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ソニー、アーティストの演奏を360度音声配信でリアルに聴く「360 Reality Audio」

ソニーは、米国ラスベガスで行なわれる「CES 2019」において、新たな音楽体験を実現する技術「360 Reality Audio」を発表した。アーティストが演奏している空間で聴いているような臨場感/立体感のある音を、スマホなどのストリーミングサービスで楽しめるというもの。主要音楽レーベルや音楽配信サービスのDeezer、nugs.net、Qobuz、TIDALなどと連携し、対応コンテンツの制作から配信、再生に至るまでの技術提供を通じて、エコシステムの形成を進める。クリエイターやアーティスト、音楽ファンに向けても提案。新しいエンタテインメントの創出を目指す。

「360 Reality Audio」

「360 Reality Audio」の技術で目指しているのは、「演奏や録音の現場で音楽が生まれた空間を、その場に居合わせているかのようにリアルに再現する」こと。クリエイターのイメージする、立体的/動的な音楽空間をリスナーに届けることも可能になるという。

リスナーの周囲360度全方位に音を配置でき、聴取位置より下方の音も聴こえるようにすることで、ライブ会場などの床面で反射した音なども感じることで、リアルな体験ができる点を特徴としている。ソニーが音楽制作などの業界向けに制作、配信、再生のソリューションを提供。クリエイターからリスナーまで、一気通貫のフロー構築を目指す。

使用する音声はオブジェクトベースで、オープンフォーマットのMPEG-H 3D Audioをもとにしたフォーマットにより、対応サービスと機器を増やしていく。

音源をオブジェクト化する制作ツールをソニーが開発・提供し、クリエイターはこれを使って楽器の音を3次元空間に自由に配置できる。音声はPCM 48kHz/24bit対応。配信は、最大24オブジェクト、1.5Mbpsのフォーマット。10オブジェクトの場合は640kbps、16オブジェクトでは1,024kbps。再生する機器/サービスに合わせて設定する形となる。音楽ストリーミングサービス事業者などの様々なパートナーに向けて、フォーマット規格書の公開を計画している。

ソニーが開発する制作ツールを使い、それぞれの音源に位置情報を付加。360度全天球空間にオブジェクトとして配置可能。オブジェクトをダイナミックに移動でき、音楽制作者の創造性を喚起するという。

再生は「Music Serviceアプリ」用に再生ライブラリを供与。通常のヘッドフォンでも立体的に聴ける。アプリに備えたデコーダー/レンダラーによってオブジェクトオーディオを最大13chの音声とし、バーチャライザーで、標準HRTF(頭部伝達関数)に基づいた音声に変換すると、ヘッドフォンで聴ける。

また、オープンフォーマットに基づいて互換性のあるスピーカーは、ソニー以外も開発可能。再生する機器側でスピーカー構成に合わせてレンダリングする。スピーカーは、13台を使う本格的なリファレンススピーカー配置から、サウンドバーのような一体型まで、様々な展開が可能だという。

ヘッドフォンを数多く手掛けているソニー独自の技術も活用。個人の耳を撮影した写真から、その人に合った音に最適化できるという。人の頭や耳の形は異なるため、実際に耳へ伝わる音にも違いがあるが、それを補正するために専用のマイクなどで測定しなくても、スマホなどで撮った耳の写真から、簡単に最適化できるという。

ソニーは、様々なオーディオ機器での対応を検討。ヘッドフォンやワイヤレススピーカーでの技術開発を進めている。

ヘッドフォンの場合、「360 Reality Audio」対応のコンテンツがあれば、専用機器の必要なく、従来のヘッドホンでは実現困難だった臨場感のある音場を再現できるという。ただし、より良い体験のためには、個人の聴感特性を計測し、再生音に信号処理を施すことが必要となる。スピーカーの場合は、全方向に音を放射するスピーカーシステムで再生可能となる予定。

他社のオーディオ機器でも、ソニーの公開する配信フォーマットに対応すれば360 Reality Audioが再生可能とのこと。中でもヘッドフォンは、対応配信サービスのアプリケーションを使用するだけで再生可能となる予定。

ライブ・ネーション・エンタテインメントと協業

ソニーのビデオ・オーディオ事業を担うソニービデオ&サウンドプロダクツと、ライブエンタテインメント企業であるライブ・ネーション・エンタテインメントが、360 Reality Audioの普及に向けて、対応コンテンツの企画・制作で協業する事も発表された。

ライブ・ネーションが運営する施設で行なわれる「The Wombats」(ザ・ウォンバッツ)、「AJR」(エー・ジェー・アール)、「Good Charlotte」(グッド・シャーロット)、「Kodaline」(コーダライン)などのアーティストのライブ音源が収録され、「360 Reality Audio」対応コンテンツとなる予定。

また、ライブ・ネーションが運営する全米6カ所のコンサートホールなどで、ソニーと360 Reality Audioのブランディング活動も実施される。