iVDRセミナー開催。三洋とマクセルがレコーダを年内発売

-電子ペーパー付きiVDRも計画。ヘルスケア展開も


5月25日開催


 リムーバブルHDDの規格団体「iVDRハードディスクドライブ・コンソーシアム」は25日、「2009 iVDRセミナー」を開催した。

 セミナーは「動き始めたiVDRビジネス」と題して、iVDRの規格化状況や今後の展開について説明。昨年までのセミナーではハードウェア仕様や規格化に時間が割かれていたが、日立のWoooなど対応製品が発売されていることもあり、今後のビジネス展開に向けたアプリケーション開発の方向性が示されたのが今年の特徴といえる。

 


■ iVDR国際標準化へ。IO機能を使ったiVDR型地デジチューナも

iVDRコンソーシアム釘屋氏

 iVDRコンソーシアムの釘屋文雄氏は、iVDRの規格化現状などについて説明。ハイビジョン録画や高速転送などのiVDRの特徴について言及し、「PCとテレビをつなぐブリッジメディアになる」とアピールした。

 コンソーシアムの標準化作業に並行して、2008年よりISO/IECにおける国際標準化作業も進めており、2009年12月には承認される見込みという。ネットレンタルや車載などのさまざまな応用事例やDLNA/ネットワークとの親和性も強調。また中国V-ShowによるデジタルSTBへの取り組みなどを紹介し、海外展開も拡大していることを訴えた。


ISO/IECにおける国際標準化に着手iVDRの特徴iVDRの進化

 さらに、iVDRのIO機能を使った、地上デジタルチューナやCATVチューナなどの機能追加のコンセプトも紹介。「iVDR station」と呼ばれるマルチiVDRスロットのレコーダ製品とiVDR IOの機能を使ったもので、iVDRチューナを追加して、iVDRメディアと組み合わせて利用することで地上デジタル放送の録画を可能とするもの。こうした機能追加により「iVDRの普及を後押ししていくことを期待している」という。

 会場では試作機によるiVDR型デジタルチューナによる録画デモや、ヘルスケア製品との連携デモなどを実施していた。

iVDR IOを使った地上デジタルチューナiVDR地デジチューナでテレビ視聴を可能にチャンネル選択なども可能
iVDR Stationにチューナを挿入。2つ同時に使うとダブルチューナ構成となる次世代iVDRの目標iVDR規格の概要
三洋電機 泰間氏

 三洋電機の泰間健司氏は、HDDレコーダに必要とされる要件をユーザーアンケートをもとに紹介。「記録容量」や「他の部屋で見たい」、「ダビングすると画質が落ちる」といった不満を挙げ、「すべてiVDRで対応できる。三洋電機の答えはiVDRです」とiVDRの魅力をアピール。2009年夏にiVDRレコーダを発売することを明らかにした。

 具体的な仕様については、6月15日ごろに発表する予定としており、「iVDRレコーダを皮切りに、グローバルな事業に育てていく」とした。


ユーザーの不満をiVDRで解消三洋の回答はiVDR今夏にiVDRレコーダを発売

 


■ マクセルも2009年中にレコーダ発売。電子ペーパーiVDRなども参考展示も豊富

日立マクセル コンシューマ販売事業部 山本氏

 日立マクセル コンシューマ販売事業部の山本章貴氏は、同社が発売しているiVDR-Sメディア「iV」の現状と今後について説明した。

 「販売店から“iV”って売れているんですか? とよく聞かれますが、発売開始した2007年の販売は厳しかったが、2008年には伸長。累計30万個を突破した」という。日立のデジタルテレビ「Wooo」の最近の製品で全てiVDR対応となったことで、特に4月以降は右肩上がりになると予測している。

 記録容量についても大容量化しており、現在は250GBが主流となっている。「対応テレビも100万台以上出荷されているので、ポテンシャルは十分にある。このビジネスはまだまだ期待できる」と語った。

 日立のiVDR対応テレビとの同時販売比率(付帯率)についても言及。「2008年度は15%だったが、それを30%に近づけたい」という。また、2009年末には500GBモデルを発売する予定という。


iVDRの累計販売台数。徐々に増加しているWoooの販売拡大にあわせてiVDRの販売も拡大。付帯率30%を目指すロードマップ。2009年末に500GBモデルを発売

 業務用に耐衝撃性を高めたiVDR Extremeについても製品を発売予定で、「業務用の磁気テープで高いシェアを取っているが、その市場に対してもiVDRを投入していきたい」と説明。すでに米国で3月に出荷。欧州でも5月に受注し、出荷を開始した。「日本でも関係各社に案内しており、ご理解いただけるよう取り組んでいる」という。

業務用iVDR Extremeも海外を先行して展開iVDR ExtremeマクセルのiVDRラインナップ
BDはレコーダは伸びているが、メディアは苦戦中と分析

 録画メディアとしてのBlu-ray Discとの比較も紹介。「BDレコーダは急速に立ち上がったが、メディアの動きはスロー。メディア工業会の2008年度予測値も下方修正している」とし、その理由について、「DVDとの違いで言うと、PCの市場が立ち上がっていない」と分析する。

 DLNAやネットワークとの親和性も強調し、「ネットとテレビがつながることで、iVのメリットも拡大する。アクトビラからiVにダウンロードが可能になったことで、今後ユーザーのレンタル、セルへの対応も変わる。ユーザーの意識が、家ですべてがまかなえるとなるのではないか」と言及。200台限定で発売した、同社製iVDRプレーヤー「VDR-P100」についても、5月22日に完売したとのことで、「関心もだいぶ高まっていると感じている」という。


iVDRレコーダも今秋展開

 今後の展開としては、三洋と同じくデジタルチューナを備えたレコーダを年内に発売。6月中旬に報道発表を予定している。

 また、新提案として「電子ペーパー搭載iVDR」を紹介。これは、iVDRカートリッジの表面に電子ペーパーを備え、メディアの残量や収録してあるコンテンツのアルバムアートやタイトル名などを表示するもの。カートリッジを差す前に内容確認ができることが特徴で、付加価値製品として訴求していきたいという。規格化作業とともに大手放送局と商談を進行中とのことで、2010年4月ごろの量産を目指している。


電子ペーパー搭載iVDRも発売予定。残量や記録コンテンツの概要などが確認できる電子ペーパーを備える電子ペーパーiVDRのロードマップ

 また、5インチiVDRアダプタや4つのiVDRスロットを備えたアダプタユニットも計画中。これらもアメリカ、欧州で6月にサンプル出荷を予定。量産は2009年9月ごろの見込み。

5インチベイ用iVDRアダプタや4スロットアダプタも4スロットアダプタの概要ロードマップ
iVDRレコーダも今秋展開

 また、これらに加えて車載用途やコンテンツ配信との連携なども計画。車載については、「まだサイズが大きすぎるという問題もあるが、小型化できれば車載でも用途が広がる。目標に向かって一年でも早く具現化できるよう活動していきたい」とした。


 


■ コンテンツ配信や海外展開など、iVDRが拡大

CCCの渡邊氏

 株式会社CCC TSUTAYA TV事業部の渡邊健シニアバイスプレジデントは、iVDR-Sへのダビングを可能としたHD映像配信サービス「TSUTAYA TV」について紹介した。

 TSUTAYA TVでは、視聴期間限定のVODで、TSUTAYA店舗の平均BDレンタル価格の500円に対して、100円のプラスの600円で販売。ネットレンタルの利便性に対し、100円のプレミアムという考え方だという。

 一方、iVDRなどへ、最高2回までのダビングが可能な「EST(Electric Sell Through)」は3,675円で、約5,000円弱に設定されているセルBDに対して、割安な価格設定としている。

 現在は、ハリウッドのコンテンツが中心で、パラマウント、ワーナー、NBCユニバーサル、ディズニー、20世紀フォックスのタイトルをラインナップ。また、上記ハリウッド5社だけでなく、今後もスタジオを拡大する方針で「SPEとかMGM、ライオンズゲートなどにも足しげく通っています」とのこと。

 TSUTAYA TVのセルスルーサービスでは、ダビングメディアとしてBlu-ray、DVD(AVCREC)、SDカード、メモリースティックPRO、機器内蔵型メモリースティック(ウォークマン)、DLNA、iVDRに対応している。「実は、もっとも交渉に時間がかかったのがSAFIAで半年かかりました」とのこと。

 今後のiVDR展開については、「iVDRナビみたいなものが実現されれば、テレビから車に移してTSUTAYA TVのコンテンツを楽しんでいただくことも可能になるのでは」と、対応機器の拡大に期待をかけるとともに、「現在のiVDRの販売価格では、メディア+コンテンツの価格で最も高くなってしまう」とし、メディアの低価格化への期待も語った。


TSUTAYA TV画質面でのTSUTAYA TVの位置づけ店舗のTSUTAYAは20代男女、DISCASは30代、TSUTAYA TVは40代男性が支持
V-Show tecnologyのCheng Wei氏

 中国でiVDR対応デジタルSTBの販売を予定しているV-Show tecnologyのCheng Wei氏は、同社のiVDR展開について説明。

 中国では2008年度に1,400万台の液晶テレビが販売されたが、ハイビジョン放送は普及しておらず、HDコンテンツの視聴者は少ないという。Blu-rayプレーヤーの販売台数は5万台で、「正規のBDは市場としての魅力はない。だから、プレーヤー参入業者も少ない」という。

 そうした市場環境で期待されるのがHDD搭載のSTBという。HDD搭載STBの2008年度実績は50万台で、2009年には100万台が見込まれている。「この市場でiVDRが活躍すると考えている」という。

 同社ではiVDRのリムーバブルで高速転送、著作権保護などの特徴に着目。第3四半期にはデュアルスロット装備のCherry IIを発売する予定という。また、中国ではSkyworthやTCLなどの大手テレビメーカーも年内にiVDR対応テレビを発売予定で、HisenseやChanghongも計画中とのことで、iVDRの拡大に期待ができるという。

 ただし、Cheng氏は「中国でのiVDRサポートが十分ではなく、特にSAFIAの中国での標準化にむけて、取り組みが必要」とし、コンソーシアム各社への協力を呼びかけた。

中国市場でデジタルSTBが伸長V-SHOWのiVDR製品ロードマップTCLなどテレビメーカーもiVDRに注目
iVDR搭載STBのCherry II/IIICherry IIIの特徴中国展開には多くの課題も
インテル林氏

 インテル株式会社の林浩史氏は、ヘルスケア関連アプリケーションの標準化を行なうNPO法人「コンティニュア」の活動と、その中のiVDR関連の活動について紹介した。

 コンティニュアは、慢性疾患や肥満に対する予防的な健康管理や、高齢者の生活サポートに向け、ネットワーク家電での家庭での健康管理を促進することを目標にした団体。体重計や血圧計などの健康器具や、それらに関するセンサーや通信規格、データ、健康管理サービスなどの相互運用性を高めるための認証を行なっている。

 会場では、A&Dの体重計や血圧計のデータをネットワーク経由でサーバーに配信し、日立のテレビに接続したiVDRステーションのiVDRに蓄積/管理するというデモを実施していた。NTTデータのネットサービスなどもコンティニュアに対応しており、iVDRの応用例の一部としてアピールしていた。

コンテニュアで各ヘルスケアサービス、機器のシームレスな連動を目指すコンテニュアでは主な業界標準に則って規格化。製品について認証を行なう無線LANにおける認証規格Wi-Fiのような位置付け、と説明
A&Dの体重計などでデモネットワーク経由で体重データなどを取得し、iVDRで管理iVDRカートリッジに各種ソフトウェアを内蔵
グリーンハウスは16GB MLCによるSSD版iVDRを試作

(2009年 5月 25日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]