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ソニー、空撮ドローンや“マスモニに迫る”4K液晶モニタなどプロ機披露

空撮ドローン「Airpeak S1」

ソニーは1日、放送/業務などの映像制作機器のメディア向け展示イベントを開催。開発中の新4Kカメラシステムや、空撮ドローン「Airpeak S1」、4K HDR対応ピクチャーモニター「PVM-X3200」などを展示した。

HDCシリーズの新4Kカメラシステム

2021年内の発売を目指している4Kカメラ

2021年内の発売を目指している4Kカメラ。グローバルシャッター機能搭載のスーパー35mm単板CMOSイメージセンサーを使用したHDCシリーズの新モデル。システムカメラの周辺機器と連携できる使い勝手を持ちながら、音楽ライブやドラマ制作で求められる23.98p/29.97pでの撮影や、被写界深度の浅いシネマライクな表現が可能。

HDR(HLG・S-Log3)とSDRの同時出力も可能で、ソニーのSR Live for HDRワークフローに対応できる。

また、HDC-5000/5500/3500/P50向けに、特注対応として可変NDフィルターを内蔵させるサービスも用意。レンズの絞りをあけたまま、被写界深度を変えずに最適な露出が得られるだけでなく、可変NDフィルターであるため、異なるNDフィルターを交換する時のような映像のショックも無いのが特徴。音楽ライブで同じアングルで撮影している時でも、ライティングの変化などで露出を変更したい時など、シネマライクな表現を維持しながら、使い勝手よく撮影できる追加機能としてアピールしている。

クリエイター向けカメラとして展開している「Cinema Line」の「VENICE」、「FX9」、「FX6」も展示。USB給電しながら、FX6で長時間撮影するデモや、アプリの「Imaging Edge Mobile」を使ってリモート操作するデモを行なっていた

空撮ドローン「Airpeak S1」

ドローンAirpeakの第一弾モデル「Airpeak S1」

9月発売の、ドローンAirpeakの第一弾モデル「Airpeak S1」も展示。フルサイズミラーレス一眼カメラ「α」を搭載可能なドローンとして世界最小クラスを実現しており、映像制作クリエイターなどのプロ向けに販売する。価格はオープンプライスで、実売価格は110万円前後。ジンバルやカメラは別売となっている。

α7S IIIを搭載したところ
送信機

独自開発のモーターやプロペラ、制御システム、センシング技術などを搭載し、高い敏捷性を備え、ダイナミックかつ緻密な飛行が可能。「機体を意のままに操れる」という送信機と、センシングによる障害物検知や自動飛行機能、機体や飛行情報のクラウド管理による安全な飛行が可能という。

最高速度は時速90km。独自開発のキーデバイスを組み合わせた推進デバイスと飛行制御で最大20m/sの耐風性能を持ち、強風下でも安定飛行が可能という。外形寸法は591.9×511.8×526.8mm(幅×奥行き×高さ)で、重量はバッテリーパックを除いた状態で約3.1kg。

ソニー製イメージセンサーが内蔵されたステレオカメラを機体5方向(前後左右下)に配置。それらのカメラ情報を同時に高速処理できるソニー製ビジョンセンシングプロセッサと独自アルゴリズムを搭載。それら視界情報とIMU(Inertial Measurement Unit)、コンパス、気圧、赤外線測距などのセンサー情報を統合し、自己位置・姿勢を高精度に推定して周囲の空間をリアルタイムに認識できる。これにより、屋内や橋梁下などGNSSを受信しづらい条件下でも安定した飛行が可能。

ソニー製イメージセンサーが内蔵されたステレオカメラを機体5方向(前後左右下)に配置
トンネル内を飛行しているところ
センサーを使って周囲の状況をマッピングしながら、安全に飛行している

高い操作性を実現した送信機と、機体と機材を一元的に操作できるモバイルアプリ「Airpeak Flight」も用意。αの映像をリアルタイムに確認しながら機体やカメラ、ジンバルを操作できる。アプリでは、機体と送信機、カメラ、ジンバルを統合し、画面上で飛行距離やバッテリー残量などの状態確認や、各種操作、設定変更が可能。

プロ向け4K液晶モニター「PVM-X3200」

左が31型4K液晶マスターモニター「BVM-HX310」、右が32型のピクチャーモニター「PVM-X3200」

「PVM-X3200」は10月発売のピクチャーモニターシリーズの新機種で、シリーズ最大サイズの32型。マスターモニターに迫る表示品質を持ちながら、価格を抑えているのがピクチャーモニターシリーズの特徴で、このモデルの価格は209万円。

a-Si TFT アクティブマトリクスLCDパネルを採用。パネルのアスペクト比は16:9で、解像度は4K/3,840×2,160ドット。パネル表示フレームレートは48/50/60Hz。

全白時1,000cd/m2の高輝度性能を実現。マスターモニター「BVM-HX310」と同一色域を持つ広色域パネルを用いることで、映像制作ワークフローにおける一貫した色再現が可能。

シーンに応じて動的にコントラストを変動させる、新開発のバックライト駆動システム「ダイナミックコントラストドライブ」も搭載。明るいシーンと暗いシーンが混在するコンテンツで、各シーンの明部から暗部の全体のコントラストのバランスを確認する用途に使用できる。

PVM-X3200/X2400/X1800向けのHDR-SDR変換ライセンス「PVML-HSX1」も紹介。これは、別途ハードウェアを使わず、モニター内部でHDRからSDRへ信号を変換し、画面に表示できるようにする機能。

特徴として、スルーアウトとは別に新規搭載された「拡張SDI出力」から、変換後の信号や、ユーザーLUT適用後の信号を出力できる。これにより、PVM-X3200/X2400/X1800を“HDR-SDR変換器”のように使うこともでき、省スペース化、省電源化といったメリットがある。

IP Liveデモ中継車

IP Liveデモ中継車

新たなワークフローとしてソニーが提案しているIP Liveプロダクションシステムは、本来は局内向けに構築した制作環境を、中継現場や遠隔地にあるスタジオと連携してリモート制作を行なうことで、制作の効率化を実現できるというもの。全世界で既に140システム以上を導入しているという。

今回の展示会イベントでは、ソニーマーケティングが手掛けたIP Liveデモ中継車も登場。スタジオや中継車に必要な機材を搭載し、HD/4K運用に対応したもので、実際に中に入って、IPとSDIの遅延や操作感覚の差などが確認できるほか、クルマとして移動できるため、ユーザーのIPテスト運用や実証実験にも使用できる。

UHB伝送対応のHDC-5000シリーズ、HDカメラシステムHDC-3000/2000シリーズと接続可能なIPカメラエクステンションアダプターの「HDCE-TX50」

その他

AI技術を活用した映像自動切り出しシステム「オートフレーミングソフトウェア」も紹介。4Kカメラで撮影した映像から特定の出演者の顔を認識し、骨格推定、人物認識、最適画角推定などのソニーのAI技術を活用することで、任意の画角のHD映像を自動的に切り出すもの。

ひとつの4K映像から複数の切り出し映像を同時に作成することも可能。認識した人物が動いても、それを追従して切り出してくれるため、カメラが人物を追ってパンするような映像が自動で得られる。4Kカメラのカメラワークが不要となるため、高い専門性が必要となるカメラマンの業務をAI技術で補い、より効率的な番組制作ができる。9月に発売予定で、参考システム価格は年間250万円。

オートフレーミングソフトウェア