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ソニーの新LEDディスプレイ「CLEDIS」日本初披露。新たな大画面・高画質へ

 ソニー ビジネスソリューションは16日、映像制作業界関係者向けの新製品内見会を開催し、微細なLED素子を使うディスプレイ技術「CLEDIS」を用いた新方式のディスプレイシステムを国内初披露した。

110型/フルHDのCLEDIS

 CLEDISは、2012年に開発発表した「Crystal LED Display」の技術をベースに、大画面が求められる用途に向けて提案するスケーラブルなディスプレイシステム。画面表面にRGBの微細なLED素子を配置した画素を、画素毎に駆動させる自発光のディスプレイ方式を採用。光源サイズを0.003mm2と微細化し、画面表面の黒点が占める割合を99%以上に高め、素子の広配光性能などと組み合わせることで、高コントラスト、広視野角、広色域の映像表現を可能とする。動画応答性能にも優れており、最大120fpsのフレームレートで表示できる。

 ディスプレイユニット「ZRD-1」とコントローラ「ZRCT-100」から構成され、必要な画面サイズに応じて、ZRD-1の枚数を追加していくことで、大画面を実現。ZRD-1の1枚の画素数は320×360ドットで、外形寸法は403×453mm。フルHDの場合、ZRD-1を18枚利用し、横2.4m、縦1.35mの約110インチを実現、4K/2Kでは、72枚のZRD-1用いて220インチを実現できる。

110型のCLEDISを披露

 今回披露したCLEDISは、フルHDの110型でZRD-1を18枚利用。Display Portから入力したHDR映像やCG映像が体験可能となっていた。明るい環境下でも驚くほどコントラストが高く、また色純度も高い。自然の風景だけでなく、CGの赤色も鮮烈で、デジタルサイネージ向けの大型液晶では難しい、輝度と色のダイナミックレンジが体験できた。輝度は1,000cd/m2。

18枚のZRD-1でフルHD化

 驚かされたのは視野角。スペックシートでも「ほぼ180度」としているが、実際にほぼ真横から見ても、色が抜けて見えることはない。湖を飛ぶ鳥の映像を、正面から45度以上ずれた場所から見ても、色や質感はそのままで鳥の胴体や羽根の奥行き感もそのままに感じれる。ディスプレイを見ているというより、実際の風景のように見えるのだ。自発光デバイスかつ高輝度なCLEDISだからこその質感と感じた。

CGを表示

 画面に近づくとドットが見えてしまうが、3m弱離れれば問題はない。ソニーの説明員によれば、画素の精細度より、大型化と高画質、スケーラビリティを優先したとのことで、縦位置の設置や、8K/2Kなどの横長の設置にも対応するという。

近づくとドットが見えるが、ドット毎のコントラスト感が凄い

 米国で開催したInfocomm 2016では8K/2Kで、9.7×2.7m(横×縦)と巨大な横長のもので、ZDR-1を144枚使用。コントローラのZRCT-1000は1台で4K/72枚までの出力対応のため、8K/2K表示時にはZRCT-1000が2台必要となる。

 複数枚のZRD-1を繋ぎあわせて1枚の画面にするため、画面の“つなぎ目”が気になるところだが、正面から見ると、全くわからない。高精度な組み立て技術と補正技術により、単一パネルのような画面を目地のない大画面を実現できるという。消費電力は1枚のZDR-1で約100W(平均)のため、フルHDで約1,800W、4Kで約7,200Wとなる。

つなぎ目もほとんどわからない

 大画面と高コントラスト、高輝度、高応答性などを活かして、工業デザインの現場や文化施設、管制室などの導入を想定。例えば、車のデザインやショールームで、横長のCLEDISを設置し、実物台で自動車のデザイン調整やカラー選定などを行なう、といった応用を見込んでいる。価格については、設置事例やシステム構成によって異なるが、2017年1~3月ごろの導入に向け、複数の商談が進んでいるとのこと。

55型4K有機ELモニターなども紹介

 また、映像機器内見会では、NAB等で発表した4Kカメラやスイッチャー、ビデオサーバーなどを一同に展示。4K 8倍速のスロー撮影ができる「HDC-4800」などの新製品の実機紹介が行なわれていた。

 「Beyoynd Definition」をテーマに、4K/HDRとファイルベースのワークフロー提案が中心。4Kビデオカメラの「HDC-4800」は、ベースバンドプロセッサユニット「BPU-4800」と組み合わせることで、4K 8倍速のスロー撮影が可能となる。従来は10数秒だったスロー撮影時間が、この組み合わせでは最大4時間まで撮影できる。

HDC-4800

 「PVM-X550」は、55型4Kの有機ELマスターモニター。30型4Kの「PVM-X300」は、4K/HDR製作の現場で幅広く使われているが、大型化のニーズが多く、55型を製品化。1画面でSDRとHDRを見比べながら、画質を調整するなど大画面を活かした活用法を提案した。

55型有機ELマスターモニター「PVM-X550」
HDRとSDRを1画面で比較表示できる

 大容量データの長期保存向けのソリューションとして、第2世代のオプティカルディスク・アーカイブも紹介。追記型で容量3.3TBのカートリッジ「ODC3300R」とアーカイブユニット「ODS-D280U」などを、映像制作だけでなく、データセンターなどのアーカイブシステムとして提案していく。

1枚で3.3TBの「ODC3300R」。中に11枚の両面ディスクを内蔵
第2世代オプティカルディスクドライブ。上下にレーザーを配置し、高速な記録/再生を実現