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マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」

 ディーアンドエムホールディングスは、マランツブランドの新製品として、ネットワーク再生やUSB DAC機能も内包したCDプレーヤー「ND8006」と、アナログプリメインアンプ「PM8006」を11月下旬に発売する。価格は各13万円。

マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」 左からアナログプリメインアンプ「PM8006」、デジタル・オーディオプレーヤー「ND8006」
左からアナログプリメインアンプ「PM8006」、デジタル・オーディオプレーヤー「ND8006」

 「PM8006」は、プリメインアンプ「PM8005」の後継モデル。プレーヤーの「ND8006」は、PCと接続してUSB DACとして使ったり、NASやUSBメモリに保存した音楽ファイルの再生、Bluetooth、AirPlayなど、様々な音楽ソースを再生できることから「デジタル・オーディオプレーヤー」とカテゴライズされている。従来は、CDプレーヤー「SA8005」、ネットワークプレーヤー兼USB DAC「NA8005」がラインナップされていたが、これを統合したのが「ND8006」となる。

マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」 左から「PM8006」、「ND8006」
左から「PM8006」、「ND8006」

ネットワークCDプレーヤー「ND8006」

 CDプレーヤーを搭載。SACDには対応していない。「2年前に製品を企画した時から、SACDをどうするか議論を重ねてきたが、この価格帯に限って言えば、調査の結果、SACDを意識している人が思いのほか少なかった。マランツとしてSACDにネガティブというわけではなく、この価格の製品としては、コストアップしてまでSACDに対応するメリットが、ユーザーにあるかという部分を考慮して非対応とした」という。なお、CD-R/RW再生は可能で、MP3とWMAを記録したディスクも再生できる。

マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」 ネットワークCDプレーヤー「ND8006」
ネットワークCDプレーヤー「ND8006」

 USB DAC機能としては、最大11.2MHzのDSDと、384kHz/32bitのPCMまでサポート。DSD再生は、WindowsではASIOドライバーによるネイティブ再生と、DoPの両方式に対応。PC側のジッタを多く含んだクロックを使用せず、ND8006に搭載する超低位相雑音クロック回路によって生成されるマスタークロックで制御する事で、ジッタを低減するアシンクロナスモードにも対応する。Macではドライバのインストールは不要。対応OSはWindows 7/8/10、Mac OS X 10.10/10.11/10.12。

マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」 ネットワークCDプレーヤー「ND8006」
ネットワークCDプレーヤー「ND8006」

 無線LANを搭載し、ネットワーク再生は、DSDが5.6MHz、PCMは192kHz/24bitまで対応。なお、発売後のアップデートにより対応は強化され、11.2MHzまでのDSD、384kHz/32bitまでのPCMに対応する予定。DSD、WAV、FLAC、Apple Losslessのギャップレス再生にも対応。

 USBメモリからの再生もサポートするほか、USB接続のHDDから、ファイル再生する事も可能。NASやLANのセットアップが不安という人も、大容量HDDに保存したハイレゾファイルの再生が楽しめる。

 音楽ストリーミングサービスやインターネットラジオにも対応。Amazon Prime Music 、AWA、Spotify、SoundCloudをサポート。インターネットラジオ局の検索には、TuneInが利用可能。

 AirPlayやBluetoothにも対応しており、対応スマートフォンなどから手軽にワイヤレス再生できる。

 なお、出力する音声信号に流入する周辺回路からのノイズを抑えるため、ネットワーク/USBメモリ再生、Wi-Fi、Bluetooth、後述するヘッドフォン出力回路、可変オーディオ出力回路、デジタル出力回路をオフにする機能も搭載。ディスプレイを消灯する事もできる。

 DACは、マランツのフルサイズコンポでは初となる、ESS製の「ES9016K2M」を採用。低ジッタと122dBの広ダイナミックレンジが特徴の電流出力タイプで、外付けのI/V(電流/電圧)変換回路と組み合わせて利用するが、そのI/V変換回路とポストフィルタには、マランツ独自のHDAMとHDAM-SA2を使用したディスクリート回路で構成している。

 さらに、DAC内蔵のデジタルフィルタもあえて使わず、マランツオリジナルのアルゴリズムによる「Marantz Musical Digital Filtering」を搭載。特性はSA-10のディスクリートDAC「MMM-Stream」において使用されているものを踏襲。PCM信号を入力した際に、好みに合わせて2種類の特性を切り替えられる。

 DACのロックレンジを狭めることでジッタを低減する「ロックレンジ切り替え機能」も搭載。ワイド、ミディアム、ナローの3段階で切り替えでき、狭めるほど明瞭な音質になるが、設定を狭めすぎると、入力信号によっては音途切れやノイズが発生することがある。その場合は、音声を聴きながら正常に聴こえるようにロックレンジの設定を広げていく。

マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」 「ロックレンジ切り替え機能」も搭載
「ロックレンジ切り替え機能」も搭載

 SA-10などの上位モデルと同様に、クロック回路に超低位相雑音クリスタルを搭載。44.1kHz系、48kHz系のクロック発振回路に加え、DACの動作専用のクロック発振回路を加えた3つのクロック発振回路を搭載。再生するソースのサンプリング周波数に応じて最適なクロック信号を供給。ジッタを抑制し、明瞭な定位と見通しの良い空間表現を実現したとする。

 PCやネットワーク機器から流入する高周波ノイズや、ND8006のデジタル回路から発生する高周波ノイズによる音質への悪影響を排除するため、高速デジタルアイソレーターを12素子、18回路使用した「デジタル・アイソレーション・システム」を搭載。ICチップ上に組み込まれたトランス・コイルを介して磁気によりデータ転送を行なうため、入力側と出力側は電気的に絶縁された状態になり、ノイズを遮断。デジタル回路とアナログ回路のグランドを分離させてノイズの回り込みも防止している。

 DAC以降のアナログステージには、独自の高速アンプモジュールのHDAM、HDAM-SA2を用いたフルディスクリート回路を採用。ディファレンシャルFET入力のHDAMによる電流帰還型低ノイズアンプと、HDAM-SA2による高速出力バッファアンプにより、ハイスピードで情報量豊かなサウンドを実現したという。

 通常のアナログ音声出力端子に加え、音声信号の音量を調整できるアナログ音声出力端子も搭載。アプリやリモコンで音量調整ができる。

 ヘッドフォン出力にもこだわっており、3段階のゲイン切り替えが可能な、フルディスクリートヘッドホンアンプを採用。HDAM-SA2を使ったアンプで、「情報量が豊かで鮮度の高いサウンドを実現した」という。可変最大時の出力は30mW(32Ω)。

 電源部には、大容量トロイダル型電源トランスを搭載。音質に悪影響を及ぼす漏洩磁束を抑えるために、垂直方向の磁束漏れを抑えるアルミ製ショートリングに水平方向の磁束漏れを抑える珪素鋼板シールドを加えた2重シールドを施した。メカエンジン、デジタルオーディオ回路、アナログオーディオ回路、ディスプレイ、それぞれブロックごとに専用の二次巻線を用いて、後段の整流回路や平滑回路も独立させ、回路間の相互干渉を排除した。

 DAC回路やアナログ出力回路には、サウンドマネージャーによる入念なリスニングテストで厳選したというオーディオグレードのフィルムコンデンサやメルフ抵抗、面実装フィルムコンデンサ、導電性高分子コンデンサを使用。アナログ回路電源用のブロックコンデンサには、ニチコンと共同開発した大容量3,300μFのカスタム・ブロックコンデンサを使っている。

 出力端子は、アナログアンバランス(固定)×1、アナログアンバランス(可変)×1、同軸デジタル×1、 光デジタル×1、ヘッドフォン×1。入力端子は同軸デジタル×1、光デジタル×2、USB-A×1、USB-B×1などを備えている。消費電力は42W。待機電力は0.3W(通常スタンバイ)/4W(ネットワークスタンバイ)。ロッドアンテナを寝かせた際の外形寸法は440×369×106mm(幅×奥行き×高さ)、重量は8kg。

マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」 背面
背面

アナログプリメインアンプ「PM8006」。電子ボリューム採用

 定格出力100W×2ch(4Ω)、70W×2ch(8Ω)のプリメインアンプ。従来モデルの「PM8005」から特に強化したのはプリ部。フルディスクリート構成の電流帰還型増幅回路をプリ部とパワー部に採用しており、ハイスピードでSN比が高く、低歪率な増幅回路を実現。

マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」 アナログプリメインアンプ「PM8006」
アナログプリメインアンプ「PM8006」

 プリ、パワー、トーンコントロールの各ブロックを独立させ、左右チャンネルの等長、平行配置を徹底。メインの増幅回路においてもオペアンプを使わず、マランツオリジナルのディスクリートアンプモジュールHDAM-SA2、HDAM-SA3を使用。ハイスピードと超高域にまで至る優れたチャンネルセパレーションを実現したとする。

マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」 アナログプリメインアンプ「PM8006」
アナログプリメインアンプ「PM8006」

 チャンネル間のクロストークとギャングエラーを極小化するために、可聴帯域外に至るまで優れた特性を備えるという、JRC製のボリュームコントロールICを新たに採用。電子ボリュームであり、機械式ボリュームでは構造上避けられない左右チャンネル間のクロストークや音量差が生じないため、空間表現力が大きく向上したという。

マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」 電子ボリュームを採用した
電子ボリュームを採用した

 可変抵抗体を使用していないため、ボリュームパーツの経年劣化に伴う音質の変化もなく、長期にわたり安心して使えるとする。また、いくらでもクルクルボリュームノブを回せる形にはせず、ボリューム操作は従来のアナログボリュームとまったく同じ感触で行なえるよう工夫している。

 CD入力専用バッファと、その他のライン入力用バッファにHDAM-SA2を搭載。バッファアンプによって入力信号を低インピーダンス化することで、L/Rチャンネル間、各入力ソース間の相互干渉を防いでいる。

 瞬時電流供給能力にこだわり、電源部の強化やショート・パワーライン・レイアウトの採用、回路のディスクリート化、低インピーダンス化などを実施。パワートランジスタ(LAPT)、ドライバートランジスタ、出力段用電源のダイオードの電流容量の向上によって、45Aを超える瞬時電流供給能力を実現。バスドラムや大太鼓のような急峻に立ち上がり、かつ大きなエネルギーを必要とする低音をリアルに再現する。

 高効率で振動と漏洩磁束の少ない大容量トロイダル型電源トランスを搭載。音質に悪影響を及ぼす漏洩磁束を抑えるために、垂直方向の磁束漏れを抑えるアルミ製ショートリングに水平方向の磁束漏れを抑える珪素鋼板シールドを加えた2重シールドを施している。固定用のボルトは非磁性体の真鍮とし、磁界ループを遮断。

 ブロックコンデンサには、上級モデルで培ったノウハウをフィードバックしたニチコン製のマランツ専用カスタム品を採用。大容量と高速な電源供給能力を両立させたという。

 MM対応のNF-CR型フォノイコライザー「Marantz Musical Phono EQ」も新開発して搭載。1段あたりのゲインを下げた2ステージアンプ構成と、可聴帯域内コンスタント・カレントフィードバック回路により低歪化。J-FET入力の前段アンプを採用することで、入力カップリングコンデンサを排除。信号経路の純度を向上させた。

 マランツオリジナルのスピーカーターミナル「SPKT-1+」を採用。コア部の真鍮削り出しパーツは従来通りだが、表面処理はリスニングテストの結果、従来のニッケル下地+金メッキの2層から、厚みのある1層のニッケルメッキに変更。直径5mmまでのケーブルに対応する。Yラグ、バナナプラグも使用可能。A/B 2系統のスピーカーターミナルを備え、バイワイヤリングや2系統のスピーカーの切り替えが可能。

 入力端子は、アンバランス×5、PHONO(MM)×1、パワーアンプダイレクト×1。出力端子はRECアウト×1、ヘッドフォン×1など。消費電力は220W、待機電力は0.2W。外形寸法は440×379×128mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は12kg。

マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」 背面
背面

音の進化を体験する

 サウンドマネージャーの尾形好宣氏は、「ND8006」と「PM8006」の進化点について、「前モデルを超えるサウンドパフォーマンスを目指して開発したが、具体的には、SN感の向上、音場感や見通しなどの進化に注力した」という。

マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」 サウンドマネージャーの尾形好宣氏
サウンドマネージャーの尾形好宣氏

 ND8006は多機能な製品であるため「デジタル・アナログ回路はてんこ盛りになっている。それゆえ、それぞれの回路が相互に影響しあわないように設計した。また、(CDやネットワークなどで)音を聴いている時は、単機能しか使っていない。聴いているソースの再生以外の機能はOFFにする事で、より高音質化できる可能性があると考え、高音質動作モードを搭載した」と説明。

 特に、プリ部が進化したPM8006では、電子ボリュームの採用により、クロストークやギャングエラーの極小化、空間表現力の向上などを説明。それだけでなく、「グルグル回るボリュームがちょっと……という話もあったので、従来のアナログボリュームの操作感をそのまま再現し、中身は電子ボリュームを使うという形を採用した」と、ボリュームダイヤルの感覚までこだわって開発した事をアピールした。

マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」

 実際にND8006と、従来のCDプレーヤー「SA8005」、ネットワークプレーヤー兼USB DAC「NA8005」を、それぞれの機能で聴き比べると、SN比や分解能が向上。音場がより広くなり、細かい音の動き方が見やすくなったのがわかる。情報量が増加したが、音像の輪郭をむやみに強調するような方向ではなく、音の質感はあくまで自然だ。

 プリ部が大きく進化したPM8006だが、前モデルと聴き比べると、特に低域の分解能がアップ。ベースの中の細かな音の輪郭が良く見える。同時に、低域の沈み込みや、ズバッと音が出て、スッと消えるトランジェントもアップしたように聴こえる。プリ部の改良により、パワーアンプの実力がさらに発揮された印象で、パワー部にも大幅に手が入ったようにも聴こえる、全体的な実力アップが印象に残った。

マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」
マランツ、CDもNASもHDDも再生できるデジタルプレーヤー「ND8006」とプリメイン「PM8006」