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Netflix映画「新幹線大爆破」はJR東も特別協力!樋口監督「“大爆破”やりきった。タイトルに偽りなし」
2025年2月13日 00:00
4月23日に世界独占配信が決まった、Netflix映画「新幹線大爆破」。12日開催のNetflixイベントに登壇した樋口真嗣監督は「新幹線『はやぶさ60号』を実際にお借りし、東京から青森まで7往復の特別ダイヤを組んで頂いた」とJR東日本からの特別協力に感謝を述べつつ、「その新幹線をいかにして爆破させるか? 本当に大変でしたけど、(大爆破を)やりきったなと。タイトルに偽りなし!」「おそらく今までのどの日本映画でも実現できなかったことになっている」と、本作の仕上がりに自信をのぞかせた。
人生の中で3本の映画を選べと言われたら、その1本に「新幹線大爆破」を選ぶ
2025年の新作ラインナップを紹介する「Next on Netflix 2025」では、Netflix映画「新幹線大爆破」で監督を務めた樋口真嗣氏と、エグゼクティブ・プロデューサーの佐藤善宏氏が登壇し、制作の舞台裏が語られた。
オリジナルの1975年映画「新幹線大爆破」は、佐藤純彌監督による東映のパニック・サスペンス。「速度80キロ以下になると新幹線は爆発する」という絶体絶命の状況下で繰り広げられる犯人と警察、国鉄、そして乗客らの攻防を描いた“パニック映画の金字塔”と評され、後のハリウッド映画「スピード」にも影響を与えた。
この東映版「新幹線大爆破」について樋口監督は、「昨日今日好きになったわけではなくて、50年前から好きな映画。小学校3年生の時に初日に観に行って、以来ずっと好き。ここ(会場)にいる方の半分くらいは知らないかも知れないけど、レーザーディスクというものがあって、そのジャケットもデザインさせてもらった。もし人生の中で3本の映画を選べと言われたら、その1本に『新幹線大爆破』を選ぶくらい好きですね」と、オリジナルの熱烈なファンであることを明かした。
そして、そのような大好きな作品をリブートすることになった経緯について、「『新幹線大爆破』は50年前も(製作が)困難な題材だったけれど、苦労して無理やり作った。果たして、そうした困難な作品をこの時代にもう一度作ることは可能なのか? それから“新幹線に爆弾を仕掛けられた、さあどうする?”となった時の人々の反応は、50年前と今とではおのずと変わってきてしまう。だからリメイクではなくお題だけ同じ話を頂くリブートというカタチで再構築させてもらった」と話した。
佐藤プロデュ―サーからリブートする際に特に意識した点を問われると、樋口監督は「犯罪の仕方が今と昔とでは大きく変わってしまったこと」と回答。
「お金を盗る犯罪の方法がオレオレ詐欺になっている今の世の中では、脅迫して身代金を取るという方法が成立し難い。今の世の中でそれをもう一度やるならどのような犯罪になるのか、考え直さなければならなかった。それから、決定的に当時と違うのは、新幹線の運行本数。更にはスピードも違う。爆弾が仕掛けられた車両だけでなく、他の車両はどうなるのか? 爆弾が仕掛けられたことで“止まらないから上手くいってる”現代の新幹線のシステムがどうなってしまうのか? 製作にあたりいろいろ取材し、調べ上げてリブートしてみました」と語った。
草彅さんがいろいろな作品で活躍する姿を見て、焼きもちしていた
Netflix映画「新幹線大爆破」で、爆破を回避すべく奮闘する新幹線の車掌・高市を演じるのは、樋口監督と約20年ぶりにタッグを組む草彅剛氏。
樋口監督は「『日本沈没』を作り終わった後、草彅さんがいろいろな作品で活躍する姿を見て、嬉しさ半分、彼を撮れない悔しさ半分があって、焼きもちしていた。彼がいい芝居を他所ですればするほど、俺も撮りたい!みたいな(笑)。本作では彼の20年分の芝居の深みが醸造されていて、耐えて、忍んで、堪えながら、車掌としての責任、決して投げ出さず感情的にならない鉄道マンの矜持を表現してもらった」と、起用の背景を語った。
ただ、劇中のとあるスタントシーンに関しては、草彅氏からお叱りを受けたとのこと。
「ある車両からある車両へ飛び移るという場面があったんですけど。そんなこと台本には書いてなかったんですけど、どうせならジャンプしたほうがいいんじゃないかな?みたいに思っちゃって。で、スタントチームに検証してもらったうえで、撮影はうまくいったんですけど、終わった後にツヨポンから『監督さ。もう俺20年前と違うんだから』って言われて……俺が間違ってました!なんだかんだ言って彼はもうアラフィフなんだ!と。本当に申し訳ないけど、私の無茶ぶりにも応えてくれました」と舞台裏を話し、会場を沸かせた。
前代未聞!? JR東日本が特別協力。東京-青森間で7往復の特別ダイヤ
Netflixのイベントでは、4月23日の配信日と合わせ、本作品の撮影に関してJR東日本から特別協力を受けたことも発表された。鉄道会社は通常、客のための運行が大原則となっており、映画などの撮影のために専用ダイヤを設けることは基本ありえないこと。1975年の東映版では、過激なタイトルも関係し国鉄の協力が得られず、ミニチュアや特撮を駆使するなどして映画を完成させている。
樋口監督は「だいたい今まで日本の映画テレビを見ても本物じゃなかったり、あるいは撮影を諦めるやり方をしていた。だからこちらとしても本当にそんな願いが叶うとは思わなかったんですけど、そこはさすがNetflixなんですよ!」と、コメント。佐藤プロデューサーも「『新幹線大爆破』というタイトルなんですけど、大丈夫ですか? と何度も確認させていただいたのは事実です(笑)」と語った。
そして、撮影で他の客の迷惑にならぬよう、JR東日本は撮影用の専用列車を用意。また東京から青森まで行って戻ってくる特別ダイヤを7往復分組んで、樋口監督らはその中で撮影を敢行。劇中に登場する職員や運転手など、実際にJRで働く人々の立ち振る舞いまで、事細かに指導、監修してもらったとのこと。
樋口監督は「ある意味、映画のための嘘というのをなるべくなくして作り込んでもらいました。指令所のシーンも、現場に指導というカタチで職員さんに入っていただいて、キャストが発する言葉をJRの職員さんに確認してもらったり。登場するキャストの隅々まで、セリフのやり取りも全て、本物と同じようにやってもらいました。実際にこうしたトラブル、アクシデントが発生した時にどのように対処するのかも含めて協力してもらった感じですね」と、徹底したリアルの追及を目指したという。
そして「俺も鉄オタという面はあるんですが、もう一人の自分に“お前だけズルい”と言われそうなくらい、本当にいろいろなところで撮影させてもらった。ただ映画だから何してもいいというわけでは決してなくて、鉄道会社は安全、お客さんあってのものだから、毎回『何かあったら中止です』と職員の方から言われる状況の中、キャストもスタッフも臨時のJR職員のような意識で撮影に臨みました」と、現場の様子を話した。
重量級1/6スケールのミニチュア新幹線を爆走&大爆破!?
本作では、樋口監督の十八番である特撮と最新VFXを融合させた、迫力ある映像も見どころになっている。
見どころを問われると、樋口監督は「タイトルにもあるように、この作品は“新幹線大爆破”。大爆破なんで、やはり爆破をちゃんと描かなければダメだろうと。でも映画のストーリーとしては爆発されたら困るわけです、みんな死んでしまうので。でもやっぱり見たいじゃないですか爆破。自分がやる以上、新幹線を如何にして爆発させるか?と。まぁいろいろなやり方があるんですけど、そこは本当に大変でしたけど、脚本チームも含めて、やれたな、やりきったなっていう。タイトルに偽りなし!」と答え、大爆破の仕上がりに自信をのぞかせた。
また撮影のミニチュアについても“特大”仕様が用意されたという。
樋口監督は、「通常は1/20スケールくらい、だいたい1mとか2mくらいのサイズのミニチュアを使うのが基本ですが、この映画に関してはお客さんが納得しないだろうということで、『ダークナイト』とかでやっているようなサイズのミニチュアワーク……通常日本の撮影では考えられないようなサイズの1/6スケールで製作しました。当然のことですが、新幹線なので止まっていません。しかも助走をつけて、いいスピードになったところで初めてミニチュアの撮影ができる環境になる。ものすごい長いレールをミニチュア用に作って、その上を走らせる。それに合わせてカメラも走らなければならない……今にして思えば、何をしていたんだろうと(笑)」と回想。
佐藤プロデューサーも「ミニチュアを並行して撮影するための車用のアスファルトも何十メートルも舗装して……予算表を見た時、ちょっと止めようかなと思ったくらい」と吐露した。
ただ、今回の特撮は樋口監督にとっても最大規模のものだったようで「関わった人間がそのミニチュアを見た瞬間、みんな笑うんですよ。これ本当に撮るの?って。そのうち、噂が回って、日本中の特撮関係者がみんな現場に見に来ていたくらい(笑)。でもやっぱり1/6スケールにすると重量感とか全く違うんですよね」と、特大サイズでのミニチュア撮影に満足した様子。
最後に、映画を待ちわびるファンに向けて、樋口監督は「今までの日本映画だったら絶対企画段階で諦めていたようなこと、そうゆうテーマに対して本気で人と人とがぶつかり合えるくらいの環境を与えてもらったことに本当に感謝しています。おそらく今までのどの日本映画でも実現できなかったことになっているんじゃないかと思います。それから、架空のキャラクターに頼らない、現実を切り取った、現実にあるものだけで組み合わされた映画になっています。まだ発表になっていませんが、素晴らしいキャストが密室の中外でぶつかり合う、取り残された人間の生き残りたいという欲望だったり……そうしたぶつかり合いみたいなものが、JR東日本さんの協力を得た新幹線の中で繰り広げられるわけでございます。今後新しい情報がバンバン出てきますので、お付き合いを宜しくお願いします」とコメント。
佐藤プロデュ―サーも「本作ではJR東日本さんの特別協力、そして主演には草彅剛さんと言う名優を迎えました。キャストの発表は3月に入ってからとなりますが、非常に個性的なキャラクターを演じる俳優さんたちが揃っております。新たに生まれ変わったノンストップサスペンスアクションという形で、『新幹線大爆破』をお届けできればなと思っています。是非ご期待ください」と話し、トークパネルを締めくくった。