィールドの拡大を象徴する出来事の一つといえる。
4K/HDRの新しい動向。VRにも注目
昨年のCESから、テレビメーカー各社は4Kとハイダイナミックレンジ(HDR)を組み合わせた高画質化が争点になっているが、今年もその傾向が続いている。4Kの「解像度が高い」というメリットよりも、闇夜に輝く花火など明暗差の輝きが一見して分かりやすいといった理由が考えられる。
HDRに関して、多くの人の目を引きつけたのはソニーの液晶テレビ向け新技術「Backlight Master Drive」。海外勢では、昨年に続き量子ドット液晶テレビの「SUHD」を推進するSamsung、有機ELの優位性をアピールするLGという構図は、大きく変わらないようだ。
新しい動きとしては、SamsungやLG、パナソニックなどは、CES開幕前に発表されたUHD Allianceによる4K/HDR認証「Ultra HD Premium」ロゴを取得した製品を発表。一方で、ソニーは「4K」と「HDR」の文字を使った独自のマークを対象製品に添付している。ソニーが独自ロゴを採用する狙いなどは、西田宗千佳氏によるソニービジュアルプロダクツとソニービデオ&サウンドプロダクツの高木一郎社長へのインタビュー記事で解説している。
HDRは、その映像を一度でも観れば違いは分かりやすいものだが、4K/HDRどちらもコンテンツがまだ少なく、一般消費者には伝わりづらい部分もある。ソニーの平井氏に「HDRの普及には何が必要か?」を尋ねたところ「実際に観てもらえるように、販売店との結びつきがこれまで以上に必要だと実感している」と答えている。
もう一つ、今回のCESで欠かせないキーワードは「VR(Virtual Reality)」。会場の多くで、Oculus RiftやGear VRといったヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いたVR映像を体験できるスペースが用意されていた。映像だけでなく、ドルビーやゼンハイザーのような音に関する企業が、VR映像に最適な音声について提案しているのも、新たな動きと言える。
HMD活用に関連する話題では、周囲を360度撮影できるカメラも数多く登場。この分野で先行する「THETA S」に加え、ニコンが「KeyMission 360」という防水/耐衝撃の360度4Kカメラを披露。プロが作る映像以外にも、対応コンテンツの拡大が大きく期待できそうだ。
音楽はTIDALやMQAに注目。アナログレコードも根強い人気
SpotifyやRhapsody、Deezerといった数多くの定額音楽配信サービスが存在する米国では、ハードウェアもこれらのサービスに対応していることが重要な機能となっている。また、日本とは異なる文化として、パーティーなどで同じ楽曲を複数の部屋で同時に流す「マルチルーム」のワイヤレス化も進んでいる。
日本に比べるとまだ認知度が低いハイレゾについては、今後広まるとしても時間はかかりそうという印象。一方でロスレスの定額ストリーミング配信である「TIDAL」への対応が、ポータブル機から据え置きのハイエンドオーディオまで、様々な製品に広がっているようだ。
また、英Meridian Audio(メリディアン)が開発したハイレゾ音源の新たな音声フォーマット「MQA(Master Quality Authenticated)」についても、TIDALへの採用と、オンキヨーのポータブルプレーヤー「DP-X1」やパイオニア「XDP-100R」においてアップデートでの対応が予告されている。CES会場内では、開幕前イベントのCES UnveiledにおけるMQAブースや、ヘッドフォンのAudezeブースでも、DP-X1などを使ってTIDAL/MQA配信の試聴デモが行なわれていた。
デジタルの高音質化が進む一方で、忘れてはいけないのがアナログレコード関連。日本でも少しずつではあるがレコード生産数が増えていく中、先行してアナログブームが来ている米国では、多くのアナログレコードプレーヤーが登場。ソニーがDSD録音できるアナログターンテーブル「PS-HX500」を“ハイレゾ対応”として打ち出したことや、パナソニックのTechnicsターンテーブルの発売概要が決定したことも話題となった。
IoTの裾野もさらに拡大。日本から多くのスタートアップも
様々なモノがネットワークにつながっていく中で、これまで説明してきた大手家電以外の多くの企業が、ネットワークにつながることで生活を便利にするアイディアに富んだ製品を提案している。
開幕前のCES Unveiledや、スタートアップ企業などのIoT製品が多く集まるLas Vegas Sandsの展示フロアには、今年もヘルスケアやスポーツ、ドローンなど様々なジャンルの製品が展示。また、3Dプリンタ関連の展示だけでも約200のブースがあることから、現在も盛り上がりが続いていることがうかがえる。日本企業も、大手からスタートアップまで数多く参加していた。
クラウドファンディングの広がりによって、これまでは日の目を見なかったアイディアが、製品として形になるという機会が拡大。展示ブースの製品を見て「いつ発売されるの?」という記者の質問に対し、「Kickstarterで資金は集まったから、もうすぐだよ」という返答は、もう珍しくはない。一方で、より多くの人の手に渡るということから、最終的な製品としての仕上がりやサポート体制など、全体の質の管理も高いものが求められていく時代へ、既に差し掛かっていることも感じさせる。