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フジテレビの動画投稿サイトにMSのAI技術。日本語音声から自動翻訳字幕で世界へ

 フジテレビジョンは29日、新しい視聴者体験の提供を目的に日本マイクロソフトとクラウド/AI技術で連携。フジテレビが運営する動画投稿サイト「DREAM FACTORY(ドリームファクトリー)」にアップロードされた動画の音声を自動解析して翻訳字幕を生成/付与する機能を7月1日から提供開始する。クリエイターやアーティストらが世界に羽ばたくことをサポートするサービスにしていくという。

フジテレビの動画投稿サイトにMSのAzure AI導入。日本語音声から翻訳字幕を自動生成
フジテレビジョンの大多亮 常務取締役(左)と日本マイクロソフトの平野拓也社長(右)

 ドリームファクトリーは、フジテレビが「次代を担うパフォーマー、クリエイターの活躍の場を広げ、新たな『フジっ子』を作るエンジン」と位置付ける動画投稿サイトで、'17年1月にスタート。同サイトに投稿されたものまねやショートコント、歌ってみた動画などをフジテレビの放送連動番組の中で紹介したり、各種スポンサー協賛のコンテストを通じて動画投稿を募る、などの取り組みを想定している。

 再生数やLOVE(いいね)数に基づくランキング機能やSNS共有などの機能を備え、アイドル/バンド/ダンス/ショートムービー/アニメなど130以上のコミュニティを用意。ユーザーによる増設も可能で、自分だけの動画コミュニティ(チャンネル)を作れる。対応する動画フォーマットは最大1,920×1,080ドットで1.6Mbps以上のMP4ファイルで、スマホ向けの縦動画にも対応する。

動画投稿サイト「DREAM FACTORY」

 プラットフォームにはMicrosoft Azureの「Azure Media Services」を採用。動画の取り込み/保管やコンテンツ保護、プレーヤーまで、メディア配信のコア機能をAPIとして提供するもので、ユーザー数の増加やサービス拡張などに柔軟に対応できるクラウド型映像配信プラットフォームが構築できるとする。

Azure Media Services

 投稿動画は即時公開されず、AzureのAI技術を用いて不適切な動画コンテンツかどうかのチェックを自動で行なう。従来は映像の事前確認や、権利侵害・公序良俗に反したコンテンツを人間が手作業で省いていたが、これを省力化し、「違法動画ゼロの安全性の高い動画投稿サイト」を目指す。

 7月1日からは、ドリームファクトリーの動画音声をAzureのAI技術を使って自動でテキスト化し、翻訳した字幕を生成/付与する「Speech to text」機能を実装。Web上で字幕編集も可能で、誤認識や誤表記などの修正が行なえる。翻訳は英語・中国語・スペイン語・フランス語の4カ国語から提供開始し、世界に通用するコンテンツにするサポートを行なう。

ドリームファクトリーのWebサービス上で、フジテレビのドラマ「感情8号線」の日本語音声に英語字幕を自動付与するデモが行なわれた

 将来的にはドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、アラビア語(エジプト語)、日本語の最大9カ国語への自動翻訳も可能になる予定。

投稿動画の音声活用で、AIの日本語認識精度向上を目指す

 フジテレビでは、24時間総合編成のインターネット有料チャンネル「フジテレビONE/TWO/NEXTsmart」を提供しており、その配信プラットフォームでマイクロソフトのクラウド技術を採用。その実績や今後のグローバル展開を踏まえ、ドリームファクトリーの配信でもAzureのビデオストリーミング基盤を採用した。

有料チャンネル「フジテレビONE/TWO/NEXTsmart」ではAzureを採用済み

 マイクロソフトでは、ドリームファクトリーから提供されたコンテンツを使い、自動翻訳字幕生成機能「Speech to text」における日本語認識率の向上を目指す。ディープラーニングにより、Microsoft TranslatorやBingなどマイクロソフトが保有する言語サービスの精度向上も期待できるという。

ドリームファクトリーのコンテンツでAzure Aiの日本語認識率を向上させる

 発表会では、フジテレビが配信中のドラマ「感情8号線」の映像を使い、AI技術を使ったデモを実施。ドリームファクトリーへの実装時期は未定とした上で、登場人物のセリフから「タクシー」や「田園調布」などの頻出単語を自動抽出したり、特定の人名が出たシーンに1クリックでジャンプする機能、人物の顔認識で主人公が出ている場面だけの抽出、人物に追従するモザイクを自動で掛けるなどの実演が行なわれた。

 将来的にはテレビ番組制作などでの活用を検討しており、30分ドラマから見どころや特徴のあるシーンのみを抜き出して1分程度にまとめ、番組宣伝の動画製作などを可能にするなど、映像の自動編集に使うことも視野に入れている。

主人公を顔認識して、登場場面だけを抽出して1クリックでジャンプ
音声のセリフから特定の人物名を抽出し、該当シーンだけを再生

 フジテレビジョンの大多亮 常務取締役は「AzureのAIによって映像の制作や表現が革命的に変化を起こすんじゃないかというくらいの驚きと予感があった。AIの学習には沢山の映像の読み込みが必要だが、我々はAIと組むことでモノづくりのスキルが上がると考えており、(マイクロソフトとは)いい形のアライアンスが組めると思っている。(ドリームファクトリーについては)甘くはないと思うが、目標としてクリエイターが1万人、ユーザー数100万、1,000万再生回数を稼ぎ出せるようになれたらいいと思っている。ドリファクだけでなく将来を見据えたAzure AIの活用で大きな未来を拓きたい」と話した。

 日本マイクロソフトの平野拓也社長は「マイクロソフトのミッションは『地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする』こと。今回の取り組みは、学習の繰り返しで(Azure AIの)日本語、画像認識率を高めていくことがひとつのキー。魅力あるコンテンツ制作のためのサービスとして提携する」と話した。

 クリエイター創出支援の第1弾として、オリジナルムービーコンテスト「世界に羽ばたけ!DREAM FACOTRYショートムービーコンテスト」を開催。日本の魅力を世界に発信する作品を広く募集する。コンテスト投稿作品は、フジテレビONE/TWO/NEXTの番組で放送予定。賞金も用意する。詳細は応募サイトを参照のこと。