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アップル「Final Cut Pro X」アップデート。プロキシ強化やSNS向け自動化ツールなど

アップルは25日(米国時間)、動画編集ソフト「Final Cut Pro X」をアップデート。プロキシファイルに関連した機能強化を行なったほか、高解像度ファイルを扱うリモート編集作業などを進化。ソーシャルメディア向けトリミングの自動化ツールなども追加。8K Canon Cinema RAW Lightの再生・編集にも対応した。バージョンナンバーは「10.4.9」で、既存ユーザーは無料でアップデートできる。

今回のアップデートでは、プロキシを用いるワークフローを大幅に強化。編集作業に用いるライブラリの移動が簡単になり、巨大な高解像度ファイルを伴うリモート作業が簡素化された。

具体的には、Final Cut Proとしては初めて、ProRes Proxy、またはH.264コーデックを用いて、オリジナルサイズの12.5%まで縮小したプロキシファイルを作成できるほか、プロキシメディア、イメージ、オーディオの各ファイルを外部またはネットワーク接続されたドライブにまとめられるようになった。Final Cut Proのライブラリも作成済みプロキシに再接続可能。またXMLを利用すれば、他社製のアプリケーションで生成されたプロキシメディアに接続できる。

新アップデートで、プロキシファイル作成をサポートした

ソーシャルメディア向けのツールも強化。

プロジェクトで使用中の各クリップは、機械学習を用いて自動的に主要な動きを解析。Smart Conformによる高度なトリミング作業を通じて、スクエア、縦型、その他の任意サイズのビデオに変換することができる。Instagram、Snapchat、Twitterのような人気のプラットフォームに最適という。

またTransform Overscanによって、拡大·縮小、回転、位置を調節する際にトリミング境界の外側の部分が表示されるため、トリミングの位置合わせを簡単に行なえるほか。Custom Overlayを追加し、横型以外のフレームにテキストやグラフィックを配置する際のガイドに使えるようになった。

ソーシャルメディア向けツールを使い、スクエアや縦型の自動トリミングが可能

ISO、色温度、露出オフセットのようなProRes RAWカメラ設定が、初めてインスペクタに表示されるようになった。ほかにも、隣接するクリップ間のオーディオのクロスフェードもワンステップで適用できるようになったほか、新しいコンテクストメニューにより、プロジェクトを閉じたり、タイムラインの履歴を消去したり、クリップやプロジェクトを各ファイルの最終変更日に基づいてリスト表示で見やすく分類できる。

今回のアップデートでは、RED RAW、およびCanon Cinema RAW Lightフォーマット用の新しいMetal対応プラグインにおいてパフォーマンスの向上を実現。

8K RED RAWビデオをProRes 422に変換する速度はMac Proで最大2倍、MacBook Proでは最大3倍まで向上した。さらに、Final Cut Proでは初めて、8K Canon Cinema RAW Lightの再生·編集も可能になっている。

360度ビデオでの作業では、ステレオスコピック3Dビデオに対する手ぶれ補正を行ない、360度ビューアで左右の目に対する個別のビデオストリームを使って映像を確認可能。リモートコンテンツを使った作業も、Frame.ioワークフロー機能拡張などのウェブベースのアセット管理アプリケーションからバックグラウンドでダウンロードしながら、作業を開始できるようになった。

隣接するクリップ間のオーディオのクロスフェードをワンステップで適用できる

Final Cut Pro Xと合わせ、「Motion」「Compressor」もアップデートされた。

Motionでは新たに、プロユーザーに向けのエフェクト、グラフィックス作成のための新機能を用意。他社製3Dモデルが読み込めるほか、USDZフォーマットの3Dモデルを収めた内蔵ライブラリから選んで、タイトル、ジェネレータ、エフェクト、トランジションに利用可能。さらに3Dモデルの位置や回転、拡大·縮小をビヘイビアやキーフレームで操作したり、既存のリプリケータ、エミッタ、ライト(照明)、カメラを利用することで、より高度なグラフィックス作成が可能になった。

Motionでは、3Dオブジェクトのサポートが強化された

Stroke Filterという新ツールにより、オブジェクトやテキスト要素のアウトラインを各々のアルファチャンネルを使って自動的に取得可能。取得したアウトラインにオフセットを設定して動かしたり、同じオブジェクトに対して複数のStroke Filterを適用したり、あるいはグラデーションツールを使って異なる色が設定された複数のストロークを作成したりできるという。

Compressorでは、カスタムLUTエフェクトのサポート、各社カメラのLUTを利用してログエンコードされた映像をSDR、またはHDR出力に変換する機能、その他のワークフロー強化につながる機能を搭載した。

Compressorでは、カスタムLUTをサポート。クリエイティブな色合いなどを、エンコーディングプロセスの一環として適用できるようになった