“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

 

第493回:【CES】業務用とコンシューマの垣根を取り払うキヤノン

~そしてレディ・ガガで復活を宣言するPolaroid~



■初日特有の入場ラッシュ

 2011 CES開場初日となる本日。来場者の出足も好調で、ピークタイムの10時ごろにはモノレールの駅が入場制限されるほどの混雑ぶりを見せた。すかさずタクシーに乗り換えたものの、道路もひどい渋滞で、なかなか開場に近づけないあり様である。

 さて本日は、老舗機器メーカーの出展が多いセントラルホールから、イメージング製品を中心に気になったものを紹介して行こう。


■キヤノン、業務用モデルも含め1ランクアップしたカムコーダラインナップ

シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンスが楽しめるメインステージ

 セントラルホールの中でも比較的大きな面積を占めるキヤノンブース。メインステージ上ではシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンスを大々的にフィーチャーしたジャングルが出現し、いつもの渋めなブース構成とは違ったド派手な演出を見せていた。

 米国ではVIXIAというブランドで商品展開するキヤノンのカムコーダだが、メモリ記録型を基本としながらも、全体的に上のほうにシフトするラインナップとなった。

 まず新シリーズ「HF G10」は、プロフェッショナル・クオリティを謳うコンシューマ・ハイエンド製品。レンズはワイド端30.4mmの光学10倍ズームレンズで、8枚羽根の光彩絞りを搭載。そして手ぶれ補正用のシフトレンズも前後に動かす、3次元リアルタイムレンズ機構も組み込んでいる。ここまで聞けばピンとくる人も多いと思うが、昨年Inter BEEで発表された小型業務用モデル、「XF105/100」と同じものを搭載している。

 さらに撮像素子も、XF305の時にプロ用として開発された「HD CMOS Pro」をそのまま搭載。業務用機のものを情け容赦なくこのサイズに積むかー、という感じである。


まさにプロフェッショナルクオリティ、HF G10光学部はXF105と同じ

 HD CMOS Proは、1/3インチというサイズでありながら総画素数が237万画素、有効画素数207万画素という、セルサイズの大きなセンサーである。従来の民生用カムコーダは、静止画の解像度を稼ぐためにビデオでは不要な大画素のものを搭載していた。そのためセルサイズが小さくなり、感度が落ちる傾向が見られたが、それとは逆方向に進んだわけである。

 鏡筒部のリングはフォーカス専用で、回転方向やリングレスポンスをカスタムで設定可能。さらにボディ後部には、カスタムキーとカスタムダイヤルを備える。すでに発売済みの5.1chサラウンドマイクも装着可能。

3.5インチのタッチパネルにビューファインダも装備

 液晶モニタは3.5インチ、92万画素のタッチパネルで、ビューファインダも備える。さらには民生機ではあるが、波形モニタ表示機能まで付いている。ネイティブ24p撮影モードを持ち、シネマルックフィルタも装備。プロフェッショナルのシネマイメージに近い映像が撮影できるという。

 内蔵メモリは32GBで、SDXC対応スロットを2つ備えるなど、従来のHF Sシリーズに近い部分もある。3月発売予定で、価格は1500ドル。


 G10はただでさえ業務用に近いスペックではあるが、さらに業務用モデルとして新たにXA10を発表した。基本スペックはG10と同じだが、内蔵メモリを64GBに増量、ハンドル部分には業務ユーザーとしては必須のXLR入力を装備している。

G10の業務用バージョン、XA10XLR入力とマイクホルダーを装備
ハンドル部分は着脱可能

 このハンドルは取り外すことも可能で、ハンドルなしではコールドシューが使えるG10という格好になる。またこのハンドルの前方部分に赤外線照射機能を持たせ、XF105/100と同じく赤外線撮影機能が使えるようになっている点が、G10との違いとなっている。

 キヤノンのHF Sシリーズは業務ユーザーからも評価が高く、このクラスの業務用機が欲しいという声は以前から聞こえていたが、それに応えた格好だ。これで業務用のメモリ記録モデルは、XF305、XF105、XA10という3段階になった。XFシリーズはMPEG-2 50Mbpsの4:2:2記録が売りだが、XA10はAVCHD記録の業務用版という位置づけになる。こちらも3月発売予定で、価格は2,000ドル。


メモリを減らして価格を下げたHF S30

 「HF S30」は、従来型のSシリーズの継承モデルで、光学10倍のCanon HDビデオレンズを搭載。撮像素子は8.59メガピクセルCMOSを採用。内蔵メモリは32GBで、こちらも従来通り2つのメモリーカードスロットを備える。前モデルのHF S21は内蔵メモリが64GBだったが、同スペックでメモリを減らして価格を下げたモデルのようだ。こちらも3月発売予定で、1,100ドル。

 新しいHF Mシリーズは、「HF M41/40/400」の3タイプ。従来のMシリーズと位置づけであった小型ミドルレンジというタイプではなくなり、Sシリーズ並の性能にアップした。こちらは43.6mmスタートの光学10倍ズームレンズを搭載、撮像素子にHD CMOS Proセンサーを採用した。


新しいMシリーズはやや大型化3インチ液晶タッチパネルにビューファインダも装備

 3インチ液晶タッチパネルを搭載し、ビューファインダも備える。またSDカードスロットも従来のSシリーズ並みにデュアルスロットになっている。内蔵メモリはM41が32GB、M40が16GB、M400が内蔵メモリなしモデルとなっている。こちらも3月発売予定で、価格はそれぞれ800ドル、700ドル、650ドル。

エントリーモデルのRシリーズも機能強化

 エントリーモデルのRシリーズも、今回は「R21/20/200」と3モデル体制のリニューアル。レンズは41.2mmスタートの光学20倍、アドバンストズームを含めると28倍ズームレンズを搭載。撮像素子は1/4.85インチ3.2メガピクセルのCMOSセンサーとなっている。

 SDカードスロットはデュアルとなり、今回の新ラインナップではHDの全モデルがデュアルスロットとなった。内蔵メモリーは順に32GB、8GB、内蔵なしで、価格はそれぞれ500、400、380ドルとなっている。こちらは2月発売予定。


海外ではSDモデルも健在

 日本では発売されていないが、米国ではSDモデルも健在である。FS40、400は45.8mmスタートの37倍光学ズーム、41倍アドバンストズームレンズ搭載のスタンダードディフィニションモデル。内蔵メモリはFS40が8GB、FS400が内蔵メモリーなしとなっている。SDカードスロットは一つ。こちらは2月発売予定で、価格は300ドルと280ドル。



■新しいカメラのカタチ、CASIO TRYX

 ラスベガスモノレールを利用していると、いろんなところで目に付くのがCASIOが今回発表した新しいデジタルカメラ、「TRYX」の広告である。最初は「トライエックス」と読むのかと思っていたのだが、昨日のプレスカンファレンスで「トリックス」と発音することが判明した。

 特徴的なのは、レンズ部分を中心に外枠と液晶部分がそれぞれX軸、Y軸方向に回転すること。これにより、普通のバリアングルモニタ付きのデジカメのようにも使えるが、もう一歩すすめて外枠部分をスタンドとして使ったりグリップとして使ったりと、自由なアングルで撮影ができるのが特徴となっている。

 ブースではシーン別のモックアップ展示があるだけだが、説明員に聞けばポケットから実動機を取り出してこっそり見せてくれるという、微妙に完成前な感じの扱いとなっていた。

新しい撮影スタイルを提案するTRYX説明員に頼めば実働モデルを見せてくれる

 カメラとしては、レンズが35mm換算で21mm/F2.8の単焦点レンズを搭載し、1/2.3型有効1,210万画素の裏面照射型CMOSセンサー採用となっている。動画撮影はH.264で1,920×1,080/30pの撮影が可能で、本体にはHDMI出力も備える。また432×320/240fpsのハイスピード撮影も可能。

 かなりコンセプチュアルなカメラだが、米国では4月発売で価格は250ドル。ソニーのBloggie 3Dも同時期に同価格での発売となっており、米国では250ドルというラインが冒険して許されるギリギリのゾーンなのかもしれない。


■PolaroidとLady Gagaのコラボレーション、Grey Labelシリーズ

Lady Gagaの登場でひどい目にあ…盛り上がったPolaroidブース

 ソニーブースのあたりをうろうろしていたら、なにやら人だかりがあり、うっかり近寄ったところ、周りをあっというまに人垣に囲まれてそのまま脱出できなくなってしまったPolaroidブース。16時にLady Gagaが登場し、Polaroidとコラボレーションした新製品が発表された。

 Grey Labelと名付けられたシリーズは、Lady Gagaと彼女のデザインチーム「Haus of Gaga」がディレクションを務めたプロダクツ群で、その第一弾は以前からPolaroidが力を入れているZINKのモバイルプリンタ「Polaprinter GL10」。Bluetoothまたは直接接続によって写真印刷ができるプリンタで、スマートフォンからワイヤレスで印刷できる機能が売りの一つとなっている。今年5月発売予定で、価格は150ドル。


 「Polarez GL20」は、サングラス型のカメラとディスプレイを組み合わせたような製品で、自分が見ているものを撮影し、それを目の部分に外側に向かって映し出すというもの。また外部デバイスからもディスプレイにアップロードできる。装着している本人は、画像を通して外の風景が見えるという。

 かける人によってイカシてるかイカレてるかがはっきり分かれる踏み絵のようなアイテムだが、一応ちゃんと発売する予定のようだ。発売時期や価格は未定。

ZINKのモバイルプリンタ、Polaprinter GL10サングラス型カメラとディスプレイを融合させた「Polarez GL20」

 「Polaroid GL30」は、シックなスタイルのZINKプリンタ内蔵インスタントカメラ。古くささが逆に新しい印象を与えるデザインで、一時代を築いたPolaroidの復活を象徴するような製品となっている。こちらも発売時期や価格は未定。

シックなスタイルのインスタントカメラPolaroid GL30液晶の内側に操作ボタン類がある

 ブースではLady Gaga見たさの人と、古き良きアメリカを象徴するPolaroidの復活を見たい人がはっきり2つに分かれた感じだったが、一時代を築いたコンセプトは、新しいデザインを得たことで再び息を吹き返すかもしれない。

(2011年 1月 7日)

= 小寺信良 = テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]