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コメントを重ねてテレビ視聴。ニコニコ実況チューナを試す

アイ・オーのPC用「GV-TV100」。6,615円と価格も魅力


PC用フルセグ/ワンセグチューナ・テレキングこと「GV-TV100」

 東芝の「レグザAppsコネクト」や、PlayStation 3向けの地デジチューナ「torne」でのTwitter連携など、テレビやレコーダにとって、SNSとの連携は見逃せない差異化機能になりつつある。その根底にあるのは「他人のコメントや反応を見ながらテレビを観る面白さ」だ。

 その魅力を最も体現しているサービスと言えば、「ニコニコ動画」だ。ニコ動では、投稿された動画やライヴ配信にコメントするサービスが人気だが、テレビ向けのコメントサービス「ニコニコ実況」も以前から展開しており、2009年11月に正式サービスをスタートしている。放送局別にページが用意され、そこに利用者がテレビを見ながらコメントを書き込み、交流するというものだ。


Webのニコニコ実況。画面は真っ暗で、当然テレビ放送は配信されていない

 しかし、ニコニコ実況自体はテレビ放送をネットで再配信できない。そのため、日付と時刻のみが表示された黒い画面にコメントが流れるだけの表示となる。そのため、PCのブラウザでコメントを見ながら、テレビの画面を交互に見て楽しむ……という、あまりスマートではない使い方になっていた。

 そこで登場したのが、アプリケーションタイプの「ニコニコ実況」(無償でダウンロード可能)。下が透けたウインドウにコメントを表示するアプリで、PCにテレビチューナが接続されている場合、テレビ表示ウインドウに、アプリの透明ウインドウを重ねれば、テレビ映像にコメントを重ねられるというアイデアアプリだ。これにより、まさに“ニコニコ動画っぽく”、テレビを見る事が可能になった。

 ただ、チューナに付属するテレビ表示用アプリと、コメント表示アプリが別々というのはやはりスマートではない。重ねる手間もかかるし、チャンネルを変えたい時には、チューナとコメントの2つのアプリで個別に変えねばならない……。そんな状況を打破すべく11月末から発売が開始されたのが、アイ・オー・データとニワンゴが協力して製品化した、PC用フルセグ/ワンセグチューナ、テレキングこと「GV-TV100」だ。価格は6,615円と、かなり低価格になっている。


 



■業界最小/最軽量

 ニコニコ実況機能の前に、ハードウェアを見てみよう。USB接続のコンパクトな地デジ/ワンセグチューナで、外形寸法は約65.5×23.1×11.5mm(縦×横×厚さ)と手のひらサイズ。重量も約12gで、業界最小/最軽量だという。ロッドアンテナを備えているほか、付属の変換ケーブルで外部アンテナとの接続も可能。環境にもよるが、付属のロッドアンテナは出先などでの使用にして、フルセグを安定して受信したい時は壁のアンテナ端子と接続したり、しっかりした室内アンテナと組み合わせたい。今回は八木アンテナの「DUCA」を窓の近くに置いて使用した。

miniB-CASカードを採用している 厚さは11.5mm アンテナ端子。付属の変換ケーブルでF型プラグと繋ぐ事もできる

 前述の通り、価格は6,615円とフルセグ/ワンセグチューナとしては低価格。アイ・オーの既発売チューナ「GV-MVP/FZ」(11,130円)と比べても、半額とまではいかないが、かなり思い切った価格設定と言える。ニコニコ動画ユーザーには10代の学生なども多いので、気軽に買えるのは嬉しい限りだ。

PCと接続したところ

 だが、価格を抑えているため、削られている機能もある。大きいのは、録画した番組をBDやDVDにダビングする機能だ。また、録画もTS録画のみで、トランスコード機能は無く、「GV-MVP/FZ」のような10倍録画モードは無い。あくまでテレビを視聴し、録画も“観たら消す”という使い方になるだろう。

 ただし、録画した番組を、無線LAN経由でiPhoneやiPadなどのiOS機器や、Androidスマートフォンにダビングする機能は備えている。端末側で専用アプリ「TVPlayer」を利用し、ワンセグ番組のダビングや視聴を行なうお馴染みの仕組みだ。


 



■ニコニコ実況を体験する

 付属ソフトをPCにインストールし、USBチューナを取り付ければ準備完了。使用するソフト名は製品名と同じ「テレキング」だ。起動するとチャンネルスキャン後、シンプルなウインドウが現れる。画面にマウスカーソルを持っていくと、チャンネル切り替えなどの各種機能がオーバーレイ表示される仕様で、画面左側にチャンネル切り替え、下部のメニューから音量調節やダイレクト録画などが可能。詳細な操作・設定は、右クリックして現れるメニューから行なえる。

 この画面ではコメントは表示されていない。コメントを見るには、「ニコニコ実況」モードに切り替える必要がある。切り替えボタンは下部メニューの赤いアイコンで(実)と書いてあるもの。これを押すと、ウインドウ下部にコメント入力バーが登場。見慣れたニコニコ仕様のUIに変化する。右側にコメントウインドウが表示され、このウインドウのタブ内に、ニコニコ動画のIDとパスワードを入力するタブもある。

マウスを合わせると画面下部に現れるメニューバー。(実)と書かれた赤いボタンが、ニコニコ実況機能のON/OFFボタンだ チャンネルは画面左にマウスを合わせると切り替えメニューが表示される 画面下部にコメント欄、右側に最新コメントやNG設定、IDなどを入力するためのタブメニューが表示される

 ニコニコ動画のIDとパスワードを入力すれば、準備完了。なお、入力は一度すればOK。入力しなくてもコメントは表示されるが、自分でコメントする事はできない。ニコニコ実況モードに切り替わると、テレビ画面にコメントがズラズラと流れる。使い方はいたって簡単で、通常のテレビ表示と同じようにチャンネルを切り替えれば、自動的にそのチャンネルへのコメントに切り替わる。

 Core i7 2600K、メモリ16GBのWindows 7 64bit PCでテストしたが、コメントのスクロールは極めて滑らか。CPU負荷率は、起動していない状態で4%、フルセグ視聴で24%、そのままコメントを表示しても24〜25%程度でほとんど変化は無い。ワンセグではコメント有/無し関わらず18%程度。スペックに余裕のあるマシンであれば、ブラウジングなど、他の作業をしながらのコメント付きで表示しても苦にならないだろう。

 コメントを見るだけでなく、もちろん投稿も可能。投稿コメント欄は通常のニコニコ実況と同じようなUIで、文字の色を変えるなどのコマンドも利用できる。他ユーザーのコメントをNG指定する事も可能だ。

コメントの書き込みも当然可能。コマンドも使用できる 詳細な設定や機能は、右クリックメニューから使用可能。ワンセグとフルセグの切り替えもでき、受信状況に応じた自動切り替え機能も備えている

 下部メニューにある赤いボタンを押すと録画ができるが、残念ながらコメントは保存できない。録画した番組を再生するUIでは、そもそもニコニコ実況モードが選べないようになっている。コメントが楽しめるのはリアルタイムの放送だけとなるが、コメント表示が大きな特徴の製品なので、録画した番組もコメント付きで再生したい。今後のバージョンアップや新モデルなどで、実現して欲しいところだ。

チャンネルスキャンが完了したところ。プリセットの複数登録も可能だ 放送局のチャンネルと、ニコニコ実況側の放送局をユーザーが指定し直す事もできる。放送局とコメントの放送局が違う場合なども対処可能だ 録画した番組の再生画面。ニコニコ実況ボタンは表示されない

 



■コメントと一緒にテレビを観る楽しみ

 1週間程度試用してみたが、数分から10分程度の尺が短い動画が多い「ニコニコ動画」と比べると、30分や1時間、時には2時間の映画など、長時間のテレビをコメント付きで観る感覚は、ニコニコ動画とかなり違う。尺が長いと言えば、「ニコニコ生放送」も同じだが、ニコ生では、書きこまれたコメントと配信主が対話するような番組が多く、コメントと無関係に完成しているテレビ番組では、やはりちょっと感覚が異なる。

実際の放送を、コメントと共に表示しているところ

 例えば、バラエティ番組などでは、芸人のボケに、多数ツッコミコメントが表示されたり、爆笑シーンでは「wwww」が画面を埋め尽くし、つられて自分も笑ってしまうなど、テレビの“笑い声効果音”と似た効果がある。また、テレビウインドウの音量を小さくして、PCで別の作業をしていた時に、画面を「wwww」などの文字が急に埋め尽くしたのに気付き、「お、盛り上がってきたのかな?」と、テレビウインドウを前に出してボリュームアップする……という場面もあった。盛り上がりをダイレクトに感知できる、ある種のバロメーターのように使う事もできそうだ。

 旅番組など、のんびりした気分で鑑賞できる番組では、コメントが付くことで、おもろいと言うよりも、「この宿、俺も行ったことあるけど、本当に料理美味しい」とか、「俺の地元www。この蕎麦屋より、近くの○○屋の方が美味しい」などのコメントが入り、「へぇー」と、付加情報的に楽しむことができる。

表示ウインドウを最大化したところ。なお、以下のスクリーンショットでは、あえてテレビ画面はキャプチャしていない 右側のメニューを消して、映像とコメントだけを画面いっぱいに表示する事もできる

 逆に、重厚なドラマなどは、画面が緊迫しているにもかかわらず「今の演技はどうなのよ」、「まばたきが多すぎるwww」、「(子役に対して)美少女キター!!」などのコメントが重なると、吹き出してしまってドラマの世界観に入り込めない。悪い点とも言えるが、重厚なドラマを“おもちゃ”にして楽しんでいるような、別の楽しさもある。何度も観ている映画やドラマの再放送を肴に、皆でワイワイとコメントをメインに楽しむ……という使い方もできるだろう。

 サッカーやバレーボールなど、スポーツではコメントも最高に盛り上がるだろうと考え、そういった番組も観てみたが、コメントとマッチするスポーツと、そうでないスポーツがあると感じる。

 例えばワールドカップバレー男子のイタリア戦などは、ボールのスピードが早く、カメラアングルの切り替わり、試合展開もスピーディーであるため、「危ない!」、「今のアウトだよ」、「この選手イケメンだね」などのコメントが入力されても、画面に表示されるまでのタイムラグで他の映像に切り替わったり、ピンチのシーンが過ぎてしまったりする。この“ズレ”が若干気になる。

 また、目が離せないような試合展開になると、正直コメントを見るどころではなくなる。放送していなかったので試していないが、おそらく場面展開が速いサッカーも、コメントが向かないスポーツではないだろうか。逆に、ゴルフや野球など、緊迫した瞬間が限定的で、ゆったりコメントを読む暇が存在するスポーツにはマッチすると感じた。

 また、コメント機能の最大の強みとして、「さほど面白くない番組が、面白く観られる」というのもある。惰性でショッピング番組が始まる事はよくあるが、大げさに商品を宣伝するナビゲーターにツッコミを入れるコメントなどが溢れ、一種のバラエティ番組のように、別の角度から面白く鑑賞できる。また、番組間のCMにも、ツッコミや職人的な絵文字を投下する人などもいる。天気予報のお姉さんの容姿や服装へのコメントが溢れ、肝心の天気が頭に入らないのは考えものだが、コメント機能は“誰かと一緒にテレビを見ている連帯感”だけでなく、コンテンツそのものの楽しさを変化させる力がある事を、改めて実感できた。

 なお、余談だが12月9日の日本テレビ・金曜ロードショーでは、「天空の城ラピュタ」がオンエアされる。もう何回目の再放送かわからず、日本人のほとんどがストーリーを知っている映画であり、それゆえコメントとも良くマッチしそうだ。先日、ニコニコ動画の中の人に聞いた話だが、ラピュタのクライマックスシーンに備え、ニコニコ実況のシステムを増強したのだという。そう、「バルス!!対策」だそうだ。セリフを全部丸暗記しているラピュタだが、そんな話を聞くと、画面を「バルス!!」の文字が埋め尽くす瞬間を観てみたいと思い始めてしまう。そう考えるとこの製品が、ちょっとしたお祭りに参加できるチケットのように見えてくるから不思議なものだ。

 



■予約録画やスマートフォンへのダビングも可能

 録画機能も紹介しておこう。視聴中の番組のダイレクト録画に加え、予約録画・視聴予約も可能だ。日時や時刻を指定して予約ができるほか、iEPGも利用可能。テレビ王国の番組表を使い、録画したい番組をクリックする事で、テレキングアプリに予約情報が受け渡され、予約が完了する。予約した番組の一覧表示も可能だ。

テレビ王国のWebからiEPGを使って、録画したい番組をクリック 予約状況がテレキングのソフトに渡され、内容を確認後、予約ができる
録画した番組をリスト表示しているところ 予約状況の表示画面。何月何日に、どの番組を予約したのかが一覧で表示される。画面上にはタイムライン的な表示もあり、予約した時間帯が赤く表示されている

 録画した番組を、スマートフォンなどに転送する事も可能。iPhone 4Sでテストしてみた。まず、アプリ「TVPlayer」をダウンロード。PC側でテレキングが常駐していると、「TVPlayer」からそれを認識する事ができる。あとは、録画済み番組の一覧からダビングしたい番組を指定し、無線LAN経由でダウンロードするだけだ(ダビング10のルールを使用)。ダビングした番組の視聴には、そのまま「TVPlayer」を利用する。残念ながら、ここでもコメント表示機能は利用できない。映像はワンセグクオリティだが、番組の内容を知る目的であれば十分だろう。

「TVPlayer」アプリから、PCに接続し、録画済み番組の一覧を表示しているところ。転送したい番組を選択する 転送しているところ 転送した番組をiPhone 4Sで表示。コメントは保存・表示されない

 



■まとめ

 普段、あまりテレビは観ない(アニメは除く)生活が続いているが、試用を通じて「どんなコメントが書かれているのかな?」と、普段観ていない番組にチャンネルを合わす事が多くなった。もちろん、テレビ好きの人にオススメできる製品だが、そういった意味で、「PCでテレビが観られると便利だろうけど、そもそもテレビあまり観ないしなぁ」という人にも、使ってみて欲しい。

 他製品と比べると、編集や長時間録画、BD/DVD書き出し機能が無い事が気になるが、個人的には“低価格かつシンプルにニコニコ実況を楽しむ”というコンセプトを、ブレずに製品化した事を評価したい。これらの機能を盛り込み、1万円を超えてしまうと、「ちょっと面白そうだな」という軽い気持ちで購入しにくくなっていただろう。録画のメインはBDレコーダなどに任せつつ、PCでニコニコ実況をシンプルに楽しみつつ、急に録画したい番組があった時は対応できる……という使い方がマッチしそうだ。

 今後の期待としては、コメントの保存機能は欲しいところ。ともあれ、手軽に購入でき、手軽に使えるが、実は“テレビの新しい可能性”を感じさせてくれる製品だ。


(2011年 12月 6日)

[ AV Watch編集部 山崎健太郎 ]