ニュース

Noble Audio「FALCON」10月25日発売、“Wizard”チューニングの秘密が明らかに

エミライは、Noble Audio初の完全ワイヤレスイヤフォン「FALCON」の一般販売を10月25日から開始する。それに先駆け、18日に発表会を開催。Noble Audioの“Wizard”ことジョン・モールトン氏が実際にどのように音質チューニングを行なったかなどの詳細を説明した。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は16,800円前後。

Noble Audio初の完全ワイヤレスイヤフォン「FALCON」

なお、製品の詳細や音質の試聴インプレッションについては、既に掲載しているレビュー記事を参照のこと。

「FALCON」装着イメージ

「FALCON」開発の経緯

ジョン・モールトン氏は、ビデオメッセージで登場。FALCON開発の経緯について、「市場のトレンドや業界内で起きつつある事を見て、(中略)市場の需要に応える製品を作った方が良いと感じていた。また、私自身、高い自由度を与えてくれるTWS製品のアイデアが好きだった。オフィスで一日中働いている時には特にそれを感じる。音楽を聴くだけでなく、ニュースやその他の事、働いている間も外の世界と接していられることが好きなのだが、TWS製品ならそれができる」と説明。

ジョン・モールトン氏

しかし、「小さな会社なので、開発に必要な十分な時間もリソースもなかった」という。そこで、エミライがTWS製品の生産販売に必要な法的規制をクリアするための、各国での申請や手続き、製造事業者の紹介などを担当。その結果、ジョン・モールトン氏を筆頭としたNoble Audioのチームが、製造事業者とタッグを組み、共同作業でFALCONを完成させたという。

DSPを活用し、Noble Audio有線イヤフォンのサウンドを再現

音質面の特徴は、ドライバーに新開発の「Dual-layered Carbon Driver(D.L.C.Driver)」を採用したところ。完全ワイヤレスイヤフォンで採用例が多いグラフェン・ドライバーの欠点を克服したという新しい構造で、ドライバーの樹脂層の上にカーボンファイバー層を重ねた特殊な二層構造を採用。グラフェン・ドライバーと比べて歪みを約1/2に低減、伸びやかな高域表現を可能にしたという。

その新開発ドライバーの特性を生かしたアコースティックダンパーによるチューニングに加え、DSPによるドライバーの特性の調整も実施。物理的によるチューニングと、信号処理によるチューニングを掛け合わせることで、理想的な特性を目指している。

モールトン氏によれば、チューニングにあたり、Noble Audioの有線イヤフォンを開発現場に持ち込み、その周波数特性を計測。グラフ化し、DSPにその特性を入力、FALCONのプロトタイプに反映させるという作り方で、開発していったという。

しかし、周波数特性をコピーしただけでは同じ事にはならない。それは、有線イヤフォンとFALCONではドライバーが異なるためだそうだ。しかし、細かなチューニングを繰り返す事で、有線イヤフォンのサウンドへと近づけていったという。

音の“濁り”をクリアにするため、超低域をあえて減衰させる

“Wizard”によるチューニングのポイントも、その一部が明かされた。モールトン氏によれば、チューニングには長年専門としてきた聴覚学の知識が活用されており、FALCONでは「マスキングの上方拡大」という現象の回避がテーマだったという。

これは、「低音のレベルが大きければ大きいほど、より高い周波数まで幅広い帯域の音がマスキングされ、明瞭度が低下する」というもの。モールトン氏はこれを「音が濁っている」と表現しており、「多くのTWS製品や、市場にある多くの民生用音響製品ではこの現象が発生していると考えている」という。

FALCONではこれを防ぐために、「超低域をかなりシャープに減衰させた」という。このような特性とすることで、「マスキングの上方拡大」を回避。明瞭な高音質サウンドを実現したそうだ。

充電ケースに収納したところ
イヤーピースはePro audio製「Horn-Shaped Tips」を採用。最高の音質を得るために、精密なコンピューターモデリングと試聴を繰り返して開発。独自のホーン形状ノズルを採用したのが特徴

「紛失安心補償サービス」を用意

エミライの島幸太郎氏は、完全ワイヤレスイヤフォンの理想型として、「接続品質」、「音質」、「使いやすさ」という製品の品質と、「安心して使えるサポート体制」が重要だと説明。

接続品質の面では、最新のQualcomm製SoC「QCC3020」を採用。送信側デバイスから親機側イヤフォンを経由して子機側までデータをブリッジして伝送する「True Wireless Stereo(TWS)」方式と、左右イヤフォンへそれぞれデータを伝送する「TrueWireless Stereo Plus(TWS+)」にも対応している。

さらにSoCだけでなく、Bluetoothデバイスとの接続安定性を高めるアンテナを、実際に装着した状態で安定通信できるように配置。「装着した時に、最も電波が減衰しにくい仕様になっている。ソフトウェア、SoC、アンテナの三位一体ではじめて実現したもので、これらの技術を総称して“High Precision Connect Technology”と名付けている」という。

「使いやすさ」の部分では、水没にも耐えるIPX7対応の設計になっている事や、年内にiOS/Android向けに、細かい設定変更が可能になるアプリを提供する事を説明。アプリでは、現在使っているコーデックや、イヤフォン本体ボタンの機能変更、イコライザー機能、OTAによるファームウェアアップデート機能などを搭載していくという。

「安心して使えるサポート体制」として、「紛失安心補償サービス」を用意。イヤフォンの左チャンネル、右チャンネル、そして充電ケース、この3つの内、どれか1つを紛失した場合、残ったイヤフォン一式を返送すると、8,000円で新品のFALCONへと交換してもらえるサービスだ。

従来は「イヤフォンの左チャンネル、右チャンネル、いずれかを紛失した場合」とされていたが、今回新たに、充電ケースも対象に加わった。さらに、専用コールセンターも10月23日に開設。使い方の相談、修理に関する相談にも対応するという。電話番号などは、Noble Audioの日本サイトでアナウンスする。

「紛失安心補償サービス」の概要