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B&W新エントリー「600 S3」。初チタンツイーターにSignature技術も投入

「600 S3」シリーズ

ディーアンドエムホールディングスは、Bowers & Wilkinsのエントリースピーカー「600」シリーズ新モデル「600 S3」を9月下旬に発売する。一番小さなブックシェルフ「607 S3」がペア132,000円、上位となるブックシェルフ「606 S3」がペア165,000円、フロア型「603 S3」が1台191,400円。仕上げはブラック、オーク、レッドチェリー、ホワイトを用意する。

ホームシアターのセンターとして「HTM6 S3」も118,800円で用意。新型のフロアスタンド「FS-600 S3」はペアで57,200円で、607と606での利用を想定している。

3機種共通の特徴

いずれのモデルにも、700シリーズに準じて改良したドライブユニット、新しいターミナルとバスレフポート、アップグレードされたクロスオーバーなどを搭載。さらに、ツイーターのグリルには、800 Series Signatureで採用された開口率の高い最新デザインを使っている。

また、ツイーターとその下に配置するミッドレンジ(モデルによってはウーファー)の設置距離が近くなっており、オーバーラップする事で定位の表現を改良した。

左が従来モデル、右が新モデル。ツイーターとウーファーが近づいているのがわかる
左から、フロア型「603 S3」、ブックシェルフ「606 S3」、ブックシェルフ「607 S3」、センター「HTM6 S3」
D&Mのシニアサウンドマスター澤田龍一氏が解説

最大の特徴は、全モデルに新開発のチタニウム・ドーム・ツイーターを搭載している事。サイズは25mm径。主要コンポーネントをすべて自社開発・製造したツイーターで、従来は素材としてアルミニウムドームを使っていたが、チタンドームへと変更している。

チタンドーム

素材の特徴として、チタンはアルミの2倍ほどの強度を持つが、2倍ほど重い素材でもある。過去にB&Wはアルミドームのツイーターを使っていたが、上位機では2005年にダイヤモンドを採用した。その際に、別の素材をテスト。マグネシウム、チタン、ボロン、ベリリウムなどでツイーターを試作し、チタンのサウンドは良かったが、素材として重く、能率がとれなかったため、不採用になった経緯があるという。

それゆえ、コスト的にダイヤモンドが使えない600シリーズではアルミを改良しながら採用してきたのだが、B&Wがフィリップスとコラボしたテレビ用スピーカーを開発した際に、初めてチタンのツイーターを使用。チタンツイーター独特の、制振に優れたサウンドが、テレビの派手目な音を聴きやすく再生できたという。

そこで、新たな600 S3でもチタンの採用が決定。重いという弱点を克服するため、様々な工夫を行ない、軽量化を実現。ドームの周辺部分を補強するダブルドームなどを使い、これまで進化してきたアルミドームが実現していた駆動限界の37kHzと同じ再生能力を持ち、能率的にも問題なく使えるチタニウムドームツイーターを開発したという。

そのサウンドを最大限に活かすため、ツイーター背面の音を処理するノーチラスチューブも、従来の倍の長さにグレードアップ。ドーム背面の共振周波数を下げながらドームの背圧の影響も低減する事で、自由で開放的なサウンドになった。

さらに前述の通り、800 Series Signatureで採用された開口率の高い最新デザインのグリルメッシュを組み合わせ、より明瞭な音像と正確な空間表現を可能にしたという。

開口率の高い最新デザインのグリルメッシュ
600 S3のノーチラスチューブ。従来の倍の長さにグレードアップした
従来モデルのノーチラスチューブ

キャビネットの設計も刷新し、内部のブレーシングも強化している。

ミッドウーファーはコンティニュアムコーンで従来と同じだが、磁気回路を改良。中央に空気を抜くための穴が空いているが、その大きさが5.5mmから8mmに拡大。これにより、メインの磁界が、ボイスコイル磁界に影響を受けることが少なくなり、歪みが低減するという。

中央に空気を抜くための穴が空いているが、その大きさが5.5mmから8mmに拡大

603 S3のみに搭載しているウーファーは、ペーパーコーンの振動板を採用。こちらも磁気回路の穴が大きくなっており、従来の直径6mmから、11mmになっている。これにより、歪みを抑えている。

ウーファーの穴も大きくなった

背面のターミナルも、従来の縦並びから、上位モデルと同じ横並びへと変更。ネットワーク回路も進化しており、700シリーズと同様に、各コンデンサーに並列接続している音質補正用のバイパスコンデンサーの品種を変更しつつ、個数も2個から4個へと増加させている。

背面のターミナルも、従来の縦並びから、上位モデルと同じ横並びへと変更

また、クロスオーバーの高域側フィルターのフィルムコンデンサーには、600S2AEで採用した高音質なBevenbi製を使用している。

小さく黄色いパーツが、音質補正用のバイパスコンデンサー。個数が増えている

ユニット構成など

ブックシェルフ型の「607 S3」

一番小さなブックシェルフの607 S3は、25mmチタニウムドームツイーター、ミッドバスは130mmのコンティニュアムコーン。再生周波数帯域は40Hz~33kHz(-6dB)、感度は84dB。インピーダンスは8Ω。キャビネットの外形寸法は、165×207×300mm(幅×奥行き×高さ)。重量は4.65kg。

ブックシェルフ型の「606 S3」

ブックシェルフ606 S3は、25mmチタニウムドームツイーター、ミッドバスは165mmのコンティニュアムコーン。再生周波数帯域は40Hz~33kHz(-6dB)、感度は88dB。インピーダンスは8Ω。キャビネットの外形寸法は189×300×344mm(幅×奥行き×高さ)。重量は7.05kg。

フロア型の「603 S3」

フロア型603 S3は、25mmチタニウムドームツイーター、ミッドレンジは150mmのコンティニュアムコーン、ウーファーは165mmのペーパーコーンで、ウーファーは2基搭載。

再生周波数帯域は29Hz~33kHz(-6dB)、感度は90dB。インピーダンスは8Ω。台座を含めた外形寸法は260×402×1,020mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は27.5kg。

センター「HTM6 S3」

センターHTM6 S3は、25mmチタニウムドームツイーター、ミッドバスは130mmのコンティニュアムコーンで2基搭載する。再生周波数帯域は42Hz~33kHz(-6dB)、感度は87dB。インピーダンスは8Ω。キャビネットの外形寸法は、480×255×160mm(幅×奥行き×高さ)。重量は7.7kg。

音の進化を聴いてみた

既存の「607 S2アニバーサリーエディション」

短時間ではあるが、既存の「607 S2アニバーサリーエディション」と、新モデル「607 S3」を聴き比べてみた。

大きな違いとして、広がる音場や、その音場の中の「音がない部分」の静粛さがアップし、SN感が向上。描写のコントラストが深まったと感じる。

B&Wのスピーカーは、いずれのモデルもハイスピードでシャープな描写を得意とするが、607 S3はそこをあまり強調せず、おだやかさ、ナチュラルさを重視したサウンドに聴こえる。そのため、サウンドが大人っぽく、気品があり、エントリーながら高級感のある描写となった。

ただ、逆に騒がしいお店などで試聴すると、従来モデルよりも大人しいサウンドに感じるかもしれない。できれば静かな環境で試聴すると、進化の具合がわかりやすいだろう。

607 S3

607 S3、606 S3とブックシェルフを下のモデルから聴いていくと、ブックシェルフらしい定位の良さに磨きがかかり、音場の広がりもさらに広大になったと感じる。当然ではあるが、上位モデルの606 S3の方が低域にゆとりが感じられる。

606 S3

フロア型の603 S3では、さらにゆったりとした低域が楽しめる。大人っぽい描写のツイーターと組み合わさると、エントリーとは思えない上級な雰囲気を醸し出す。ただ、豊かな低域と比べ、多少ツイーターの主張が大人しすぎかなという印象も受けた。このあたりは好みや、セッティングによっても評価が変わってくるだろう。

フロア型の603 S3

新600シリーズに先駆け、800 D4シリーズに「801 D4 Signature」と「805 D4 Signature」が登場しているが、音の進化の方向としてはあの「Signature」と同じものが、600 S3からも感じられる。エントリーであっても、開発されたばかりの最新技術を投入していくB&Wらしい進化の方向と言えるだろう。