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ARMも搭載、オーディオ向け「SHARC+」デュアルコアDSP
プロ用オーディオやAVアンプ高級機、ロボットにも
(2015/6/17 15:37)
アナログ・デバイセズ(ADI)は17日、AV機器などで採用されているDSP製品の「SHARC」プロセッサ新製品として、新DSPコア「SHARC+」2基やARM Cortex-A5プロセッサ・コアも1チップに搭載した「ADSP-SC589」など8製品を発表した。サンプル出荷は同日より開始しており、量産は'16年の中頃を予定している。プロ向けのマルチチャンネルオーディオ機器や、コンシューマ向けのハイエンドAVアンプ、車載オーディオアンプなどのほか、ロボットの多軸モーター制御、エネルギー供給システムといった産業用も想定している。
新製品のラインナップは、SHARC+プロセッサ2基または1基とARM Cortex-A5の両方を備えた「ADSPSC58x」5製品と、SHARC+ 2基でA5非搭載の「ADSP-2158x」3製品。サンプル価格は、1万個受注で単価17ドルから。最上位モデル「ADSP-SC589」の1,000個受注時は33.96ドルから。パッケージはいずれも19×19mmのBGA。
新しい浮動小数点DSPのSHARC+コアは、24GFLOPS超の演算性能を持ち、従来のSHARCに比べ2~6倍のパフォーマンス向上と、2~5倍の電力効率向上を実現。周囲温度105度でも2W未満で動作し、車載などでもヒートシンクやファンを不要としている。また、SHARCとして初めてマルチコアDSPを採用し、従来は複数のチップやメモリを実装していた機器においても、33%のBOM(部品材料)コスト削減や最大60%の基板面積削減が可能になるという。
DSPアクセラレータやSHARC+プロセッサに加え、ARM Cortex-A5(450MHz)も単一チップ上に搭載したADSP-SC58xシリーズは、Gigabit EthernetやUSB、PCI-Expressといったインターフェイスの拡張機能も統合しており、ハード/ソフトウェアのシンプル化が図れるのが特徴。AVアンプの場合、従来は複数のDSPチップを搭載していたものが、1チップだけで可能になるといったメリットがある。従来のようなコプロセッサ的な使われ方だけでなく、DSPが1チップで幅広い役割を受け持つようになるという。
ARM Cortex-A5非搭載のADSP-2158xは、従来DSPの用途と同様に、主にDSPをコプロセッサとして利用するアプリケーション向けに設計。2基のSHARC+コアとDSPアクセラレータなどを備えている。
両シリーズに内蔵するFFT/iFFTハードウェアアクセラレータも強化され、最大18GFLOPSで低消費電力が特徴。オーディオ向けには、8ch信号に対応した非同期型のサンプルレートコンバータ(ASRC)を装備する。
具体的な使用例としては、業務用のオーディオミキサーでは、多チャンネルオーディオミキシングと前後処理にマルチコアDSPのパフォーマンスを活かせるほか、オンチップの大容量メモリなどによる効率化、ヒートシンク/ファンを不要とする高効率な電力設計などが利点。車載オーディオアンプの場合は、最新のマルチチャンネルサラウンドや、様々な車載機器との接続性を持ったコンパクトな統合型SoC(System on Chip)として利用できるという。さらに、ロボットなどの産業用モーター制御においても、2軸コントローラでの複数サーボ軸への対応や、専用ARMコアによる処理のオフロードなどをメリットとして挙げている。
評価ボード/ツールの期間限定セットも
デュアルコアDSPのSHARC+コアに対応した開発ツールも用意されている。「CrossCore Embedded Studio」は、プロジェクトファイルを1つコアごとに作成でき、1つのツールで最大3つのプロジェクトを同時に使用可能。さらに、SHARC+コア上でも ARM Cortex-A5コア上でも動作するμC/OS-IIやμC/OS-IIIといったリアルタイムOSカーネル、ARM Cortex-A5上で動くミクリアム製のUSB Host/USB Deviceスタック、ファイル・システム・スタックをミクリアムと共同で提供している。
評価/開発用ボード「ADSP-SC58x EZ-KIT-Lite」を用意するほか、エミュレータは既存のICE-1000/2000が利用可能。なお、期間限定で、ICE-1000エミュレータと開発ツールのCrossCore Embedded StudioをバンドルしたADSP-SC589 EZ-KIT-Liteを特別価格の495ドルで提供している。