西川善司の大画面☆マニア

第210回

手に届く? リアル4Kプロジェクタ。ソニー「VPL-VW315」

HDRにこだわらなければ狙い目?

 4Kプロジェクタも、「ウルトラハイエンド的な位置付けの製品」オンリーの時代から、「がんばれば手に届くハイエンド」クラスが登場するようになってきた。その象徴的なモデルが、今回取り上げるソニー「VPL-VW315」だ。

VPL-VW315

 こうしたレビュー記事では、HDR対応で同時発売の上位モデル「VPL-VW515」を評価するケースが多いのだが、今回は、2012年のフルHD機「VPL-HW50ES」ユーザーの筆者が、個人的に買い換え検討モデルとして「VPL-VW315」を想定していたため、あえてこのモデルをお借りして評価を行なうこととした。価格は75万円。

設置性チェック。VW500ES直系だが、レンズメモリーや自動色調調整機能はカット

 本機VPL-VW315は、2013年末に発売された「VPL-VW500ES」の後継下位モデルに位置付けられる。後継上位モデルがHDR対応の「VPL-VW515」(90万円)だ。いずれにせよ、VW315のボディデザインはVW500ESのそれとほぼ同じだ。ソニー4Kプロジェクタのアイデンティティになりつつあるブロンズ色のヒートシンク形状のオーナメントは本機でも継承されている。

中央に投射レンズをあしらった左右対称デザイン。センター決めがしやすい
正方形に近い、やや横長の外形デザイン
背面側にもリモコンの受光部があしらわれる

 外形寸法は495.6×463.6×195.3mm(幅×奥行き×高さ)で、奥行きよりも幅の方が若干大きい、設置占有形状はほぼ正方形に近いフォルムをしている。重さは約14kgで、これもVW500ESと同等だ。

 天吊り金具も、VPLシリーズ定番の天吊り金具の「PSS-H10」(税込80,850円)が使える。8年近く前から設定されている天吊り金具が利用できるのはありがたい。ソニーのフルHD機からの置換え組も安心だ。

 底面側に目をやると投射レンズ側、前面側の底面左右にはネジ式の脚部があしらわれているが、反対の後面側の底面は棒状のゴム足になっている。前部脚部間の距離は約39cm、前脚部がある位置から、後面ゴム足部までは約32cmの距離があった。本棚等の天板に置けなくはないが、奥行きもあり、またボディ後面に1cm以上のクリアランスが必要なので、難度は高い。

 投射レンズの仕様もVPL-VW500ESから変更はなく、電動制御の光学2.06倍ズームレンズ(f21.7-44.7mm/F3.0-4.0)のものが採用される。投射レンズ開口部の直径は約85mmで、ホームシアター機としてはかなりの大口径レンズである。

大口径レンズは埃の付着などが心配されるわけだが、電動開閉シャッターギミックはない(VPL-VW515も同じ)

 100インチ(16:9)の最短投射距離は3.05m、最長投射距離は6.28m。約3mで100インチは最近のホームシアター機では標準的なスペックである。むしろ、ポイントは、投射距離を6m強とっても100インチ画面に映像を収めることができることで、大きめな部屋の後ろに設置しても、比較的自由にスクリーンサイズを選ぶことができる。この辺りは、プロジェクタ製品としては上級機の証と言ったところか。

 レンズ調整は全て電動対応で、フォーカス調整、レンズシフト、ズームも全てリモコンから行なえる。シフト幅は上85%、下80%、左右±31%に対応。下シフトだけ5%小さい点には留意したい。

 シフト量はかなり大きいので、設置自由度は高い。今回の評価では、高さ150cmのラックへ台置き設置したが、下辺が床から50cmほどの高さにあるスクリーンに対し、難なく投射できた。

 やや残念なのは、VPL-VW1000ESから搭載され、VW500ESにも継承された「ピクチャーポジション」ことレンズメモリー機能。上位機のVPL-VW515には搭載されるが、VPL-VW315では省略されてしまった。

 これは少々意外かつ残念だ。VPL-VW315のパネル解像度は、17:9の4,096×2,160ピクセルなので、4Kテレビで採用されている3,840×2,160ピクセルよりも横ピクセル数が多い。なので16:9スクリーンに投射映像を映し出すべく、縦解像度の2,160ピクセルで合わせてフォーカス、ズーム、シフトを調整して投射すると、スクリーンの左右に投射映像が若干はみ出ることになる。

 逆に、シネマスコープサイズの2.35:1スクリーンに横解像度の4,096ピクセルであわせるべく、フォーカス、ズーム、シフトを調整して投射すると、今度は投射映像が上下にはみ出すことになる。

 このように、見るコンテンツごとにフォーカス、ズーム、シフトの調整結果をメモリーしておき、あとから必要なときに呼び出せる機能が「ピクチャーポジション」機能なのだが、VW315では同機能がカットされているため、いちいち手動調整をする必要がある。16:9スクリーン、あるいは2.35:1スクリーンの、どちらかで調整したあとは、そのままその設定で使い続ける……という使い方を想定しているのだろう。

 個人的な要望を言わせてもらえれば4,096×2,160ピクセルの映像パネルを採用するならばピクチャーポジションは付けたままにしておいてほしかった。もし、ピクチャーポジションをカットするならば映像パネルを3,840×2,160ピクセルにして、コスト削減に挑んで欲しかったように思う。まぁ、4KのSXRDパネルのラインナップ上難しいのかもしれないが。

ランプ輝度は「ランプコントロール」設定で変更可能

 VW500ESとの比較では、「オートキャリブレーション」機能もカットされた。

 プロジェクタは光源ランプの経年劣化でホワイト(カラー)バランスが徐々に基準スペックからずれていく。色ダイナミックレンジが狭まることとと引き替えではあるが、経年劣化による色調のズレをデジタル処理で基準に戻す機能が、オートキャリブレーション機能になる。これは、レンズメモリーよりも使用頻度の低い機能なので、コスト削減の観点からすればカットは致し方ない。なお、同機能は上位のVPL-VW515には搭載されている。

 光源ランプは、出力225Wの高圧水銀ランプ「LMP-H220」を採用する。価格は4万円で、VPL-VW500ESの「LMP-H260」(47,500円)やVW515の「LMP-H280」(47,500円)よりも若干安価である。VW515は輝度スペックが1,800ルーメンで、VW315の1,500ルーメンよりも高輝度なので「その差」ということなのだろう。

光源ランプは本体上面カバーを開けてユーザー交換が可能
左右前面のスリット排気口

 今期のソニープロジェクタは、フルHD機の「VPL-HW60」も含めて、全てランプ寿命が長寿命化しているのもポイントだ。VW315では、公称6,000時間になっており、一昔前のプロジェクタの3倍ほど長寿命になっている。これはありがたい進化ポイントだ。

 騒音レベルは、低輝度モードで公称値で26dB。高輝度モードでは若干、騒音レベルが高くなるが、1メートルも離れてしまえばそれほど気にはならない。

 エアーフローは背面吸気の前面排気。側面には吸排気口はなし。前面の排気口も角度がついているので投射軸に埃が吹き付けられる心配もない。この辺りはホームシアター機を作り慣れているソニーだけあってよくデザインされている。消費電力は350W。

接続性チェック〜HDMI 2.0だが、4K/60HzはYUV=4:2:0までの対応

接続端子パネル。HDMI2のみHDCP 2.2対応

 接続端子パネルは本体正面向かって左側にある。先代VW500ESで、アナログビデオ入力が姿を消したが、VW315も同様で、HDMI入力端子が2系統あるのみだ。

 HDMI1、HDMI2の2系統あり、いずれも4K/60Hzの入力に対応したHDMI 2.0仕様となっているものの、4Kコンテンツが要求する著作権保護「HDCP2.2」に対応するのはHDMI2のみだ。

 この他、本機のHDMI入力端子はDeepColor、x.v.Colorにも対応している。ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが販売する「Mastered in 4K」印のブルーレイソフトは色情報がx.v.Color対応で記録されているので、x.v.Color対応はソニーブランドとしては外せない要素だ。超解像処理の「リアリティクリエーション」の「データベース」設定で、ちゃんと「Mastered in 4K」モードを選択できる。

 HDMI 2.0対応と言うことで、NVIDIAのGeForce GTX980(HDMI 2.0対応)を使用して4K解像度の表示適応能力をテストしてみたが、3,840×2,160ピクセル、4,096×2,160ピクセル、いずれの解像度においても60Hz(60fps)では、YUV=420の色差モードでの表示には対応していたが、RGB各8bit(RGB=888)での表示は行なえなかった。これは公称スペックがそうなっているためで、相性問題ではない。

4K/60Hzモード時はYUV=420での表示しか行なえない。さすがに2015年モデルでは対応してほしかった

 ちなみに30Hzモードにすると、3,840×2,160ピクセル、4,096×2,160ピクセルのいずれにおいてもRGB=888の表示が行なえた。

 YUV=420は、輝度解像度はフル解像度の4K(4,096×2,160ピクセル、3,840×2,160ピクセル)だが、色解像度は縦横半分の1/4解像度(2,048×1,080ピクセル、1,920×1,080ピクセル)になってしまう。実際、有彩色で表示させたテキストなどを見てみると、漢字表示などでは圧縮表示のように潰れてしまう。YUV=420だと映像視聴にはさほど気にならないが、PC画面などのグラフィック表示には、品質的にややつらい面がある。

4K/60fpsでの表示。YUV=420までの表示となるためマゼンタの文字に水色の偽色が発生。青色の文字はフルHD相当の圧縮表示のようになってしまうため解読不能に
4K/30fpsでの表示。YUV=444/RGB=888の表示となるため偽色は消え、青色の文字は本来の4K解像度で表示される

 一部テレビ製品では、4K/60Hzにおいて、色解像度もフル4Kで出せるYUV=444やRGB=888モードに対応している製品も出てきている。ソニー4Kプロジェクタもこうした流れに追従してほしいものである。個人的には、PCとの接続時の表示性能を気にしているので、YUV=420表示にしか対応していない点がとても残念。リアル4Kパネル採用機なので、4K/60Hzで色解像度も4Kで表示できるようにして欲しい。

 HDMI階調レベルの設定は、「機能設定」-「ダイナミックレンジ」で、手動設定が行なえる。今回の評価ではPlayStation 4やGeForce GTX980で、「オート」設定が正しく機能していたため、特に手動設定にお世話になることはなかった。なお、手動設定では「リミテッド」(16-235)、「フル」(0-255)の設定に対応する。

HDMI階調レベルの設定は「機能設定」-「ダイナミックレンジ」より行なえる

 LAN端子はネットワーク経由で本機を制御するためのもの。REMOTE(RS-232C)端子もシリアルケーブル経由で本機を制御するためのものだ。USB端子は、ファームウェアアップデート専用のもので、USBメモリ内の映像、写真の表示には対応しない。IR IN端子は赤外線リモコンからの信号を本体に引き込むための端子になる。

 TRIGGER1/2は、本体が電源オン時に特定の設定状態になった時、DC12Vを出力する端子だ。具体的には電動スクリーンの開閉、部屋の電動カーテンの開閉、アナモーフィックレンズの脱着といった用途に応用する。「設置設定」メニューの「トリガ切換」設定で、どういう設定状態の時にどのトリガ端子を駆動するかを関連づけることができる。アスペクトモードの「Vストレッチ」「2.35:1ズーム」を選択したときに、アナモーフィックレンズの脱着を行ないたい時はここで設定する。

「トリガ切換」設定でトリガ端子の動作を定義できる
アナモーフィックレンズは1.24倍、1.32倍のものに対応

操作性チェック〜低遅延モードは、ソニープロジェクタ史上最速約1.0フレーム

 リモコンは、2009年モデルのVPL-VW80から採用されているものと基本的には同一のデザインだ。筆者のVPL-HW50ESのリモコンとはボタン配置までがそっくりで隣接して置いておくとどっちがどっちか分からなくなるほど似ている。ただ、[LIGHT]ボタンを押したときのライトアップ色が、HW50ESのものは青色で、VW315のものは橙色で、この部分の違いで区別できる(笑)。

お馴染みのこのデザインのリモコンも今年でもう6年目。意外に使いやすいので不満はないのだが、買い替え派からは「まだこれなの?」と思われてしまうかも(笑)
お馴染みのメニュー画面

 前機種や上位機で搭載されている動的絞り機構のアドバンスト・アイリスが、VW315では省略されているため、上位機で[ADVANCED IRIS]だったボタン部分が、[CONTRAST ENHANCER]ボタンになっている。

 電源オン操作からHDMI入力の映像が表示されるまでの所要時間は実測で約17.0秒。最近のプロジェクタとしては標準的な速度だ。

 入力切換は、[INPUT]ボタンを押すことで順送り式に切り替わる。順送り式といっても、入力系統が2系統しかないので不満はない。なお、入力切換に掛かる所要時間は約3.0秒であった。

アスペクトモード

 プリセット画調モードの切り替えは、リモコン上部にある各モードに対応する個別ボタンを押すことで、直接切り換えることができる。切り換え所要時間は、切り換え元→切り換え先のモードの組み合わせで変化し、最も短くてほぼ瞬時で、最も長くて約2.0秒であった。

 アスペクトモードは、リモコンの[ASPECT]ボタンを押して順送り式に切り換える方式。切り換え所要時間はほぼゼロ秒だ。

 搭載されているアスペクトモードは、VPL-VW500ESと全く同じ。

モード名 概要
1.85ズーム ビスタサイズ(1.85:1)の映像を縦横比を維持しつつ上下に黒帯を出さずに最大拡大して表示する。3,996×2,160ドット領域を使用して表示する。16:9スクリーンでは左右に映像が若干クリップアウトされる
2.35:1ズーム シネスコサイズ(2.35:1)の映像を縦横比を維持しつつパネルの左右幅を一杯に使って最大表示する。2.35:1映像そのものは4,096×1,742ドット領域を使用して表示されるが、入力映像が16:9映像の場合には上下を若干クリップアウトして4,096×2,160ドット全域に表示を行なう
ノーマル 余計なクリップアウト付き拡大処理を一切せずに映像パネル内に収まるようにアスペクト比を維持しつつ最大表示
ストレッチ 入力された映像が4:3フレームにスクイーズ(圧縮)されたものとして16:9アスペクトに変換して表示
Vストレッチ シネスコサイズ(2.35:1)の映像をアナモフィックレンズ装着状態で正しいアスペクトで見るためのモード。アナモフィックレンズを通したことにより横方向に拡大変形された映像を正しいアスペクトに表示されるように32%ほど縦方向の拡大処理を介入させる。映像表示自体はパネルの4,096×2,160ドット全域を用いる
スクイーズ アナモフィックレンズ装着状態で16:9映像や4:3映像を正しいアスペクトで表示する。アナモフィックレンズを通したことで横方向に拡大変形された映像を正しいアスペクトになるように横方向の縮小処理を介入させる。映像表示自体はパネルの2,908×2,160ドットを使う
昨年、VPL-VW500ES評価時に不満点として挙げた遅延の大きさが改善。「低遅延」モードが追加された

 前モデルのVPL-VW500ESは、画調モードを「ゲーム」に設定しても、60Hz時約6フレームの遅延があったことは、この連載で実測して示した。それを受けてか、VPL-VW315(とVPL-VW515)では、「低遅延」という設定項目が新設された。プリセット画調モード「ゲーム」選択時はデフォルトで「低遅延」モードが有効化される。

 いつものように、「0.2フレーム(3ms)/60Hz」という低表示遅延性能のREGZA 26ZP2と比較して相対遅延を測定してみた。

 測定は1080p/60Hzで実施。結果はプリセット画調モード「リファレンス」で117ms(60fps換算で約7.0フレーム)、低遅延モードが有効化されているプリセット画調モード「ゲーム」ではこれがで17ms(60fps換算で約1.0フレーム)となった。低遅延モードは、確かにアクションゲームプレイでも不満のない低遅延が実現できている。

低遅延モード搭載で、ゲームプレイに不満なし!

画質チェック〜上位機に拮抗する4K画質。動的絞り機構なしのハンデは僅か

 映像パネルは、ソニー独自の反射型液晶パネル「SXRD」で、解像度はDCI(Digital Cinema Initiatives)規格の4Kで、4,096×2,160ピクセルとなっている。パネルサイズは0.74型、ドットピッチは4μm。パネル世代は先代のVPL-VW500ESから変更はないとのことだ。

パネルアライメント調整前
筆者によりパネルアライメント調整後
RGBの色ずれは「パネルアライメント」機能を利用することである程度の調整は可能

 反射型液晶パネルの画素は、画素を仕切る格子筋の幅が極細なのが特徴だが、その幅たるや0.2μmで、画素サイズの約5%程度。画素開口率は90%以上で、100インチ画面サイズでの投射では、スクリーンに近づいて見てもうっすらと見えるか見えないかといった具合。当然、1m〜2m以上の視距離をとった状態では、投射映像に画素の粒状感のようなものはほとんど感じられない。

 直視型の液晶パネルなどでは、RGB(赤緑青)のサブピクセルで1ピクセルが構成されるので、4Kといってもピクセルの顕在感は避けられないが、プロジェクタの4K投射映像はサブピクセル構造のない1ピクセルそれ自身がフルカラー発色する。そのため、投射映像の見た目は、たとえ100インチサイズの大画面であってもピクセル感がほとんど無い、アナログ的なしっとりとした見映えになっている。

 フォーカス精度はまずまず。今回の設置ケースではレンズ左右シフト微量、レンズ上下シフトを下方向に50%くらい使った状態での投射したが、画面中央で合わせると、画面の外周でややずれる印象を受けるが、不満というほどではない。

パネルアライメント調整中の画面。17×9の各ゾーンごとに調整が可能

 今回の機材では、画素ズレがそれなりにあった。ただ、デジタル画像処理で1ピクセル未満の画素ズレを低減させる、ソニープロジェクタでは定番の「パネルアライメント」機能により、見かけ上のズレは低減できる。パネルアライメントは画面全体か、あるいは17×9のゾーンごとの調整もできるため、時間さえ掛ければかなり画素ズレを追い込むことができる。筆者の今回の評価では、画面全体の調整を使い「それなり」のところで妥協したが、オーナーになった際には突き詰めていくといいだろう。

 公称輝度は1,500ルーメン。冒頭でも述べたが、リビングシアター向けの下位モデルは明るさ優先のチューニングにすることが多いが、今期モデルでは上位機VPL-VW515が1,800ルーメンと、より明るくなっている。

 とはいえ、1,500ルーメンもあれば、絶対的な明るさは十分で、蛍光灯照明を一段暗くしただけの明るさで十分に映像の概要は見られるし、「ブライトシネマ」「ブライトTV」などのプリセット画調モードを利用すればWeb画面やプレゼン画面などを表示するにも不満のない明るさだ。

輝度均一性は極めて良好。輝度ムラはほとんど感じられない

 公称コンラスト値は非公開。ソニーは、これまで公称コントラスト値は動的絞り機構(ソニー名:アドバンスト・アイリス)機能を有効化した際のスペック値を公開していた。VW315は、この動的絞り機構を持たないので、この値は非公開というわけだ。以前、SXRDパネル自体のデバイスコントラストは「4,000:1」程度と謳われていたので、同一フレーム内に明部表現と暗部表現が同居した場合でも、このくらいは担保されていると思われる。

 実際に、漆黒表現を含むテスト映像やブルーレイ「ダークナイト」のチャプター23、ジョーカーの尋問シーンなどを視聴して見たが、黒浮きがあるかないかと言えば多少はある。ただ気になるレベルではないし、透過型液晶プロジェクタと比較すれば各段に少ない。

視覚上の黒浮きは「コントラストエンハンサー」でも低減可能

 VW315には動的絞り機構はないが、視覚上、黒浮きを低減させる手立ては用意されている。それが「コントラストエンハンサー」だ。これは、映像の明暗分布、あるいは平均輝度(APL:Average Picture Level)に応じて階調特性を意図的に変調する仕組みで、「切-弱-中-強」と強めの設定にすればするほど、暗部階調をほとんど持ち上げず、明部階調を持ち上げるチューニングが行なわれる。この変調効果の影響で視覚上、明部に引っ張られて黒が締まって見えるのだ。いうなれば透過型液晶プロジェクタのように高輝度側でコントラストを稼ぐチューニングとするのだ。黒浮きが気になる場合は、この機能を活用するといいだろう。

 実際、VPL-VW515のリモコンで[ADVANCED IRIS]となっている箇所のボタンが、VPL-VW315では[CONTRAST ENHANCER]となっていることからも分かるように、どうやら代替機能的な位置づけているようだ。この機能はリモコンからボタン一発で呼び出せるので、黒浮きが気になる場合は、設定を切り換えてみるといい。なお、黒浮き低減を重視するのであれば、ランプ輝度モード(ランプコントロール)を「低」にするのも手だ。ただ、低輝度モードは黒浮きの絶対量は減るが、同時に明部の伸びが減退する点には留意したい。筆者個人としてはランプ輝度モードは「高」のままで、コントラストエンハンサーは「弱」か「中」くらいで十分満足のいく暗部表現ができていると感じる。

コントラストエンハンサー=切
コントラストエンハンサー=弱
コントラストエンハンサー=中
コントラストエンハンサー=強

 発色は光源ランプの進化もあってか、水銀系ランプらしからぬ純度の高い色が出せている。赤は朱に寄らず鮮烈で、青のダイナミックレンジも広い。緑は水銀ランプ特有の黄味の影響が少なく自然だ。肌色はシネマ系の画調モードでは血の気の色味を強く出しているのはVPL-VW500ESの時と同じ。昔は「キセノンランプこそ最良」と呼ばれたものだが、水銀ランプでここまでの色が出せるようになったのであれば、もう不満はない。発色性能は最新の液晶テレビのそれと同等かそれ以上に感じる。

 色ダイナミックレンジも良好で、2色混合のグラデーションも破綻なく美しく、有彩色の黒へのグラデーション表現も、相当に黒い色までもちゃんと色味が表現出来ている。動的絞り機構がない関係で若干の黒浮きはあったとしても、暗色の表現力は非常に優秀である。かなり暗い映像でも、そこに色が乗っていれば色彩感はちゃんと表現される。このあたりは、さすがは最新モデルといった感じだ。

 フルHD(2K)映像を4K化する際に利用されるデータベース型超解像技術の「リアリティクリエーション」は、VPL-VW315にもちゃんと搭載されている。技術的詳細はVPL-VW500ESの回で紹介済みなので本稿では省略するが、SPEが発売している「Mastered in 4K」ブルーレイに対応したデータベースモードと汎用データベースモードの「ノーマル」の2つが用意されており、通常の映像ソースでは後者の方を利用する事になる。

「リアリティクリエーション」設定
「リアリティクリエーション」の「データベース」設定は手動で変更する必要がある。試した感じではRGB入力時には「ノーマル」が強制設定されるようだ

 どちらかと言えば「Mastered in 4K」モードの方が超解像の効き方はマイルドで、「ノーマル」の方が視覚上の解像感は上だ。ただ、「ノーマル」は陰影強調が強すぎるときや、人間の顔のアップで人肌の毛穴の強調が強いと感じる場合もあり、「Mastered in 4K」コンテンツは「Mastered in 4K」モードで楽しんだ方が無難だ。とはいっても相対的に比較すればの話であり、「ノーマル」での効き方自体に不満はない。

映像全体像
リアリティクリエーション=オフ
リアリティクリエーション=オン。オン時は陰影強調、色ディテール顕在化に加え、ジャギーも低減されているのが分かる

 ちなみに、VPL-VW500ESの時にも紹介したが、「Mastered in 4K」ブランドのブルーレイを見るときのソニー奨励設定を本稿でも再掲しておこう。

・「リアリティクリエーション」の「データベース」設定は「Mastered in 4K」に変更する
・「カラースペース」設定は「BT.709」に設定変更する
・「エキスパート」設定の「x.v.Color」設定を「入」設定に変更する

 本機はソニーSXRDの4Kプロジェクタとしてはエントリーモデルだが、補間フレーム挿入型倍速駆動モードには対応している。

 いつものように、補間フレーム生成難度の高い「ダークナイト」のビル群飛行シーンをチェックしてみたが、目立ったエラーは確認されなかった。ソニーはテレビのBRAVIAでも、補間フレーム生成精度は優秀だが、プロジェクタでも安心して常用できる。

「Motionflow」設定で補完フレーム挿入の設定を調整できる。「切」「True Cinema」「インパルス」は補完フレームなしの設定。「Truecinema」はバックライトオフを行なわず72Hz表示にするモード。「インパルス」はこれにバックライトのオンオフ制御を介入させるモード

 4Kテレビ製品では3D映像に未対応の機種も増えている中、VPL-VW315はちゃんと対応している。3Dメガネは「フルHDグラス・イニシアチブ」規格のBluetooth方式に準拠しているので、ソニー純正以外でも規格品であれば使うことができる。今回の評価では、パナソニックの同規格品「TY-ER3D5MW」で試した。ただ、数分に一回ブルブルっと同期がおかしくなることがあったので(電池を交換しても症状変わらず)、純正3Dメガネを購入した方が無難かも知れない。

 いつものようにクロストーク発生条件がシビアな「怪盗グルーの月泥棒」のチャプター13のジェットコースターシーンでチェックしてみたが、クロストークはほぼ最低限で気にならなかった。輝度スペックが1,500ルーメンもある事で、3D映像も比較的明るい。

 なにより、3Dモード時も超解像処理が適用されるのがいい。これは、映像パネルを時分割でずらして疑似4K表示する競合プロジェクタにはない、ソニー4Kプロジェクタならではの強みだ。

 映像鑑賞をしたときのインプレッションも述べておこう。

 フルHDコンテンツとしては今回の評価ではブルーレイ「ミッション・インポッシブル・ローグ・ネイション」をまるまる本機で視聴した。冒頭、相棒のベンジーが草原に隠れて的輸送機の様子を覗うシーンでは、超解像(リアリティクリエーション)をオンにすると密集している細い草の葉が鮮鋭化されて視力が上がったような見映えになるのが面白い。このシーンではブラントがいる司令室にも視点が切り替わるのだが、司令室は暗いためややノイジーな見映えになる。しかし、こうしたノイズが鮮鋭化される様子もなく、司令室の壁のグラデーション表現はそのままグラデーション表現で維持されており、それでいて、ブラントの肌の質感は解像感がちゃんと向上する。映像の局所周波数や時間方向のノイズ成分などを的確に適応型処理して超解像レベルを制御出来ていることが見て取れる。4Kプロジェクタは4Kコンテンツを見てこそとは思うが、フルHDの映像を本機で4K化して見ることにも大きな価値を感じる。

 Channel 4Kで放送された4Kコンテンツのインプレッションも述べておこう。

 視聴したのは、赤いランボルギーニと黄色のフェラーリの名車が日本の峠道を走る映像を収めた「The Legend Cars」だ。

 やや荒れた道に覆い被さるようにして繁る樹木の風景の情報量は圧巻。そうした周波数の高い木々の葉々がスーパーカーの色鮮やかなボディに映り込む情景も見応えがある。主役の2台のイタリアンテイストの赤と黄のボディカラーは「フィルム1」モードの発色が自分の中の記憶色と一致した。

プリセット画調モードのインプレッション

シネマフィルム1
取説によればマスターポジフィルムの色再現を目指した画調と説明されている。彩度がやや高めで、色鮮やかな映像とのマッチングがよい
シネマフィルム2
「シネマフィルム1」からやや落ち着いた色調。コントラストよりも階調性を重視した画調。落ち着いたトーンの映画であればこちら
リファレンス
実質的な標準画質。モニターライクな画調
TV
色温度を7500Kとした液晶テレビライクな画調。バラエティ番組やスポーツ中継との相性がいい
フォト
色温度を5500Kに設定した暖かみのあるホワイトバランスとなる。人肌に暖かみが出る
ゲーム
低遅延モードをデフォルトで有効化したモード。画調としては「TV」に近い
ブライトシネマ
階調を持ち上げた輝度重視の画調。シネマ系とはいいつつも色調は「TV」や「ゲーム」に近い。「ブライトTV」と比較すると、色の破綻は少ない
ブライトTV
実質的なダイナミック画調モードで、色再現性よりは輝度を最優先にチューニングした画調。明るい部屋でとりあえず映像を出したい用途向き

HDR対応が不要であれば狙い目のリアル4Kプロジェクタ

 上下モデルの2ラインナップ構成にしたところから、ソニーの今期のSXRDの4Kプロジェクタからは、ソニーの本気がうかがえる。VPL-VW515は12月時点での実勢価格が90万円前後、VPL-VW315の実勢価格が75万円前後といったところで、価格差は約15万円。

 2006年時、フルHDのSXRDプロジェクタの入門機として登場した「VPL-VW50ES」が73万5,000円だったので、価格的なイメージは今回のVPL-VW315とちょうど重なる。

 「プロジェクタも買い替えるならばそろそろ4Kかな」と思っている筆者のようなユーザーは少なくないはずで、そうした潜在的ユーザーに刺さりそうなのが今回のVW315だ。ポイントは「VW315の絶対的な画質・性能はどうか」という点と、「上位機VW515との価格差をどう捉えるか」にあると考える。

 「絶対的な画質・性能」に関しては、十分だろう。動的絞り機構はないが、そもそもリビングシアターという目的であればどちらかと言えば輝度重視の使い方がメインだし、反射型液晶プロジェクタということで、根本的に黒の沈み込みや暗部階調性能は優秀だ。輝度均一性も優秀で、光学性能や設置性も見劣りはしない。発色も良好で水銀系ランプとは思えないほど、自然で素晴らしかった。レンズメモリー機能のカットは残念だが、16:9(あるいは2.35:1)のアスペクト固定で使うのであれば、さしたる問題ではないかもしれない。

 「価格差」に関しては、VPL-VW515に搭載される「動的絞り機構」「レンズメモリー機能」「自動色調調整機能」「1,800ルーメン」そして「HDR対応」の部分に集約される。ここに納得できればVPL-VW315がお勧めである。動的絞りやレンズメモリーについては前述した通り。自動色調調整は、まああったら便利といったもので、気になったら「調整するか」「ランプを新調すべき時期」と受け止めればいいだろう。

 となると、ポイントは「HDR対応」にありそうだ。HDR表現は、「液晶の直下型バックライト」や「有機ELの自発光画素」のような局所的な明暗制御が出来ないと表現が難しく、プロジェクタで実践する場合は、動的絞り機構と組み合わせることが避けられない。また、HDR表現のため高輝度が必要なので、だからこそVPL-VW515にだけ1,800ルーメンの輝度性能を与えたのであろう。以上のことから、価格差は個人的には「妥当」という印象を抱いている。

 HDRコンテンツは、4Kブルーレイこと「Ultra HD Blu-ray」が出てきて本番を迎えるはず。この部分が気になるのであればその動向を見てからどちらにするかを判断してもいいだろう。

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トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちら