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時計職人が作ったヘッドフォンや、「耳の中にスピーカー」コンセプトの「IN AIR」など

 東京・中野にあるAV機器の専門店フジヤエービックのデジタルスタイルショップが主催する「春のヘッドフォン祭 2018」が、4月28日(土)と29日(日)の2日間、東京・中野の中野サンプラザで開催中。ここではミックスウェーブやオンキヨー&パイオニアなどのブースをレポートする。

ミックスウェーブ

 ミックスウェーブのブースでは、64 AUDIO、ALO audio(Campfire Audio)、Beat Audioなど新製品に加え、香港の新興カスタムイヤフォンメーカー・FAudio(エフオーディオ)が初出展している。

 Campfire Audioからは2つのイヤフォンが参考展示。発売時期はどちらも未定。「ATLAS」は152,700円の予定で、筐体にステンレススチールを使い、ドライバはADLC 10mmダイナミック型のシングル。ケーブルはPure Silver Litz Cable(銀線)を採用する。

Campfire Audioの「ATLAS」

 「COMET」は、24,800円で発売を予定。こちらも筐体はステンレススチール。ドライバはバランスド・アーマチュア(BA)のシングルで、ケーブル素材はRemote Litz Copper Cable(銅線)を使っている

Campfire Audioの「COMET」

 qdcからは「Anole V3」というイヤフォンが登場。8万円程度での発売を予定し、発売時期は未定。BA×3基を搭載、DIPスイッチをハウジングに設けており、切り替える事で異なる4つのサウンドが楽しめる。

qdc「Anole V3」

 Beat Audioからは、ケーブル「Azurite」の試作機が出展。発売時期、価格は未定。銀をベースにした合金素材を使ったもので、グレードとしては「Prima Donnaクラス」になるという。

 Beat AudioのBluetoothケーブル試作機も参考展示。さらに、モデル名もまだ未定の試作ケーブルも展示されていた。

Beat Audio「Azurite」
Beat AudioのBluetoothケーブル試作機
試作ケーブル

 64 AUDIOからは「A4t」というイヤフォンが参考展示。価格と発売日は未定。BA×4基構成で、tia System、apex Technologyも採用している。A6t、N8、A12tなども出展された。

64 AUDIOの新製品は「A4t」
A12tも、新作フェイスプレートと共に展示

 初出展のFAudioは、音響設計のエンジニアとしてLGやVodafone、Miniwatで10年以上活躍したFung Wong氏が2014年に設立したメーカー。それ以前から、OEMや技術コンサルタントを含むオーディオ機器に関する研究開発を行なっていたそうだ。

 2015年には、ツアーギタリストであり、S3 Music Studio、Zoo Music Studio、Baron Pro Studioでミキシング・エンジニアをしていたKen Lee氏がファンダーとして参加。ワールドワイドでビジネスを展開している。

マネージングディレクターのKen Lee氏

 設立当初は「リモールド(アップグレード)」や「リシェル」といったサービスを提供しつつ、それと並行して新しいBAドライバの設計開発をKnowlesや中国のBAメーカーと実施。2016年に発表した処女作「KFシリーズ」は、ユニークなサウンドデザイン、高いコストパフォーマンス、独自のカスタムアートワークなどで、アジア圏で人気を集めたという。

 日本導入にあたってミックスウェーブでは、現行の「KFシリーズ」をブラッシュアップさせた新しいラインナップを、FAudioの開発責任者Fung Wong氏、Ken Lee氏と手掛けることに決定。一部製品については、ミックスウェーブとの共同開発となり、同モデルのサウンドデザインはミックスウェーブの宮永氏が担当する。

 ラインナップとユニット構成は、ハイブリッド型「Scale」がBA×1、ダイナミック×1。BAモデルの「Chorus」がBA×3、「Harmony」がBA×5、「Symphony」がBA×7。なお、Symphony以外は共同開発モデルとなる。

 さらに、ダイナミック型のモデルとして、「Passion」(自社設計9.5mmメディカルファイバーダイナミック型 + ステンレス製サウンドチューブ)、「Minor」(自社設計10mmダイナミック型 + 純銅製サウンドチューブ)、「Major」(自社設計10.5mmダイナミック型 + 無酸素銅製サウンドチューブ)も用意する。

FAudioの製品。ユニバーサルモデルの筐体デザインは試作段階だが、CNCで切削したメタルハウジングになるという
販売しているモデルではないが、技術力の高さを示すために作られたBA×22基搭載のイヤフォン

COWON

 COWONのブースでは、「PLENUE V」という小型・薄型ハイレゾプレーヤーを参考展示。底部に向かって薄くなる、独特のデザインが特徴。来場者の意見なども取り入れながら、日本展開を検討しているという。

 さらに、左右完全分離イヤフォンも参考展示。こちらはクラウドファンディングで製品化に向けてプロジェクトが進行している。

PLENUE V
左右完全分離イヤフォン

茶楽音人

 人気イヤフォンCo-Donguriの進化モデルとして、筐体の素材を真鍮にした「BRASS」モデルが参考展示。さらに、4.4mm、2.5mmのバランスケーブル採用バージョンも展示されている。既存モデルとの価格差はそこまで大きくはならず、買いやすさを維持した新製品になるという。

Co-Donguriの「BRASS」

タイムロード

 タイムロードブースでは、イタリア・Pathos(パトス) Acousticsのヘッドフォンアンプを参考展示。「インポールイヤー」と「オーリューム」の2機種で、音質だけでなく、真空管が露出したデザイン性の高さにも注目だ。

「インポールイヤー」
「オーリューム」
英CHORDの新USB DAC「Qutest(キューテスト)」も展示されている

GREEN FUNDING by T-SITE

 GREEN FUNDING by T-SITEのブースには、ユニークな製品が集まっている。クラウドファンディングを開始予定の「ROLLER MK01」は、スイス・バーゼルの時計工場の職人が手作りしたというヘッドフォン。

 純アルミニウムとステンレススチールで構成されており、ヘッドフォンのアーム部分が関節のように内側に曲がり、くるくると、巻物のように小さくできる。小さくした姿は、腕時計のバンドとそっくりだ。時計職人が手がけただけあり、高級時計のような雰囲気も漂うヘッドフォンだ。

時計工場の職人が手作りしたというヘッドフォン「ROLLER MK01」

 ドライバサイズは30mmで、インピーダンスは32Ω。密閉型。価格は50万円ほどになる予定だが、GREEN FUNDINGのクラウドファンディングではより低価格で購入できるメニューも用意される予定だ。

 「耳の中にスピーカーを入れる」というコンセプトで、アンドカラーが開発したのが「IN AIR」というイヤフォン。こちらはGREEN FUNDINGでクラウドファンディングがスタートし、既に目標金額を大幅に突破している。

 6mmの小型ダイナミック型ドライバが、ハウジングの先端に設置されたイヤフォン。通常のイヤフォンは、ユニットがハウジングの中にあり、そこからノズルを通して音が出るが、「IN AIR」はユニットがグッと先端に移動したようなデザインだ。

6mmの小型ダイナミック型ドライバを、ハウジングの先端に設置
ユニットの背後を覆うように、「AIR TUBE」というパーツを取り付ける

 そのユニットの背後を覆うように、「AIR TUBE」というパーツを取り付ける。これはユニット背後からの音を漏らさないようにすると共に、その内部で音を響かせ、耳穴の周囲にある外耳道や皮膚、聴覚器官を覆っている骨などにも音を伝える役割をしている。つまり、鼓膜に近い位置に配置したユニットからの直接音に加え、その周囲にも音を響かせ、そのサウンドもプラスして楽しむという仕組みだ。同社では「インエアーエルゴノミクス方式」と名付けている。

耳穴の周囲にある外耳道や皮膚、聴覚器官を覆っている骨などにも音を伝える

 実際に聴いてみると、ユニットからのダイレクトなサウンドが明瞭に聴き取れると同時に、開放型ヘッドフォンを聴いているように、広がる音がどこまでも遠くへ響いていくのがわかる。トリプルフランジのイヤーピースで、耳穴の奥に深く挿入するカナル型イヤフォンの場合、ダイレクトな音は楽しめるが、音場は狭くなりがちだ。「IN AIR」は、カナル型のダイレクトさと、ヘッドフォンの開放感の“いいとこどり”をしたようなサウンドで、非常にユニークな製品だ。

「IN AIR」

オンキヨー&パイオニア

 オンキヨー&パイオニアのブースでは、オンキヨーブランドのハイレゾプレーヤー「DP-S1」、「DP-S1A」、パイオニア「XDP-20」、「XDP-30R」において、今後予定している新機能である、aptX HD対応を先行体験できる。今年の「ポタ研」で実施した機能のリクエスト投票で要望が特に多かったという機能で、ブースでは「DP-S1A」と「XDP-20」を使用。夏頃のファームアップを予定しているという。

aptX HDでのBluetooth接続を体験できる

 それ以外にも、4月18日にアップデートを行なった「Music App」(v1.9.0)を搭載したプレーヤーを使い、新機能の体験も可能。

 さらに、現在開発を進めているというマグネシウム振動版を搭載したヘッドフォンを参考出品。試聴もできる。設計担当者も同席し、素材や製品に関する質問を受け付けるほか、感想も直接伝えられる。

マグネシウム振動版を搭載したヘッドフォン。外観は実際の製品とは異なる

エミライ

 4月27日から発売された、米MrSpeakers初の静電型ヘッドホン「VOCE」(ボーチェ/MRS-VC-20)が登場。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は39万円前後。

米MrSpeakers初の静電型ヘッドホン「VOCE」

 また、それをドライブするアンプとして、エミライが今後取り扱いを予定している米HeadAmp Audio Electronicsの「Blue Hawaii Special Edition」を展示。静電型ヘッドフォン向けアンプではないが、他にも、「GS-X MK2」、「Gilmore Lite MK2」の2機種を紹介している。

米HeadAmp Audio Electronicsの「Blue Hawaii Special Edition」

 5月1日から取り扱いを開始する、米MYTEK Digitalのコンシューマ―・オーディオ製品も展示。新製品の「Brooklyn DAC+」と「Liberty DAC」。また、これまで扱っていた今井商事が販売していたハイエンドモデル「Manhattan DAC II」も、エミライが継承して扱っていく。

左からMYTEK Digitalの「Liberty DAC」、HeadAmp Audio Electronicsの「Gilmore Lite MK2」

 FiiOの新製品も紹介。コンパクトなポータブルハイレゾプレーヤー「M7」や、USB DAC/ポータブルアンプ「Q5」、プレーヤーの「X7 Mark II」や「Q5」に装着できる、4.4mmのバランス出力搭載アンプモジュール「AM3B」などに注目が集まっている。

コンパクトなポータブルハイレゾプレーヤー「M7」

final

 S'NEXTは、finalブランドの人気イヤフォン「Eシリーズ」のリケーブル対応モデル「E5000」、「E4000」を5月10日より発売予定だが、その2機種を出展予定。E5000はステンレス鏡面仕上げの筐体を、E4000アルミニウムの黒アルマイト仕上げの筐体を採用。ドライバはいずれも6.4mmのダイナミック型で、ドライバ背面の内部筐体に音響レジスターを搭載し、中低域の特性をコントロールしている。

E5000
E4000

トップウイングサイバーサウンドグループ

 Lotooの新ポータブルプレーヤー「PAW Gold TOUCH」(パーゴールドタッチ)を展示。2018年夏頃に発売予定で、価格は未定。タッチパネル方式の3.77型液晶ディスプレイを搭載。OSはAndroidでもLinuxでもない独自の「Lotoo OS」で、「音質最優先思想を貫き、また動作も起動2秒という驚異的な速さを誇っている」という。

「PAW Gold TOUCH」

 4月28日発売、iFi audioのDAC内蔵ポータブルヘッドフォンアンプ「xDSD」も紹介。価格は54,000円。DAC搭載のアンプで、micro iDSDと同等のスペックを持ちながら、サイズはnano iDSDよりもさらに小さくなっている。

iFi audioのDAC内蔵ポータブルヘッドフォンアンプ「xDSD」

HiBy Music Informationのハイレゾプレーヤーなど

 ヘッドフォンブランドのKuraDaを展開する飯田ピアノが国内販売代理店となり、5月中旬に発売を予定しているのが中国HiBy Music Information Technologyのハイレゾプレーヤー。「HiBy R6」と「HiBy R3」の2機種で、価格はR6のステンレスモデルが69,800円、アルミニウムモデルが59,800円。 R3は26,800円(予価)。

左から「HiBy R3」、「HiBy R6」

 HiBy R6は、DACにESS製の「ES9028Q2M」を2基搭載。DSD 11.2MHzやPCM 384kHz/32bitなどの再生に対応。Snapdragon 425と、3GB RAMを備える。Android SRCを迂回するビットパーフェクト再生が行なえ、“ほぼ全てのAndroidアプリからロスのないオーディオ出力を可能にする”という。R6専用にカスタマイズされたアプリHiByMusic3.0を搭載する。

 HiBy R3は、アルミ合金製シャーシのコンパクトモデルながら、DSD 11.2MHzやPCM 384kHz再生に対応。DACはESS ES9028Q2M。ヘッドフォン出力は2.5mm 4極バランス。

FitEarのカスタムイヤフォン新製品「224DTW」

 FitEarのブースでは、カスタムイヤフォンの新製品として「224DTW」を参考出品。2ウェイ、2ユニット、4ドライバ構成になる。発売日や価格は未定だ。

セーフリスニングと、女性アイドルユニットTask have Funのコラボが実現。坂本萌音が現実世界に