ニュース

Technics、148,000円のレコードプレーヤー「SL-1200GR」。新GRAND CLASSシリーズ

 パナソニックは、Technicsブランドの新製品としてレコードプレーヤー「SL-1200GR」を発表した。5月19日に発売、価格は148,000円。「GRAND CLASS」シリーズの製品となる。

レコードプレーヤー「SL-1200GR」

 2016年発売「SL-1200G」(33万円)の技術を取り入れながら、モーターやプラッター、筐体、トーンアームなどを新開発し、価格も抑えたスタンダードモデル。「音にこだわるオーディオユーザーからレコードファンまで、幅広いユーザーに提案していく」という。

 新開発の「コアレス・ダイレクトドライブ・モーター」を搭載。ダイレクトドライブには、モータの加減速機構によるSN比の劣化を抑え、部品交換が不要で長期間にわたって高い信頼性が得られるといった利点がある。SL-1200Gと同様に、回転ムラや回転中の微小な振動による“コギング”現象を解決するため、コイルからコアを排除したコアレスステーターを採用した、シングルローター型のコアレス・ダイレクトドライブ・モーターを開発した。

シングルローター型のコアレス・ダイレクトドライブ・モーターの内部
コイルからコアを排除したコアレスステーター

 SL-1200GやGAEはローターを上下に2つ搭載しているが、1200GRは1つに減っているのが大きな違い。パナソニック アプライアンス社ホームエンターテイメント事業部 テクニクス事業推進室の井谷哲也CTO/チーフエンジニアは、「音質的に妥協しないものを作ろうと考えた。いかに(音の)クオリティを落とさずに値段を下げるかを追及し、モーターを再設計した。シングルローターになるとトルクは半減するが、プラッターの重量を落として、起動時間はほぼ同等とした」という。

井谷哲也CTO/チーフエンジニア
プラッター部分
プラッターの裏側。背面全体に消音ゴムを塗布した2層構造

 プラッタはアルミニウムダイキャスト製で、背面全体に消音ゴムを塗布した2層構造(1200Gは真鍮、アルミダイキャスト、デッドニングラバーから成る3層構造)で、不要な共鳴を除去。剛性を高めるためのリブの強化も行なった。

 さらに、Blu-rayディスク機器で培った最新の制御技術を応用し、定速時の制御ではマイコンによる正確な正弦波を出力することで、安定した回転を実現。プラッターには、モーターを構成するローターヨークおよびローター磁石を固定。モーターとプラッターが強固に結合した構造で、より安定した回転ができるという。電気回路も新開発のモーターとプラッターの性能を最大限発揮できるようにチューニング。これらにより、SL-1200MK6を超える回転精度を実現し、立ち上がり時間は同等の0.7秒(33 1/3回転時)を実現した。

 なお、プラッタのみの重量は2.5kgで、DJターンテーブル「SL-1200MK6」のものより800g重い。これにより、振動を低減している。

「SL-1200GR」の概要
構成パーツ

 SL-1200GRのトーンアームはスタティックバランス型で、質量が小さく剛性が高いアルミ製アームチューブを採用(1200G/1200GAEはマグネシウム)。ジンバルサスペンション構造のトーンアーム軸受け部には、切削加工のハウジングを使用した高精度ベアリングを採用。熟練した日本の職人の手で組み立て・調整しているという。

トーンアームはスタティックバランス型

 初動感度はSL-1200MK6の7mgよりも高い5mg以下。レコード盤の正確なトレースができるという。標準のウェイトに加えて補助ウェイトも付属。補助ウェイト使用時の適用カートリッジ質量は18.7~25.1g(付属ヘッドシェル含む)で、幅広いカートリッジを装着できる。

 筐体はバルクモールディングコンパウンド(BMC)とアルミダイキャスト部品を一体化した2層構造。1200Gの4層構造からシンプルになっている。インシュレータは特殊なシリコンラバー製。重量に合わせて専用にチューニングしている。

 出力はPhono端子とアース端子を備える。AC入力は着脱可能。Phono端子には金メッキ加工を施している。外形寸法は453×372×173mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約11.5kgで、1200Gより軽量(同18kg)。消費電力は11W。

コーネリアスがオーディオチェックトラックを作る

 パナソニックの役員でテクニクスブランド事業担当の小川理子氏は、「ハイレゾ音楽配信と、アナログレコードの2つのメディアがハイファイオーディオ市場を牽引しているとし、そのどちらも高音質で楽しめ、なおかつより幅広いユーザーにアプローチできる価格も実現したシリーズとして、ターンテーブル「SL-1200GR」と、DAC内蔵プリメイン「SU-G700」、フロア型スピーカー「SB-G90」から構成される、新たな「GRAND CLASS」シリーズを紹介。

右がテクニクスブランド事業担当の小川理子氏

 一方、より低価格な製品シリーズ投入の可能性については、「今後もバランスよく検討していきたい」と述べるにとどめた。

アナログレコードの2つのメディアがハイファイオーディオ市場を牽引

 Technicsブランドのアンバサダーとしては、引き続き、ドイツ出身のピアニスト、アリス=紗良・オットさんを起用。ビデオメッセージの中でアリスさんは、Rediscover MusicというTechnicsのスローガンを紹介、「私達のようなクラシックのミュージシャンは、数十年、数百年前の音楽を若い世代の人に向かって、21世紀に演奏している。よって、伝統を今に結びつける事はとても大切で、Rediscover Musicというスローガンに共感している。これからも音楽の感動を皆さんに伝えていきたい」とコメント。

アリス=紗良・オットさんからビデオメッセージも

 こうしたTechnicsサウンドの魅力を広めるためには、製品を試聴してもらう事が不可欠。パナソニックセンター東京、パナソニックセンター大阪にあるリスニングルームでは、3月22日から新製品を試聴できるようにする。ただし、予約が必要。

 また、東京と大阪の2拠点ではカバーしきれない地域もあるため、移動する試聴室として“Sound Trailer”を製作。キャンピングカーをリスニングルームに改装したもので、アナログレコード、CD、ハイレゾの各音源を試聴可能。現在のところ1台のみだが、5月より稼働開始予定で、「試聴体験をより身近にする」という。

中身はまだ完成していない

 さらに、音楽をより良い環境で楽しむためのツールとして、「次世代オーディオチェックトラック」を今後用意。このトラックを、コーネリアスが手がける事が決定した。

 オーディオ評論家の和田博巳氏が、Technics製品視聴時の音源として、コーネリアスの「Like a Rolling Stone」を使っていたのをキッカケに、Technicsがコーネリアスの小山田圭吾氏にコンタクト。「音楽とオーディオの可能性を引き出す、21世紀のオーディオチェックトラック」を作ってくれるよう、依頼したという。

次世代オーディオチェックラックが作られている
試聴コーナー

 発表会では、先行でこのチェックトラックも公開。通常のチェックトラックはナレーションで「1kHzの信号です」などと説明した後、音が鳴る、そっけないものだが、コーネリアスが手がけるチェックトラックは、音のチェックにも使えると同時に、リズミカルで、音楽としても楽しめるものになっているのが特徴。

Technicsオーディオチェックトラック(日本語版)ティザームービー