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本田雅一のAVTrends

BDプレーヤー新製品選びのポイント

−低価格機は「BD60」が注目。アンプとのセットも選択肢



 夏のボーナス商戦向けに様々な製品が揃った。市場ではエコポイントの溜まる薄型テレビが人気だが、ここでは低価格製品も登場したBlu-ray Discプレーヤーを、価格帯や購入パターンも念頭に置きながら俯瞰してみることにしたい。

 


■ PLAYSTATION 3からの買い換え

 すでにBDプレーヤーを所有しているという読者の中で、もっとも多いのはPLAYSTATION 3(PS3)ユーザーだろう。ゲームユーザーとアニメファンはオーバーラップするというから、売れるBDタイトルがアニメに集中しているのも納得だ。

PLAYSTATION 3

 PS3ユーザーの中には実際にゲームでよく遊ぶ人、PS3をBDプレーヤーやDLNAクライアントなどAV的使い方でしか使っていない人の両方がいると思うが、どちらにせよBDプレーヤーには単一の機能しかないのだから、専用プレーヤーがPS3よりも優れていなければならない。実はこれが最も大きなハードルだ。

 5万円前後で購入できるBDプレーヤーには、PS3よりも高画質な再生が行なえる製品もあるが、反面、PS3よりもBD-J(BDビデオに入っているJavaで作られたプログラム)の読み込みや実行速度が高速なプレーヤーは少ない。

 したがって再生時のインフォメーションを表示するディスプレイがない点や、ゲームコントローラによる操作(別途、BDリモコンを購入することも可能。人によってはゲームコントローラの方が楽に操作できるという人もいるかもしれない)、それにBD再生時の冷却ファンノイズなどが許容できるのであれば、操作性などの快適性はPS3が最も高い。

 よく言われるDVD再生時の画質に関しては、PS3が比較的アニメ系(CGモノを含む)が得意なのに対し、フィルム撮りの実写映画などでは専用プレーヤーの方が有利と感じるものもあるので一概にどちらが優れているかは決めづらい。

 PS3のBD再生機能には、当初、DTS-HDデコードが行なえないなど制限があったが、現在ある制限は1080i収録(24p収録以外のほぼ全部)の市販BDビデオやBDMVコンテンツをI/P変換できないこと以外には制限らしい制限もない。

 従って、あまり積極的には買い換えは勧めないが、これからBD専用プレーヤーが欲しい、あるいはPS3とは別にBD専用のプレーヤーが欲しいということならば、PS3を積極的に選ぶ理由は少なくなってきている。

 


■ 低価格帯はダントツでDMP-BD60

 BDプレーヤーの低価格製品は4〜5万円のレンジにシャープ、ソニー、パイオニア、パナソニックがそれぞれ製品を発売している。このうち今年になってからの新製品はシャープ、パイオニア、パナソニックのものだが、トータルのパフォーマンスでダントツに良いのはパナソニックのDMP-BD60だ。

パナソニック「DMP-BD60」

 海外ではDMP-BD80という機種が発売されており、ワールドワイドで見るとその下位モデルに位置する製品だが、BD80とBD60の違いはテクニクス時代から音質チューニングを行なってきたエンジニアが選んだインシュレータの装備や、電源部の電解コンデンサなどの各種パーツがオーディオグレードか否か、それにアナログ7.1ch出力の有無といった違いぐらいしかない。

 実はこの両者とも筆者は所有しているが、HDMI出力の画質という面では違いは見られない。アナログ映像出力はBD80の方がS/N感が良いが、HDMI出力ならばBD60でも充分。さらにHDMIからの音声出力にも、自社製HDMIトランスミッタに工夫を加えたり、トランスミッタに与えるクロックの精度を高めるなどの工夫を行なうことで、低音に力強さがある。

 わずかにBD60の方が歪みっぽさが強調されるものの、自分でインシュレータを既に持っている人ならば、それを用いたり、あるいはディスクトレイの裏側に振動を抑える対策(たとえば厚手の耐熱テフロンテープを貼るなど)を行なうだけで、かなりBD80に近づけることができる。

「ビエラリンク(LAN)」に対応

 加えて「ビエラリンク(LAN)」に対応しているため、DLNAクライアントとしても利用可能だ。「ビエラリンク(LAN)」対応のDIGAシリーズはもちろん、ソニーのXシリーズなどDLNAサーバー機能を持つレコーダに録画されたコンテンツをネットワーク越しに試せるのだ。MPEG-4 AVC/H.264で再圧縮録画された番組も、DLNA経由での再生は行なえる。

 しかも、理由は明確ではないが、ネットワーク経由で再生させると、デジタル放送のAAC音声がとても良い音になる。実はこのTipsはパナソニックの開発者に伺ったのだが、実際にやってみるとAACの、どこか寂しく5.1チャンネル放送でも音場がスカスカになる音に実体感や音場の空気感が出てくる。BDに焼いた後にBD60で再生しても、ネットワーク経由ほどには良くならない。

 BD-Jの動作もかなり高速な部類で、待ち時間はソニーのBDP-S5000ESと並んで最速クラス。ソニー製プレーヤーにあるフラッシュ再生(数10秒単位で前後に移動する機能)が無いのは残念だが、5万円以下という予算の範囲で選ぶならば、圧倒的にBD60がいい。

 しかもその画質は最上位クラスのプレーヤーに勝るとも劣らない。情報量が多く、クロマ(色情報)がタップリと乗った、堂々とした画質を誇る。DVDは元々が甘い映像の作品にはあまり向かないものの、良好なオーサリングが施された自然画系の市販DVDなどは、これまた非常にいい。

 これが5万円を切って購入できるというのは、かなりお買い得感がある。敢えて難点を言うならば、Deep Colorモードを明示的にオン/オフできないことだろう。音質を重視する場合、Deep Colorは8bitにした方がHDMIのリンクスピードが遅くなるため有利(画質的にもDVDのアップコンバート時以外は失うものはない)なので、この点はなんとかファームウェアなどでの対応を望みたい。

 また、もうひとつ贅沢を言わせてもらうならば、軽量・コンパクトなのは良いとしても、少々外観が寂しい。低価格プレーヤーとはいえ、それでも5万円近い商品だ。高画質・高音質が満足感を高めるとはいえ、ライバル機並の質感は出して欲しいと思う。

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■ AVアンプとセットで変えるなら「BDP-LX52」

 一方、AVアンプとセットで買い換えを検討できるようならば、パイオニアのBDP-LX52がいい。AVアンプのVSA-LX52と組み合わせたときの音質は、HDMI音声の低域の力感や音場を埋める空気感、音の質感が喪失しがちな事に頭を悩ませてきたAVファンに対するパイオニアの明確な答えだ。

パイオニア「BDP-LX52」 BDP-LX52とのセット利用がお薦めのAVアンプ「VSA-LX52」

 この二つは組み合わせることでPQLSマルチサラウンドという機能が動作する。これはHDMIのCECコントロールを応用することで、2台の機器間で音声データのフローコントロールを行ない、音声データの伝送時ジッターを極力排除する仕組みだ。

 よく似た機能はすでに昨年末のモデルにも搭載されていたが、PQLSマルチサラウンドがユニークなのは、映像と共に送る音声データにもジッター排除の機能が働くことだ。従来は音声データのバッファリングを行なっていたが、バッファリングを行なうと出音タイミングが遅れてしまい、映像と同期できない。ところが、PQLSマルチサラウンドでは、その部分をリアルタイムで行なっているため、映像との時間的なズレが起こらない。

 ただし、二つの制限がある。ひとつはプレーヤー側で音声をデコードし、リニアPCM音声として出力しなければならないこと。この際、若干音量が下がるがLX52はすべての音声フォーマットを自己デコードできるので、再生できないフォーマットはない。もうひとつの制限は、プレーヤーとAVアンプの両方がPQLSマルチサラウンドに対応していなければならないことだ。

 “HDMIの音質は〜”といっても、様々な切り口があるため一概には言えない部分もあるが、音場を埋める細かな音の数や音場の空気感、それに音像が表現する質感の描き分けの明瞭さ、音の硬さなどは、PQLSマルチサラウンドを用いることで大幅に改善される。こればかりは同様にジッターレス伝送を目指したDENON LINK 4thぐらいしか対抗馬がない。両LX52はセットで購入しても20万円もしない。この価格クラスで括るのであれば、プレーヤーだけ(あるいはAVアンプだけ)に予算を割り振るよりも、LX52セットの方がHDMI音声の質だけで言えば、良い結果を得られる。

 この組み合わせで利用する場合、AVアンプのアナログ入力やパワーアンプの質は、10万円台前半の価格クラスから大きく逸脱するものではないので、アナログ出力を持つ音楽プレーヤーなどを別途接続して楽しみたいという方には、別の選択肢の方が良いかもしれない。しかし、映像ソフトの再生が使い方の大部分というのであれば勧めたい。

 なお、LX52の画質や動作速度だが、画質に関してはBDP-LX71と同等、あるいは一部はそれを超える完成度がある。デバイスなどは同等だが、画質のチューニングはさらに進んでおり、情報量がたっぷり出てくるタイプではないが、DeepColorを利用してガンマカーブを丁寧に描き、階調表現も滑らかで、柔らかくホッとする優しい画質だ。特にパイオニア製プラズマテレビのユーザー向けには、専用のチューニングが施されている。

 一方、動作速度に関しては、BD-Jにおけるテクスチャデータなどの読み込みがやや緩慢だが、一度動き始めてからの遅さはあまり感じない。プラットフォームとしているLSIなどは上位機種と同じもようだ。

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■ 上位3機種は目的と好みに応じて

 さて、さらに上位のモデルとなると、選択肢は三つに絞られる。パイオニア「BDP-LX91」、デノン「DVD-A1UD」、ソニー「BDP-S5000ES」の3機種だ。もっとも、価格はBDP-S5000ESがワンランクほど安く、パイオニアとデノンの価格差も定価ベースで10万円以上の開きがある。また、まだ未発売ではあるが、マランツがDVD-A1UDとプラットフォームは同じくするものの、かなり内容が異なっている「UD9004」の発売を予定していることも忘れてはならない。

パイオニア「BDP-LX91」 デノン「DVD-A1UD」 ソニー「BDP-S5000ES」

 どの機種が良い選択か、というよりは、どの製品が自分向きか? で悩んでみるといいだろう。このクラスの製品を望む読者なら、自分で選択すべき機種を選ぶだけの経験も持っているはずだ。

 筆者は現在、パナソニックのDMP-BD80とソニーのBDP-S5000ESを使っている。上位3モデルの中でこの機種を選んだ理由は、仕事上、多くのBDタイトルを評価したり、あるいは次々にデモンストレーションする機会がとても多いからだ。

 BDP-S5000ESはパナソニック製プレーヤーと同等か、あるいはやや高速で、BDプレーヤーとしては最もサクサクと動く。画質は情報量をタップリと見せるタイプだ。ただし、内蔵映像プロセッサCREASが提供する画質エンハンス機能は、すべてオフにして使用している。またアナログ映像出力がひじょうに優れており、長尺ケーブルのイコライジング機能も持っているので、アナログ入力で映像機器を接続したい人にはいいプレーヤーだ。

 ただし他の2機種が持っている、映像と音声をセパレートで二つのHDMIから出力する機能はない。反対にBDP-LX91の長所は、まさにそこにある。セパレート出力時の音質と映像ソフト再生時のアナログ音声出力の質は、この3機種で最も好ましい。画質はLX52と同様で階調を丁寧に見せるソフトタッチである。やや遅めの動きも、画質・音質優先ならば許容範囲だ。

 新製品のDVD-A1UDは、まずSACD/DVD-Audioのアナログマルチチャンネル出力が、音楽専用のプレーヤー並に整えられていることに驚いた。PureAudioモードにセットしてやれば、明るく快活で小気味よい音を鳴らしてくれる。これならばマルチプレーヤー化の意味があると思わせる実力だ。

 ただしBDビデオソフトとなると、アナログ音声出力の質がやや落ちてくる。その分、HDMI越しの音質が良いのだが、もしデノンリンク4th対応のAVセンターを所有しているなら、さらに素晴らしい音が期待できる。このあたりはパイオニアのPQLSマルチサラウンド対応機器と事情は同じ。残念ながら同一メーカー機器同士のプライベートリンクにはなるが、HDMIが内在する音質の問題に根本的に対処ができる。

 画質はどん欲に映像ディスクから情報を穿り出すように顕わにする。パイオニアのBDプレーヤーとは対極にある画質だ。こればかりは好みもあるので、どちらが良いとは言わないが、前作のDVD-3800BDに比べると、映像処理チップは同じ(システムLSIは異なる)ながら、多いに進化していると思う。

マランツ「UD9004」

 マランツの「UD9004」が気になっている方もいるかもしれないが、こちらはまだ筆者も試聴していない。とはいえ、アナログ音声出力の質にこだわり抜き、シャシーや電源、アナログ出力のラインアンプなど、様々な部分でデノン製とは異なるアプローチで開発しているというから、同じプラットフォームでも全く異なるテイストの音質・画質に仕上がっているだろうと予想している。

 かつて高音質で知られたDV9600というDVDプレーヤがマランツにはあった。そのモデルはマランツのピュアオーディオ用プレーヤの開発陣が加わって音決めをしたとか。今回も同様に同社ピュアオーディオの血が注ぎ込まれているというから、その成果に期待したいところだ。


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(2009年 7月 10日)


本田雅一
 (ほんだ まさかず) 
 PCハードウェアのトレンドから企業向けネットワーク製品、アプリケーションソフトウェア、Web関連サービスなど、テクノロジ関連の取材記事・コラムを執筆するほか、デジタルカメラ関連のコラムやインタビュー、経済誌への市場分析記事などを担当している。
 AV関係では次世代光ディスク関連の動向や映像圧縮技術、製品評論をインターネット、専門誌で展開。日本で発売されているテレビ、プロジェクタ、AVアンプ、レコーダなどの主要製品は、そのほとんどを試聴している。
 仕事がら映像機器やソフトを解析的に見る事が多いが、本人曰く「根っからのオーディオ機器好き」。ディスプレイは映像エンターテイメントは投写型、情報系は直視型と使い分け、SACDやDVD-Audioを愛しつつも、ポピュラー系は携帯型デジタルオーディオで楽しむなど、その場に応じて幅広くAVコンテンツを楽しんでいる。

[Reported by 本田雅一]

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