シャープ、'09年度の液晶テレビ出荷台数計画は前年並み

2008年度連結決算はテレビ事業の低迷で赤字


片山幹雄社長

4月27日発表


 シャープは、2008年度連結決算を発表した。

 売上高は、前年比16.7%減の2兆8,472億円、営業損失はマイナス554億円、経常損失はマイナス824億円、当期純損失は35.3%減となる1,258億円の赤字決算となった。

 片山幹雄社長は、「欧米諸国の景気後退に加えて、新興国の景気減速感も影響した。デジタル関連製品を中心とした市場価格の下落による売り上げへの影響で6,017億円、円高の影響で1,950億円の影響があった。また、液晶テレビや液晶パネルの流通在庫圧縮対策といった取り組みも利益圧迫に影響している。そのほか、特別損失として、投資有価証券評価損で498億円、液晶工場再編などに伴う事業構造改革費用として584億円、価格カルテルによる独禁法関連損失120億円を計上したことも影響した。AV・通信機器部門は赤字となったが、通信機器事業は黒字であり、赤字は液晶テレビを中心としたAV機器」とした。



■ 液晶テレビ売上は1割減。'09年度は黒字化へ

 エレクトロニクス機器部門は、売上高が16.8%減の1兆9,065億円、営業損失はマイナス337億円の赤字。そのうち、AV・通信機器の売上高が18.6%減の1兆3,224億円、営業損失はマイナス535億円の赤字。健康・環境機器事業の売上高は、9.5%減の2,261億円、営業利益は94.4%増の37億円。情報機器事業は、売上高が14.0%減の3,579億円、営業利益は54.1%減の161億円となった。

 「AV・通信機器部門では液晶カラーテレビが販売台数は伸びたものの、大幅な価格下落と為替の影響により、販売金額が減少。携帯電話では国内市場の低迷に伴い、前期から大幅に減少したことが影響した。流通在庫の圧縮の影響もある。一方で、健康・環境機器部門ではプラズマクラスターイオンを搭載した空気清浄機や、サイクロン掃除機が伸張したものの、エアコンや電子レンジが減少した。情報機器では複写機やファクシミリが減少した」とコメントした。

 液晶テレビの売上高は、10.4%減の7,293億円。出荷台数は21.3%増の1,000万台。BDおよびDVDは、21.8%増の704億円。携帯電話および通信融合端末の売上高は、32.8%減の4,373億円、出荷台数は34.6%減の992万台となった。

 電子部品等部門の売上高は13.8%減の1兆5,201億円、営業損失はマイナス239億円の赤字となった。

 そのうち、液晶は、売上高が14.5%減の1兆545億円、営業利益が95.4%減の40億円。太陽電池は、売上高が4.1%増の1,571億円、営業損失がマイナス161億円の赤字。その他電子デバイスの売上高は18.3%減の3,084億円、営業損失はマイナス119億円の赤字となった。

 「急激な需給環境の悪化を背景に、液晶の大幅な価格下落や、テレビ用大型液晶パネルの売り上げ減少、携帯電話向けを中心とした中小型液晶パネルの販売減少が影響した。太陽電池部門では、上期までは堅調に推移したが、主力市場である欧州向けビジネスにおいて、急激なユーロ安およびポンド安に加え、金融危機の影響による太陽光発電プロジェクトの減少により、下期の業績が悪化。また、10月に稼働した葛城工場の薄膜太陽電池新ラインの立ち上げ費用の増加が影響している。電子部品では、携帯電話市場の減速により、CCDおよびCMOSイメージャなどの販売が減少した」という。

 一方、同社では、2009年度の業績予想を発表した。

 売上高は、前年比3.4%減の2兆7,500億円。そのうち、国内は0.2%減の1兆3,000億円、海外が6.1%減の1兆4,500億円。また、営業利益は500億円、経常利益は200億円、当期純利益は30億円の黒字転換を見込む。

 「2009年度第1四半期はまだ厳しい経営環境が続くが、緊急業績改善対策の効果やマーケット在庫の調整がほぼ完了したことによる受注回復の効果もあり、第2四半期以降、段階的に景気回復を見込んでいる。事業改革の効果もあって、3月末の棚卸し資産は、'08年12月末の5,181億円から、1,181億円減の3,999億円へと大幅に圧縮することができた。これにより、2009年度における新製品のスムーズな市場投入と、工場の稼働率向上が図れると考えている」とした。



■ 堺工場の稼動で下期販売は上期比4割増へ

 2009年度上期の連結売上高は20%減の1兆2,500億円、営業利益はゼロに留まるとしているが、下期は売上高が前年同期比16.7%増の1兆5,000億円、営業利益は500億円に回復すると見ている。

 エレクトロニクス機器部門は、売上高が5.3%減の1兆8,050億円、営業利益は201億円。そのうち、AV・通信機器の売上高が5.1%減の1兆2,550億円、営業損失はマイナス116億円の赤字。健康・環境機器事業の売上高は、1.7%増の2,300億円、営業利益は148.0%増の92億円。情報機器事業は、売上高が10.6%減の3,200億円、営業利益は39.7%増の225億円とした。

片山幹雄社長と大西徹夫取締役経理本部長

 液晶テレビの売上高は、9.5%減の6,600億円。出荷台数は前年並みの1,000万台。2009年度は、40インチ以上の構成比が国内では約30%、海外では約50%になると見込んでいる。

 BDおよびDVDは、2.1%増の720億円。携帯電話および通信融合端末の売上高は、12.0%増の4,900億円、出荷台数は24.0%増の1,230万台とした。

 「液晶テレビは、為替と価格下落の影響、個人消費の冷え込みに直面し、欧米市場を中心に極めて厳しい収益環境にある。このような厳しい状況はまだしばらく続くと見ている。だが、堺工場が立ち上がる下期以降に、従来よりも高画質、薄型、軽量を実現しながら、かつ強いコスト競争力を持つ大型液晶テレビ製品の市場投入を予定している。これにより、40型以上の構成比を国内外ともにさらに拡大させる計画である。一方で、亀山第1工場の生産を停止し、亀山第2工場に生産を集約する事業構造改革を実施したことで、亀山全体の生産能力は従来の75%に留まっている。だが、この効率化によって、ランニングコストの削減につなげ、収益の改善につなげる計画だ。テレビ用大型液晶パネルは、各社の減産もあり、在庫調整が進み、需給環境が回復しつつある」と説明。

 さらに「亀山第2工場はフル稼働の状況だ。国内外の有力テレビメーカーとのデザインインを昨年から進めており、日本や欧州の戦略的パートナーを中心に受注が増加傾向にある。さらに外販事業を強化すべく、ユーザー別の専任開発体制を構築し、コンセプトインから開発、販売までをトータルにサポートしていくことなどで、堺新工場のスムーズな立ち上げと、安定した事業展開を図っていく。1,000万台という目標は、足下の市場環境を踏まえ、保守的な数字としているが、堺工場が立ち上がる下期は、上期に対して4割程度の販売増加を見ている」(片山社長)。

 続けて「日本では、政府の追加経済対策のなかでグリーン家電の購入に対してエコポイントを付与する購入促進策が打ち出されている。また、中国でも引き続き市場拡大が見込まれ、家電下郷制度という補助金制度もある。各国の景気対策には大いに期待している。日本や中国といった、当社の強みが生かせるマーケットに集中し、日本、中国では2桁の販売台数伸張を目指す」として、アジアに事業成長のポイントを置く考えを示した。

 電子部品等部門の売上高予想は、5.6%減の1兆4,350億円、営業利益は299億円の黒字転換を計画。そのうち、液晶は、売上高が10.4%減の9,450億円、営業利益が292.1%増の160億円。太陽電池は、売上高が20.9%増の1,900億円、営業利益が56億円。販売量は前年比82.9%増の770MWを計画している。その他電子デバイスの売上高は2.7%減の3,000億円、営業利益は83億円を計画している。

 なお、パイオニアの公的資金注入に関しては、「報道の段階であり、いまの時点ではなにもコメントすることはできない」と言及を避けた。



(2009年 4月 27日)

[Reported by 大河原克行 ]