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JVC、木で響きを制御したウッドドームイヤフォン3種
最上位FX850は約4万円。ポータブルアンプは5月発売
(2014/1/28 10:22)
JVCケンウッドは28日、ハイレゾ音源対応機器の拡充を発表。その一環として、JVCブランドの新製品である、カナル型(耳栓型)イヤフォンで、ウッドドームユニットを採用した「HA-FX850/750/650」の3機種を発表した。2月下旬発売で、価格はオープンプライス。店頭予想価格はFX850が39,900円前後、750が29,400円前後、650が19,950円前後。
なお、ウッドコーンスピーカーがセットで、ハイレゾ再生に対応、DLNAのネットワークプレーヤー機能を備えたコンポ「EX-N70/50」も2月上旬に発売する。価格はオープン。店頭予想価格はN70が12万6,000円前後、N50が10万5,000円前後。コンポは発表会の模様については、別記事でレポートする。
JVCケンウッドではハイレゾ音源対応モデルの定義として、「ハイレゾ音源の持つクオリティを再現できる高音質なオーディオ機器」と説明している。
ウッドドームユニット採用の新イヤフォン
3機種とも、木を独自の薄膜加工技術によりドーム型にした「ウッドドーム振動板」を採用。木は伝搬速度が高く、適度な内部損失を持ち、自然な音の響きもある振動板に理想的な素材としており、カバ材を採用。特性を損なわないようにしながら薄膜にして、ドーム型に成型加工。ベース材と貼り合わせて振動板にしている。口径はFX850が11mm径、FX750が10mm径、FX650が8.5mm径で、全ユニットが新規開発となる。
振動板の前面には、リング状に加工した新開発の「ウッドディフューザー」を配置。音を拡散させ、滑らかで自然な広がりを実現するという。また、FX850/FX750は、振動板の背後にウッドプレートを配置。振動板から後方に放射される音が、従来は金属のプレートに反射して耳の方へ戻ってしまっていたが、ウッドプレートにより木で吸収・拡散し、反射音を調整。ユニットの余分な振動を抑制する効果もあるという。
筐体内部には、アコースティックハイブリッドダンパーと呼ばれる構造を採用。比重の大きいブラス(真鍮)リングを配置し、不要な振動を抑えているのは従来モデルと同じだが、新モデルではさらに、ブラスリングと異なる固有振動数を持つ木を使ったウッドダンパーをブラスリングとユニットの間に配置。ユニットからブラスリングへの振動を広帯域で制御し、響きを最適化するという。
FX850/FX750ではこれに加え、ハウジング後部のブラスリングに伝わる不要振動を吸収する「ウッドリングアブソーバー」も搭載。ハウジングの響きを最適に制御し、「にごりの無いクリアなサウンドを実現する」としている。
ハウジングにも木を使っており、ウッドドームユニットの特性を最大限に引き出し、自然な音の広がりや余韻を臨場感豊かに再生できるという。
イヤーピースにもこだわり。FX850はケーブル着脱可能
3機種が採用しているイヤーピースにも特徴があり、音が通る内側の部分に、ゴルフボールのような小さな丸い窪みが幾つも設けられている。イヤーピース内を音が通る際に、直接耳へと届く音がある一方で、ピースの内壁に当たる反射音も発生する。小さな穴を設ける事で、この反射音を拡散させる役目がある。穴はスパイラル状に配置されており、JVCでは新イヤーピースを「スパイラルドットイヤーピース」と名づけている。
イヤーピースはシリコン製で、サイズはS/M/L。低反発イヤーピース(S/M)も同梱。ケーブルキーパーやクリップ、キャリングケースも付属する。
FX850のみ、ケーブル着脱が可能。端子にはMMCXを採用している。
モデル名 | HA-FX850 | HA-750 | HA-650 |
想定売価 | 39,900円前後 | 29,400円前後 | 19,950円前後 |
ユニット | 11mm径 ウッドドーム | 10mm径 ウッドドーム | 8.5mm径 ウッドドーム |
出力音圧レベル | 106dB/1mW | 105dB/1mW | 100dB/1mW |
再生周波数帯域 | 6Hz~45kHz | 6Hz~40kHz | 6Hz~30kHz |
インピーダンス | 16Ω | ||
最大許容入力 | 200mW | ||
スパイラドットイヤーピース | ○ | ○ | ○ |
ウッドディフューザー | ○ | ○ | ○ |
ブラスリング | ○ | ○ | ○ |
ウッドダンパー | ○ | ○ | ○ |
ウッドプレート | ○ | ○ | - |
ウッドリングアブソーバー | ○ | ○ | - |
ケーブル | 着脱式 1.2m Y型 | 1.2m Y型 | |
重量 (ケーブル含まず) | 約13g | 約11.2g | 約9.5g |
発表会場にはポータブルアンプも
発表会の会場には、以前からイベントなどで参考展示されている、JVCブランドのポータブルアンプも用意されていた。今回、5月上旬の発売が予定されている事が明らかになった。型番や価格などは未定で、現在開発が進められている。
詳しい仕様も発表されていないが、DACを搭載しており、iPhone/iPodなどとのデジタル接続が可能。PCとUSB接続し、USB DACとしても動作。24bit/192kHzまでのPCMデータに対応するという。DSDに対応しているかどうかは明らかにしていない。
試作機はステレオミニのヘッドフォン出力×1、USB入力×2、光デジタル入力×1、ライン入力(ステレオミニ)×1を装備。高音質化技術の「K2」テクノロジーを搭載しているのが特徴で、背面にON/OFFボタンを用意。圧縮音楽ファイルもK2技術で高音質化して再生できるのが特徴だという。
ファーストインプレッション
発表会場で短時間だが試聴したので印象をお伝えしたい。試聴にはハイレゾプレーヤーのAK120を使っている。
FX850は、聴いた瞬間に非常に音場が広く、雑味の少ない、見通しの良いサウンドであるとわかる。木のパーツを用いて金属質な響きを排除しているため、「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best Of My Love」を再生すると、冒頭のギターの響きや、女性ヴォーカルの声が暖かく、金属的な硬さが無くてリアルだ。
こう書くと、ナローでモコっとした音を連想されるかもしれないが、振動板がトランジェントの良い、キビキビした音を出すウッドドームであるため、一般的なダイナミック型ユニットのモコモコ、モワモワした音ではなく、バランスド・アーマチュア(BA)を連想させる高解像度なハイスピードさも兼ね備えている。
音の輪郭や細部を細かく描写するクリアさ、分解能の高さがありながら、BAイヤフォンのような金属質な響きがまったく無く、響きや暖かくてしなやか。量感も豊かだ。中低域の量感を出そうとすると、ボワボワと音像が膨らんで不明瞭になり、抜けも悪くなるダイナミック型の弱点もウッドドームや振動制御により抑えこまれており、ダイナミック型とも、BAとも違う、別の方式のイヤフォンのようにも感じられる。ウッドドームイヤフォンが、1つ新しいステージを登ったと感じさせる注目機種だ。
下位モデルとなるFX750も、850と同様に金属質な響きを排除し、余分な振動も抑制したクリアな音場が楽しめる。音の傾向としては、聴感上のワイドレンジさ、バランスの良さを追求したモニターライクな音作りの850に対し、750は中域が張り出し気味で、元気の良い、ダイナミックな力強さが持ち味だ。自然な響きのイヤフォンでありながら、迫力も欲しいという人は750がマッチするだろう。
650は上位2機種の良さを引き継いでいるが、振動の抑制はそこまで徹底されていないため、音場の見通しの良さ、抜けの良さは上位の2機種より劣る。