レビュー

ついにHDMI入力付き“ガチ”2chアンプ登場。マランツ「MODEL 40n」の凄さ

マランツ「MODEL 40n」シルバーゴールド

オーディオを取り巻く環境は激変した。以前は、CDプレーヤー、アンプ、スピーカーを買うのが定番だったが、近年はソースが変化。音楽配信の利用者が増え、スマホからの手軽なBluetooth再生も人気。Netflixなどの映像配信も当たり前のものになり、ディスクプレーヤーは必ずしも必要なくなった。“膨大な音楽・映像コンテンツを便利かつハイクオリティで楽しむ事”と“コンポが減るのでスペースや価格を抑えたオーディオシステム”が実現できるようになったわけだ。

そんな“新しい時代のオーディオ”を牽引しているのがマランツだ。これまでも、ネットワーク再生機能搭載のプリメインアンプ「PM7000N」(132,000円)や、ステレオアンプなのにHDMI入力を備えた「NR1200」(88,000円)を発売。音楽配信や映像、ゲームなども高音質で楽しみたい人達に「これ超便利じゃん」と受け入れられ、販売も好調だそうだ。

ステレオアンプなのにHDMI入力を備えた「NR1200」

一方で、PM7000N(132,000円)やNR1200(88,000円)の価格を見ると、ピュアオーディオのアンプとしては“入門~ミドルクラス”である事がわかる。リーズナブルな価格である事も人気の理由の1つなのだが、HDMI入力やネットワーク再生機能が欲しいのは初心者だけではない。オーディオファンも同じなのだ。

そんな人達が、「おおっ!」と椅子から立ち上がるようなアンプが登場する。製品名は「MODEL 40n」。ネットワーク再生、HDMI入力、Bluetooth受信、Phono入力まで搭載した2chアンプで、3月発売。価格は286,000円。さすがに“いいお値段”なのだが、このアンプ、実に面白い製品に仕上がっている。

MODEL 40n

“使い出”のあるアンプ

何が面白いのか。まずはMODEL 40nの特徴をざっくり説明しよう。前述の通り、基本的には2chのアナログアンプ。そこにDAC(ESSのES9016)も搭載し、ネットワークプレーヤー機能、Bluetooth受信機能、HDMI入力、Phono入力(MM)も備えている。

ネットワークプレーヤーとしては、Amazon Music HD、Spotify、AWA、SoundCloud、Tune-Inが再生できる。NASなどに保存したハイレゾファイルもネットワーク経由で再生でき、USB-Aに接続したUSBメモリからも再生可能だ。ハイレゾはDSD 5.6MHz、WAV、FLAC、Apple Losslessは192kHz/24bitまで再生できる。「アレクサ」と呼びかけて音声でのコントロールも可能だ。

Bluetooth受信はSBCコーデックに対応し、プロファイルはA2DP、AVRCPをサポート。Wi-FiとLAN端子も搭載。AirPlay 2の受信も可能だ。光デジタル、同軸デジタル入力なども備えているので、先ほど“必ずしも必要ない”と書いたCDプレーヤーをあとから追加しても、接続しやすい。

MODEL 40n

そして、テレビと接続するためのHDMI入力を備えているのが大きな特徴。HDMI ARCに対応し、HDMIケーブル1本でテレビの音声をMODEL 40nから再生できる。

背面端子部。HDMI入力がある

ご存知の通り、薄型テレビの内蔵スピーカーは音がショボい事が多いが、本格的なピュアオーディオアンプのMODEL 40nと、オーディオスピーカーで鳴らせば、別次元のサウンドが楽しめる、というわけだ。

テレビの音を再生する事もできる

使い方のイメージとしては、例えば「スマホで聴いてた曲をBluetoothで飛ばしてMODEL 40nからBGM的に再生」でき、「ハイレゾの音楽配信サービスで好きな楽曲を、じっくり聴く」事も可能。「テレビで遊んでいるゲームのサウンドをMODEL 40nで聴く」とか、「Netflixの映画をオーディオスピーカーで迫力満点に再生」も可能だ。

要するに、生活の中の様々なシーンで活用できる。昔のプリメインアンプと比べると“使い出”があるアンプになっており、それはコストパフォーマンスの高さにもつながっている。

デジタル系だけでなく、本格的なフォノイコライザーを内蔵し、Phono入力(MM)を備えているのも見逃せないポイント。アナログレコードを良い音で楽しみたいという人にも、注目のアンプと言えるだろう。

アナログプレーヤーとも接続できる

HDMI ARCを徹底的に高音質化

一方で、ここまでの特徴は、先ほど書いた下位モデルでも実現している。MODEL 40nが“ガチ”で面白いのはここからだ。

AV Watch読者の多くは、HDMI ARCについて、“テレビとアンプをHDMIケーブル1本で接続できる便利な機能”と認識しているだろう。実際にその通りなのだが、今まであまり“HDMI ARCの音質面はどうか”という部分には注目されてこなかった。

しかし、ガチなピュア用アンプであるMODEL 40nは容赦しない。HDMI ARCの音質を向上させるために、サウンドマスターの尾形好宣氏を中心に専用のセクションを立ち上げ、ARCの音声が実際にどのように処理されるかというコアな部分にまでメスを入れ、改善に取り組んだ。

サウンドマスターの尾形好宣氏

具体的には、HDMI入力をデジタルボードも含めて徹底的にチューニングし、高音質化。サウンドマスターの尾形氏は「これによる音質改善効果は、かなり大きかったです」と語る。

信号の劣化を抑えるために、コントロール信号(EDID)だけをHDMIインターフェースに入力し、ARC伝送された音声信号(SPDIF)を、HDMIインターフェースをスルーして、直接DIR(セレクター)に入力しているのも工夫の1つだ。

劣化を抑えるために、ARC伝送された音声信号(SPDIF)は、HDMIインターフェースをスルーして、直接DIR(セレクター)に入力される

さらに、ARCのサウンドをより高めるために、電源供給の強化、低ノイズ化、接続経路やグラウンドの見直しも実施している。HDMI ARCサウンドの改善に、ここまで深くこだわったアンプは、MODEL 40nが初めてだろう。

なお、AVアンプではないので、HDMI入力は備えているが、再生可能なのはリニアPCMのみで、ドルビーデジタルやDolby Atmosなどのビットストリーム信号は入力できないので、そこは注意が必要だ。また、ARC非対応のテレビの場合は光デジタル接続などを使う必要がある。しかしながら、しっかりとしたアンプ+スピーカーで再生した2ch音声は、そんじょそこらのマルチチャンネルサラウンドに負けない魅力がある。

ガチなピュアオーディオらしいこだわり

アンプにDACやネットワーク系などのデジタル回路を内蔵すると、相互干渉が音質劣化の原因になる。そうならないように、対策も徹底されている。

筐体内部の写真を見ると、細長い銀色のケースが見える。これがデジタル回路を全て収めたシールドケースだ。ノイズなどの影響が、アナログアンプ回路に伝わらないように、完全にケースで覆っているというわけだ。

筐体内部
細長い銀色のシールドケース内に、デジタル回路を収納している

しかもこのケース、単にデジタル回路に蓋をしているわけではない。シールドケース内部が2層になっており、ネットワークオーディオ用のHEOSモジュール + HDMIの基板と、DAC+Phono基板が別の層に配置されている。1層と2層の間にもシールド板が設けられているほか、DACとPhono基板の間にもシールドプレートを追加している。要するに、それぞれの基板を個別の部屋に入れているような構造になっているわけだ。

シールドケースの内部
DACとPhono基板の間にもシールドプレートを追加

パワーアンプ部も超強力だ。定格出力は70W×2ch(8Ω)、100W×2ch(4Ω)なのだが、マランツはこの数字だけでなく、“瞬時電流供給能力”も重視している。この瞬時電流供給能力は、20年近く前からマランツが改良に取り組んできたものだ。

キッカケは、英国の人気スピーカーメーカーBowers & Wilkins(B&W)にある。御存知の通り、マランツも傘下に入っているディーアンドエムホールディングスは、長年、B&Wの日本での販売を担当。尾形氏が製品開発時に、音質検討で使うリファレンススピーカーも、B&Wのものだ。

B&Wの大型スピーカーは低インピーダンスなものが多いが、それらのスピーカーは、瞬間的に大電流を要求する事があり、それに対応できるアンプでなければ、うまく鳴らせなかった。瞬時電流供給能力とは、要するに“瞬間的に、どのくらい電流を流せるか”という能力で、コンデンサーをダムに例えるなら、そこから水を出す時に、蛇口が小さいと、いくらダムが巨大でも水はチョロチョロとしか出ない。ドバッと一気に、大量に出せるようにするため、水の流れる通り道を太くしたり、短くしたりする改善が、“瞬時電流供給能力を高める”わけだ。

MODEL 40nのパワーアンプ部では、新開発のアナログアンプを採用しており、今までのシングルプッシュプルではなく、倍増したパラレルプッシュプル型を採用。瞬時電流供給能力はPM7000Nの32A、PM8006の45Aを大幅に超える、68Aを実現している。

パワーアンプ部はパラレルプッシュプル型
瞬時電流供給能力はPM7000Nの32A、PM8006の45Aを大幅に超える、68Aを実現

安定して動作する事も、ピュア用アンプでは重要だ。MODEL 40nでは、パワーアンプのトランジスタを、巨大なアルミ製ヒートシンクに固定しているのだが、トランジスタとヒートシンクの間に、銅のプレートを配している。銅はアルミよりも熱伝導性が高いため、熱が短時間で均一に伝わりやすく、電流安定度を高めるそうだ。

プリアンプ部もフルディスクリート構成。マランツの代名詞とも言える、独自のHDAM回路を使っているが、MODEL 40nではこの回路も進化しており、歪み率を最大48%改善した新しいHDAMが使われている。

電源部分も強力で、直径129mm、重さ3.4kgの大型のトロイダルトランスがドカンと搭載されている。内部を見るだけでも、このアンプが“ガチ”なピュアオーディオアンプだとわかる。

直径129mm、重さ3.4kgの大型のトロイダルトランス

筐体の剛性もスゴイ。メインシャーシやリアパネルはスチール製で、厚さは1.2mm。フロントシャーシも1.2mm。さらにサイドカバーは5.7mmのアルミ製。ボトムカバーは3mmのスチール、トップカバーも1.2mm厚のスチールを使っている。両手でつかんでみると、ガッシリ具合が伝わってくる。

外観としては、新世代のマランツデザインとして2020年に登場したネットワーク再生機能付きのSACDプレーヤー「SACD 30n」、プリメインアンプ「MODEL 30」と同じテイストであり、筐体は「MODEL 30」のものをベースとしている。

ボリューム回路には、日清紡マイクロデバイスによる、MUSESブランドの新ボリューム素子「72323V」を使っている。可変ゲイン型となっており、通常のリスニング状況で使われるボリューム域(0-78)であれば、ゲインを抑える事でSN感を高めている。超大音量再生をするとゲインが上がるのだが、一般的な利用でそこまで音量を上げる事は滅多にないので、“普段使うボリューム域での高音質を追求した”わけだ。

ブラックモデル
付属のリモコン

HDMI ARCの音に驚く

普通のピュア用アンプであれば、CDの音から聴いてみるものだが、HDMI ARCが特徴のMODEL 40nなので、まずテレビと接続して、PlayStation 5でゲームや映画を見てみよう。

音を出す前に、「あー、これ便利だわ」と思うのが、HDMI CECで電源連動する事。要するに、テレビやMODEL 40nの電源がOFFの状態でも、PS5の電源を「ピッ」とONにすると、テレビもMODEL 40nも立ち上がり、MODEL 40nの音声入力もHDMIに切り替わる。

単に“便利”なだけでなく、MODEL 40nの活用という面でもこれは重要な機能だ。要するに「テレビをつければMODEL 40nも起動して、とりあえずMODEL 40nから音が出る」わけなので、オーディオ機器に詳しくない家族がテレビを見る時でもMODEL 40nのサウンドが楽しめる。「リビングに立派なスピーカーがあるけど、お父さんがいないと音がでない」みたいな事がないわけだ。

PS5で、Blu-rayの映画を再生する。トム・クルーズらが出演しているロック・ミュージカル映画「ロック・オブ・エイジズ」から、最後の方、「Don't Stop Believin」演奏シーン。スピーカーはB&Wのトールボーイである「804 D3」だ。

歌い出しは狭いライブハウスから始まり、途中で広大なコンサートホールへとシームレスに切り替わっていくシーン。ライブハウスのシーンでは、歌声の生々しさ、観客のざわめきの近さが、非常にリアル。ライブハウスが狭いので、それらの音が広がる空間も限定的である事が、音の響きでキッチリと描写される。左右への広がりだけでなく、テレビ画面の奥行方向にもグッと世界が広がっているのを、音で描写してみせる。

そしてコンサートホールへと切り替わると、音場が一気に拡大。深呼吸したくなるような空間の広さと、その空間を気持ちよく広がる歌声のスケール感がしっかりと出ている。まるで部屋の壁が無くなったような感覚だ。

音場が非常に広く、そこに定位する俳優達の音像もクリアかつシャープなので、2chスピーカーで鳴らしていても、左右と上下から音に包み込まれる感覚が味わえる。この臨場感は完全にホームシアターの“それ”であり、「あれ、本格的な2chアンプと、2chスピーカーで鳴らせば、サウンドバーとかシアタースピーカーいらないんじゃない?」という気すらしてくる満足感だ。

試しに、テレビ内蔵スピーカーに切り替えると、世界が激変。広大な音場はどこかに消え、音はテレビ画面の中でわだかまり、奥行きも無くなってしまう。上下のレンジも狭く、まるでカキワリを見ているような音だ。人の声にもテレビ筐体が鳴いた、プラスチックの響きが乗っており、不自然さが漂う。もはや音がどう変わったというレベルではないので、「一刻もはやくMODEL 40n + 804 D3の音に戻して!」と言いそうになる。

PS5のゲーム「ファイナルファンタジーVII リメイク」もプレイしてみよう。メニュー画面でおなじみの“クリスタルのテーマ”が流れているが、美しいあのメロディーが、凛とした空間にどこまでも広がっていく様子が聴いていて気持ちが良い。「スタート」を押すと「シャラーン!!」というような効果音が鳴るのだが、この音がメチャクチャクリアで、トランジェント良く、鋭く響いてギョッとする。ゲームが始まる前から「このゲーム、こんな音だったのか」と驚いてしまう。

昨今の大作ゲームは、映像だけでなく、サウンドもこだわりぬいて作られているので、プレイしている時の感覚は、もう完全に“映画”。もともとFFは映画のような演出が楽しめるゲームだが、MODEL 40n + 804 D3で再生すると、音の面でも“映画を操作している”感覚だ。前述のように、空間の広さや定位がしっかり出るので、むしろ映画よりも“現実のようなリアルさ”は上かもしれない。

Sting And Shaggy: NPR Music Tiny Desk Concert

もうちょっと、ソースのクオリティが低いものも聴いてみよう。テレビでYouTubeにアクセスし、スティングとシャギーが「Englishman in New York」を歌う「Sting And Shaggy: NPR Music Tiny Desk Concert」を再生してみた。

これは驚きだ。ベースラインの沈み込みの深さ、低音の厚みがズンズンとお腹に響いてくる。スティングの声の自然さと定位のクリアさ、コーラスの広がりも抜群だ。「YouTubeなんて圧縮音声だからたいしたこと無いでしょ」というイメージが180度変わり、「え、YouTubeってこんなに音が良かったの!?」と衝撃を受ける。反省して、YouTubeに上がってるライブやミュージックビデオを、片っ端から再視聴したい気分だ。

ちなみに、ここまでの映画やゲーム、YouTubeは、全てHDMI ARCで接続して聴いたものだ。ARCの高音質化を、ON/OFFで聴き比べられないので厳密な比較はできないが、ゲームやYouTubeを、今まで聴いたことがない生々しい、情報量の多いサウンドで再生できたのは、HDMIの高音質化に徹底的に取り組んだ成果と言えるだろう。

ピュアオーディオ用アンプとしての確かな実力

本格的な試聴室に移動。ピュアオーディオアンプとしてのポテンシャルも試してみよう。比較相手として、ネットワーク再生機能を備えたプリメインアンプ「PM7000N」(132,000円)を用意。HDMI入力は搭載していないが、MODEL 40nにとっては弟分のような存在だ。

ちなみに、弟分と言いつつ「PM7000N」は、B&Wのフロア型高級スピーカーの「800 D3」(ピアノ・ブラック仕上げならペア税別450万円)も鳴らせるポテンシャルを持つ。馬鹿にできない対戦相手だ。

PM7000N

ディスクプレーヤーからアナログでPM7000N、MODEL 40nに入力。まずはアンプとしての“素”のクオリティを比較してみる。楽曲は「宇多田ヒカル/One Last Kiss」と、フュージョンの「ウェザー・リポート」をピアノ・トリオでリアレンジする「Acoustic Weather Report 2」から「ドナ・リー」を再生した。

PM7000Nでドライブするサウンドは、ニュートラルかつワイドレンジ。低域のキレも感じられ、「ネットワークプレーヤー機能も込みで、13万円のアンプでよくぞここまで」と感心する音だ。これはこれで文句はない。

MODEL 40n

ではMODEL 40nは不要なのか、答えは否だ。MODEL 40nに切り替えた途端、空間の広さが一回り大きくなり、SN感もアップ。宇多田ヒカルのボーカルや、楽器1つ1つの音像がクッキリと鮮明になり、そこから発せられる音の1つ1つが力強くなる。

音場や音像だけではない。ベースの低域がグンと深く、重くなり、ドスドスという響きが体に押し寄せてくる。ボワッと膨らむ柔らかい低音ではない。シャープで切れ味の鋭さも兼ね備えた、鮮烈な低音だ。

低音がより沈む事で、音場というか、音楽そのものに安定感が出る。その上で、音楽の中の音がより細かく聴き取れ、音の響きが左右前後に広がり、消えていく範囲も広くなる。確かにPM7000Nも良い音だったが、MODEL 40nを聴くと「まいったな」と頭をかきたくなる。おそらく、家に帰って思い出すのはMODEL 40nの音だ。

同軸デジタル接続に切り替え、アンプ内蔵のDACも含めた音の違いをチェックすると、PM7000NとMODEL 40nの違いがより鮮明になる。

PM7000Nは、音の1つ1つの線が細くなり、やや“薄味”な音になる。“スッキリとした音”と言えなくもなのだが、アナログ接続時と比べると音像もやや薄くなるので、音楽の熱気みたいなものがもう少し欲しくなる。

対して、MODEL 40nは音像にしっかりと厚みがあり、低域も量感豊か。それでいて、デジタル接続ならではの鮮度の良さ、細かな音の分離感がしっかりと出ている。価格差があるので当たり前ではあるのだが、やはりMODEL 40nの方が1枚……、いや、2枚くらい上手なアンプだと実感する。

“趣味のこだわり”と“日常使い”の両立

10万円台のアンプのサウンドは十分高音質だ。配信された音楽を良い音で楽しむ事はできる。だが、MODEL 40nを聴いた時の、あの鮮烈な解像度、重い低音、遠くまで広がる音場を聴くと、「いや……趣味ならここまで追求したい!」という欲求が湧き上がってくる。理性を超えて“音に惚れて”しまう感覚は、まさに“ピュアオーディオ”の世界。プレミアムクラスのアンプならではの、抗いがたい魅力をMODEL 40nは備えている。

確かに、約28万円のアンプは気軽に買える値段ではない。しかし、MODEL 40nはネットワークプレーヤー、Bluetooth受信、テレビでも使えるHDMI入力まで備えており、これらの機能が入った上で、さらに2chアンプとしての高い実力を持っていると考えると、むしろリーズナブルな価格なのではと思えてくる。

趣味としてのピュアオーディオを追求していても、“スマホから転送する時はBluetoothスピーカーで”とか“テレビはサウンドバーで”とか、システムが別れてしまっている人がほとんどだろう。MODEL 40nは“せっかく買ったガチなピュアアンプ”を、趣味に没頭する時間“以外でも”活用できる。ピュアオーディオのクオリティを日常生活にもたらす……これこそが、MODEL 40n最大の魅力と言えそうだ。

(協力:マランツ)

山崎健太郎