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本田雅一のAVTrends

“3D”で勝負をかける2010年のパナソニック

「予想を超える盛り上がり」。新PDPで2D画質も向上



 パナソニック・ノースアメリカ社長の北島嗣郎氏によると、昨年、パナソニックの北米におけるテレビセールスは絶好調。4〜12月にかけてコンスタントに良い数字が出続け、前年比で50%アップという業界平均を大きく超える成長を果たしたという。

 北米での成功の秘訣は、北島氏がパナソニック・ノースアメリカ社長に就任以来、継続して取り組んできた顧客タイプごとにターゲットを絞り込み、各ターゲットに対して異なる製品を提供する戦略が功を奏しているためだ。

 好調なビジネス成果を背景に、3Dで勝負をかける今年のパナソニックについて、別途行なったパナソニックAVCネットワークス社高画質・高音質研究開発センター所長の宮井氏への取材も織りまぜながら話を進めて行きたい。


■ 液晶テレビの発売で売上を積み上げ

 パナソニックが北米市場で好調なテレビのセールスを実現した背景には、冒頭に述べたように多民族国家であるアメリカに対応した商品展開を行なった面が大きいと北島氏は話す。

パナソニック・ノースアメリカ社長の北島嗣郎氏
 たとえばベストバイやシアーズといった、全米規模の大手量販店には機能やデザインはしっかりと作り込むものの、パネルのコストを抑えたお買い得モデル。説明して売り込むことができる地方量販店には、説明型のより高機能、高画質な高性能・高機能モデルを用意し、コスコやターゲットといった日本でいうスーパーマーケットのようなタイプの販売店にはパネルコストだけでなく、機能も含めてベーシックな作りの製品を流すといった展開だ。

 各流通ごとに異なるモデルを用意しているので、開発側の負担は増加したが、それよりも売上増加への貢献の方が大きかった。

 さらに液晶テレビを北米において本格的に扱い始めた事も、全体の出荷数を押し上げる要因になっている。なぜなら液晶テレビを発売しても、同クラスのプラズマテレビの売上には全く影響がなかったためだ。

 たとえば昨年、パナソニックは北米に日本では発売していない42インチ液晶テレビを発売した。米国では映画好きが、より映画を楽しめるディスプレイとしてプラズマテレビを好んで指名買いしているが、一方でそれ以外の人たちは液晶テレビとプラズマテレビを比較して良い方を買っているのではなく、液晶テレビ決め打ちで購入する傾向が強いという調査結果が出たためだ。

 パナソニック製42インチ液晶テレビは、42インチプラズマテレビと全く同じ価格で販売したにも関わらず、液晶が売れた分だけ売上が上乗せされ、プラズマテレビの売上は全く変化しなかった。このため今年は液晶テレビのラインナップを増やしていくつもりだという。

 50インチクラスの液晶テレビに関しても「42インチクラスと同様に、プラズマと液晶ではユーザーのニーズが明らかに異なるのであれば、ぜひ、北米パナソニックとしても50インチクラスの液晶テレビを扱っていきたい」と話した。日本では事情が異なるだろうが、北米では液晶とプラズマは直接的なライバル関係というよりも、異なるユーザー層に訴求する別の製品という捉えられ方をしはじめているようだ。


■ 3Dの盛り上がりは予想以上

賑わうパナソニックブース。中でも3D展示への注目は高い
 現在の3Dブームは完全に北米市場先行のトレンドで、北米における3D映画の流行に端を発して、3D映画で新しい映像の可能性を感じた人たちが、今度は3Dテレビに期待するという流れがある。

 もっとも3D映像技術に可能性を見て、真っ先に業界をリードしてきたパナソニックも、予想だにしなかったほど、北米での反応は良いという。特にこのCESでラスベガス入してからは、それまで懐疑的な意見を言っていた流通側も、3Dディスプレイに肯定的になっているという。

 映画「アバター」が過去最高を上回る興行成績を期待するほどのヒット作品となり、各家電メーカーが製品を持ち寄るとともに、テレビ業界までもが3Dへと積極的になっていることがハッキリと関係者の目に見えてきたため、ブームが加熱し、火がついてしまったからだ。

 たとえば「アバターを3Dのスクリーンで見た人たちに、この2週間、出口調査で3D Blu-rayとして出てきたら、プレーヤーとソフトを欲しいと思うか? と尋ねると、7割の人が欲しい、あるいはぜひ買いたいと答えた。3Dに対して、この国の人たちはとても前向きなんですよ」と北島氏。

 また放送に関してはDirecTVとパナソニックの提携が発表された。当初は「3Dカメラを貸し出すから3D番組を撮ってみてよとお願いしていたのですが、3Dの盛り上がりが高まるにつれ、放送局側から積極的にアプローチするようになってきました。自分たちだけ、新しい行き先のバスに乗り遅れたくないという気持ちに、業界全体がなってきてます。CESの入場者も昨年より全体に減っているが、3Dを展示しているところだけは昨年よりも人の密度が高いんです(北島氏)」

映画やスポーツ、テレビ放送など、様々なコンテンツで3Dが体験できるブース構成となっている

 こうしたCESでの熱気に当てられたのは、実は家電流通幹部たちだ。当初は売上に繋がらないと冷めた見方をしていたが、ESPNとDirecTVが3D放送を始めるとアナウンスし、CESが始まってその熱狂を肌で感じると、ディーラー自身が3Dに対して積極的な販売を申し出てきたという。映画スタジオ、放送局、電機メーカー、それに販売店。これら関係者が同じ方向を向いている。

 当然、3Dビジネスの可能性を信じて準備を進めてきたのだが、それにしても、ここまで盛り上がるとは、北島氏も予想していなかったようだ。


■ 面書き換えのプラズマは3D向き

 さて、そもそもパナソニックが3D映像技術に真っ先に乗り込んだのは、この技術がプラズマディスプレイに有利だったからだ。加えて3D映像がトレンドになれば、よりサイズの大きなディスプレイへの欲求が高まることも、パナソニックにとって有益と考えていたようだ。

 特にパナソニックが重視しているのは、"3Dの質"である。質の低い3D体験を覚えてしまうと、再評価してもらえるまでに時間がかかる。故に市場が生まれようとしているこの時期こそ、画質で勝負しなければならないというのが、パナソニック関係者全員が口にする言葉である。

パナソニック AVCネットワークス社技術統括センター高画質高音質開発センター所長 宮井宏氏
 パナソニック AVCネットワークス社技術統括センター高画質高音質開発センター所長 宮井宏氏は「プラズマディスプレイの良さは、画面全体すべての画素が同時発光していること」だと話す。液晶のように順次走査しながら書き換える必要がないため、発光タイミングに合わせて3Dメガネのシャッター切り替えタイミングをギリギリまで詰めることができる。

 さらにもともと応答性の高いプラズマディスプレイを、蛍光体を改良することでさらに高めている。従来比で1/4という超短残光の蛍光体を用いることで、3D時のクロストークを大幅に抑え、面書き換えというプラズマの特徴と合わせ、高い品位の3D表示を実現した。

 CESに持ち込んでいるものは製品版ではなく、まだ開発目標には達していないバージョンとのことだが、新設計のLSIとの組み合わせて追い込みを行ない、さらに品位を高めていく。実際に見た印象でも、液晶パネルを用いたテレビに比べると、クロストークの少なさやフリッカー感の少なさなどトータルで優れているように見えた。

 液晶に比べての暗さも、実際の映像からはさほど感じさせない。デモ用に輝度を高めている可能性もあるが、技術的にも「3Dメガネの液晶シャッターを開口している時間が長いため、液晶に比べて輝度の面で不利ということはない(宮井氏)」という。

 さらにクロストークだけでなく、3D映像の画質という観点でも、500万:1を実現する新型パネルの黒沈みが、3Dにおける奥行き感を高める効果を発揮するという。黒が黒く表現できなければ、3Dの奥行き感が減退するという指摘だが、なるほどそういう観点で各社の映像を見ると、黒が引き締まったディスプレイほど、3D映像の質が高く見える。

 もっとも3D用に開発された新型プラズマパネルは、2Dの画質も同時に引き上げる。あるいは3Dコンテンツの製作動向が見えない日本では、2D画質向上の方が興味あるという人も多いのではないだろうか。


■ 3D化のための性能強化があらゆる性能を改善

 パナソニックは昨年、全プラズマパネルをシングルスキャン駆動とした。その方がコストが安くなり、消費電力も抑えることができるからだ。シングルスキャンでもサブフィールド込で600Hzの駆動ができるため、60Hz表示時にも10bitの階調表現を確保できる。しかし3D表示では120Hz表示が必要になるため、単純に3D化しただけでは5bitの階調しか得られない。

 実際には左右の絵を合成して見ることになるため、5bitそのままというわけではないが、それでも階調不足は明らかだ。そこで3D対応の新型パネルでは、より高速な駆動を可能にしており、3D表示時の諧調表現低下を防いでいる。

 この効果は2D表示においても効果的になる見込みだ。現在のところ、新型パネルの特性をどのように2D画質に生かすか、サブフィールドの設計を含めて未定とのことだが、基本的には「階調性を高める方向で開発している(宮井氏)」とのこと。500万:1に拡大したコントラストを活かすためにも、階調の多さが必要不可欠だからだ。

 この新型パネル。3D対応であることを抜きにしても、非常に注目度は高い。パイオニア「KURO」撤退以来、久々にこれぞプラズマ! と言える画質のプラズマディスプレイが登場することに期待したい。 

(2010年 1月 9日)


本田雅一
 (ほんだ まさかず) 
 PCハードウェアのトレンドから企業向けネットワーク製品、アプリケーションソフトウェア、Web関連サービスなど、テクノロジ関連の取材記事・コラムを執筆するほか、デジタルカメラ関連のコラムやインタビュー、経済誌への市場分析記事などを担当している。
 AV関係では次世代光ディスク関連の動向や映像圧縮技術、製品評論をインターネット、専門誌で展開。日本で発売されているテレビ、プロジェクタ、AVアンプ、レコーダなどの主要製品は、そのほとんどを試聴している。
 仕事がら映像機器やソフトを解析的に見る事が多いが、本人曰く「根っからのオーディオ機器好き」。ディスプレイは映像エンターテイメントは投写型、情報系は直視型と使い分け、SACDやDVD-Audioを愛しつつも、ポピュラー系は携帯型デジタルオーディオで楽しむなど、その場に応じて幅広くAVコンテンツを楽しんでいる。

[Reported by 本田雅一]

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